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- 夢から覚めた時、やっぱり私は泣いていた。 物心付いたときから、何度も見ている同じ夢。 大切な人が死んでしまう夢。 病室に横たわる彼。 泣きじゃくる私。 私の涙を優しく拭う、彼の指先の感触。 妙にリアルで。 切なくて。 悲しい夢。 以前は、多くても月に1回程度だったのに、最近は2、3日に1回程度のペースで見ている。 私の命が、消えかかっている証拠かな。 なんて……。 私は涙を拭いて、窓を開けてベランダへ出た。 今夜は月が明るい。 月の光に照らされて、桜並木がよく見える。 寒さに凍えている桜も、あと3ヶ月もすれば、きれいな花を咲かせる。 桜……見られるのかな……。 それまで、生きていられるのかな……。-
2009.02.14
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「結局、正月は子供とふたりで過ごしたよ」会社の喫煙所で、いつものように今井さんにウィンドブレーカーを奪われながら、僕は今井さんに冬休みの報告をしていた。「そう……」今井さんは、しばらく言葉を捜していたようだったけど、結局何も言わず、短くなったタバコを吸殻入れにそっと落とした。ジュッ、っと火種が消える音がした後も、今井さんはじっと吸殻入れを見つめて黙っていた。僕がタバコを吸い終わった後、社内に戻るエレベータの中で、今井さんは増えてゆく階数表示をじっと見つめたままつぶやいた。「家族って、なんでしょうね……」僕はその答えを持ち合わせておらず、何も言えなかった。でも、ただ、一緒に住んでいるだけでは家族とは呼べないのだろうな、とは思った。
2009.02.12
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それから何日か経って、短い冬休みに入った。妻はシフト勤務だから、暮れも正月も、ほとんど仕事をしている。普段から休みの日でもセミナーだ、勉強会だと言って家にいない。娘も、休日に母親が家にいない事について何も言わない。「何も言わない」という事が「なんとも思っていない」とイコールではない、という事くらい、僕にもわかっている。娘だって、休みの日には家族そろって出かけたいだろう。元旦から妻は夜勤で、僕は娘とふたりで、僕と妻の実家をめぐった。妻は夜勤明けに、妻の実家で合流したものの、夜には「幼なじみと飲みに行く」と言って出かけてしまった。義母は「遊べるときに、遊んでおいたほうがいい」なんて言っていたが、この調子では、妻の「遊べるとき」は一生続くんじゃないかと思ってしまう。義父や義母の相手は娘がしてくれるものの、妻の親類まで押し掛けて来ている妻の実家で、僕は居心地が悪く、落ち着かなかった。義父の薦めるままに、飲めない酒を飲み、僕は早々に酔いつぶれて、眠ってしまった。妻は明け方に帰ってきたようで、昼過ぎまで眠っていた。自宅へ帰る電車の中でもほとんど眠っていたし、家に着いた後も、やっぱりすぐに寝てしまった。ほぼ二日間寝ていなかったのだから、無理も無いといえばそれまで。その日、妻は結局起きなかったが、翌日僕が目を覚ました時には、既に仕事へ出かけた後だった。正月の三日目になって、僕は娘を連れて初詣へ行き、おみくじを引き、露店でチョコバナナを買い、甘酒を飲み、お参りをした。娘が何をお願いしたのか、結局教えてくれなかったが、僕はと言えば「今年は心安らかに過ごせますように」なんて事を願ったのだった。結局、今年も妻はおせちも雑煮も作らず、あまりお正月気分を味わう暇も無いまま、冬休みが終わり、仕事が始まってしまった。僕がブログに書いていた小説は、もちろん主人公の失恋で結末を迎え、そしてネタ切れを迎えた。自分の失恋については、全部書き切ってしまったのだった。そして僕は、ブログに小説ではなく、日記を書くようになった。
2009.02.07
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-新着メッセージがありますJUNさん こんばんはメールありがとうございます。確かに主人公の彼氏は同級生だから、彼女が死んでしまった時に「嘘をついて別れたんだ」ってばれてしまうと思います。その時に、別れてしまったことを後悔するかもしれません。でも、“自分の「彼女」が死んでしまった”と、“「元カノ」が死んだ”では、心の傷の深さが違うのだと思います。彼女はそれを心配して、自分から別れを切り出そうとしています。本当のことを話したら、別れてくれない。別れたくないけど、別れなきゃいけない。嫌われても、恨まれてもいいから別れなきゃいけない。でも、JUNさんの言うとおり、嘘をつくなら、どんな嘘でも一緒ですね。ルリ -結局、ルリさんの小説の中で、ふたりは別れてしまった。「他に好きな人が出来た」という、単純で、明快な理由で。
2009.02.01
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