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December 20, 2016
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カテゴリ: 教授の読書日記
 今日は特に雑用もなく、本来であれば卒論指導に邁進できるはず・・・だったのですが、なーんかこう、やる気が出なくて、結局、ダラダラと別に今読む必要もない本ばかり拾い読みして過ごしてしまいました。

 で、その「必要もない」本の一冊が、昨夜買った村上春樹の『職業としての小説家』。半分くらい読んだかな?

 ひょっとして村上春樹さんが書いたものを読むのは初めて? なんですけど、ふうむ、毎年ノーベル文学賞候補と騒がれる人の書く文章というのはこういうものかと。

 で、内容的にちょっと面白かったのは、村上さんが小説家になるきっかけを綴ったところ。

 1978年、仕事の合間に神宮球場の外野席の芝生に座ってヤクルトの試合を見ていた時、1回裏のヤクルトの攻撃でトップバッターのデイブ・ヒルトンが相手ピッチャーの初球をカコーンとはじき返し、二塁打にしたんですな。で、その刹那、何の脈絡もなく、「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」と思ったと。

 で、実際、そうなった。もちろんその天啓から『風の歌を聴け』が書きあがるまでには丸1年の時間が掛かるのですが、とにかく、ふわっと天啓が降りてきて、実際その通りになった。

 この感じ。これはリアリティがあるわ~。そういうことって、きっとあるんだろうな、っていう感じがヒシヒシとする。

 あと、最初に書いた小説が某文学賞を獲ることになるのも、それこそ天啓のように、「あ、これは僕がとるんだな」っていうのが分かったそうで。それも、何となく分かる気がする。

 だけど、村上さんの場合、凄いなと思うのは、それ以後、一度もスランプがない。脂汗流して、髪の毛かきむしって、創作の苦しみの中で書く、というアレがなくて、スラスラ~っと書けちゃうらしいんですな。もちろん一旦書きあがった後の壮絶な書き直しはあるとはいえ、書けなくて悩むということは一度もないと。



 ひゃー、かっこいい!

 まあ、色々な点で村上春樹さんというのは例外的な作家なんだろうし、これを読んで「作家」という職業の何たるかが分かるという体のものでもないのでしょうけれども、自分のことを事実にもとづいて書いておられるので、面白いですよ。

 ただ、うーん、何て言うのかな、これがエッセイだからかも知れないけれども、文章に棘がないよね。棘がないのはもちろんいいことだけれど、なさ過ぎるというか。まろやか過ぎて、ハイジの白パンみたいな文章。

 その棘のなさの一つの要因は、ダッシュを使った文章が多いことかな。ダッシュを使って、全部棘を抜いちゃうのよ。分かる? 言っていること? 例えば・・・


 僕が見るところをごく率直に言わせていただきますと、小説家の多くは――もちろんすべてではありませんが――円満な人格と公正な視野を持ち合わせているとは言いがたい人々です。(11頁)


 とかね。「俺に言わせりゃ、小説家なんて全員、非人格者だ」と言いたいところ、これじゃ棘があるってんで、「――もちろんすべてではありませんが――」というダッシュ文で棘を抜いちゃう。ダッシュ自体が、視覚的には棘なんだけど、その棘を使って、文意の棘を抜いちゃっている。その他・・・


 小説なんて――「小説なんて」という言い方はいささか乱暴ですが――書こうと思えばほとんど誰にだって書けるからです。(16頁)

 そして彼らの書いた作品の多くは――当時はそれなりに話題になり、脚光を浴びたものですが――今ではおそらく一般書店で入手することがむずかしいかもしれません。(21-22頁)

 乗り越えられなかった人は多かれ少なかれ、途中で姿を消して――あるいは存在感を薄めて――いくことになります。(30頁)

 相手が――少なくとも多くの場合――好意で言ってくれていることはわかるんだけど、・・・(70頁)

 文藝春秋はそれを商売としてやっている――とまでは言わないけど、まったく商売にしていないといえば嘘になります。(72頁)



 歳月を経てある程度――もちろんあくまである程度ですが――自分で納得のいくものが書けるようになっても、・・・(104頁)

 そこにとりあえずあるものを――もうひとつぱっとしないがらくた同然のものしか見当たらないにせよ――とにかくひっかき集めて、・・・(133頁)



 ま、こんな感じで、村上さんの文章の中には沢山の――もちろん、ここには目に付いた例だけを引用したわけですが――ダッシュ文がある。

 こんなにやたらにダッシュ文書く人って、いる? もう、私なんざ、気になって仕方がないんですけど。これは、エッセイだからそうなのかしら。それとも、小説の方もそうなの?

 というわけで、このダッシュ文だらけのエッセイ――それが気にならない人には、という意味ですけど――、教授のおすすめ!です。


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Last updated  December 20, 2016 08:31:34 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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