ユウ君パパのJAZZ三昧日記

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syoukopapa

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2006.11.11
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カテゴリ: 私の小説集
夏の緑のままでいたいという樹木を、説き伏せて色づかせる雨。ライトアップされた港の情景も泣いている。久しぶりに美樹に会う僕の心は揺らめき、かなり不安になる。そんな不安の中、いつの間にかたどり着いてしまったコンサートホール。

あのころイヤがる僕を猫のクビネッコを掴むようにして、美樹にユーミンのコンサートに連れて来られたのもここだった。3階席で、ステージからは随分離れてはいたけど美樹は無邪気に喜んでいた。そんな美樹を見るだけで、僕は幸せだった。でも、思い出せるのはそのときの美樹の天真爛漫な笑顔のみ。まあ、ユーミンのコンサートはどうでもよかったからいいけど。そのときの美樹の笑顔を思い出したことで、僕の不安な気持ちはすっかり落ち着いてきた。フーと、ひとつ深呼吸して僕はコンサートホールへ。

美樹の電話での申し出は以下のようなものだった。

「 健二、ひとつお願いがあるんだけど。」

すっかり自分を取り戻して、澄んだ美樹の声。

「 私の曲の伴奏を、健二のアルトのadlibで。練習は無しで、いきなり本チャンにしましょう。adlibのドキドキ感を期待して。」

午後7時10分。最新アルバムの曲とそのひとつ前のアルバムの曲をいくつか歌った美樹がMCで会場に語りかける。盛り上がりの最高潮の直前だ。彼女のスレンダーな体に白いロングワンピース。力がすっかり抜けている。内面から醸し出される自然な感じ。とても素敵だ。

「 皆さん、こんばんわ、荒井美樹です。随分久しぶりのコンサートになります。ここに来てくれた皆もいろんなことがあったと思う。私にとっても、この2、3年はすっごく意味があったし、かなり変わったと思う。年も27から30になったし・・・。当たり前か?」

「 すっかり落ち込んでしまって、涙しかでない時期もあった。私だけ闇に取り残された感じで。この暗闇が本当に明けるのかと、不安だった。それでも、私は夜明けをひたすら信じていたし、実際に明けたの。嬉しかった。テツガクしちゃって、ごめんなさい。でも、これは私にとって、とても大切なことでした。今はすっかり元気になりました。何に対しても、穏やかで積極的になれる。こんな素直な、優しい気持ちでいられることが嬉しいし、自分を褒めてあげたいほどだな。」



「 次の曲は、丁度、夜の暗闇から朝の光が見えかけて来た頃の曲です。私にとっては、とても大事な曲になりました。聴いて下さい。『PIECE OF MY WISH』」

僕は『PIECE OF MY WISH』のイントロを、できるだけゆっくり、心を込めて吹く。美樹の声が、僕の囁くようなアルトに重なる。

『 愛する人や友達が勇気づけてくれるよ
 そんな言葉 抱きしめながら
 だけど最後の答えは一人で見つけるのね
 めぐり 続く 明日のために

 雨に負けない気持ちを
 炎もくぐりぬける そんな強さ 持ち続けたい
 それでもいつか すべてが崩れそうになっても
 信じていて あなたのことを
 信じていて欲しい あなたのことを 』




(おしまい)





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最終更新日  2017.11.17 09:52:23


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