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2011.04.25

１９８７年１１月　徳間書店より

「皇妃ヒルデガルドばんざい！」
新帝国歴００３年、ラインハルト・フォン・ローエングラムは、身重のヒルダと挙式した。
全宇宙を支える覇者の婚礼にふさわしく、高官たちの祝福の歓声が新帝都フェザーンに
ひびきわたった。これで無事、皇子が誕生すれば、ローエングラム王朝は平和と繁栄に
つつまれるはずであった。だが、式も終わらぬうちにオーベルシュタインは意外な報告を
もたらした。惑星ハイネセンで反国家的暴動の発生！
「吉事は延期できるが、凶事はそうはゆかぬ」ラインハルトは決然と立ち上がった。
（表紙裏紹介文より）

とうとう最終巻。
激動の時代が終わりを迎え、平和と安定の時代へと移っていくであろうことが
窺える内容です。
でも、そのせいで終盤は「事後の後片付け」的な文章が多くて、ちょっと退屈だったり。
ここまでの話はまさに『銀河』における『英雄』達の『伝説』を描いたものなので、
伝説以後の話華やかさがなくても当然なのでしょう。
最後の一文「伝説が終わり、歴史が始まる」というのが、全てを表してると思いました。

ただ大規模の戦争が主体となっているため、あまりに多くの人が死んでいくのに
辟易したのも事実。
特定のキャラクターの死だけでなく、何十万人、何百万人という一般兵の死が特に。
８巻以降は東日本大震災の後だったので、これ以上人の死は見たくないという
気持ちが強かったです。

この後は外伝が4冊あるので、それを読むことになります。

【送料無料】銀河英雄伝説（10（落日篇））
価格：840円（税込、送料別）

これ以降は後の自分のための覚え書きとなり、当然ですが全てネタバレとなります。
ご注意ください。

ラインハルトとヒルダの結婚式がフェザーンで行われている最中、ハイネセンで
民主主義者による暴動が起こり、ラインハルトを始めとする帝国軍は出兵していきます。

残されたヒルダは柊館で出産を待つのですが、その柊館が地球教徒の襲撃を受けるのです。
柊館は焼け落ちますが、帝国軍憲兵総監ケスラーの活躍により、ヒルダと
居合わせたアンネローゼは無事。

２人のいる部屋に銃を持った地球教徒が入ってきて、ヒルダを撃とうとした時、
アンネローゼが彫刻付きの陶製のスタンドを地球教徒の顔に投げ付け、
危機を脱するんですよね。
アンネローゼってたおやかで、重い物なんか持ったことなさそうな人なんですが、
それなりに重量がありそうなスタンドを投げ付ける勇ましさがステキ♪

日本語だと２文字だけどドイツ読みは長いなーと感心。(笑)

そしてイゼルローン軍と帝国の最後の戦いです。
ハイネセンから民間人を乗せた宇宙船が脱出、それを救援に行ったイゼルローン軍の戦艦と
帝国軍がたまたま出会ってしまい、戦端が開かれます。

ヤンは既にいないし、数の上でも圧倒的に有利な帝国軍のはずですが、
その戦いのさなか、ラインハルトが倒れます。
ラインハルトはそれまでにもたびたび高熱を出したりしていましたが、
不治の死病にかかっており、もう死期が近かったのです。

ラインハルトが倒れ、戦闘が一瞬乱れた隙を突き、
イゼルローン軍はラインハルトの旗艦ブリュンヒルトに乗り込み、白兵戦を挑みます。
この戦いでシェーンコップが戦死。
悲しかったなあ。(T_T)
この人、オシャレな貴族趣味っぽい人で好きだったんですよね。

他にも多くの犠牲者を出しながら、ユリアンはラインハルトの居室に辿り着きます。
ラインハルトは、自分の部屋まで民主主義者がたどりついたら対話に応じるという姿勢で
待っていたので、ここでようやく和平が成立。
ユリアンはラインハルトと共にフェザーンに向かい、今後の話などをするのです。
と言っても、ラインハルトは先の短い身。
ユリアンに「未来の話は皇妃とするがよい。皇妃は予より政治に見識があるから」と言う。

そしてラインハルトの死後、皇子アレクサンドルと
ミッターマイヤーの養子フェリックス（ロイエンタールに託されたロイエンタールの息子）
とが友達になったところで終わります。
ローエングラム王朝はヒルダとその息子の時代くらいは、家臣団に支えられながら
良き専制君主が治めていけるかなあという予感ですね。

先の事はわからないけど、しばらくは平和と安定の時代が来るのかな。
けれど歴史は常に繰り返すもの。
いつか暴君が現れ、それに反抗する人々が現れたり、
民主制度を私物化する者により、腐敗が進んだり。
人類が消滅するまで、それを繰り返していくのが歴史というものなんだろうと思います。
その中で、庶民はささやかな幸せを大事に抱きしめて生きていければ
政治制度に関係なく満足なんですよね。
政治制度に拘るのは、支配者階級と歴史家や哲学者だけ。
そういう意味で、ヤンと思想が一致することはたぶん永遠にないと思うな、私。

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