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2007.02.05
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東直己が珍しく女性を主人公にしたミステリ短編集を読んだ。

○ストーリー
街の大地主が自宅で殺された。怪しいのは地主と仲たがいをした息子だが,地主の自宅には4匹もの凶暴な番犬が飼われていた。捜査に行き詰った刑事たちが,頼った先は,ある職場で働く若い娘だった。

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北海道を舞台にしたハードボイルド作品を書く作家・東直己の作品として特殊なのは,主人公が女性である,ということに加えて,これがミステリの連作短編集であるということだ。東直己は,「ススキノ探偵」「始末屋・榊原」「探偵・畝原」という,いずれも札幌を舞台にしたシリーズを持っているが,どれも主人公が男性で,内容はハードボイルド作品だ。

ハードボイルド作品と,ミステリ作品は,同じように事件が提示され,主人公の探偵はその解決に努めるのだけど,ハードボイルドの主人公の前に立ちはだかるのは社会であり,ミステリの主人公に立ちはだかるのは謎解きだ。

この作品の主人公のくるみは,ソープランド嬢だ。だからタイトルに「くるみ嬢」が残っている。(発刊時のタイトルはもっと直接的だった。)職業差別的な発言になって申し訳ないが,刑事が一般の殺人事件に行き詰ると,ソープ嬢の意見を聞きに来る,という設定だけで,この作品集はハードボイルドになりようが無く,ユーモアミステリとなることが決定している気がする。

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この作品の舞台になるのは,北海道のある街で,特例を設けて,街を挙げてピンク産業を推奨している,という架空の設定だ。だが,その理由が炭鉱が閉鎖して街の存続が危ぶまれたため,ということなので,財政的に破綻した夕張市のことを考えると,あながち突拍子も無い発想ではないのかも知れない。



これまで述べているように,これはミステリの短編集だ。変わった職業の探偵が事件を解く作品集ということでは,先日読んだ有栖川有栖の「山伏地蔵坊の放浪」に似ているところがあるかも知れない。もっとも,トリックには脱力系のものも含まれているし,読者への情報の提供のバランスなども,新本格推理のエース・有栖川有栖には遠く及ばない。変わった設定,軽い語り口などは,むしろ西澤保彦を連想させる。

もっともハードボイルド長編が売れている現在,東直己がこうしたミステリ作品を発表することはもうないのだと思う。






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Last updated  2007.02.05 22:26:14
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