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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年02月09日
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木々の葉はすっかり落ちて、日に日に寒くなった。

それほど時間は遅くないはずなのに、すでに空は暗く星明りが見えていた。

「雪か……」

軍部の玄関を後にし、ベージュのトレンチコートに巻いた白い長いマフラーを指先でひきあげて、アルディアスは呟いた。
部屋から窓の外を見たときには星空が見えていたと思ったのに、いつの間にかまだらに曇りだして、ちらちらと白い花が舞っている。
これでは冷えるはずだ。

リフィアと付き合いだしてから、すでに二年めになろうとしている。
最初の年、晩秋の彼の誕生日を知らないうちにその季節が過ぎていたことを知って、彼女はとても残念がっていた。



それに添えて、(まだ慣らしなの)と言いながらくれたのがこの白い手編みのロングマフラーだった。
太い毛糸で中央にざっくりと縄編み模様が入っている。プレゼントのメインはシャツなのよ、と彼女は言っていたけれど、どちらも同じように嬉しくて彼は大事に使っていた。

リフィアと付き合いはじめて、何が変わったといって外からはっきりとわかるのは彼の服装だろう。
軍部でも神殿でも制服があるから、私服を見せる機会そのものが少ないとはいえ、気づく者は気づく。
一番目ざとかったのはさすが副官のニールスで、襲撃事件で紹介する前にすでに説明はしていた。

アルディアスはリフィアのことを隠す気はないし、問われれば普通に肯定しているのだが、喧伝するわけでもないからどうやら未だに色々な噂が飛びかっているらしい。

それは鬱陶しい部分も多いのだが、正式発表するにはまず、互いの親に挨拶に行かなければ。
プロポーズの後からそう思ってはいるものの、ちょうど戦局が慌しくなったこともあり、なかなか実行できず今に至っている。

そういえば、父とはもう何年会っていないのだろう。
嫌っているはずではないのに、ずっと言葉すら交わしていない気がする。
血の繋がる実の親に会いにいくのに気の重さを感じ、そのことが靄のような罪悪感を産んでゆく。


そのとき、ふとリフィアの声が響いた。

(寒いはずだわ)

その声が意外なほど近かったから、アルディアスは歩きながら周囲を見渡した。十字路の街灯の向こうに、うつむき加減に歩く彼女の姿が見える。出先から直帰して、早足で官舎の方向に向かってくれているところらしい。

あの市街戦後の視察の夜以来、内勤や作戦からの帰還で彼が官舎に戻れる日は、リフィアは必ず玄関の灯りをつけたまま待っていてくれるようになった。

残務処理が終わらず真夜中をすぎてしまうようなときもあるから、無理に起きていないで先に寝ていてくれるように伝えてある。


夜道を歩く道すがら見える玄関の灯りは、暗い戦場にともる生命の火のようで。
帰る場所に光が灯っているというそのことに、どれほど心強く励まされているかわからない。

アルディアスが帰れなければ夜が明けるまでつけ放しだから、資源の点から見れば無駄なのだろうが、その暖色の灯りは二人の心を行き来する小さな伝書鳩のようでもあった。


(リフィア)

見つけやすいよう街路灯の明かりの輪の中に立って、彼は白い息を吐きながら心話とともに笑いかけた。
顔をあげた彼女が長身を認め、ショートブーツの踵を鳴らして飛んでくる。

ポケットに入れていた両手を出し、長いマフラーの片側を彼女の首にふわりとかけながら、そういえば感想をまだ伝えていなかったことにアルディアスは気がついた。

(リンの心の呟きが急に響いたから、近くに居るなと分かってそちらを見たら姿がみえたんだよ。マフラーはとても暖かだよ。ありがとう)

(ううん。どういたしまして。アルディがかけてたから、私もあったかいわ)

微笑んでから彼の襟元に目をやり、リフィアは首をかしげた。

(こんな風に使ってくれるなら、少しカジュアルだったかな? トレンチでも似合っているからいいかな? また別に編んだほうがいいかな? どうしよう)

くるくると変わる判定がみんな伝わってきて、アルディアスはそうなんだ? と目尻を和らげた。

「ちょっと早くに出られたのね。夕飯は?」
「もちろん食べてない」
「あっちで時間とれたら食べてていいのよ」

一応リフィアは言った。そうだねと彼は笑うけど、きっと食べてはこないだろうなとも思いながら。

「何にしようかな? 暖かくなるものがいいわね」
「お任せするよ」

(あんまり待たせないで済むの何かな? 早く帰らなきゃ)

腕をからませ寄り添って歩きながら、リフィアの足はちょっぴり速くなったり遅くなったり。
彼がお腹を空かせているだろうし冷えるから早く帰らなきゃと思う一方、暗くても寒くても二人ならいつまででも歩いていたいとも感じて、交差する想いのままに無意識に速度が変わる。

彼女の歩調に合わせて歩きながら、アルディアスは伝わってくる感触がくすぐったいやらありがたいやら、彼女の気持ちが小鳥のように軽やかに飛び回る様子が可愛いやら。

ふたり、とはなんと不思議なのだろう。

自分はずっと一人でいるような気がすると思っていたが、今手の中にあるぬくもりは、以前では想像もできなかったほどに豊かな潤いを与えてくれる。
彼の背を押し前を導いて、抱えた孤独から抜けていいのだよと教えてくれる。
もらっているものと同じほど、彼女にもあげることができているといいのだけれど。

並んで歩くうち、すっかり雪雲が空を覆って星は見えなくなっていた。
ちらちらと舞う粉雪は、二人の肩先に触れたそばから溶けていって道にも積もりそうにない。

早く入りたいようなもったいないような、そんな気持ちになりながら二人は官舎の鍵を開けた。


















<Lifia - End of autumn. Started to snow ->
http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/814358313bf9e0ba8a1a46d54ab260d1






【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次




前話【花色】への皆様のレスポンスのよさにびっくり 笑
他人の恋バナなんて読んでも楽しくないかしらと思ってましたが、皆様お好きなんですね~。よかったw

それに安心して、ってわけじゃないですがほのぼの話です。
先日実際に雪が降ったときに、ふと「そういえば雪が降ったことあったなあ」と思い出して。
このお話のときは積もってないですけど、話の時系列が今じゃないとアップできないので急いで書きましたwww
積もったときの記憶も、たぶん探れば出てくるような感触ですので、いずれ書いてみたいな~と思ってます。


先週の土日は、リアルで箱根合宿wに行って参りまして。
おかげさまでとても楽しかったです。ご一緒してくださった皆様、本当にどうもありがとうございました♪

レポートは皆様が続々あげてくださってますので、終わった頃にご紹介リンク兼ねてちょこっと書けたらいいなあと思っています。
がっつりレポートはね~、私の立場だと怪しさ満載なので 爆
そこは皆様のを楽しんでいただくとよろしいかと☆

私のレポートは…かほりさん@レオン君がいかに強烈なスパコン(すぱるたツアーコンダクター)かを語るとか…w(違


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★2/9 闇の底のヒーリング








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最終更新日  2010年02月09日 17時48分31秒
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