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2013.12.06

２０１２年５～１１月　「小説現代」で連載
２０１３年０２月　講談社より

もりはら鉄道新社長・篠宮亜佐美(３１歳独身)の果敢な挑戦が始まった。
立ちはだかるのは、やる気を失った社員たち。一筋縄ではいかない経営幹部、
そして、亜佐美らを次々と襲う不穏な事件。
「もり鉄」に明日はあるのか！？
人々の希望を乗せた列車は、感動の終着駅に向かってひた走る。
（「BOOK」データベースより）

宮城県の第三セクターが運営するローカル鉄道の再生物語。

赤字を生むばかりのもりはら鉄道に、篠宮亜佐美（３１歳）が女性社長として迎えられた。
亜佐美は東北新幹線のアテンダント（車内販売の売り子）をしており、通常２０万円売れば
一人前と言われるアテンダントの中、５０万円の売上をたたき出すカリスマアテンダント。
またもりはら鉄道の地元出身で地元への愛もあり、それらを見込まれて
もりはら鉄道の会長である五木田に抜擢されたのだ。

亜佐美はやるきのない社員達の意識を変え、会社全体で盛り上がって鉄道を再生させていく、
というサクセスストーリー。

途中には陰謀があったり、ほのかな恋愛模様が絡んだりもします。
いろいろな企画が当たり、人が変わり、成功していく様が読んでいてカタルシスとなる物語。

以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。

主要な登場人物としては、副社長である鵜沢哲夫。
県庁からの出向だが、同期職員からは赤字ローカル線に飛ばされた出世からのおちこぼれと
冷笑され、本人もなんとか県庁に戻りたいと考えている。
それが亜佐美と出会い、仕事に対する熱意とプロ意識を見せつけられ、いつの間にか
もり鉄を仲間達と立て直していくことに喜びと楽しさを覚えていくようになります。

経理の町村かおり。
最初はおとなしい地味な女性社員だが、亜佐美とともにアテンダントの仕事をしたり

かおりは鵜沢を好きになってしまい、亜佐美と鵜沢が仕事上で接触も多いし、
社員には言えない秘密を話したりするので、亜佐美が恋のライバルなのではないかと思い
一人悩んだりもします。

亜佐美はそんな気持ちに気付いて、それは誤解だと説明したいができずにいる・・・
と思いつつも、鵜沢の頼れる知恵や行動力に密かに惹かれていたりもする。

しかし、優理子が『県庁でいずれ出世するであろう鵜沢』を大切に思っているのではないかと
思うところもあり、気を遣いながら電話やメールをしてくるのを、重く感じている。
そんな鵜沢の様子が描かれるので、鬱陶しい女なのかと思うのですが、
鵜沢との別れを決意した様子の優理子が、鵜沢が依頼した県庁内の陰謀を探り出すため
スパイのような行動を取ってくれるのです。
実はいい子だった。

鵜沢はそれに気付き、優理子への感謝と愛情が甦り、最後は優理子の元へ戻る。
亜佐美とかおりは失恋なわけですが、そのへんの恋愛話を前面に出すことなく、
うまくスパイスとして使っているのが、いいバランスです。

順調に売上を伸ばしていくもりてつ。
しかしここに陰謀が巡らされ、イベント毎に妨害が行われる。
亜佐美と鵜沢は探偵のように調査・推理をし、
もりてつを廃線にして、地元の町に核廃棄物処理場を作ろうと画策している副知事の企みを
調べ出すのです。
イベントで大勢の記者・知事・副知事などが集まった中で、その計画を暴露
陰謀は無事に明るみにさらされることに。

ただの再生物語ではなく、陰謀・恋愛をからめたエンターテイメントとして面白い話でした。
他に『デパートに行こう！』などの姉妹作もあるようなので、読んでみたいです。

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