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2010.06.15

２００４年９月　角川書店より

あるという噂を聞きつけて舞い込んだのが、大店の行方不明の一人息子の行方を占って
ほしいという依頼だったのだが…。
（本紹介文より）

しゃばけシリーズかと思って間違って借りてしまった本です。
いつ若旦那が出てくるのかと思いながら読んで、１００ページくらい進んでから
これ違うのかも、とようやく気付いた私。
遅すぎ。(^^;

時代は江戸時代末期。
すでに黒船が来て、変化へと動き始めている頃です。

主人公は清鏡神社の禰宜・川辺弓月（かわべゆづき）。

弓月は兄で、おっとりしたお人好し。
弟の信行はしっかりもの。

しかし、弓月には特技があって、夢告げ（夢占い）ができるのです。
夢占いと言っても、他人が見た夢を解釈するのとは違います。
神鏡を設置して弓月が祝詞を上げると、弓月にだけ異世界の様子が垣間見えるみたいに、
占いをしたいことについて見えてくるのです。

ただ、弓月のゆめつげは頼りにならないと近所での評価。
能力的には高くて、見える事は疑われていないんですが、結果が役に立たないから。
色々なことが見えすぎてしまって解釈が難しかったり、
「いなくなった猫を探して」と言われて、いま飼っている猫ではなく
１０年以上前にいなくなった猫の骨を見付けちゃったりするからなんですね。

訪ねてきます。
江戸でも指折りの大店である札差の青戸屋が、安政の大地震で行方不明になった
一人息子の新太郎を捜しているので、ゆめつげで占って欲しいと頼まれるのです。

依頼を受けて白加巳神社へ弓月と弟・信行が出向きます。
すると、新太郎候補である子供を連れた親達が３人。

弓月はゆめつげを行いますが、なかなか結果が判明せず、
そうこうするうちに殺人事件が発生してしまって・・・・という
ミステリー仕立てな展開になっていく話です。

息子を探したい青戸屋夫婦ですが、何が何でも我が息子を思い詰める妻と
一歩ひいた感じで息子は既に死んでいるのではと考える夫。
わが子を青戸屋の子として認めてもらいたい３人の親達の争い。
弓月にゆめつげを依頼した白加巳神社の権宮司・佐伯彰彦の密かな計画。
白加巳神社周辺で最近頻発する辻斬り。
登場人物達それぞれに思惑があって、飽きずにおもしろく読めました。

弓月が頼りにならないとか粗忽とか言われていますが、そうでもない。
おっとりしているけど芯はしっかりしているあたり、若旦那と同じ空気を感じました。
嫌いなタイプじゃなかったので、楽しかったです。

江戸時代末期という激動の時代でしたが、ここではまだ何がどう変わったわけでもない。
でも、最後は未来につながる終わり方で、自分さえしっかりしていれば
未来への変化を怖がる必要はないというメッセージで終わって
すっきりとした最後でした。