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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年02月22日
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急に日程が決まったにもかかわらず、軍服のアルディアスを連れたリフィアが実家のドアをくぐると、集まっていた親戚達にわっと取り囲まれた。

「リーファ、神殿に入るのですって?」
「違う、結婚するのでしょ?」
「准将ってこの方? テレビで拝見したことある通りね~」

「はじめまして、准将。リフィアの叔父です」
「義理の兄です」
「従兄弟です」

「うわあすげえ、ほんものの准将?」
「もちろん本物だよ、決まってるだろ。テレビで見たじゃん」


次々に握手を求められながら、アルディアスは誰が誰と覚えようとしたが、十人めを過ぎたところでその努力を諦めた。
さすが商人の家系だからか、皆賑やかで話好きで、目の色は違っても奥の明るさがリフィアと共通している。

ひとわたり慌しい挨拶を終え、ソファに座るといくつもの視線が控えめにしかしまじまじと彼の姿を見た。

あえて軍服で来たのは、准将その人であるととりあえず実証するためだった。肩についている階級章を見れば、ヴェールの人間は誰でも区別がつく。
威圧感を与えてしまうのではないかとアルディアスは心配したのだが、元々軍人には見えない風貌でもあり、それは問題ないだろうとリフィアは思ったのだ。

アルディアスが正しく准将であり、そして大神官を兼務していることがどうにか頭におさまると、人々の関心はその先にうつった。

「その……大祭のお役目など、うちの娘で本当に大丈夫なんでしょうか。この通り、サイキック能力などほとんどない家系でして」

大神殿からの通達を前に、また封蝋を指でなぞりながら父親が言う。
紅茶のカップを置いて、銀髪の男は微笑んだ。

「大丈夫です。神事にサイキックが必要でないとは申しませんが、そこは私がフォローさせていただきますし……。伴侶役としてご両親のご承諾がいただければ、これから訓練もさせていただきますから」
「はあ……」


まあそうでしょうね、とリフィアは思った。彼女のサイキックはアルディアスの能力と相乗したときだけだから、そのあたりどうしてと聞かれても彼女自身にも答えられない。
困ったような顔で、明るい緑の瞳をした母親が呟く。

「この子が神殿に入ったほうがいいなんて、誰も思いつかなかったことよ」
「誰もって……母さん、ひどいわ」
「だってそうでしょう」


すらりとした長身、銀の髪。肩にある准将の印。
今まで三人の子を結婚させてきたが、こうまで驚いたことはない。

「准将……本当にこの子で大丈夫なんですの? その、神事でよそ様にご迷惑をかけることになっては」
「大丈夫です。申し上げましたように、それは私が保証しますから」

辛抱強くアルディアスは微笑んでみせた。これでたぶん、もう五回は同じことを聞かれている。
単刀直入にお嬢さんをいただけますかと言う用意もあったのだが、両親がうちの娘で大丈夫かと先に何度も聞いてくるので、ついタイミングを逃してしまった。

「これ、イアン!」

お互いになんとなく沈黙してしまったとき、十歳くらいの少年が部屋に走りこんできた。
こげ茶の髪のひょろっとした子で、面差しがなんとなくリフィアの兄弟に似ている。
ドアの後ろで母親と思しき女性が必死に手で呼んでいるが、その子は臆せずにアルディアスのそばまでやってきた。

「ねえ、准将」
「なんだい?」

ソファに寄りかかるようにして声をかけてきた少年に、アルディアスは微笑んだ。
従兄弟の子のイアンよ、と隣でリフィアが教えてくれる。イアンは恥ずかしそうにもじもじした後、意を決したように上目遣いにこちらを見上げて言った。

「その……剣を教えてもらえませんか。僕、准将に憧れてて」

アルディアスはリフィアを見た。少年の希望にすぐに答えるわけにもいかない。それから両親のほうもそっと見回してみると、母親が言った。

「すみません。これ、イアンったら……。でもこの子は、本当に准将に憧れているんですよ。テレビを見ては私達にも話してくれて」
「アルディ、それなら、迷惑でなければちょっと教えてあげたら?」
「私は構わないけれど……」

父親のほうを見やると、どうぞというように複雑な笑顔で手を振っている。どうやらちょうど時間が必要な局面のようだ。
それでは失礼して、とアルディアスは立ち上がって一礼し、少年に笑いかけてその手をとった。
イアンが顔を輝かせて憧れの人を庭にひっぱってゆく。

アルディアスの姿が見えなくなると、皆それぞれにもう一度飲み物を口にした。物見高く集まってきていた親戚はほとんどがすでに帰り、残っているのは親しい家族だけだ。

「……要するに嫁さんに欲しいっておっしゃってるんだよな……?」

複雑な顔をしたまま父親が言った。
的を射ているのかいきなり飛躍しているのか……いや、プロポーズもされたのだし、そういう話で間違っていないのだが、神殿からわかりにくい遠まわしな表現の通達が先に来てしまったからややこしくなったのだ。

「そうなの、リフィア?」

母親の声に、リフィアは両親をしっかりと見てこくりとうなずいた。
たしかにストレートな言い回しでお嬢さんをくださいと言ったわけではないが、隣に座っていたリフィアは同じ意味のことをアルディアスが繰り返していたのを知っている。

何度も言わせておいてこのていたらく、よっぽど、大神殿の神事に娘がかかわるのが信じられないのだろう。
完全に理解の範疇を超えていて、どうしてもピンボケしてしまうらしい。
だが、単純に婿としてどうかという話なら、人柄も悪くなさそうであるし、大歓迎であることに間違いはなかった。


顔を上気させて喜ぶイアンの家族と別れてアルディアスが部屋に戻ると、父親はおもむろにソファから立ち上がり、頭を下げた。

「ふつつかな娘ですが、よろしくお願いします」
「お願い申し上げるのはこちらのほうです……どうぞお顔をお上げください、お父上」

脱いだ軍服の上着を片手に持ったまま駆け寄ると、父親は顔をあげてにっこりと笑った。大神官や准将という肩書きはともかくとして、三女の婿ならば新しい息子になるのだ。

「あんた、軍服を脱いでいる方がいいな」
「ありがとうございます」

うちとけてくれた父親に、アルディアスも人懐こい微笑みを返す。

「さあさあ。じゃあ、夕飯食べてゆくでしょう? 今日はね、皆集まるから元々大人数で予定していたし、この後の予定がないなら二人とも一緒に食べてゆきなさい」

母親が勢いよくソファから立ち上がり、明るく笑った。その笑顔は驚くほど娘とそっくりだ。
リフィアの切り替えの早さも、なるほど両親譲りらしいとアルディアスは思う。

女性たちが賑やかに台所で作ってくれた美味しそうな料理の数々を前に、アルディアスは酒盃を手にして舅たちに取り囲まれていた。
リフィアの父親と、長姉の婿、兄、次姉の婿、そして弟。そうこうするうちに学生の妹も帰ってくる。
義理の両親に加えて一気に三人ずつの兄と姉、一人ずつの弟と妹ができることになったアルディアスは、慣れないながらも嬉しそうに団欒に混じっていた。

「リフィアは、小さいころからお転婆でな。あいつが嫁にいける日が来るとはなあ」

すでに赤ら顔になった父親が言えば、兄がまったくだと相槌を打つ。料理を終えて混ざってきた長姉と次姉が、ほんとほんとと顔を見合わせた。

「なにしろお猿さんみたいだったもの。あちこち飛び回って、ちっとも女の子らしくなくて」
「スカート履いてなきゃ間違えられてたよな」
「あら、小さい頃はよく弟と間違われてたのよ」
「ちょっと、姉さま!」

リフィアが顔を真っ赤にする横で、アルディアスは押さえきれずくすくすと笑っている。思わずふくれてその腿をつねる真似をすると、よけいに吹き出された。

「もう、ひどいわ。アルディまで」
「ごめんごめん。でも想像するとつい……楽しい素敵な子供時代だったんだね」

よかったね、とまだ笑いを含んだ顔で心からアルディアスは言った。朗らかな雰囲気の中、彼女が家族に愛されて愛されて育ってきたことがよくわかる。
その一員に迎え入れてもらえるというのは、胸の中にひとつ泉が湧き出すような、とても不思議で暖かな感触だった。




















【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次




リフィアさんの実家に挨拶編 笑
いやいや、もみくちゃにされて誰が誰やらわかりませんでした…^^;

それにしても、222の日に33話めって、やっぱり意味があるのかな? 笑






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★2/23 闇の底のヒーリング





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最終更新日  2010年02月22日 18時20分40秒
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