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2020年01月17日
🌸KoALOHA コンサートウクレレ ネック折れ
(2)
カテゴリ:
ギターリぺアー
◆今回のご依頼は、KoALOHA コンサートウクレレ ネック折れリペアです
ウクレレオーナー様は、W様です。
90年代の製造モデルで、
KoALOHA が本格的にウクレレ製造に乗り出した
時期のモデルです。
過去に同型のモデルのリペアをさせて頂きましたが、内部剛性よりも
音質向上を主眼に製造されたウクレレで、弾き終わったら弦を緩める
事を徹底しなければボディの変形は避けられませんので、取扱いは
充分に注意して下さい。
◆画像から確認して行きます
●この画像ですと何処にも問題は無い様に見えます
●サウンドホールの形がオシャレです
●ボディ全体の
オイルフィニュッシが抜け掛かってますので,リフィニッシュが必要です
●フィンガーボードのオイル分も抜けてます
◆メインのリペア箇所です
●ネックジョイント部でネックが外れてます。ネックの上から力が掛かって
折れたのだと思いますが、工房に持ち帰って内部の調査をしましたが
他には重大なダメージは認められませんでした。
不幸中の幸いでネックのセットは比較的簡単ですが、欠けた部分の修復は
慎重に材と工法を考え無ければ成りません
●ネックヒールは綺麗に外れてます、スチームを使って外した様な感じです
接着剤を少量しか使って無かった様に見えます。残った接着剤を取り除こうと
アルコールを塗りましたが、殆ど浮いて来ませんでした
◆オイルフィニュッシの抜け
●バック側はある程度残ってます
●トップ側は殆ど残ってません。高温多湿な日本ではこの状態は良く有りません
全体をリフィニッシュします
◆ネックセットの方法の検討して行きます
●セットして軽く押さえますと1弦側は殆どピッタリ密着しますが、4弦側は欠損して
破片も残って無く、このまま接着しても仕上がりが美しく有りません
●欠損してる部分をマホガニーで修復します。マホ特有のブツブツが無い部分を使って
目立ち難い様にします
●フィンガーボードとマホ材に専用オイルを塗って目立た無いかテストします
●欠けた形と同じ形状にマホ材を切出します
●切り出したマホ材はブツブツの無い箇所でストレートな木目ですから
良く見ると判るレベルで仕上がる予定です。
◆折れてから10年近く経過してるとお聞きしてますが、折れ方が良かった(?)のか
接合箇所の材の乾燥による極端な収縮も無く、素直に接着出来るのは幸いです
◆リペアを開始して行きます
●シュミレーション通りにクランプを掛けてネックを張り戻して行きます
●3方向で予定外の隙間が開かない様にクランプを掛けます
●2方向でクランプを掛ける時は、手順と締付トルクに注意します
このまま一晩置いて接着を待ちます
◆クランプを外して正確に接着されている事を確認しましたので次の工程に移ります
●欠損箇所の修復です。予め削り出しておいたマホガニー材を欠損箇所に接着します
クランプのトルクが掛かる様に椹木を固定します
●割損箇所の修復後です。無塗装ですが殆ど判らないと思います。
◆更にタイトボンドの完全硬化強度が出るまで数日間はリペアはお休みです。
時間を空ける時は空ける!がリペアの基本的な鉄則です。
◆今後の予定は、オイルフィニュッシを施してから、トップ&バック&ネック裏には
極薄でラッカーを吹いて磨いてハード面のリペアは完了です
セッテイングの微調整して完了となりますので、もう少しお待ち下さい。
◆ネックの接着強度も充分出てますので、トップのオイルフィニュッシへと思いきや
トップの一部が剥離してます。ガラスの靴・ウクレレKoALOHAらしい所です。
お渡しする前に症状が出て良かった!と安心してる場合では有りません
●他に剥離しそうな箇所が無いか確認します
●タイトボンドを流し込んで、ちゃちゃっと接着します
●スプールクランプを掛けて一晩放置すれば完了です。
スプールクランプを使ってる時が一番、ギターリペアしてるんだなって感じます
●トップの剥離も簡単に接着出来ましたので、全体をオイルフィニュッシを施して行きます
特に薄く成ってました、サウンドホール下には軽くペーパーを掛けて馴染ませます。
◆ラッカー吹きは中止する事にしました。
オイルが予想よりも馴染んでくれてまして、ラッカーを吹く事は得策では無いと
判断しました。一般的にラッカー仕上げは鳴る!と言われてます、事実分厚い
ウレタン仕上げに比べると鳴る事は事実ですが、ラッカー仕上げのボディの
扱いは【一言でいうと~面倒くさい!】です。収納するケース、ギターハンガー
経年でひび割れする等でとても神経を使います。
ラッカーに含まれてるシンナー成分は永久に消失する事が無く、ゴム【ギターハンガー
やギタースタンド】と密着しますとシンナーが密着してるゴムを溶かしてデレデレに
なってしまいます。
事実ラッカー対応のギタースタンドの取説には、癒着する場合もあるので注意!
と意味不明の注意書きが書いて有ります。何のためのラッカー対応か判りませんね
◆オイルフィニュッシ後は24時間以上時間を空ける必要が有ります、完全に馴染んで
から、弦を張り戻してセッティングして素晴らしいウクレレに戻って頂きます。
KoALOHA のコンサートタイプの鳴りは半端では有りません。
◆ハードウェアーを戻して弦を張ります
●オイルフィニュッシが馴染んで生まれ変わった感がします。更に日数が経過しますと
良い感じになります
●弦高が・・・セッティング前で取敢えず弦を張っただけです
●ネックが付いて弦が張られると、久しぶりにウクレレに帰って来た感じです
これからセッティングをしてリペア完了となりますので、もう少しお待ち下さい
◆参考画像です
数年前に同型のKoALOHA コンサートをリペアさせて頂いた時の画像です
トップ側のブレーシング補強はこれだけしか入ってません。
音質優先でボディ剛性は高いと思えませんので、ナイロン弦で面倒かも知れませんが
弾き終わりましたら全弦はダラダラに緩めて下さい、推測ですが弦を緩めて保管しても
ボディの変形を防ぐ事が出来ないかも知れませんが、バック外しブレーシング追加の
リペアも可能ですからご安心下さい。
●現在のKoALOHA は【フレーム構造】のボディに強化されています。
内部構造の大きな変更は即ち強度不足だった証明にもなります。
◆セッティングして行きます
●KoALOHAのブリッジ&サドル溝の深さは、弦高調整するために余裕を持たせて有ると
解釈してますので、ブリッジのトップを削って弦高を下げます
●ブリッジトップを予定の弦高にするために必要最小限だけ削り、サドルを削る余裕を
作ります。
今回リペアでお預かりする前にも、弦高を下げるためにサドルを削ったのでは無いかと
思います
●サドルを削って予定の弦高にして行きます
サドル材はエボニーが使われてます。
◆サドルをセットして弦高を確認します
●4弦&1弦ともに予定通りに仕上がりました
◆仕上げのオイルフィニュッシを掛けて、磨き込んでリペアの完了は、1Fの調整を
残すだけに成りました
●ネック折れが目立った部分のアップですが、よく見ても判らないと思います
●1Fはセットした状態が安定している事を確認してから調整します
●ネックの仕上がりです
●ネックヒールの仕上がりです
●バックも艶が蘇りました
●トップも艶が蘇りました。KoALOHAはマシーンでのバフを掛けずに全てハンドパワー
です。マシーンを使ってボディ破壊したら大変な事に成ります。
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最終更新日 2020年03月02日 02時29分58秒
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