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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年05月03日
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「おまえも・・・・・・死にかけたのか?」

「えっ?」

「マリアの魂と身体が砕けたとき。おまえだって無事じゃなかったんだろ?」

ソファの上でかかえた膝に顔を埋め、少女はひどく痛そうな表情をしていた。
あのときのことか・・・・・・かすかにトールは嘆息した。嘘をついてもばれてしまうだろう。

「・・・・・・ええ、まあ、少しは。でも本体のヒーリングで乗り切りましたし、大丈夫ですよ。デセルが頑張ってくれましたしね」

控えめにすぎる表現をあえてトールは使った。
マリアは他の分身にとっては、同じ魂であるという以上に根源の存在でもある。彼女が「死んで」いるときに、他が無事でいられるわけがなかった。
実際は誰にも知られないよう、ルキアの隠し部屋で悶絶していたトールである。本体も中身がずれるやら内臓が腫れるやら、本体が転居のさなかに、お互いヒーリングしてどうにか乗りきったのだった。
たとえ統合に必要なプロセスであったとしても、できれば二度は遠慮しておきたい。

「・・・・・・あたし、知らなかった」

少女は言い、抱えた膝を強くひきよせた。

「おまえがそんな大変なことになってるのに、あたし、知らなかった・・・・・・何もできなかった」

声に涙がにじんでくる。
自分がヒーラーではないことを辛く思うのはこういうときだった。トールはいつも自分にヒーリングをしてくれるのに、自分は彼の窮地にも何もしてあげることができない。
彼が心配をかけないために黙っていたのもわかっているが、どうしても考えてしまうのだ。

もしも自分がヒーラーだったら、彼は教えてくれたのだろうか?
苦しむ彼の役に立つことができたのだろうか?

そう思うと普段ステーションでの授業を逃げ回っていることまで後悔の種になってきて、緑の少女は大きな目に涙をためた。

「そんなこと、ありませんよ」

暖かな手が頭に載せられて顔を上げると、困ったような微笑が彼女を見ていた。

「なにもエネルギーワークだけが癒しの技ではないのですから・・・・・。
むしろヒーラーにできることなんて、とても少ないんです」

なにげないたった一言が、ほんの一片の微笑みが、誰かを救うことがある。
救われるのも癒されるのも、その人がそう受け取ったからだろう、とトールは思う。
何によって癒されるかは受け取る本人が決めることであり、ヒーリングは提供される道具のひとつでしかない。
美味しい料理や温かい風呂や大切な誰かの写真や・・・・・・それらと似たようなものだ。

「あなたはもう充分、私に大事なものをくださってますよ」

手を離してトールはゆっくりと言った。

あなたのもとに帰ろうと思えばこそ、あの夜を越えることができたのだから。

帰りたいと強く願うこと。
その笑顔を今一度見たいと切望すること。

それを上回って、生きる意志を強める業などあるだろうか。
生死の最後の趨勢を決めるのは、天寿のほかにはいつだって本人の生きる意志なのだ。

分身以外とのエネルギーラインをすべて遮断し、身体が分解されてゆくような感覚と痛みに喉をかきむしって耐えながら、彼がよすがとしていたのは少女の存在だった。
歯を食いしばってなお漏れる呻きを枕に押し当てて消しながら、脳裏に唱えたのは彼女への誓いだった。

ヒーリングなぞできなくとも、それほどに彼女の存在は彼を支えている。
夜はすでに越えたのだ。
それ以上何を求めようか?

あなたは今のままで充分なんですよ、と彼は言った。

「・・・・・・ほんとに?」
「ええ。それに、このとおりもう大丈夫ですから」

うるんだ大きな瞳に、トールはにっこりと笑いかける。つられて少女の頬がゆるんだ。
銀髪の錬金術師はほっとして、冗談めかした声を出した。

「ではお詫びをさせていただきましょう。お望みはありますか、お姫様?」

少女は眼をしばたたいて涙のあとを消し、ちょっと考えてから言った。

「お花見したい」

「お花見? 桜ですか」

「うん。一緒にいけたらいいなと思って・・・・・・」

お安い御用です、とトールは笑った。
彼女の前に立って、芝居がかった動作で一礼する。身体を起こすと同時に振りあげた手から金色の粉が舞ったかと思うと、そこは見慣れた居間ではなくなっていた。

青々とした草地に、満開の桜の花。
大きな樹が何本も真白の雲のように花をつけて、風が吹くとはらはらと花びらを散らせる。

「うわあ!」

顔を輝かせて緑の少女は駆け出した。青空にむかってさしだした手に、幾枚もの花片がかすってゆく。

「すごいすごい! こういうときって、ほんとにトールが魔法を使えてよかったと思うよね」

やわらかな陽射しのなか、薄桃の花びらを髪につけて少女が笑う。
大樹のかたわらに立ち、ええ本当に、とトールは目を細めた。

間なく散るとも数はまさらじ。最近耳にした古歌を低く口ずさむ。花びらは雪のように間断なく降りつもり、歌われた世界と重なった。

「なんかいったか?」

上着の裾をひろげて花びらを集めながら少女が振りむく。
トールは照れもせずに微笑んだ。

「あなたを愛している、と言ったんですよ」

「知ってるよ。そんなこと」

まるで桜の精のように輝きながら、最上の笑顔で少女は言った。

今ここであたしもだ、と。














*************

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5/5 一斉ヒーリング~地球へも感謝をこめて~


※連休中、セミナー参加等のため、来週水曜くらいまでメールのお返事ができないかと思います~
物語はもう書いてあるので、実家でPCが触れたらささっとアップするつもりですが
メールのお返事は自宅に戻ってからゆっくりさせていただきたいと思うので
どうぞよろしくお願いいたします m(_ _)m











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最終更新日  2009年05月03日 21時06分06秒
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