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2010.05.13
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カテゴリ: びしびし本格推理
最近読み始めた鯨統一郎の心理(?)ミステリーを読んだ。

○ストーリー
ぼくが勤めることになったのは,波田というセラピストが所長であるメンタル・クリニック<なみだ研究所>だった。だがぼくの前に現れたのは,10代にしか見えない冴えない女の子だった。さらに彼女には心理学の知識はほとんどなく,行き当りばったりに思える治療を始めたのだった。この女の子が本当に伝説のセラピストなのだろうか?

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努力家できちんと心理学を学んできた「ぼく」・松本清が,素人同然なのに毎回ピタリピタリと依頼者の悩みを解決してしまう波田所長に振り回されてしまう,という展開で物語は進む。

依頼者がいて,隠された謎があり,それを限られた情報で見事に解き明かす,というのは,確かにミステリーの1つの典型である”安楽椅子探偵”と符合する。セラピストとミステリーをミックスするというのは,確かにいいアイディアだ。

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シリーズ名が「サイコ」という文字で始まるが,ミステリーとしては穏やかで,ナイフで襲われたり,血が流れたり,ということはない。犯罪もたまに登場するが,基本はフツーの日常生活に遭遇するレベルの謎がテーマであるし,波田所長と「ぼく」のやりとりもコミカルで楽しめる。

これまで読んだ2冊では,鯨統一郎作品はライト系歴史ミステリーだったが,今回は全く異なるジャンルである心理学を背景に使っている。作者もだいぶリサーチをしたらしく,<なみだ研究所>で実施される勉強会という設定で,多少ぎこちなくそのリサーチ結果が紹介される。



短編の導入部分に,アロマ・テラピー,お茶の歴史,などが紹介されることがある。このあたりもよく勉強しているなあ,と感心させられる。

鯨統一郎のウンチク癖と,ミステリーのバランスが嫌味無くまとまっており,シリーズの残りの3作品も読んでみようと思わせられた。

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各編について簡単に述べる。
「アニマル色の涙」:動物を幻視してしまう男性の謎とは?・・・最初の謎解きがこれって,ちょっと残念な印象。

「ニンフォマニアの涙」:男性に触りたがる妻の謎とは?・・・毛虫の意味に驚いた。

「憑依する男の涙」:腹話術でしか語れなくなった男の謎とは?・・・よく出来ている。オチも良い。ちなみに,この短編から涙の表現「。。。」が始まる。

「時計恐怖症の涙」:時計を怖がる少年の謎とは?・・・うーん,少しフツーかな?

「夢うつつの涙」:夢と現実の区別がつかなくなってしまった依頼者の謎とは?・・・解決が唐突。ミステリーらしいと言えばそうだけど。

「ざぶとん恐怖症の涙」:四角い座布団を怖がる男の謎とは?・・・うーん,これで解決だろうか?

「拍手する教師の涙」:舞台のマジシャンに熱狂的に拍手をする男の謎とは?・・・これはやや強引だけどキレイにまとまっている。



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だが,この作品で一番謎なのは,小野寺さんの心理だろう。








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Last updated  2010.05.16 10:22:55
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