1997年11月28日(金)の後半に、実際にその場で見たマタンサ (豚の屠殺) の事を書いています。是非是非みなさんにご覧になっていただければ幸いです。
http://plaza.rakuten.co.jp/sealofc/15009

「血と骨」を観た時に、おお、マタンサ!と思いました。どっかに書いてたかも。感想こちらです。
http://plaza.rakuten.co.jp/sealofc/13069
(2008.02.03 10:19:25)

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カテゴリ: 映画の話
食べものにまつわる不穏なニュースが、次から次へと後を絶たないこの頃です。

その度に感じさせられることは
「どうやって出来たのか、よくわからないものを食べているんだなぁ」
ということです。

だから、昨年秋に公開されて話題になっていたこの映画、ずっと観たいと思っていたのです。
先日のブログ に感想を書いた「earth(アース)」に続き、素晴らしいドキュメンタリー作品に出会うことが出来ました。

ただ、大自然の様々な姿を捉えた「earth」とは、色々な点で対極にある映画です。

最先端の撮影技術を駆使し、美しい音楽と叙情的なナレーションが全編を彩る「earth」に対して、この「いのちの食べかた」という映画は、字幕やナレーションによる説明は一切、ありません。
そして、カメラは基本的に固定。音楽もまったく使われず、聞こえてくる音は、モーター音やエンジン音がほとんど・・・その中に時折、鋭い動物の鳴き声が混じります。



ベルトコンベアから滝のように流れるヒヨコ、機械によって畑やハウスの中に散布される農薬、そして、流れ作業で“生きた動物”から“食肉”へ変身させられる、鶏、豚、牛・・・

かつて、映画「 血と骨 」で描かれたような、豚を一匹屠ってまわりで宴会をする、祝祭的なムードは微塵もありません。

合間には、現場で働く人々の食事風景が差し挟まれます。
仕事の手を休め、サンドイッチや温かい飲み物を手に、ほっと一息つく姿は、万国共通のお昼休みの光景。

工場見学が大好きな私にとっては、様々なプロフェッショナルの仕事ぶりを目にすることが出来て、とても興味深かったです。

静かな画面に見入りながら、先に観た「earth」のことを思い出しました。

動物の狩猟シーンが出てきた際、チーターが獲物を捕らえた瞬間でシーンが切り替わってしまい、その先にあるはずの“殺して、食べる”行為がカットされていたことに対する、一瞬の違和感・・・

食物連鎖のヒエラルキーの頂点に立ち、「食べられる側に回る」ことのない人類。
その中でも、先進国に暮らし、大量消費に慣らされてしまった私たちは、日々の食卓を囲むことが、狩って(捕って、採って)、命を奪って食べているのだという実感から、とてつもなく遠ざかっている(遠ざけられている)・・・

その事実を、痛感させられました。


ただ、実際の人間の営みを静かに切り取っているだけの映画ですから、そこから何を感じるか、考えるかは、観る側に委ねられています。

映画の作りはシンプルだけれど、シンプルな言葉ではとてもまとめられない、複雑な思いがこみ上げた鑑賞後。

命を食べなければ、自分の命を支えていけない。そういう、生きものとしてのわが身の『業』を、改めて思い知らされ・・・

食糧自給率は低いのに、世界で最も残飯を出している日本に暮す私たち。
せめて、「いただきます」と「ごちそうさま」の言葉に日々、心を込めること。


そんな、ささやかな誓いが、今の私の心に静かに宿っています。知らないよりは知っている方がいい、そんな場面が詰まった、多くの人に観てほしい映画です。

公式サイト の内容も充実していて見ごたえ十分です。
予告編も観られます。お奨め!
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

【邦題をどこかで聞いたことがある・・・と思っていたら、書評を見ていつか読みたいと思っていたこの本の題名でした。必ず読もうと思います。】

いのちの食べかた





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最終更新日  2008.02.02 23:33:36
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Re:「いのちの食べかた」を観た。(02/02)  
SEAL OF CAIN  さん

森達也さん  
まろ0301  さん
 森さんの本では『放送禁止歌』という本を読んだ事があります。深く掘り下げて取材する人で、簡単に出来合いの結論に持っていかないところに好感を持ちました。
 検索してみると、これは読んでみたい!という本がいっぱいありました。
 本も読みたいし、映画も観てみたいです。ご紹介有難うございました。 (2008.02.03 10:53:39)

いつまでも余韻の残る映画でした  
嫌好法師  さん
さすがはサリィさん、私が言いたくて書き漏らしたことをちゃんと書いて下さいました。

私も工場見学が大好きで、テレビでそういうのが流れたら目が釘付けです。 (2008.02.04 00:15:56)

ありがとうございます  
サリィ斉藤  さん
SEAL OF CAINさん

>1997年11月28日(金)の後半に、実際にその場で見たマタンサ (豚の屠殺) の事を書いています。

リンクありがとうございます。ぜひ読ませていただきます。実際に現場に立ち会われると、目だけでなく耳で鼻で、鮮烈な体験を味わうことになるのでしょうね。
そういえば、「地獄の黙示録」にも牛の屠殺シーンが出てきました。大量消費のためのオートメーション化された仕事と違い、かつて、人が生きものを殺す行為には、儀礼的なお祭り気分がついてまわったのかもしれませんね。 (2008.02.05 18:25:20)

Re:森達也さん(02/02)  
サリィ斉藤  さん
まろ0301さん
> 森さんの本では『放送禁止歌』という本を読んだ事があります。深く掘り下げて取材する人で、簡単に出来合いの結論に持っていかないところに好感を持ちました。

「放送禁止歌」は私も読みました。内容もとても興味深く、スリリングでしたが、企画段階で背中を押したのがデーブ・スペクターというのに仰天した記憶が・・・ただの駄洒落外タレじゃないんですね、あの人。

森達也氏の旺盛な仕事ぶりにまったくついて行けず、いつかまとめて制覇したい・・・なんて思っていましたが、私もいつかと言わず、すぐに、と思いなおさないと(苦笑) (2008.02.05 18:28:02)

Re:いつまでも余韻の残る映画でした(02/02)  
サリィ斉藤  さん
嫌好法師さん

>さすがはサリィさん、私が言いたくて書き漏らしたことをちゃんと書いて下さいました。

そんな風に言っていただけるとこそばゆいですが、とてもうれしいです。
この監督さん、本当に画面作りのセンスが良くて、絶妙のアングルで画作りされてますね。
静謐な映画なのに、私も、ふとした拍子にいくつかの場面をふと、脳裏に甦らせることがあります。力のある作品でした。 (2008.02.05 18:33:46)

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