この小説、アメリカ北東部にある架空の小さな町、ペイトン・プレイスを舞台に、そこに暮らす人々にまつわるエピソードを描いたものなんですが、まあ一見、事件も何もなさそうなこの小さな平和な田舎町にも、詳細に見ていけば、あちこちに醜聞のタネが潜んでいる。英語には "a skeleton in the closet" (押し入れに隠した骸骨)という表現がありますが、どんな家庭だって、大なり小なり、公にできない秘密があるわけで、この小説はそういう押し入れの骸骨を一つ一つ掘り起こしながら、アメリカの「今、そこにある現実」に迫っていくという趣向なんですな。
ちなみに、私が大衆小説リーディング第2弾として選んだのは、レイモンド・チャンドラーの『Farewell, My Lovely』という作品。ご存じの方はご存じの、「フィリップ・マーロウ」という私立探偵が活躍するハードボイルドものですわ。同じくハードボイルドものを書いたダシール・ハメットの作品はあれこれ読んだことがあるのですが、チャンドラーは今まで何となく敬遠していて、読むのはこれが初めてなんです。実際に読んでみると、この手の小説は隠語の類がやたらに使われているので、案外読み難い・・・。でも、展開は早いので、面白いことは面白いですよ。