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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2011年01月11日
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月の森は特殊な場だ。


トールが最初に戻ったのは月の森だった。
それからかつて住んでいたルキアへ移動したが、ここもヒーリングに満ちた場である。癒し手であった過去生が多いためか、双子やグラディウス達の暮らすブルーヤロウをはじめ、手持ちの浮島はどれも波動の安定した、療養に向いた場所となっている。

だから逆に、初めてステーションなどの外界に出るときには注意しなくてはならなかった。
いきなり雑多な気に触れると疲れるし、下手をすると整いきっていない魂の一面が分解してしまうこともあるからだ。

トールは防御に気を配りつつ、なつかしい店に足を向けた。着いたのはほぼデセルと一緒で、マスターがいつに変わらぬ穏やかな笑顔で迎えてくれる。

「…ようございましたね」

客達がカウンターに落ち着くと、マスターは静かに微笑みかけた。いつも通りの何も変わらぬ風情だが、すべてをよくわかっている、そんな感じがする。


「ボトルはこれだよ」

デセルがキープしていたのは、9年もののラフロイグだ。
樽ごとの個性を大切にした限定販売品は、乾杯して口をつけると、スモーキーな味わいの奥に春の訪れを感じさせるような甘さが印象的だった。
塩茹でした豆を肴に、とりとめもなく話をする。

「そういえば、リンクスに『君はカラーが違うんだね?』と聞いたことがあったね」

ふと思い出したようにトールが言った。翼の夢に潜ってイグニスの彼の前に現れた彼女は、最初瞳とオーラの色が違ったのだ。なつかしい若草の瞳ではなかったから、誰か気づくまでに時間がかかった。

「色を変えるくらいなんでもないわ♪」

答えたのは、隣にいたデセルと一瞬で入れ替わったリンクス。ブルーアンバーの長い髪を揺らして笑う向こうに、もう一人のデセルが笑っている。
思わず目をしばたたくトールの手からグラスを奪って一口飲むと、リンクスはぱちんと片目をつぶった。その仕草はやはりデセルと同じだ。

「なぁに? 貴方だってマリエと同じことでしょ、トール」
「うん、まあ、そうなんだけど」


仕事、手伝うわよん♪ 言葉とともに頬に軽い感触を残したかと思うと、また瞬きの間にデセル一人に戻る。

「あいつとならこんなことも出来る。もう一人の俺さ」

グラスをかかげてデセルはにやりと笑ってみせたのだったが、トールは唇に拳を当て、くっくっとおかしそうに肩をふるわせていた。

「なんだよ?」
「いや……その…」



「……可愛らしいなと、思ってさ」

彼女の語尾を明るく上げる癖や、薬草を調合する背中になつかれたり、寝転んでの読書中に座られていたイグニスの感触を思い出して、おさまらないくすくす笑いを続けながら答えた。

彼女は彼女であって、全体的に見ると補い合う関係にあっても、デセルをフォローする目的で現れたわけではない。
ただそこに在るから居る。つまりそれは、リンクスの持つ屈託なさや無邪気さを、デセルを構成する魂は元々持っているということだ。

可能性はいくらでもある。それぞれの魂の中には、必ず「奇跡」が含まれていることをトールは知っている。
種々の面を満開の花のように現してゆく魂の、なんと愛おしいことだろうか。

「トールとマリエだって同じだろ。まあ……うちの場合、あいつが本当に解析を手伝えるのかは甚だ謎だけどな」
「イグニスの仕事場では、ラベンダーの香りでよくぐっすりお休みになっていたようだしね?」
「安心しきってるからなあ」

まったくしょうのない奴、と肩をすくめて酒盃を干す人も同じ人ではあるのだが。同じ魂の中でも同じ面の男性性と女性性、それでも顕在する個性が違い、またそれが今の時点では自然なのだから面白いものだ。

話はそれから、人為グリッドのほうに移った。
元々はトールが責任者だったが、世界樹に還る前後にあわせて今はマリエが指揮を執っている。

研究者のトールではグリッドの光を繋いでゆく巫女質が足りないし、巫女のマリアでは技術の話が半分ほどしかわからない。どうしようかと困っていたときに、二人を合わせた新しい人格として出てきたのがマリエだった。

これもまた不思議といえば不思議な流れだが、現実それで破綻なくすべてが回っていることを考えると、人間の思惑を超えて動く魂というものの奇跡的なしなやかさを思わずにはいられない。

公私共にデセルをパートナーとして動く彼女は、じつに生き生きと楽しそうにグリッド司令部の指揮を執っているし、柔軟なその姿勢はリンクスともどこか似ている。

「つまり、女性のほうがこういうことにかけては柔らかく強い、ということなのかな。デセルはストイックだからね」

リンクスの話題で「だからと言って彼女に苦手を代弁させようとは思ってないよ。自分が言ってこそ、行ってこそ、成る。そういうもんだろ?」と言いきった親友に、銀髪の男は杯をかかげた。

「よく言うよ。トールに言われたくないね。……と、そろそろ時間だ」

マスターの目配せを受けたデセルは、トールの手から飲みかけのグラスを取り上げた。普段は二人でボトルを一本空けて仕舞いにしていたのだが、さすがに今日は友人の体調が心配だ。
時間の流れの違うバーで、滞在の目安を教えてくれるように彼はマスターに頼んでおいたのだった。

減りの遅かった琥珀色の液体をぐっと飲み干し、空のショットグラスをカウンターに戻すと、デセルは立ち上がった。

「じゃあ、引き上げようか」

過保護だねえ、と笑いながらスツールを降りた親友の肩を抱くように続ける。

「当たり前だ。これで君に何かあったら、俺が四方八方から首を絞められる」

どれだけ心配しているか。冗談に紛らわす若草の瞳の底に、喪ったときの悲しみを抱き続ける真剣さがある。
応えるべき言葉を見つけられずに、トールはしばし磨きこまれた飴色のカウンターを見つめた。それからベニトアイトの瞳をあげて友を見ると、その眼にバーの柔らかな照明が反射してきらめく。

青い眼は、以前よりずっと深い色になったとデセルは思う。泣くことも忘れ果てるほど激しい経験を越えてきて、今、海の瞳は潤うことをおぼえただろうか。

「今日はいい夜だったよ……ごちそうさま」
「ああ。また来よう」
「お待ちしております」

マスターの静かな笑顔と会釈をうけて、彼らは店を後にした。



















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【銀の月のものがたり】 道案内

【銀の月の物語 第一部】

【外伝 目次】



おかげさまで、無事バーには着けたようでございますw

本編の更新が滞ってて申し訳ないです~(汗
なかなか書けないので、なんかキーワードが足りないのかなあ、とmixiボイスとツイッターに呟きましたら、たくさんの方がレスを付けてくださいまして。

その結果、

「専門書を参考に塩胡椒少々、ガラムマサラ20g、焦げやすいので忘れずにひっくり返し、蒸らした後に蜥蜴のしっぽ、ジャノヒゲの実を加えて卵でとじてマヨネーズをプラス。主菜はサイコロステーキ、但し時期がこないと作れない。」

ということになりましたwwwww
皆様ノリが良くて大好きですよもうwwwww

というわけで蜥蜴の尻尾とジャノヒゲの実(ってなんだろ?)を探しにちょっと旅に出てきます! (マテ


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最終更新日  2011年01月11日 18時42分01秒
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