読書の部屋からこんにちは!

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2007.04.11
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カテゴリ: 小説
この本は、兵役から逃れるために全国を逃げ回った男、浜田庄吉の話です。

考えてみれば、そういう人がいてもおかしくはないし、むしろ意外と多かったのではないかという気もします。
母親が「おまえ、逃げなさい。」なんて、あったんじゃないかなあ。
もしつかまったら、死刑なんでしょうか。
とにかく、その時代に徴兵を忌避するというのは、現代からは想像もできないくらい人として許されないことであり、重罪であったようです。

戦争に行った人はさまざまな過酷な体験をして、体にも心にも傷を負い、戦後もそれを抱えて生きていかなければならなかったでしょう。
しかしそれと同様に、終戦まで逃げ切った浜田庄吉もまた、後々まで人から後ろ指をさされながら屈託多く生きていかなければなりませんでした。
いえ、たとえ人がそれを指摘しなかったとしても、本人はいつも徴兵忌避の過去を背負って、疑心暗鬼の塊になっていきます。


この小説は、現在や過去、戦前や終戦の日や出奔の日、庄吉が放浪するいろいろな町を縦横に行き来しながら、そのときどきの庄吉を表しながら、だんだんと徴兵忌避の全貌が見えてくるという形になっています。章が変わるわけではなく、いきなり何年か何ヶ月かを飛んだりさかのぼったりするのです。少々読みにくさも感じましたが、徴兵という目に見えない大きなものに追われる庄吉の不安を、いっしょに感じて逃げる感覚を持つことができました。




最近は、若い作家の作品を読むことが多く、丸谷才一さんというちょっと昔の、古典になりかかった(?)小説は久しぶりでした。
はっきり言って、最初は少々まだるっこしくてテンポが悪いと感じました。
だけど読み進むと、文章が十分に練れているというのか、柔軟で緻密な感じが肌にしっくり来るようで、読み心地がよかったです。
こういうのを名作っていうのかな?






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Last updated  2007.04.11 08:12:54
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