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2011.03.30

訳：舟戸　牧子
１９８２年８月　ハヤカワ文庫より

迎え撃つ敵は邪悪の星からの侵入者、糸状の胞子生物だ！
だが、彼等の戦いも今度ばかりは旗色が悪い。平穏な四百年の間に竜騎士の役割は
忘れ去られ、竜も竜騎士も衰退の一途を辿っていたのだ。
そんなときに、糸胞襲来の予兆として竪琴弾きの歌に語られる『赤の星』がパーンの空に
出現した！
女流作家が感情豊かに描くヒューゴー・ネビュラ両賞受賞作。
（裏表紙紹介文より）

本は図書館派の私が所蔵している数少ない本で、何度も読み返ししたお気に入りの１冊♪
パーンの竜騎士シリーズの第１巻です。

惑星パーンは人間が暮らしやすい緑豊かな星ですが、
２００年周期で巡っている惑星『赤の星』がパーンに最接近した時、
パーンの重力に引かれて糸胞（糸状の胞子生物）がパーンへと降ってきます。
糸胞は植物でも動物でもあらゆる有機生物を食べて増殖し、惑星を滅ぼしてしまう。

竜騎士とは、文字通り竜に乗って竜を操り、糸胞と戦う戦士達。
マキャフリイはアメリカの作家ですから当たり前ですけど、竜は西洋のドラゴン。
「坊や～よい子だ、ねんねしな」ではありません。(笑)

竜と竜騎士は互いに１対１の個体同士で感応します。
感応した１対はテレパシーで会話し、互いがなくてはならない唯一の存在となります。
竜騎士を失った竜は生きていけず、死を選ぶほどの深い結びつき。

竜には階級があって、黄金竜、青銅竜、褐竜、青竜、緑竜の５種類。
雌は黄金と緑ですが産卵可能なのは黄金のみで、黄金竜は全ての竜の上に君臨する
女王となります。
女王とつがう権利を持つのは青銅のみ。
そして女王の騎士と、その伴侶である青銅の騎士とが

竜騎士集団を支配します。

この話で主人公となるのは、女王竜ラモスとその騎士であるレサと、
ラモスの伴侶となる青銅竜のニメンスとその騎士であるフ-ラル。
衰退した『大巌洞』の数の減った竜＆竜騎士達とで、糸胞に立ち向かう奮闘を描いています。

訳がちょっと独特と言うか、直訳に近い感じの読みにくさなんですが、

特に竜のセリフがカタカナで表示されるのが好き。

大好きなシリーズです。

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これ以降は詳細な感想となるので、ネタバレにご注意ください。

竜がすっごく可愛いです♪
竜達はいつでも食欲旺盛で、生きたままのフェリ鳥とか草食動物をもりもり食べます。
レウスとかレイアがガーグァを食べるみたいな感じ。
人とコミュニケーションできる思考力を持っていますが、基本は本能に従って生きていて
感情は素直で単純。
日向ぼっこと昼寝が好き。
起きた時に、竜騎士に目の周りをかいてもらうと気持ちよくでうっとりする。
ちょっと猫みたい、とも思います。(^^)

ラモスは群れで唯一の女王竜で、「ワタシハ女王ナンダカラ、ナニヲシテモイイノヨ」的な
ワガママさがあったりします。
一番体が大きく、力も強い。
発情に伴う飢餓感から餌へと急襲した時に、そこにいた他の竜達に叱声を浴びせ、
他の竜達があたふたと場所を空けたりするのが、ラモスも他の竜達も
なんとも言えず可愛かったりする。

伴侶は青銅竜のニメンスですが、これがまたラモスのことが大好きで献身的。
私は竜達は皆好きですけど、ニメンスが一番好き。

青銅は女王竜を得るために、発情した女王が交尾のために飛び立った時に
その女王を捕まえなくてはなりません。
でも体は女王の方が大きいし、翼も長く、当然女王の方が早く飛べる。
ラモスはニメンスを選ぶつもりがなかったんですが、ニメンスは知恵を使い、
ラモスが横を通った時に自分の首をからめてラモスを捕まえちゃったんですね。
翼が絡んで落ちそうになるところを、ニメンスは頑張って２頭分の重さを支えてたのが
すごく可愛いかった。(^^)

こんなラモスだけど、ニメンスのことが好きなんですよ。
４００年の過去から戻った時に、「にめんすハ？」と真っ先にニメンスの所へ向かい
首をからませているのが乙女な感じでした。。

もう可愛くて可愛くて、竜達を見ていれば幸せ♪

人間の方はもう少し複雑です。
レサは意固地で、知恵が働き、少し意地悪なところもある。
フ-ラルはプライドが高く皮肉屋だけど、知恵も力もある優れた指導者です。
最初はこの２人は仲が悪いんですが、協力して糸胞に立ち向かっていくうちに
互いに愛情が芽生え、大切な伴侶になっていくのです。

読んでいてマキャフリイらしいと思った箇所がありました。
レサはラモスと共に４００年の昔へと時の間隙を飛翔します。
間隙というのは、亜空間みたいなものなのかな？
竜はその空間を通過することによって、一瞬にしてテレポートする能力を持っています。
その能力の一部として、過去へも移動できるのです。
長い年月を移動したため、間隙での滞在時間が長くなってしまったのですが、
その空間には無があるのみで、自分の体の感覚、音、温度、光の一切が感じられない。
その恐怖に気が狂いそうになるんですが、竜が語りかけてくるテレパシーによって
辛うじて自己を支えられる。

ここを読んだ時に、歌う船シリーズを思い出しました。
マキャフリイにとって、無の空間というのはすごく恐ろしいものなのかな？
いや、恐ろしいだろうとは思うけど、それって体験することはないから
あまり実感としてつかめないですよね。
何かそれに近い経験でもしたのかしら？と思いました。

本の感想と関係ないけど、私がこの本を知ったのは知人からの紹介でした。
その頃、ドラクエ３が流行っていて、知人がぜひ読んでみてと貸してくれたのです。
シリーズ２作目の「竜の探索」、原題がDragonquestだから、と。

今このシリーズが大好きで、そのきっかけとなったのがドラクエ。
ゲーム好きでよかったなあと思います。(^^)

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