竜胆輪道 (りんどうりんどう)

竜胆輪道 (りんどうりんどう)

July 14, 2009
XML
カテゴリ:
これは間違いなく名作!!

翻訳され、世界中で読まれているのが納得の読み応え


趣味の昆虫採集のために砂丘に来た男(教師)が、一夜の宿を集落にとると、蟻地獄のような砂に囲まれたその家から出られなく(出してもらえなく)なり、家の主である女との共同生活が始まる・・


難解なものを想像していたので、前半はちょっと予想外。主人公のうろたえる様が滑稽で、女や村人との噛み合わなさは、落語というより最近のコントを思いだしました。

人が行方不明になれば世間は放っておかないはずだ。自分はすぐに救出されると思ってはいるが・・

中盤のなんとか策を施し逃げ出そうと試みる様は、ミステリー的な面白さ。

『こんな、砂掻きなんか、訓練すれば、猿にだって出来ることじゃないか・・ぼくには、もっと、ましなことが出来るはずだ・・人間には、自分のもっている能力を、じゅうぶんに役立てる義務があるはずだ・・』

インテリの無力さ。現代人の拠り所のなさ。社会の中で自身を規定しているものの頼りなさ。
ありきたりな言い方ですが、現代の空虚さが炙り出されます。




自由になれたら?

外の世界で何をする?

外の世界はそんなに素晴らしい?

人間の存在意義とは?


読みながら考えざるを得ません。

かといって土着賛歌などではなく、きれいごとを取り除いた人間の姿が描かれています。

この場面設定だからこそだと思うので、面白い着想がこの物語を成り立たせています。


『そう・・十何年か前の、あの廃墟の時代には、誰もがこぞって、歩かないですむ自由を求めて狂奔したものだった。それでは、いま、はたして歩かないですむ自由に食傷したと言いきれるかどうか?現に、おまえだって、そんな幻想相手の鬼ごっこに疲れはてたばかりに』

この文章は、発表された昭和37年という時代では、今よりもっと現実感を持って読まれたのでしょう。


暑さ、喉の渇き、全身が砂にまとわりつかれる不快感、砂に足を取られ思うように歩を進められないいらだち・・、暑くなってきたこの時期に読んだからこそかもしれませんが、身体に疑似体験を鮮烈に味わわせる描写。

映画好きなので本を読むときは、もし自分が映画監督ならとよく夢想するのですが、家の中でも降ってくる砂を避けるために食事をする男に女が傘を差しかける場面などとても面白い。







身体の奥底にここまで響いてきた小説はなかなかありません。
しかし、読後感は思い沈むばかりというわけでもないのは、(普通にそこだけを読めば)ハッピーエンドとも言えなくないからでしょうか。




読んでいて思い浮かんだのが、Talking Heads「Once in a Lifetime」





人気blogランキング「自転車カテゴリー」へ


本日の練習
朝練1時間半40km

ダモクレス



帰り道の短い登りをある程度のペースで三本

二本目は ダンシング

左四頭筋と右 腸脛靭帯 アイシング

今日も カヴェンディッシュ 強い!!





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  July 15, 2009 12:35:41 AM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

say-zz

say-zz

Comments

say-zz @ Re:カルーゾ男だ!! ジロ第二十ステージ(05/30) ビルバオ最後の登りまで引いて凄かったで…
JAJA♪ @ Re:カルーゾ男だ!! ジロ第二十ステージ(05/30) とにかくビルバオ、今日は誰がなんと言お…
say-zz @ Re:未舗装で総合変動 ジロ第十一ステージ(05/20) 山とTT以外に差がつくのは強風が吹いた時…
JAJA♪ @ Re:未舗装で総合変動 ジロ第十一ステージ(05/20) グランツールに未舗装路、流行るんですか…
坂東太郎9422 @ Re:ノーベル賞 「株式会社Caloria代表取締役社長 管理栄…

Archives

August , 2025
July , 2025

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: