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2012.04.11

１９９８年１０月　文藝春秋より

慶応３年１０月１３日、京は二条城の大広間で、十五代将軍徳川慶喜は大政を奉還すると表明した。
ここに幕府の三百年近い政権は幕を閉じた。
―時勢はこの後、坂を転げるように維新にたどりつく。
しかし竜馬はそれを見とどけることもなく、歴史の扉を未来へ押しあけたまま、流星のように…。
巻末に「あとがき集」を収む。
（裏表紙紹介文より）

最終巻になります。
話のほとんどは大政奉還。

武力による倒幕で日本の支配者を変えたい（その後に自分達が立ちたい）薩長。
しかし、土佐藩が入らないとその武力が不足。
時代は開国・倒幕でその流れに乗らないと薩長に遅れを取ると理解していながらも
佐幕派から抜けられない山内容堂が率いる土佐藩。
大政奉還をしなければ戦争になって徳川家は消滅するかもしれないと恐れる徳川家。

そんな中、徳川慶喜は大政奉還を受け入れます。
竜馬は薩長中心の新政府案を提案。
土佐からの参加は後藤象二郎のみ、竜馬は入らない。
西郷に尋ねられて、「俺は世界の海援隊をやる」と答えたようです。

大政奉還後、佐幕派（特に会津・桑名）は慶喜の軽率に憤慨し、
ただちに開戦して藩邸を焼き払い、宮廷を占領し、天子を大阪城に移し奉り、
徳川の安泰をはかるほかないと狂騒的になっていきます。
それが竜馬の暗殺につながったのでしょうか。

竜馬と中岡慎太郎は、近江屋という京都で竜馬が過ごしていた宿で暗殺されました。
犯人は見回り組の６人によるものだそうです。
見回り組は幕府の治安維持部隊。

維新後の事は、この本ではあまり書かれていないので、その後のことは詳しくわかりませんが、
竜馬と中岡慎太郎が死んでしまったら、土佐藩は維新後に活躍はできないなあと思いました。

幕末史は全然知らなかったんですが、今回のことで大きな流れが見えるようになりました。
そういう意味では面白い本でした。

ただ娯楽小説として、戦国時代を読むように楽しかったかというと

好きな時代ではないし、新選組とか会津藩とか好きなので。

徳川幕府は政権能力がなくて滅びなければならなかったかもしれない、というのは解る。
しかし、維新で活躍した薩摩・長州がその後の政権を取っていったわけですが、
その２藩が本当に日本のためを思って国を作っていこうとしたかというと
そうとは思えない。
どちらも、長年の恨みを晴らし、自分が権力を得たかったに過ぎないとしか思えない。

文中にこんな文章があるんです。

「アメリカでは大統領が下女の給料の心配をするという。
　三百年間、徳川幕府はそういうことを　したか。この一事だけでも幕府は倒さねばならない」
土佐系の勤王運動が、薩長両藩より人民救済のにおいが強く、やがてその伝統が明治後の
自由民権運動になってゆくその基礎的な思想は竜馬のこの言葉に集約される。

土佐藩は藩内の差別がひどかったから、その是正こそが望まれたのだろうと思います。
竜馬が生きていて、維新後の政治にも関わっていたら、その後の日本は変わっていたろうと
思います。
日本の国を想っていたのは竜馬だけだった。
偉大な人だったのだなあ。
でも、もう少し身を守ることも考えて欲しかったです。
男子が大事をなすにあたって、死ぬこととか考えるべきではないって思想でしたが、
死んじゃったら大事もなせないんだから、考えて欲しかったなあ。

詳しくない時代背景だったので、読むのに時間がかかってちょっと大変でした。
でも興味深い本だったと思っています。