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2014.06.18
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6月14日 グループC第1戦@アレナ・ペルナンブーコ(レシフェ) 40,267人(90%)

日本代表 1-2 コートジボアール代表
【得点者】
前半16分 本田圭佑(ACミラン)
後半19分 ウィルフリード・ボニ(スウォンジー)
  21分 ジェルビーニョ(ローマ)


 人の顔に歴史と個性があるように、ザックジャパンにも4年間の歴史によって築かれた個性がある。それを短時間で整形しようとすれば、どうしても無理が生じるのは自明の理だろう。今回の代表チームは、ブラジルで点の奪い合いになると予想していた。得失点差か総得点で3位のチームを上回り、グループ予選2位突破というのが筆者のシナリオだ。その後はD組1位のウルグアイにレシフェで潰され、またもやベスト16止まりという流れである。
 現在の日本代表は、90年代には考えられなかった世界にも通用するサイドバックを複数擁し、00年代から生命線としてきた攻撃的ミッドフィルダーもいっそう充実している。その一方でセンターバック陣の人材不足は相変わらず深刻で、マンツーマンに対する強靭さ、高さとスピード、そして頭脳をも兼ね備えた理想的なプレーヤーが最終ラインになかなか見当たらない。そんな帯に短し襷に長しのなかで、アルベルト・ザッケローニ監督が選択したのは日本の短所のカバーではなく、長所を生かすことだった。すなわち、ある程度の失点に目をつむり、より多くの点を奪う策に心を砕いてきたわけだ。

 最初の45分間は、終盤を除けばほぼ日本のゲームだった。日本が本来もつ攻撃力を、まるで鷹のように爪を隠し、静かに仕事をこなしていた。ワールドカップのような大きな大会では、初戦が重要だ。各メディアが何度となく伝えているように、初戦を落としながらグループ予選を突破できるチームは9%弱にすぎないと、W杯80年の歴史が物語っている。だから日本だけではなく、おおかたのチームが第1戦のキックオフのホィッスルを慎重に聞くのは定石といってもよい。ましてや今回の日本代表は、「優勝」を高らかに公言してやまない。自分たちにあえてプレッシャーをかけて士気を上げようという試みが、本当のプレッシャーになってしまっては笑い話にもなるまい。


 自分たち本来の個性=攻撃力を取り戻すタイミングがあったとすれば、森重真人のサイドチェンジから生まれた本田圭佑の先制弾が決まったあとだったのではないかと考える。1点ビハインドにより前がかりになろうとするコートジボアールの攻撃を、積極的な守備から空回りさせ、さらに追加点にまでつなげることができていれば、結果はまったく違ったものになっていたはずだ。
 しかし前半終了間際、左サイドの長谷部誠と長友佑都の裏にヤヤ・トゥーレ(=マンチェスターシティ)やボニ(=スウォンジー)、ジェルビーニョ(=ローマ)が相次いで侵入し、日本のゴールを脅かしている。コートジボアールは日本の左サイド狙いであることを示しながら、ハーフタイムを迎えたのだった。

 各メディアが報じているように後半17分、ボランチのセレイ・ディエに代わって、ディディエ・ドログバが投入されてからすべてが変わってしまった。ポストプレーに長け、簡単にはボールを奪われないドログバを左サイドに投入することで、コートジボアールの右サイドが前半以上に活性化しはじめたのだ。
 遠藤保仁と大久保嘉人が ベンチスタートだったのは、ふたりが流れを変えられる選手だからだ。1点を追加したいとき、あるいは1点を追うときに、彼らの力が必要になる。後半9分のハセの交代を「早すぎる」と見る向きもあるが、1月の右ヒザ半月板負傷から復帰まもなく、日本が攻撃の起点とする左サイドでことさら危険なシーンを演出していたわけでもない。追加点を狙うのであれば、ヤットとの交代は妥当だったろう。ところがそんな彼もまた、パスミスからカウンターを浴びるという失態を演じている。選手間の距離が開きすぎていたのも原因だが、俊足のジェルビーニョを筆頭に、コートジボアールが日本の左サイドに人数をかけていたのは明らかだった。

 嘉人にいたってはザックの逡巡をまともに受け、ウォームアップから投入まで10分以上も待たされた。そのあいだにクロスカウンター2発で逆転されてしまったわけだ。お膳立てをした右サイドバックのセルジュ・オーリエ(=トゥールーズ)は、まだ21歳である。円熟期を迎えつつある左サイドバックの長友も、バカにされたものだ。もちろん、彼が上がったあとのカバーに大きな問題があったことも否めない。

 それにしてもドログバとは、なんとすさまじい存在感だろうか。彼がピッチへ送られたことによって、コートジボアールの選手は水を得た魚のように生き返った。まるで、ガソリンの注入だ。だが日本は、現在考えうる最高の交代カードを切っても、得意とする素早いパス回しがつながらず、重心を下げたコートジボアールのゴールを最後までこじ開けることができなかった。ヤットも嘉人も、けっきょくはドログバになりえなかったのだ。

 すべての迷いを捨てて臨む次のギリシャ戦は、勝利だけが求められる。相手も手負いであとがなく、厳しい闘いになる。ニホンオオカミ×タイリクオオカミの一戦である。しかしコロンビアとギリシャの試合を観戦したかぎり、日本の力をはるかに上回る相手ではなかった。しかもコロンビアは、第2戦のコートジボアール戦で圧勝すれば、最終戦の日本戦で戦力を落としてくる可能性が大きい。もはや言い古された言葉ではあるが、「サッカーでは何が起きてもおかしくない」のだ。事実、スペインがオランダに1-5で惨敗すると、誰が予想しただろうか。前大会3位とほぼ同じ顔ぶれで臨み、結束力の強固なウルグアイが、ダークホースのコスタリカに1-3で敗れる波乱もあった。ザックジャパンには、「日本サッカー史上最強チーム」であることを証明する義務がある。

【了】





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最終更新日  2014.06.18 16:45:50
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