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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年10月09日
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たくさんのケンタウルス達が集まって、酒を供に集会を開いている。
客分というか見学という感じで、そこに混ぜてもらった。

いつも相手をしてくれる半人半馬の友人は、周りと同じように酒瓶から直接大酒をあおって議論に参加している。
議論というか…謎かけ問答というか。

問いを発すると問いで返ってくる。
その問いに自分の答えをみつけていくんだろうが、言っていることも返ってくる問いも、ひどく深遠で抽象的で、人間ごときの頭ではそうそう追いつかない。

だから私はただ皆の豪快な飲みっぷりを楽しく眺めながら、ひとり杯を手にしていた。
全部理解できているとはいいがたいが、友人の考えを横で聞いているのが面白い。
いつもこんなことをつきつめて考えているなら、ケンタウルスっていうのは大変だな、と思ったりする。

時折、私に話が振られることもあった。

だが、数百年の時を生きる彼らにとって、たかだか生まれて二十年ほどしか経ってない人間なんて、赤子も同然だろう。
だから赤子らしく、背伸びして無理にひねったりせず、ありのままを素直に答えることにしていた。
彼ら相手に同じ土俵に乗ろうなんて、どだい無理な話だ。

「キュアノス」

落ち着いた雰囲気のケンタウルスが、私を見て言った。濃い藍色のものという意味で、私の瞳をさしているらしい。

「キュアノス、お前は不思議な人間だな。大きな運命の流れと小さな使命。大きな使命と小さな流れの運命。その両方が瞳の中にある」

「お節介だな、ケイローン」

そうですか? と応えようとした私の声に、友人の言葉が重なった。
そして私をふりむいて解説してくれる。

「運命という言い方をしてるほうは、周りまでひっくるめた流れで個の意思だけでどうにかなるものじゃない。集団、つまり属する集団が同意したことだ。魂のな。
使命という表現をされるのは、自分で決めたこと。
大きな、というと多岐な人生に渡っていることを指す。小さな、ほうは現在の人生のことだ、人の子」

ケイローンがうなずいている。友人に礼を言って、私はなんと答えるべきかと考えた。
使命も運命も、今のところ自覚がないので返事のしようがない。
眠りの淵の向こう側には、なにかがあるのかもしれないけれど。

「そんな人間が、なぜ彼と一緒にいる?」

ケイローンは友人を視線で指して言った。これなら答えられる。

「好きだから。一緒にいると楽しいからです」

私は微笑んだ。他に理由などない。
天涯孤独の傭兵稼業で、彼以上に信頼できる友人はいなかった。
一緒に飲んだ後、その暖かい馬身によりかかって気持ちよく寝入ってしまったことが何度あっただろう。
今にしてみれば、彼にかなり寝辛い姿勢を強いていたのではないかと思うのだが。
我ながらよほど安心しきっていたらしい。



その友人は、酔うといつも口癖のように言った。

「いいか、困ったときには必ず私を呼べ。お前がどんなに遠くにいようと、絶対に駆けつけるから」

私はその言葉を疑わなかった。
絶対に来てくれると確信していた。

むしろ、彼自身がどんなに重要な仕事をしていても駆けつけてくれると感じていたから、滅多なことでは呼べないと思っていた。


だから……だからなのだろうか。

託した伝言は、すこしばかり遅かったようだ。

森から片道四日かかる戦場で、私は大地に膝をついていた。
一騎打ちで一人倒した、その直後に背後から斬りかかられるなんて馬鹿な話だ。

入れようとしても力の入らない上体が、ゆっくりと前に倒れてゆく。
口からあふれる血で、鉄の味が満ちて苦しい。

倒れた先の目の前に、黄緑色の若葉が生えていた。
彼の瞳と同じ色だ。

血に染まった戦場に、奇跡のように萌え出る若葉。
横向きに倒れ、大地に押しつけられた耳に、遠い馬蹄の響きが聞こえる。

ああ、これはきっと彼だ。
ここへ向かってくれている。
力強くリズミカルに、駆けつけてくれる大地の遠雷。


なんて安心できる響きだろう。






私の口からまた新しい血があふれ、視界が徐々に狭まってくる。

強い力と命が来てくれようとしているのに、私の炎は消えようとしていた。



ああ……ごめん。

あなたを待っていられない。


もうすぐ。もうすぐだってわかるのに。

来てくれているとわかるのに。


言わなければよかったろうか。
よけい苦しめてしまったろうか。

そうではないといいのだけれど……。



薄暗がりの視界で、見つめ続けていた黄緑がぼやけてくる。

ケンタウルス、あなたの心はここに届いている。
足音も聞こえている。
クリソス、陽に透ける淡い金色の毛並み。


最後の旅路が怖くないのは、きっとそのおかげだね。


ありがとう、ケンタウルス。
ちゃんと間に合ったよ。


待てなかったのは……、私。




ごめん。


















<Herkimer Deram - Lost 3 stories - Centaurea ->
http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/929ba40db6393b95952c9e48f930fea5





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>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)


トールが世界樹の守人をしていたときの、転生のお話です。
世界樹に見せていた夢。
だけどそこに生きている間は、やっぱり普通に一生懸命生きているひとつの人生、なのです。


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最終更新日  2009年10月09日 13時44分29秒
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