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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年10月23日
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オーディンが手にしたバンジョー風の楽器で明るい和音を奏でると、すぐに誰かのフィドルやアコーディオンが加わり、賑やかな口笛と手拍子、ダンスが始まった。


踊りの輪に新郎新婦も巻き込めば、白い礼服の長身にリードされてくるりと翻るドレスの裾が初々しい。
あちこちで笑い声がはじけ、乾杯が何度も行われた。

「アルディ、あなたの部隊って、楽しい方が多いのね」

二曲踊って席に戻り、上気した顔で飲み物に手を伸ばしながらリフィアが微笑んだ。

「そうだね。おかげさまでいい友人ばかりだよ」

恵まれていると思うよ、とアルディアスが笑う。心底からそう思っていたし、それはたぶん、真実だった。

准将となって部隊を預かり三年、はじめは引き抜かれ放題で穴だらけだった人員配置に、ひそかにため息が絶えなかった。


実績が出てくると、今度はまた引き抜きの話が引きも切らなくなったが、自分から部隊を出て行こうとする者はほとんどいない。
むしろ生還率の高さから兵士達はアルディアス隊に所属することを希望し、時には断って調整しなくてはならないほどだった。

そして新しい隊員が増えても、他の部隊では習慣のようになっている新人虐めというものは彼の隊にはなかった。
指揮官たるアルディアスが弱いもの虐めを嫌っていたからでもあるし、そのような陰湿な空気自体が流れていなかったからでもある。

実績の及ばない他部隊の人間達からは、ピクニック隊だのお祭り騒ぎだのと揶揄される彼の部隊には、軍隊とは思えないような明るくて大らかな雰囲気が満ちていた。

オーディンが誰に対しても、もちろん指揮官のアルディアスに対してさえ対等な言葉遣いをすることを誰も咎めなかったし、軍服をある程度着崩している者も多かったが、注意されることもない。

規律第一の軍隊では異色というよりもはや奇跡のようなものだったが、それでも、いやそれだからなのか隊員達の結束は強く、攻めに果敢、守りに柔軟で強固であり、彼らの風潮をいまいましく見やる将官達も、実績を見れば嫌味以上のことを言えずにいた。

自由を保障するためには、常にある程度の戦果をたたき出して実績を上げておかねばならない。
アルディアス隊はそれをよくこなし、指揮官の鬼神の噂も含めて、徐々に軍内から一目置かれる存在になっていた。


ダンスに興じた人々の息が切れてきた頃、三々五々飲み物に手が伸ばされ始めたのを見て、オーディンは出窓で楽器を抱えたまま、セラフィトに向かって少し手をあげた。

「ようっセリー殿、ほら、あれ」


心得たセラフィトが、間仕切りの奥からラップハープを取り出した。アルディアスが歌えることを、部隊に長くいる者は知っているのだ。
目をしばたたく僚友にハープを押しつけ、セラフィトがリクエストをつのる。

「ほれ、エル・フィンも歌ったことだしお前もなんか歌え。調弦は済んでる」
「用意がいいね、セリー」
「あたぼうよ。お前が聖歌隊でよくソロを歌ってたとか、音域はテノールからバリトンまでいけるとか、裏情報はみんな流しておいてやったからな」


セラフィトとは十七歳で入った士官学校からの仲だから、つきあいはもう十三年になる。
学校の長期休暇には、何度か地方にあるセラフィトの家に泊めてもらったこともあった。
セラフィトがアルディアスのことをオルダスと呼ぶのはその頃からで、早くに亡くなった彼の大好きな叔父が、同じ綴りでそう読んでいたということだ。
そう呼んでもいいかとおずおず聞いたセラフィトに、当時銀髪の青年は笑って快諾したのだった。

「ガキの頃、俺の地元の祭りに飛び入り参加したこともあったよな」

同じことを思い出していたらしいセラフィトが、懐かしげに目を細めた。

「あったね。こっそり隠れていたのに、つい楽しくて思い切り歌ってしまって、ばれてしまったんだっけ」
「そうそう、帽子に銀髪を押し込んでな。思えば、次代の大神官と決まってる人間の顔なんだから、いくら田舎の神官でも見りゃわかるよなあ」
「そう? 銀髪も青い瞳もいくらでもいると思うけど」
「あーはいはい。そう思ってるのはてめえだけだよ」

相変わらず天然だよな、とセラフィトは腕を組んで笑う。
おそらくこの親友は、軍のパーティになぜ自分が同僚達によって連れまわされたのか、いまだによくわかってはいないのだろう。

無自覚にも程があるというものだが、それでいてよくこんなに良い嫁さんを捕まえたもんだ。
優しい鳶色の瞳でリフィアに微笑むと、セラフィトは改めて曲名をいくつか告げ、友人を促した。

「ま、リクエストは参考程度でいいけどな」
「そうなのかい?」
「今日はお前さんのめでたい日だからな、好きな曲があればそれにすればいいさ。俺達はお前の歌ならなんだっていい」
「ありがとう」

ゆるやかなテンポの曲を選び、アルディアスはハープを爪弾いて歌いだした。
エル・フィンの時とはまた違う光がゆっくりと満ちるように感じられて、水を打ったように会場が静かになる。

やわらかく伸びる声。
歌うときのアルディアスは、軍人よりも神官という肩書きのほうがしっくりくるようだ。

古く部隊にいる者たちは懐かしそうな顔で、新しく来た者たちは少し驚いた表情で、それぞれ歌に聞き入っている。
足音を忍ばせてセラフィトがオーディンのいる窓際に近寄り、心話の使えない彼にそっと囁いた。
銀髪の上司ほどの能力があればサポートして心話することも可能だが、セラフィトにはそれほどのサイキックはない。

「やっぱりあいつの歌は、こういうとこで聴いたほうがいいよな」
「ああ、そうだな。……そうだな」
「本当に」

いつのまにか同じく窓際に来ていたニールスが同感とうなずく。
三人はこの部隊でもすでに古株といってよく、戦場の野営での慰みにアルディアスが歌うことがあるのを知っているのだった。

初めはいつだったろう。
もう十年近く前、オーディンより六歳ほど下のニールスが、まだ軍に入ったばかりのころだった。最初は皆の輪の中ではなく、野営地でもう消灯した後に。

歩哨だったのか、おそらく他の者達を起してはまずいと思ったのだろう。人の眠る自然の洞窟やテントからかなり離れたところで、彼は一人祈るように歌っていた。
銀髪の青年はまだ若く、二十代そこそこといったところ。士官学校を卒業して尉官となり、敵と直接刃を交わすだけではなく、味方に命令を下す重さを実感し始めたばかりだった。

満天の星明かりに照らされて、歌は風にのってかすかに野営のテントに届く。

戦い続ける人間達の汚さを見おろす星々の下、あのときも歌声は柔らかく響いた。
それは喪われた命への祈りのようでもあり、来るべき世界への憧憬のようでもあった。
戦場を走る者達へのいたわりであり、戦士達の帰還を待つ母や恋人への手紙のようだった。

その日生まれて初めて実戦をこなしたニールスは、その歌声に我慢できなくなり、横になった身体に毛布を頭から被って嗚咽を殺した。

























【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次


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最終更新日  2010年10月23日 15時08分31秒
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