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2006.07.27

「四季　夏」森博嗣を読んだ

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24307)

カテゴリ：きらきらポストモダン推理

森博嗣の創造したキャラクターの中でも極北に位置する天才・四季を主人公にしたシリーズだ。

○ストーリー
天才として世間にも注目されつつある四季は，自分の才能を利用して財団を動かすにまでいたっていた。名護野で不思議な事件に巻き込まれ，魅力的な人々と会った四季は，人間という生物をさらに深く理解しようと思う。そこで彼女が取った行動とは？

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シリーズなのか？連作長編なのか？と悩む作品だけど，真打ち登場，というカンジの主人公の扱いとはアンバランスにさらっと読めてしまうことからは，長編を4分冊にして出している，という気がした。タイトルも春夏秋冬となっているけれども，作品中で経過する時間が長かったりするので，それほど明確に季節感があふれた作品ではない。

”四季シリーズ”がやはり4冊で「四季」という作品を構成し，それではじめて完成することと同様に，犀川＆萌絵の”S&Mシリーズ”，紅子たち4人組の”Vシリーズ”を読んでいないと，このシリーズは理解できないと思う。これはどうひいき目に見ても作品としては欠陥だけど，前のシリーズがあれだけ人気なんだからゆるされるのだろうし，僕自身もゆるす。

このシリーズがつまらない，という批評も多いようだけど，ミステリーを読むときに，ロジックパズルの展開やキャラクターの動きは面白くて，結末はナットクはするものの「なーんだ」という場合も多い。だからこれまでのシリーズが，ナゾかけの部分で，”四季シリーズ”が結末だと考えれば，説明的な展開の多さや，「なーんだ」「なるほど」という読んでいる時の気持ちが理解できる。

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この作品では，”Vシリーズ”のキャラクターの多くが登場し，シリーズの後日談的な意味合いもある。そのままの関係もあれば，少しシフトしているものもあるので，シリーズを読了してからあたる方がいい。それぞれが四季と接する部分は，なかなかひりひりとした緊張の展開で，改めて”Vシリーズ”キャラのレベルの高さに驚いた。

紅子を強く意識する四季と，やんわりと相手を拒絶する紅子の比較は面白かった。意外や意外！この勝負は紅子の圧勝だ。不戦勝だけど。・・・超音波研究所で嬉々として自説を展開していた紅子とは別人みたいに達観していたなあ。

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この作品のラスト部分は，「すべてがFになる」で言及された四季の過去の事件が，現在進行形で語られる。四季を描く上では避けて通れないので，事件は起こるのだけど，「事件の真相とは？」という内容ではぜんぜんなかった。なんだかシナリオみたいに淡々と展開していた。

「すべてがFになる」では，どこかで「そんな不自然な！」という印象を感じたこの事件だけど，今回改めて読んでみると，すーっと受けることができた。

ずっと森博嗣を読んできて，ようやくここまで戻ってきた，という感慨と，いつの間にかメタな展開に慣れさせられてしまったのだなあ，という危機感がダブルで感じられた。

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