プレリュード

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2006年01月16日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

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アルトゥーロ・トスカニーニ(1867-1957)という指揮者は、ある時期には私にとって「神さま」のような存在でした。小学校6年生からクラシック音楽を聴き始めて、本格的に興味を抱いて聴き始めたのが中学1年生でした。

その頃はすでにLPという長時間録音ができるレコードが開発されて、それまで竹針で聴いていたSP盤といわれるレコードに取って変わっていた時代で、数は限られていましたが、ステレオ録音盤が商業化され始めた頃でした。

その頃の私が好きだった曲は、ほとんどオーケストラ音楽であり交響曲でした。 LPの宣伝は専門誌があり、レコード屋に行けばレコード各社のカタログ小冊子が無料で店頭に並び、毎月一般紙に各社の新譜レコードの広告が掲載されていました。

そうした状況でいつも目にする宣伝・広告には指揮者であればフルトヴェングラー、トスカニーニ、クレンペラー、ブルーノ・ワルターが四天王で、ようやく若きカール・ベームやカラヤンがそれに続いていました。

四天王のうちフルトヴェングラーとトスカニーニはすでに亡くなっていましたが、LP盤によって復活していた時代でEMIとドイツ・グラモフォンのフルトヴェングラー、RCAのトスカニーニへの賛辞の言葉は毎月のように「レコード藝術」やカタログ小冊子、新聞に掲載されていました。

それでもまだ子供の私にはLPを買うお金など無く、指をくわえて広告や記事を読んでいるだけでした。そしてこの指揮者たちが生み出す音楽は一体どんな演奏なのだろうと想像していました。



そうして中学2年生のときに1000円盤のLPをやっと買うことができました。それがトスカニーニ指揮 ニューヨークフィルハーモニーの演奏するベートーベンの第7交響曲でした。 子供心にもこの演奏の凄さがわかったのでしょうか、あるいはベートーベンの音楽を最初に理解して感動したのでしょうか、隣の家の電蓄を借りて聴いていたのですが、曲の途中から鉛筆を持って指揮棒代わりにして、スピーカーから流れてくる演奏・音楽に合わせて、まるで自分がトスカニーニになったような気分で、無我夢中で鉛筆を振り回していました。

そんな時期からやがて色々な指揮者の演奏を友人の家で聴かせてもらって、指揮者によって曲の趣きや色彩が違うことがわかるようになって、何故トスカニーニの演奏が凄いのかということがわかるようになって来ました。

「無慈悲なまでの透明さ」と評される彼の演奏は、同時代のフルトヴェングラーの濃厚な色づけのようなロマン性いっぱいの曲への解釈とは180度違っており、テンポを変えない「イン・テンポ」のやり方で、ぐいぐいと音楽を推進させており、時にはスコアが透けて見えるかと思わせるほどの透明さがあり、それがトスカニーニの尋常ならざる激しい情熱で燃え立つかのような「熱い」音楽が繰り広げられています。

ワルターの「温かさ」やフルトヴェングラーの「魔術師」のような巧妙な設計による音楽解釈を、聴いている我々に納得させながら伝わってきますが、トスカニーニの演奏は、そうした激しさ、狂気じみた、まるで火を噴くような情熱と強烈なリズムとカンタービレの素晴らしさで、聴く者を翻弄させるものがあります。

そこから生まれてくる音楽は、非常にスケールの大きな、強靭なリズムを支えとした骨組みの大きな巨大な音楽として呈示されているように聴こえます。

彼の演奏が今ではDVD映像で残されており、こうした特質が如実に刻まれています。

TOBW-3531~35   1/16
(トスカニーニ TVコンサート 東芝EMI TOBW-3531~35 )

ワーグナー、ベートーベン、ブラームス、フランク、シベリウス、レスピーギなどの曲とヴェルディの「アイーダ」全曲(演奏会形式)が収録されています。

ベートーベン、ブラームス、ワーグナーの曲が、特に私の心を揺さぶり続けていますが、オペラ指揮者としてもこうしたスタイルは変わらず、「ボエーム」「アイーダ」「仮面舞踏会」「オテロ」「ファルスタッフ」などのCDは、もうこうした指揮者は現れないのではないかと思わせるほどに、凄さと歌の素晴らしさを堪能させてくれる不滅の名演として残されており、録音の古さを忘れさせる至福の時間を味わえる盤として愛聴しています。

数多く遺されています録音の中で、私が真っ先に挙げたいのがレスピーギの「ローマ三部作」です。

堅牢な音楽の骨組み、隙がどこにも見られない迫力ある表現、音楽の彫りの深さ、それに華麗な色彩に溢れたドラマティックな演奏は、音の曼荼羅絵巻のようで、いくら他の指揮者との演奏を聴き比べてみても、この盤を凌駕する演奏はないようです。

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そのトスカニーニは87歳まで指揮台に立っていましたが、1957年の今日アメリカで89歳の生涯を閉じています。

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今日の音楽カレンダー

1891年 没  レオ・ドリーブ(作曲家)

1929年 誕生 マリリン・ホーン(ソプラノ)
1938年 初演 バルトーク 「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」
1957年 没  アルトゥーロ・トスカニーニ(指揮者)

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ともの『 今日の一花 』         千両

1/16撮影地 自宅 2006年1月15日





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最終更新日  2006年01月16日 04時22分34秒
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