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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年09月29日
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披露宴の日の夜。

今日までハウスキーピングが入るようにしておいたから、家は埃もなく綺麗な状態だ。

潔斎に入る前にまとめておいたリフィアの荷物も運び込まれ、ホールの片隅に小さなダンボールの山を形成している。
とはいえ婚約して訓練が始まってからの四ヶ月ほどは半分同居状態だったから、特に今すぐ荷解きが必要なものはなかった。

「何か先に動かしておきたいものはある? 寝室に鏡台とか?」

ダンボールの手前の壁際に置かれている小ぶりの家具に目をとめてアルディアスが言う。
広い寝室の一角に、すでにそれが据えられる場所は用意してあった。女性ならきっと、なるべく早く使いたいものだろう。

「そうね、でも、とりあえずお茶でも淹れましょう」


茶葉を蒸らしている間にはゆけるから、とアルディアスは鏡台を持ち上げた。もしかしたらサイキックも使っているのかもしれないが、けして軽くはないはずのものをあっという間に移動させるのを見て、やはり男性って違うわとリフィアは思った。

リビングでいい香りの湯気を囲むと、ようやく身体の力が抜けてきた。
神殿側では、明日この官舎に帰るように予定を組んでくれていたのだが、なにより早く帰りたい気持ちになって今夜に早めたのだ。

そうすれば明日は丸一日ゆっくりできる。
リフィアも神殿は嫌いではないけれど、本職の巫女ではないし気が休まるかというとそうもいかないのが現状だ。

やはり、家がいちばん、なのだった。



リフィアは結婚祝いに親戚が贈ってくれた大きなベッドに腰かけた。先ほど入れてもらった化粧台の上にさっそく置いた小箱に目をやり、心配げに口をひらく。
披露宴の間、ずっと気になっていたことだ。

「お義父さまがいらしていたけれど……あなた、ほとんど顔を合わせなかったでしょう。私の両親とは、宿泊を手配したりしていたし、話されていたけれど」

「…………」

先に横になっていたアルディアスは、しばらく無言で天井を見上げ、それからその長身を返した。組んだ腕に顎をのせ、ぽつりと呟く。


「アルディ……」

「……わからないんだ……」

銀髪に半ば隠れたその瞳は、遠い海に投げる言葉を捜して、どこも見てはいないのかもしれない。
家族なんだから話題なんかなんでもいいじゃない、そう気軽に言えないだけの長い時間が、父と子の間に溝を掘ってしまっていた。

息子の結婚式に来てくれるのだから、会えばきっとおめでとうと言われるのだろう。だからそれには礼を言って、それから……それから?



自分がほんとうに伝えたい言葉は、謝罪なのだろうと思う。
しかしそれを切り出すには、積み重ねられた四半世紀はあまりにも重く、なのに当時の謝罪を拒絶された記憶は古びることがなくて。

そしてなにより、父がどんなに大事なものを喪ってしまったのか、自分も結婚した今、わかりすぎるほどわかるから。

謝って許されるものではない、そう思う。
謝罪の言葉を述べて許して欲しいと願うのは、こちらのエゴなのだと思う。

もし自分が最愛の伴侶と娘を同時に殺されてしまったなら、どうしてその相手を許すことができるだろう。
しかもその犯人が息子だったと聞かされたとき、父の内心はいかばかりだったろう。

父には喪った半身の分、犯人を憎み続ける権利がある。

そしてその犯人である自分は。……一生の間、責を負い続ける義務がある。

父を愛しているのかそうではないのかも、もうわからないのだ。
長年の間放っておかれた寂しさは消えることはなく、けれど父の痛みもよくわかる。
あのとき辛かったのだということと、相手もまた辛かったし辛いのだということと、どんなに言葉を連ねても許される罪ではないと思うことと、老いた父を案ずる気持ちと。

父を憎んでいるわけではないはずなのだが、思いの激流は強く渦を巻きすぎて、言葉にして掬うことができない。

黙り込んでしまった夫を見やり、リフィアは指をのばしてそっとその銀髪をかきあげた。

「……今はいいわ。アルディアス。気付かない振りをしていたのでないなら。
わからない答えはこれから探しましょう。私たち、家族だもの」

「ああ……そうだね」

ゆっくりと隣の人をふりあおぎ、アルディアスはうなずいた。
家族という、触れ慣れないものの感触に緊張している自分がいる。ずっと欲しかったものを手にして、幸せに満たされている自分がいる。

波間にゆれる小舟のように凍った海に竿させば、答えはいつか、わかるのだろうか。

激流に揉まれるように生きながら、いつかふっと星空を見上げたそのときに。
同じようでそうではないその景色に、いつのまにか螺旋階段をぐるりめぐって一段上にいるのだと、気づくときがくるのだろうか。

「……幸せになっていいのよ、アルディ」

また考えに沈んでしまった夫の隣へ、リフィアは鏡台の上の小さな箱を持ってもぐりこんだ。
身体をよせて開いた小箱には、真珠のネックレスとイヤリングが入っている。

「今日つけていたこれね。あなたのお母さまのものだったの、知っていた?」
「知っていたよ。……よく似合っていた。とても」

夫の声にすこし微笑み、リフィアは指先でそっとネックレスを指した。

「パールってね、気難しいのよ。きちんとお手入れしないと、すぐに変質してしまうの。これは時間が経っているのに、とても艶やかで綺麗でしょう。
お義母様がいなくなられた後も、どなたかがいつも丁寧にお手入れしていたんだと思うわ」
「………」

アルディアスの視線の先で、粒のそろった真珠はやわらかな虹色をまとって輝いている。リフィアは愛おしそうにそのふちを撫でた。

「そうやって大事に大事にしてきたものを、あなたと結婚する私にくださったのよ。たとえ会話が続かなくても、祝福してくださってるのよ」

だからあなた、幸せになっていいのよ。
自分にはそんな資格はないなんて思わずに。

そう伝えてくれる若草の瞳は、わずかに潤んでいるように見える。

(リフィアン……)

アルディアスは腕を伸ばすと、彼の女神を思い切り抱きしめた。
























【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



はい、まがうかたなき新婚さんです。 ←

で、この後が一話まだ書けてないんですよね~~
早く書けますように(汗


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最終更新日  2010年09月29日 21時29分49秒
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