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2014.05.08
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カテゴリ: ACL観戦記
監督の文脈(11)

2014年5月7日  1900~@等々力 9,161人(46%)
ACL Round16 1st.leg

川崎フロンターレ 2-3 FCソウル
【得点者】
後半 4分 小林 悠(フロンターレ)
後半 6分 エスクデロ・セルヒオ(ソウル)
後半16分 レナト(フロンターレ)
後半28分 金致佑(ソウル)



「サッカーは引き分けではなく、最後まで勝とうという強い意志が大事」
(崔龍洙・FCソウル監督)


「今日のミスや敗戦を引きずることが、次戦に向けての大きなミスになる」
(風間八宏・川崎フロンターレ監督)


 後半46分、すなわち4分与えられたロスタイムのうち、残り3分でのことだ。崔龍珠(=
チェ・ヨンス)監督は、前線でくさび役を務めていたエスクデロをベンチに下げ、FW・朴喜録(=パク・ヒソン)を投入した。この日、龍珠が初めて切った交代カードだった。
 ノックダウン方式の決勝トーナメントでは、アウェイで奪った1点の価値が、より重くなる。だが、時間が時間である。「引き分け狙いの時間稼ぎだろう」と思ったのは、川崎イレブンも同様だったはずだ。
 しかし、FCソウル指揮官の意図はちがった。あくまでも「もう1点」が、彼の狙いだった。01年にジェフ市原に移籍した龍珠は、5シーズンでリーグ戦121試合に出場し、77ゴールを記録している。03年のファーストステージでは、MVPにも輝いた。いかにも、元韓国代表のエースストライカーらしい貪欲さだった。

 一方のフロンターレは後半3分、左サイドのレナトの崩しから嘉人、最後は小林悠のヘディングというフロンターレ定番のゴールキャスティングで先制する。ところがわずか2分後、右サイドバック・車ドゥリからの展開を、エスクデロにあっさりと決められて、またたくまに追いつかれてしまう。一瞬の気の緩みを突かれたものだが、「韓国と日本とでは、メンタル面で大人と子どもぐらいの差があったのではないか」という記者の質問に対して、風間監督は「目には見えない問題ですから」と苦笑いでかわすしかなかった。
 試合後の両指揮官のコメントは、どちらもメンタル面に言及したものだったことだけはまちがいない。

 韓国のフェリー船・セウォル号の転覆事故から、ちょうど3週間が過ぎていた。いまだ行方不明となっている遺体が引き上げられないままになっているなか、犠牲者たちに捧げるセレモニーが試合前にあると予想していた。しかし黙祷もなければ、喪章を巻く選手もいない。AFC(=アジアサッカー連盟)の日本側プレスオフィサーによれば、KFA(=韓国サッカー協会)からの要請はとくになく、韓国国内のリーグ戦でも特別な儀式を設けていないため、それに倣ったらしい。

 フロンターレが圧倒的にゲームを支配していた前半終了直後、喫煙所で見かけた龍珠は、明らかに苛立っていた。目の前に灰皿がいくつも用意されているにもかかわらず、吸殻を乱暴に足もとに叩きつけ、黒い革靴の底でひねり潰した。
 フロンターレの多彩な攻撃に警戒を与えながら臨んだ前半だった。龍珠がDF陣にアドバイスしたのは、嘉人と小林悠の動きに関する指示だった。このふたりがDF陣の視線から逃れるような動きをし、そこへ縦パスを放り込んでくる。守る側にとってはひどくやりにくい相手が、フロンターレの前線にはふたりもいた。
 しかも最近のリーグ戦で、フロンターレは好調を維持している。序盤から間違いなく攻撃的にくると読んだ指揮官は、3バックの両サイドを最終ラインと並べた高い位置で守らせ、CBのオスマール・バルバには、第3列とのあいだでの頻繁な出入りを要求したようだ。そのうえでフロンターレのショートパスをインターセプトし、一気にカウンターへつなげようという狙いである。フロンターレに対する龍珠の事前対策は、準備万端に見えた。
 それでも、事前にわかっていながら、フロンターレの高速パスにDF陣が揺さぶられ、何度もピンチを招いた前半だった。急いで紫煙をくゆらす彼が落ち着きなかったのも、当然だったろう。しかし、苦しかった45分間を最後まで耐え切ったことが大きい。

「チャンスはあった。それを決めなければならない。そして、チャンスの数を増やさなければならない」
 いくら魅力的なサッカーを標榜しても、結果としてつながらなければ、ACLの出場権を得た意味はない。

 10日前のガンバ戦後、古くからつき合いのある同業者と武蔵小杉駅近くの居酒屋でかわした会話を想い出した。「川崎のゲームにはよく来るの?」「今年のフロンターレはおもしろいからね」。すると彼は、出版不況の時代における疲労と酔いからか、いきなりヒステリックな声をあげた。
 「だけど風間は、結果を何も出してないじゃん。もうすぐ2年半たつんだぜ」
 監督論を話すつもりで返した言葉ではなかったが、たしかに彼の言う通りである。日本サッカー界きっての理論派としてフロンターレの監督に就任したのは、一昨年のことだ。そのあいだに彼が残したのは、フロンターレが目指す攻撃サッカーに、さらにプラスの材料を加えてきたという希望的な実績だけだ。その実績が、龍珠をひどく警戒させた「多彩さ」なのだが、環境の整ったホームで敗れては、言い訳のしようもない。
 親しいジャーナリストは、アーセン・ベンゲルとイビチャ・オシムの例を出した。

 また03年にジェフ市原の監督に就任したオシムは、資金力も選手層も薄いクラブに年間順位3位というチーム最高成績を残し、その年の監督特別賞を受賞、2年後のナビスコカップでは、リーグ王者のガンバを延長のすえに下して初タイトルを獲得させている。
 同業者の基準に立てば、日本人監督の限界は、風間八宏にも当てはまるということなのだろう。

 フロンターレの1点リードで、ほぼ勝利を手中にしていた後半37分、左サイドバック・金致佑(=キム・チウ)のミドルシュートが決まって同点に追いつかれる。ホームゲームでドローは痛い。これ以上の失点に気をつけながら、残りわずかとなった時間で、できればもういちど突き放しておきたい。フロンターレには、それができる力がある。
 この日のマッチデープログラムのインタビューでフューチャーされていたのは、3年目のCB・ジェシだった。
「ホームで失点せずに勝利することができれば、次のアウェイゲームでも落ち着いてプレーできる」
 そう語っていたジェシが、ロスタイムも残り少なくなった48分、トラップ処理を誤ったボールを尹日録(=ユン・イルロク)に奪われる。
 サッカーは、何が起きるかわからない。
 嘉人は「セレッソよりはマシ」と、マルチェロ・リッピ率いるゼネコン軍団・広州恒大に5-1で敗れたチームを引き合いに出したが、14日のアウェイゲームで立場を逆転させるのは至難のワザだ。すでにACLに関するファンの興味は、サンフレッチェ広島だけに絞られているといっても過言ではない。

【了】

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最終更新日  2014.05.09 11:17:57
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