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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年12月22日
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サマーニットのワンピースを着たリフィアと同僚は、楽しげに喋りながら大神殿の外苑を歩いていた。
中央の大神殿で行われる毎年の例大祭は、この星でいちばんのお祭りだ。だからどこの職場でも、このときの休暇は奪い合いになる。

早春の古書店巡りから、また一年以上も経った夏の盛り。
強い夏の日差しを避けて外苑の森に入ると、さあっと涼しい風が吹き抜けた。

「ああ涼しい。緑の匂いがする」

リフィアは息を吸って大きく伸びをした。白い編み上げ風のサンダルで、苔むした土を踏んでゆく。
森の中は、外の喧騒もまったく届かない別世界だった。少し歩いただけで祭りの賑やかさは遠くなり、涼やかな空気が肺を満たす。
すこし離れたせせらぎの音に導かれ、彼女たちはきゃいきゃい言いながら森の奥へと入っていった。

「見て! 綺麗な水。ほら魚が泳いでるわ」

先に小川に着いたジェズが叫ぶ。緑の中の岩場を流れる水は冷たく、足をひたした彼女は喜びの声をあげた。
追いついたリフィアも、暑くなって脱いだ薄手のボレロを手近な岩の上に置き、裸足になって足を入れる。
歩いてほてった足に、冷たい水が気持ちよかった。
二人はそれぞれ岩に腰かけ、足を流れにひたして透明な冷たさを楽しんだ。



禊のために上流にいたアルディアスは、少し離れた場所で高い声のさざめきが聞こえることに気がついた。
驚いて目を閉じ、結界を確認したが破れはない。
しかし禁足地に入ったことが見つかると大騒ぎになるから、彼はその声のするほうに歩いていった。

背の高い茂みを回り込むと、二人の若い女性が小川ではしゃいでいるのが見える。

「お嬢さん方、ここは禁足地ですよ」

驚かさないよう、穏やかに彼は言った。
最初に気づいたのは向こうだった。

「……アルディアスさま!?」

こちらを向いていたジェズがびっくりしたような声を出す。それを見て、彼女達が軍で見かけた総務課の子だと彼も気がついた。
アルディアスが大神官の籍を持っていることは隠さぬ事実だが、軍服の時しか彼女たちと会ったことはないから、禊用の神官服を着た今は驚かれても当然だろう。
振り返ったリフィアも驚いた顔をする。

「とりあえず上がってください。誰かに見つかると大変ですよ」

アルディアスは近場にいたリフィアに手をさしのべた。何も他意があったわけではない。
けれど、初めて二人手をとったその瞬間。
まるい水滴がはじけるように、相手が昔夢で遊んでいた名も知らぬあの子だと、互いに気づいた。

藍と金緑の視線がぶつかる。ハートから何かが解放されたような繋がったような感じがして、思わずリフィアは時を忘れた。

カレ ト ワタシ ハ …… ダ。

そんな言葉が一瞬脳裏に聞こえたが、……にうまく相当する単語が見つからない。

けれど、知っている。
このひとを知っている。
おととしの早春パーティで初めて出会った、そうではなくて。
もっとずっとずっと昔から、きっと。

触れた手から何かが重なる。
手をとられたまま踏み出そうとして、足元の岩ごと滑り大きくよろける。

咄嗟にアルディアスは掴んでいた手を自分のほうにぐいと引いた。彼女の体を抱き寄せた格好で、勢いあまって岸辺に背中から倒れこむ。
反射的に張ったサイキックフィールドが、空気の網のように柔らかく二人の体を受け止めた。

腕の中の感触に、彼は戸惑った。なんとも懐かしい、おさまりのよい暖かさ。初めて触れたはずなのに、ここにあって当然という感じさえする。

しかし遠くに巡回する衛士の気配を察して、感覚を追う間もなく彼は身体を起こした。
とりあえず、二人に禁足地にいたことは忘れるように軽い暗示をかけて森から帰す。

何が起こったのかすべては理解できぬままに、アルディアスもすぐその場を後にした。


「大神官さま、禁足地の森に侵入者があったようです」

神殿に帰った彼に、ひとりの衛士が進み出た。

「私は見なかったが。大事ないか」
「はい。荒らされてはおりませんでしたが、岩の上にこれが落ちておりました」

衛士は女物の白い上着を広げてみせた。アルディアスはかすかに目をすがめた。あれはきっと彼女のものだろう。禁足地への侵入は大罪だから、ここにあれば、気配を探って罰則を、と面倒な問題になるに違いない。

「そうか。では、私が預かって気配を追ってみよう。結界には問題ないから、衛士が責められることは何一つない。下がってよろしい」

そう言うと、アルディアスはさりげなくその上着をとりあげた。かえってほっとした表情を浮かべて衛士が去る。
扉が閉められ、部屋に一人になると、アルディアスはその上着をたたんで両手に持った。

何度か会話したことのある端末回線から、ルーテウス伍長の机を特定する。自宅は知らないから職場あてになってしまうが、仕方がない。
両手をふいと持ち上げると、白い上着はリフィアの机の上に届けられた。



休暇を終えて出勤したリフィアは、机の上にたたまれている自分のボレロを見て首をかしげた。
大祭の人混みでなくしたと思っていたのに、なぜここにあるのだろう。

二つ隣の席では、ジェズがアンナと森を歩いたときの話をしていた。

「それで、とっても綺麗な蝶を見たのよ。それがすごく素敵で」
「ええ? アンタ虫全部嫌いって言ってたじゃないの」
「そういえば……でもそうよね? 綺麗だったわよね? リフィア」

話を振られて、リフィアは曖昧にうなずいた。

(違うわ。そうじゃなくてえーと……?
 あれなんだっけ? 誰だっけ? ここまででかかってるのに)

同僚の話に適当に相槌をうちながら考える。

そう、なにか大切なことだった。とても。
軽々しく茶飲み話にしたいようなことじゃない。だからいいような気もするけれど……なんだったかしら。

無意識のうちに、リフィアは自分のハートに手をあてていた。
思い出せないなにかに触れようとするかのように。



























【銀の月のものがたり】 道案内
http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/


【第二部 陽の雫】 目次
http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/


ご感想で、「この二人にはぜひゆっくり進展してほしいです」とかいただいておりますが
この頃って年に一度くらいしか会っていなくて。それも偶然。
端末でたまーに会話はしてるんですが、「ご要望ありますか?」「ありません(にっこり終了)」なので・・・。
気づくと年が変わっているという 爆


ご感想大募集中です~!!
お返事なかなかできなくてごめんなさいですが…
手書きハート


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☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪

12/22 ご先祖様一斉ヒーリング






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最終更新日  2009年12月22日 12時20分29秒
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