「着床アリ」

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【医師も戸惑う健康情報】 小内 亨(おない内科クリニック副院長)


  糖尿病で私のクリニックにかかっている女性の患者さんが私に、

「最近は体重が気になるので、サラダ油をかえました」と話してくれた。

彼女はサラダ油を特定保健用食品(以下トクホ)となっている

ジアシルグリセロール(DAG)入りのものにしたのだ。

私が、「もしかすると体脂肪は減るかも知れませんが、体重は減らないと思いますよ」と答えると、

彼女はちょっとびっくりしたような顔を見せた。

  ジアシルグリセロール入りの食用油やマヨネーズのテレビコマーシャルを見ると、

これらの商品を摂れば摂るほど健康に良いかのように思えてしまう。

確かに、DAG入りのサラダ油は「体脂肪が気になる方のために」という表示が許されている。

それは、DAGを料理に使うと一般に食されている油、

トリアシルグリセロール(TAG)を使った場合と比較して体脂肪が減るという研究報告があるからだろう(1,2)。

ただし、それらの論文を詳しく読んでみると体重はたいして減っていない。

ましてやこれらの商品を摂ると本当に私達はより健康になるのだろうか。

 TAGはグリセロールに脂肪酸が3つくっついたもの、それに対してDAGはグリセロールに脂肪酸が2つくっついたもので、

その違いは、脂肪酸が3つか2つかだけだ。

DAGもTAGと同様1グラム9キロカロリーであり、吸収率にも差がないといわれる。

ただ、吸収された後の代謝課程が異なるために、DAGはTAGに比べて脂肪となりにくいと考えられているだけだ。

ダイエット効果があると証明されているわけではない。

そればかりか、最近それまでのデータと相反する研究論文も出た(3)。

この論文ではラットを用いた実験と人を対象とした実験とを行っている。

ラットの実験ではDAGを食べさせてもTAGを食べさせても同じように体重が増加した。

餌を 50%に制限すると、むしろTAGを食べさせたラットの方がDAGより脂肪が減った。

人を対象とした実験ではDAG、TAGを含む食事を食べた後の血液中の中性脂肪値に差はなかった。

「DAGとTAGとでは身体に吸収されたあとの代謝が異なる」という仮説は科学的にも興味あるものである。

その仮説が科学的真実に近づくためには、先行した研究結果が他の研究グループによる追試験で確認される必要がある。

その意味から言えば、DAGが体脂肪を蓄積しにくいという仮説はまだ十分裏付けられたとは言い難い。

しかも、その仮説が今後の研究により証明されたとしても、

今回のようにちょっとした実験条件の違いで結果が異なるようでは、
DAGの効果は我々の多彩な食生活のなかに埋没してしまうかもしれない。


 本当にこれらトクホが私達の健康によいかどうかをはっきりさせるためには、

5~10年といった長期的な摂取により病気が予防できることを示さなければならない。

もちろん、人類が特定の成分を長期間摂取した経験もないわけだから、長期摂取の安全性も確認されるべきである。

しかし、長期摂取の効果や安全性を証明するためには、

膨大な費用と手間がかかるし、企業側の興味はそこにはない。

企業にとってトクホは商品を売るためのひとつの付加価値でしかない。

本当にトクホが健康に資するものなのかどうか、長期的に摂取して安全なのかどうか、

今せっせとトクホを購入し、食べている皆さん自身が証明することになる。

皆さんが実験台となり、しかもその費用も負担しているというわけだ。

結果的にそれに健康効果があろうとなかろうと、トクホは企業にとっておいしい商品なのである。


■ 参考文献 ■
(1)J.Nutr. 130:792-797, 2000
(2) J.Nutr. 131:3204-3207, 2001
(3) 日本臨床栄養学会誌 25(1):5-13, 2003

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