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2010.01.08

２００９年４月　朝日新聞出版より

大学病院にいた外科医の今中良夫が、失言により教授の恨みを買い、研修医として
極北病院へ飛ばされた、その最初の赴任の様子から話が始まります。
北海道の北の田舎町。
あるのは今中が勤める市民病院、客の来ない第三セクター方式の遊園地、
冬になるとリフトが動かなくて閉鎖してしまうスキー場。
赤字だらけの市財政の下、市民病院も予算がなく、看護婦達のやる気もない。
あれもこれもダメダメな病院で、これを変えてやろうと燃えるほど
今中も若いわけではないんですが、色々なもののはずみに流されながら、

少しずつ変わり始めた病院に突然大事件が起こる、という話です。

大事件は「ジーンワルツ」でも出てきた医療事故による産婦人科医の逮捕。
ダメダメ病院の唯一の良心であり、病院を支えていると言って過言ではない
三枝医師が逮捕されてしまうのです。
どうなる、極北市民病院！？

逮捕されたのが、もう残りページが少なくなってからだったので、
この事件は決着するのかとハラハラしました。
こんな後味悪いまま続かれたらイヤだもん。(笑)
ちゃんと終わりましたけどネ。(^_-)

これで海堂氏の既刊本はあらかた読んでしまったことになるのかな？
まだまだこのワールドは続くんでしょうね。

でも待つのが苦手なのよね～。
出版されても気付かなかったりしそう。(^^;
発売後は図書館の待ち人数も１００人単位だったりするしなあ。
でも取り敢えずはこれで海堂ワールドはいったん終了ですね。
残念なり。

地方にありがちな排他的な意地の悪さとかにも。
まあ、これがだんだん変わっていって最後はめでたしで終わるんだろうと思って
我慢しましたけど。

そんな中でちらっと登場した極北救急急救命センターは期待の持てるオアシス。
センター長の「桃倉」と聞いた時に、これは「医学のたまご」に出てきた
桃倉さんのお父さんかな。
何だかしっかりした人みたいだから、桃倉さんにもきちんとした教育をしたんだろうと
思いました。
だって桃倉さん、りっぱだったもん。
登場はしなかったので、よくわからないけど。
「最近、鼻っ柱の強い救急医が赴任し、いろいろ悶着を起こしている」」のは
絶対速水医師だろうと思ったら案の定。(^^)
最後にセンター長代行としてちらっとですが出て来て、嬉しかったです。

逆に、医療ジャーナリスト・西園寺さやかの登場が怖かったです。
このヒト、絶対「螺鈿迷宮」の小百合だよね？
極北市観察医務院の院長・南雲が「お嬢」って呼んでいて、昔さやかの父親に
世話になったって言ってるもん。
ホラーちっくな終わり方をした「螺鈿迷宮」。
いよいよ動き出したのか、この女がっ！？、と脅威でした。

あと、まだ全然詳細が明らかになってこないサイレント・マッドドッグ。
なんか薄気味悪い。
巨悪の存在を感じて、いずれ白鳥との対決につながっていくのか？と思うと
こっちも怖いです。

感じ悪いと思ったのが、日本医療業務機能評価機構と室町院長。
院長は最初はただの物知らずなのかと思っていたら、最後の裏切りにムカッ。
天下りのうまい汁を吸っている人の仲間入りかよ。(-_-#
逃げ損なった平松事務長は清々しい人になっていて、病院に残ると言った
今中の手を握りしめたのに、ちょっと感動。
これから２人で協力してやっていけそうです。

そして新しくやってきた病院長にビックリ！
世良雅志って、「ブラックペアン」の主人公だった世良先生じゃん！！
いつの間に、病院再生の専門家になってたんだろう？
世良医師の『官僚組織は癌細胞』という非難が鋭いです。
健全な細胞を浸食し、いずれ宿った母体を死に至らしめてしまう。
怖いですね。

今中の最後の感想はどう解釈したものか、いまひとつ解りません。
極北市民病院という夢の舞台から登場人物達が退場していき、
自分1人が取り残されたような空虚さ、現実感のなさ。
世良の華麗な会見を見ながら、自身の輪郭を見失ってしまったというのは
どういう意味なんだろう？
不安？虚しさ？孤独？
今後、たぶんこの病院は立ち直っていくんだろうと思うんだけど、
今中がどう生きていけるんだろうかがちょっと心配な最後でした。