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February 9, 2009
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カテゴリ: 思わず納得!



で、自分が指導した学生の卒論の主査になる他、他の先生が指導した学生の副査にもなるので、色々な卒論を査読することになるわけですが、他チームがどんな感じの卒論を仕上げているのか、興味深いところではあります。

ちなみに、私が副査として読んだ卒論の中に、「アメリカにおける国際養子縁組」について書いた卒論がありまして。

たとえば最近訪日したアンジェリーナ・ジョリー&ブラピ様ご夫妻などもそうですが、アメリカには一般人でも自分たち自身の子供の他に他国から養子を迎える人が相当数いる。そういうのを国際養子縁組というわけですが、こういうのが始まったのは案外最近のことで、1955年以来だ、というのですね。

じゃ、なにがきっかけかといいいますと、朝鮮戦争の結果、アメリカの兵隊と現地の女性の間に子供が出来、それが戦争孤児(いわゆるGIベビー)となって苦労する、というような問題が起こってきたことによるんですって。で、そういう報道を見たあるアメリカ人のご夫妻が、こりゃいかん、というわけで、取材された8人の戦争孤児を引き取ろうと申し出た、と。

で、そうなると当然、ベトナム戦争時に戦争孤児(アメラジアン)が沢山生まれた時も同じことが起こるわけでありまして、そのうちにアメリカの関連する戦争だけでなく、世界各国で生じる戦乱・内乱、貧困、病苦等々の結果、恵まれない子供が生じる度にそれをアメリカ人篤志が引き取るというようなことが慣例となるわけですな。もちろん、そういうケースの他に、不妊に悩むアメリカ人夫婦が他国から養子をとるということもあるので、「一人っ子政策」をとる中国から女の赤ちゃんがアメリカ人夫婦に引き取られる、なんてことも多いらしい。アメリカで人気のTVドラマ『セックス&ザ・シティ』でも、主要登場人物の一人が中国人の娘を養子にとりますが、あれはこういう世相をうまく反映させているわけですよ。

で、アメリカではそういう国際養子縁組が多いわけですけれど、そうなると、それはまたそれで色々と問題が生じてくる。たとえば、養子縁組が一つのビジネスとなって、人身売買に近いものになる危険性もある。また手続き上、正当な養子縁組であったとしても、引き取られた子供たちが実の親への憧憬を募らせたり、アメリカで人種差別的ないじめを受けたりすることによって生じるアイデンティティ・クライシスが大きな問題で、そのためのケアが必要になってきていることもある。

とまあ、この卒論はその辺の事情をさらに詳しく扱っているのですけど、とりあえずここまでの段階で私が驚くのは、「可哀相な子供を引き取ろう」というアメリカ人の発想です。

たとえば日本人だって、テレビの海外ニュースなどで、どこぞの地域が大変なことになっており、恵まれない子供が沢山生じている、なんてことを見たり聞いたりすることはあります。しかし、その時点で、「よし、あの子たちをうちで引き取ろう!」という行動に出る日本人一般家庭がどの位あるか。あんまりないだろうと思うんですね。日本は日本で、伝統的に養子縁組の多い国ですが、日本の場合、「家」を存続させるための養子縁組が多いので、よその子供が可哀相だからうちで引き取る、というのではない。じゃ、純粋に「恵まれない子供が可哀相だから」「彼らはアメリカで育った方が幸福になるだろうから」という「子供本位」の理由で、養子縁組という行動に出るアメリカ人っていうのは何なのか。



つまり、「アメリカが世界一だ」「ここで育つのが一番いいのだ」という自負。「世界中の可哀相な子の面倒はアメリカが見る」という責任感。これですね。

私思うに、こういう自負と責任感がどうして、何を根拠にして生じてきたのか、ということは別として、アメリカ人の、あるいはアメリカ国家の(たとえば外交問題を含めた)行動原理の根底に、これがあるのではないかと。逆に、その自負と責任感、ちょっとおかしいよ、ということをアメリカ自身が自覚しないと、たとえば中東問題への介入などの問題は終わらないんじゃないの、と思うんですよね。

もちろん、こういうアメリカの自負と責任感によって、世界中が益しているところはあります。それは確かにある。日本人が一般に思っている以上に、ある。しかし、そのアメリカの自負と責任感が引き起こしている問題も多い、ということもまた事実でありましょう。

ま、ことほど左様に、「アメリカの国際養子縁組」という枠組みから見ても、アメリカの特殊性というのは窺われるんですな。

ま、そんな感じで、よそのチームの卒論を査読しても、私自身が得ることは多いのでありまして、教えるとは教わることである、というのは本当にその通りでございます。

ということで、今日は今年度の卒論指導のすべてが終わったと同時に、私も大いに勉強をさせてもらったのでありました、とさ。今日も、いい日だ!





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Last updated  February 10, 2009 02:13:03 AM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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