架空世界の放浪者ランドの「冒険日記」

2005/07/03
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カテゴリ: 大航海時代
「ランド提督!8時の方向よりガレー戦が攻撃を仕掛けてきました」
商用ジーベック“アルカディア0号”の船長室で、仕入れたばかりの紅茶を飲んでいたとき、見張りに立っていた当直士官が私の部屋に飛び込んできた。

「なに!!海賊か!!!見張りは何をしていたんだ!!!」
私は当直士官を突き飛ばすように、船長室をでて上部甲板に上がった。
左舷後方から8時の方角をみると、イングランド旗を掲げた私掠船がこちらにむけて恐ろしいスピードで突進してくるのが見えた。

「逃げるぞ!北に向かえ!!」
そう命令を出したが、実際、諦めも入っていた。進行方向は、風上に向かうことになる。補助帆を満載した交易船では最高速こそ早いが、立ち上がりがおそく、漕力が使えるガレー船に追いつかれるだろう・・・・・。

それは、カリカットの港を出て、ゴアに向かう航路でおこった。ここは、各国の私掠海賊をはじめ、無差別に船を襲う極悪海賊の集結場所になっているところだ。いま、もっとも危険な海域だといっても過言ではない。
普段は、見張りをつけ、全方位に警戒を張り巡らせているのだが、このときは、海事演習の休憩をかねて、香料貿易をしながら「ぼ~っと」していた。海賊のことなど頭に無く、ただ北に向かって船をはしらせていたのだ。イングランドの私掠船はそれを見逃しはしなかった。


私は、久しぶりに恐怖に襲われた。私掠船に襲われるのが、久しぶりだったからだ。また、船倉には、仕入れたばかりの香料が満載だ。装備も、香料を効率よく仕入れられるためのルビーのアクセサリーや、スルタンの王冠、冒険をするための六分儀などを身につけている。どれを取られても、今後の活動に支障がでる。

「接舷されます!」
ドーンという嫌な音と共に、私掠船が“アルカディア0号”に接舷した。
「戦闘をしてはらなん。まったく勝ち目がない。撤収の鐘を使って非戦闘海域まで逃げるのだ」私は叫んだ。
「カンカンカン」船中に撤収の鐘が鳴り響いた。
「提督・・・」しかし、突然の襲撃で船員が恐れおののいていたため、撤収の鐘は効果が無かった。
「もう一度、鳴らせ」私は再び怒鳴る。「カンカンカン」鐘の音がむなしく響き渡る。またしても撤収できない。

勝負あっという間についた。ガレー船と商用ジーベックでは戦闘能力が違いすぎるのだ。私の船には38人の船員が、そして私掠船の船には200名ちかい船員が乗っている。
私掠船の乗組員たちは、“アルカディア0号”に乗り移ると、私を縛り上げ、手にはめていた使い古しのミトンと、金庫から200,000程度のお金と、火事対策用のダミーの交易品を1つだけ奪っていった。そして、私掠船の船員たちは引き上げていった。私掠にはあったが、大きな損害はでなかったのがせめてもの救いだ。

「おみごと!」
私は、その手際のよさに、私掠船の船長に賞賛を送った。戦っているときは、全力を持って相手に挑むが、勝負がつくと、お互いを認め合うぐらいの度量は持っている。

私掠船の船長から返事が返ってきた。彼も、気のよさそうな船長だ。

と、突然、私掠船の船長から艦隊に誘われる。
どうやら、私をカリカットの港まで引っ張ってくれるようだ。
私掠船の乗組員に、私の船員をすべて殺されたため、私の船は、ほとんど航行能力を失っていたのだ。この申し出は、非常にありがたい。
私は、私掠船に牽引されながら、カリカットの港にたどり着いた。


私は、私掠船の船長に言った。
「望むところだ。ふふふ。」
そう一言言うと、私掠船の船長は颯爽と海に出て行った。次の獲物を探すために。

私は、船員を新たに雇い、いったんゴアに向かった。
そして、手持ちの交易品を特に値段を気にすることなく、すべて売り払い、銅張りの戦闘ガレオン「アルカディア旗艦」に乗り換えた。普段乗っている戦闘ガレオンは、練習用なので耐久が最低だが、この戦闘ガレオンは大海戦用だ。耐久はもちろん最大に回復してある。
大砲は、ペリエ14門を4基設置する。私は遠距離砲撃を得意とするので、一番お気に入りの大砲だ。補助帆、装甲、特殊兵器、船首像・・・すべてチェックする。すべてOKだ。

私は、ゴアの港を出港し、カリカットを目指した。先ほどの私掠船はこの航路で張っているはずだ。

「ランド提督、いました!」見張りが報告に来た。
「よし、全員戦闘配置に着け!先ほどのお礼をするぞ!!」私は108名の船員を鼓舞した。

私掠船の船長も私の事を覚えていたようだ。進路を変更し、私の方にまっすぐ向かってきた。
後から、海賊連合の友人に話を聞くと、海賊はワザワザ戦闘ガレオンには戦いを挑まないそうだ。勝っても負けても、損害がひどく、得るものが少ないからだ。
それなのに、私掠船の船長は、私の方に向かってくる。先ほどの私の挑戦を受けてくれたのだ。敵ながら好感が持てる。

戦闘が始まった。私はいかに接舷されず、砲撃をするか。私掠船はいかに砲撃をかいくぐって私に接舷するか・・・。一進一退の攻防の繰り返しだ。
戦いは、消耗戦に入った。戦いの技術は、毎日私掠をしている相手に分がある。私は、普段は私掠船や海賊との戦いをしないので、熟練の差がでてきた。しかし、負けるわけには行かない。

何日ぐらい戦ったのか、もう記憶にない。突然、ドン!と大きな音がして、相手の船が沈没した。
資材が切れた上、私が牽制のために撒いていた機雷に引っかかったのだ。もし、機雷につかまらず、私の方に接舷されていたら、私のほうが負けていたかもしれない。勝負は、最後の最後までわからないものだ。

戦闘が終わって、周りを見渡すと、ポルトガルの戦艦2隻が私達の周りを周回していた。私が援軍要請をだせば、すぐにでも駆けつけられるよう待機していてくれたのだ。

戦いの後、私は白旗を揚げている私掠船を艦隊に誘った。先ほど私をカリカットまで連れて行ってくれたお礼だ。もちろん、拿捕したわけではないので、自力で港まで帰れるだろうが、途中、他の賞金稼ぎに襲われないとは限らない。
お互いの同意の下、死力をつくして戦った相手だ。勝っても負けても戦いが終われば、お互い相手への礼儀を忘れないようにしたい。

普段は、ポルトガルの商船や冒険者を襲うイングランドの私掠船と、その海賊を討伐する軍人と彼と私では、まったく住む世界が違うが、この瞬間だけは、お互い戦いあった相手という共通の世界にいるのだ。

「また、戦おう」
カリカットに着くと、どちらともなくそう言い、お互いの住む世界に戻っていった。







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最終更新日  2005/07/04 03:23:23 PM
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