らくがんの休日

Profile

Rakugan is Kitten

フォローする

刀剣乱舞

(442)

Comments

Rakugan is Kitten @ Re[1]:自宅でハロウィンアフタヌーンティー(10/09) Blackさんへこんにちは。(^^) 返信遅れ…

Black @ Re:自宅でハロウィンアフタヌーンティー(10/09) こんにちは・ｗ・ﾉおいしそうな料理の写…

Rakugan is Kitten @ Re[1]:スターバックス　桃フラペチーノ(07/16) Blackさんへお久しぶりです。(*^^*) ス…

Favorite Blog

ラムしゃぶスープカ… New! Blackさん

【重要なお知らせ】I… 楽天ブログスタッフさん

Freepage List

ブックマーク

Keyword Search

▼キーワード検索

< 新しい記事

新着記事一覧(全2786件)

過去の記事 >

2014.05.21

２０１３年０４月　河出書房新書より

7年前、25才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。
結婚からたった2年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、
まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。
なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる
人気脚本家がはじめて綴った連作長編小説。
（「BOOK」データベースより）

登場人物につながりのある短編小説、と私は思っていたんですが、
そういうの連作長編小説っていうんですね。

収録されているのは
　　ムムム
　　パワースポット
　　山ガール
　　虎尾

　　男子会
　　夕子
の6話。

主人公は徹子と、その義父である寺山連太郎。
7年前に徹子の夫・一樹が死んでからも一緒に暮らしてきた2人は、
既に息子の嫁と義父という関係ではなく、「ギフ」「テツコさん」と呼び合う
友達みたいな家族みたいな関係。

話の視点は1話ごとに変わっていきます。
2人に関わりのある人々の視点で、人柄や日常生活を描いていきます。
大きな事件はないけれど、ほのぼのしたちょっといい話が続く感じです。

以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。

『ムムム』はテツコが恋人の岩井からプロポーズされる話。

家族というものが好きではないと気付き、だが気付いたならそうではない方向へ行けばいいと
思えた話。

『パワースポット』はテツコの隣の家に住む、一樹の幼馴染みのタカラが主役。
航空会社のCAなのに心を病んで笑えなくなり退職。
家に引きこもる日々だったが、ギフが「一樹が空にいると思えたらいいのに、できない」と

アテンドの際には持って飛んでもらうよう頼む。
真剣に引き受ける後輩の姿に、それまで心に響かなかった後輩の「頑張ってくださ～い」と
いう間の抜けた言葉が心にしっかり届いた、という話。

『山ガール』はテツコの友人の山ガールに連れられて、ギフが簡単な山に登山する話。
ハイキング程度の筈だったが、帰り道にギフの気分が悪くなり遭難するかもしれない、という
恐怖を2人で味わう。

『虎尾』は一樹の従兄弟の虎夫。
一樹との思い出や自分の青春が詰まった車を譲ってくれと言って持っていった話。

『魔法のカード』は、岩井が結婚詐欺に会ったという噂が社内で立つ。
テツコが問い詰めると、小学生の女の子に頼まれて400万円貸したのだという。
女の子の言った住所に家はなく、詐欺だったと思っていたが、女の子から携帯に電話があり、
電話に出たテツコは女の子を案内して岩井の家へお金を返しに行く。
女の子は岩井から「何でも願いがかなう魔法のカード」をもらったが、口先だけの励まし、
子供だましに違いないと思ったので、その場でカードを出して400万円貸してと頼んだら、
本当にお金を貸してくれた、というのが真相。
信じていなかった魔法のカードを本物にしてしまった岩井の誠実さに、
ひねくれていた女の子が心が動いた、という話。

『男子会』はギフが女に騙されて家具を買わされ、それをテツコに知られたくなくて
家出して岩井くんのアパートに転がり込む。
テツコから相談された岩井はギフを連れてテツコの家へ行き、部屋に家具があって寝る場所も
ないことから、しばらくテツコとギフの家に泊まり込む。
その家で、岩井はテツコがどのように『暮らし』を営んでいるか、なぜ自分との結婚に
乗り気ではないのかを知る。

『夕子』はギフの妻の名。
知人の死期が近付くと、それが誰かわからないのに涙が止まらなくなる不思議な体質の夕子。
その体質ゆえに結婚を怖れていたが、ギフと見合いをし好感を持ち、ギフの家を見て
この家で暮らしたいと結婚を決意する。
日常生活の中に幸せを見出していく話。

『一樹』は小学生の頃の一樹がテツコに出会っていた思い出。

どれも個々の短編として読むと、ちょっといい話。
ですが、全体を通すと、日常生活における『美しいもの』を大切にしている話なのかなと
思います。
それは『心に届く言葉』であったり、『大切に手入れされている家』や『そこで営まれている
暮らし』であったり。

例えば、『男子会』でテツコの家に来た岩井は、テツコの『暮らし』を見るのです。
朝食の時に、無言で瓶詰めの海苔の佃煮とバターナイフをギフに渡すテツコ。
何も言わずに、それをペトペトとパンに塗るギフ。
その横で、テツコはテレビを見ながら練りウニをトーストに塗っている。
まるで熟年夫婦のようだと思った岩井は、自分の部屋は眠ったり食べたりする場所であり
合理的な空間なのだ、そこでの生活は『暮らし』ではない。
その『暮らし』は、この家を大切に思う人々が何年もかけて作り続けてきたものなのだ、
と思うのです。

そういう日常生活の中にある『美しいもの』が、死別という深い悲しみを癒していくものだと
いうことが描かれていたと感じました。
いい話でした。

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう