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赤坂って、久しぶりに来たんだけれど、ずいぶんと変わったねぇ…オシャレな店ばかりや…あ!なんで遊園地にあるようなメリーゴーランドがあるのッ!?と、物珍しそうにキョロキョロしながら向かったのは、赤坂ACTシアター現在公演中の劇団☆新感線・いのうえ歌舞伎・壊(Punk)『蜉蝣峠』を観劇そこは人呼んで「蜉蝣峠」照りつける強い陽射しのせいで大気が揺れ、その向こうに見える筈のないものが見えると、言われるしかし、その男には何も見えないたた時折、血の匂いが鼻をかすめるのみである(公演チラシより)劇団☆新感線の舞台を観るのは、昨年新宿コマ劇場で公演された「五右衛門ロック」以来二度目なんだけれど、今回もパワフルな作品だった歌あり、笑いあり本筋から脱線するあたりは、ちょっとやり過ぎなのでは?と思うぐらい、やりたい放題色々な意味で、かなり濃ゆいです舞台上で繰り広げられるこの世界観、やっぱり自分好きだなぁ物語の内容はと言うと、とある集落で対立するヤクザの抗争に巻き込まれることになった記憶喪失の男が、失われた記憶と自分自身を取り戻していくのだが、そこには恐るべく真実が隠されていたというもの登場人物それぞれが辛く暗い過去を背負い、胸の内に封じながら、それでも必死になって日々を生きるちょっとストーリーが複雑なので、自分の頭では、1回だけの観劇じゃスッキリと話の整理がつかないかもしれない役者の方々は、どの方もキャラクターにハマっている主演の古田新太氏の緩急自在の演技、堤真一氏の存在感、高岡早紀氏の透明さ、若手人気俳優の2人もパワフルで、それぞれが活き活きとしているが、なかでも盲目の主人・がめ吉を演じた梶原善氏に強く惹かれた人を思いやる優しさ、その優しさがゆえのラストに見せる狂気が、身体全体から迸っていた人間の狡さと醜さ、欲望、復讐、跡目争い、過去の惨劇終幕に向かって明かされていく闇太郎の過去と正体…その事実をつきつけられ、運命の悪戯に翻弄される人々…血なまぐさい匂いがプンプンする内容は、かなりヘビーそして、あまりにも救いようのないラストを見せられて、止めを刺されたそんな終わり方をするだなんて…確かにドラマチックではあるけれど、後味悪いよ胸を締め付けられるような切なさとともに、黒い影が自分の心に深く鋭く差し込んだしかし、不思議と不愉快さは残っていない心地よい後味の悪さなのである重く暗いどんよりとしたまどろみのなかにいた自分は、現実の世界に引き戻されたことによって、今見たばかりの世界が、まるで陽炎のようにゆらゆらと消えゆくのを、ただただ黙って感じているのだった劇団☆新感線 二〇〇九春興行いのうえ歌舞伎・壊(Punk)『蜉蝣峠』赤坂ACTシアター3月13日(金)~4月12日(日)まで出演/闇太郎…古田新太/天晴…堤真一/お泪…高岡早紀/銀之助…勝地涼/サルキジ…木村了/がめ吉…梶原善/流石先生…粟根まこと/お寸…高田聖子/立派の親分…橋本じゅん ほか
2009年04月10日
2009年春、746席の銀河劇場は、大きな感動の遊園地になります愛する人に伝えたいブロードウェイ・ミュージカル『回転木馬』亡くなった青年が、生前抱き上げるチャンスもなかった我が子を助けるために、天国から1日だけ地上へ舞い降りることを許される…ポスターがとってもメルヘンチックだったので、心ときめくきっと楽しい作品なんだろうと、期待して観劇してみたんだけれど…異性関係にだらしなく、定職にも就かない男ビリージュリーとは愛し合って結婚したものの、貧しいその生活は、二人にとって決して幸せなものではなかったそんななか、ジュリーが妊娠していることが判る喜ぶビリーだったが、仕事も無く、お金も無いビリーは将来のことを考えると不安になり、誘惑に負けて強盗の片棒を担いでしまうしかし、その強盗も未遂に終わってしまい、追い詰められたビリーは自らの命を絶ってしまうん?珠玉のファンタジー・ミュージカルって謳っていたけれど、どこがファンタジーなの!?どうしようもない男そのどうしようもない男に惚れてしまい、ただひたすら耐える女ずいぶんと生臭い話じゃん!って思ったら、後半になって物語の雰囲気が変わる天に召されたビリーは、星の番人によって1日だけ地上に戻ることが許され、はじめて我が子と対面するここら辺が、ファンタジー・ミュージカルと言われる所以なのだろうでも、全くといっていいほどファンタジーさは感じられないワクワク、ドキドキといった感情が、自分のなかで不思議と沸いてこないのだただ、物語を淡々と観ている感じそうこうしているうちに、大きな見せ場もないままに、あっさりと終了う~ん…なんだろ、この物足りなさは全編を通して話が軽すぎるような気がする作品もそうなのだが、舞台装置も、面白みがなかった終始、石壁のようなセットが出っ放しで、画面に変化がないしかも、肝心の回転木馬もみすぼらしい画も、話も華やかさに欠けたら、舞台を観ていても素敵な夢は見させてもらえない“愛する人に伝えたい”生前は、その思いを伝えることができなかったが、死んでしまった今、その思いを伝えたいことに気づくでも伝えることはもうできない要は、“愛する人には、自分の気持ちをちゃんと伝えなさい”という事を作品を通して言いたいのかな?風花舞氏の憎々しい演技、カーニバルボーイを務める三木雄馬氏のしなやかな肢体、はいだしょうこ氏の汚れなき真っ直ぐな演技と、要所要所に見所のポイントはあったのだが、如何せん夢を見させてくれるような華やかさに欠けたのが残念だったミュージカル『回転木馬』天王洲銀河劇場3月19日(木)~4月19日(日)まで出演/ジュリー…笹本玲奈/ビリー…浦井健治/キャリー…はいだしょうこ/スノウ…坂元健児/ネッティ…安奈淳/ジガー…川崎麻世/マリン夫人…風花舞/星の番人…安原義人/カーニバルボーイ…西島千博・中川賢・三木雄馬(トリプルキャスト) ほか
2009年03月24日
久しぶりの休日と言うことで、今日は昼と夜に舞台鑑賞!お芝居にしろ、ミュージカルにしろ、舞台を観ているときは、ひと時だけでも現実を忘れることができるだから、決して安いとは言えない趣味とはいえ止められないんだよねまず始めに観るのは、青山劇場にて公演中の『カゴツルベ』顔に大きな痣を持ち、外見に強いコンプレックスを抱きながら生きる次郎左衛門花の吉原で出会った花魁・八ツ橋に一目惚れした次郎左衛門は、八ツ橋との愛を深めていくそれが偽りの愛と知りつつも…嘘と欲とが絡み合う吉原八ツ橋へひたむきな愛情を傾ける次郎左衛門は、要求がされるままに大金を叩く初めて知った愛に溺れていくなか、その影では様々な出来事が暗躍していることを次郎左衛門はまだ知らない気づいたときには、窮地に立たされていたのであった追い詰められた次郎左衛門が取った行動とは…吉原の恋、妖刀“籠釣瓶”、ふたつの魔力にとり憑かれた男の哀しい物語面白そうな舞台だと思って観劇することにしたものの、劇場に向かう足取りはなぜか重たかったというのも、この作品の舞台の主役を務めるのは、関ジャニ∞のメンバーの一人である安田章大氏そう、ジャニーズ事務所に所属する今をときめくアイドルの一人と言うことは、客層も熱狂的なファンばかりなんじゃないだろうか?と思ったからであるそんななかで観劇するのは、ちょっと肩身が狭くて辛いでしょでも、他の役者さん達も出演している舞台だから大丈夫か!と、気を取り直してみたのだが、劇場に着いてその思いは脆くも砕かれた女性ばっかりじゃん!しかも若い子たちばっかり客席を埋め尽くす女性たちしかも劇場の座席はピンクで、空間はなんだかメルヘンチックそんななか一人ポツンと座る自分…完全な場違いなんだか息苦しい…男性の姿を目で追っても、数人しかいないよ客席が女性ばかりというのは、宝塚の舞台を観にいくと出くわすシーンなので慣れてはいるのだが、これはこれでまた客層が違って、ちょっと、いや、かなり苦手だなと、肩身の小さな思いをしていたさてさて、『カゴツルベ』は、1696年頃に河竹新七に創作され、現在でも高い人気を誇る歌舞伎の演目「籠釣瓶花街酔醒」を原案とした作品400年近く経った作品だが、まったく古臭さを感じさせない顔と身体にある大きな痣をコンプレックスに生きる若旦那が、吉原で出会った当代一の売れっ子花魁・八つ橋と出会ったことから、生きる喜びを得るとともに、坂道を転げ落ちるようにして転落の人生を辿っていく吉原を再現した凝った装置、艶やかな衣裳、歌にダンス、立ち回りがあったりと、舞台上では煌びやかな吉原の世界が目くるめく展開されていくその華やかさがあるからこそ、人間たちの哀れさ、優しさ、愚かさ、醜さが、対比となり際立って浮かび上がってくる主演の次郎左衛門を演じる安田章大氏正直言ってあまりその活躍ぶりは存じあげないのだが、舞台上の姿は堂々としているなんともいえない愛くるしい笑顔を見せたかと思えば、後半では、目をギラギラとさせた狂気に憑かれた表情を滾らせる喜怒哀楽を身体全体を使って巧みに表現していた次郎左衛門の身を案じる人々が、何度となく彼に忠告をしたにもかかわらず、次郎左衛門は盲目に一途な愛を貫こうとするそれゆえに、彼女の為をと思い、数々の犠牲を払ってまで身を費やしてきたのに、それが報われないことを知ったときに出た、「花魁、そりゃあんまり袖なかろうぜ」というセリフは、あまりにも切なく、辛くて、自分の頬に一筋の涙が伝った人を愛することって、なんなんだろう愛は喜びを与えるけれど、ときには苦しみも与える傷つき、傷つけられ、それでも人は人を愛す愛って…それぞれの役者さん達は、皆作品の世界のなかでしっかりと息づいているなかでも女郎屋の女将・お辰を演じた鷲尾真知子氏は見事な演技これが、憎たらしいのなんのって強かさ、狡賢さは観てて腹が立ったくらい客にここまで思わせるというのは、自分が物語の世界に入り込んでいるというのもあるが、役者さんの演技にリアリティーがあるからだね物語は、救いようのない、かなりヘビーな内容だったが、作品的にも視覚的にも、とても満足のいく作品ほんと素敵な舞台だったカーテンコールで、安田氏が満面の笑顔で客席に向かって手を振ったら、お客さんたち一斉に立ち上がって「キャーキャー」言いながら舞台に手を振り返していた!?!?!?その光景に呆気に取られる自分…あぁそうか、彼はアイドルやもんね物語の余韻から、一気に現実に引き戻された瞬間であった舞台『カゴツルベ』青山劇場3月16日(月)~31日(火)まで出演/次郎左衛門…安田章大/八ツ橋…藤澤恵麻/栄之丞…西岡徳馬/治六…風間俊介/お辰…鷲尾真知子/文左衛門…岡田浩暉/すあま…舞風りら/九重…松澤一之 ほか
2009年03月24日
今日は、夜からパルコ劇場で公演中の舞台『ストーン夫人のローマの春』を観劇空虚な心、孤独な人生、よりどころを失った一人の女優行き着いたのは、イタリア・ローマそこは彼女の心とは対照的に活気に溢れ、すべてに貪欲な街肉体の深くに秘められていた熱い情熱を、ローマの太陽が炙り出す男娼に溺れてゆく女優の性の目覚めと崩壊美しく、哀しく熱い物語(公演チラシより)この作品は、本来は、2月28日に初日を迎える予定だったのだが、「芝居の質が、求めるレベルに達しなかったため」と、初日の公演が急遽中止となってしまった公演中止は初日公演1回のみで、昨日3月1日には無事幕が上がったという今日は2回目の公演となるわけだが、観た限りでは、とても完成度の高い舞台のように思えた場面転換や、小物の使い方、音楽、それから衣裳に至るまで拘りがすごく感じられる舞台上では、貪欲な人々たちが蠢いていて、飾り気の無いセットのなかでも、たしかにローマの匂いをキャッチした自らの衰えた容姿に悲観して女優を引退したカレン・ストーンは、夫のトムと二人でローマへと向かうところが、その途中で夫は急死傷心のカレンは、一人でローマに到着し、そのまま住み着いてしまう友達も相談相手もいないカレンは、生きる気力を見出せないままでいた寄ってくる男どもは皆、お金が目当てそのことを見透かしているカレンは、相手にすることはなかったそんなローマでの日々のなか、パオロという一人の青年と出会う彼の誠実さに今までとは違う何かを感じたカレンは、次第に彼に惹かれていくしかし、パオロは、寂しい金持ち女性を見つけては男娼を近づけさせて金を巻き上げるという、ポン引きまがいの生活をしているコンテッサが送り込んだ男娼だったのだその事を知ってか、知らずか、カレンは、パオロとの愛に溺れていった…観ているのがすごく辛い舞台だった辛いというのは、つまらないという意味ではなくて、物語の主人公が、なんだか自分の将来の姿を見ているような気がして、胸が締めつけられる思いをしたのだ孤独感に苛まれ、その寂しさを紛らわすために、ひとときの夢を見るやがて、再び自分のなかに訪れるであろう虚しさを知りつつも、今ひとときの悦楽に浸るそのかりそめの幸せは、美しく、甘く、儚く、そして残酷だ自分も歳を取ってから、同じ喜びや苦しみを味わうような気がして、息苦しくて、正視するのがとても辛かった自分はどれだけ生きられるかわからないしかし、平均寿命からすると、まだ半分も生きていないこれから迎えるであろう晩年のときを迎えたとき、自分は何をしているのだろうか?何が残されているのだろうか?生きることに希望を持てているのだろうか?ストーン夫人の生き様を通して、遅くに訪れる春に淡い心を寄せながらも、また、悲観的な思想を抱えた主役のカレン・ストーンを演じる麻実れい氏は、とにかく舞台映えがする女優さんスラッとした長身のスタイルは、どんな衣裳を身にまとってもキマッているハマリ役といっても過言ではないほど合っていて、演じている役に説得力があった麻実氏の“陽”の演技とは対照的に、“陰”の女性コンテッサを演じた江波杏子氏は、凄みと落ち着きのある演技を魅せることによって、二人の対照的な女性像を浮き彫りにしていた物語は、「この先、一体どうなってしまうのだろう?」と、これからがドラマティックな展開を迎えるであろうというところで、鮮やかな幕切れそのラストシーンが、とっても印象的だった舞台『ストーン夫人のローマの春』パルコ劇場3月1日(日)~3月22日(日)まで出演/カレン・ストーン…麻実れい/コンテッサ…江波杏子/ミスター・ストーン…団時朗/クリストファー…今井朋彦/パオロ…パク・ソヒ/若い男…鈴木信二/ジュリア…中川安奈 ほか
2009年03月02日
今日は休みなので、午前中まったりと過ごすと、午後からは観劇の為に下北沢にある本多劇場へ実は、密かに今日の観劇を楽しみにしていたので、ちょっとワクワクしている別に好きな役者さんが出演しているわけでもないのに、なんだか変な胸の高鳴りを覚えていた今日観劇するのは、真心一座 見も心も 『流れ姉妹 たつことかつこ~獣たちの夜』殺したはずの母が生きていた!?流れ続けてきた二人の姉妹の運命を握る母ついに二人は、母に出会うのか!?そして新たな愛を紡ぐ二人の男との運命は…この公演を知ったのは、別の舞台を観劇に行った際に貰った大量のチラシ舞台を宣伝するチラシをペラペラと捲っていると、その中のうちの一枚に目が留まったなんだ?この凄いインパクトは!?まるで昭和の時代の映画のチラシを思わせるような極彩色のつくりタイトルが『流れ姉妹…獣たちの夜』って強烈すぎ!しかも、自分の中では厳格なイメージの印象が強い、女優の木野花氏のレオタード姿にはおったまげた!なんでそんなキャッツ・アイ(昔漫画であった美人三姉妹の泥棒の話ネ)みたいな格好しているのさ!?と、アレコレ興味津々!これは観にいかねば!とずっ~と思っていたのだ舞台『流れ姉妹~たつことかつこ』は、シリーズ物なんだとか2005年、2007年と上演され、今回がシリーズ3作品目訳ありの姉妹が、全国に流れつきながら、毎回その土地土地で様々なトラブルに巻き込まれて…というのが話の主軸らしいまったくの新参者の自分が、シリーズものの途中から観て楽しめるのか?と思ったが、結果は大いに楽しめたいやぁ、ほんと凄い!舞台上で繰り広げられるエネルギッシュさ、阿呆臭さ、エロチシズム、さまざまな愛のかたち、人間の賢さと愚かさ…生きることに必死で、生きることに不器用な人々たちの、哀しくて可笑しい人間模様現代の設定の話なのに、どうしてこうも昭和の匂いがプンプンと漂っているのだろうか?なんだか昭和のちょっとエッチなB級映画を見ているかのようこれはある種の褒め言葉ね舞台としては、結構完成度が高いエンターテイメントに仕上がっているんだからこの世界観好きだな今のこの時代だからこそ、この泥臭いダサさがカッコよく自分の目には映ったのかもしれないそうそう!この舞台を観ようと思ったキッカケとなった、チラシに載っていた木野氏のレオタード姿だけれど、舞台では披露されることはなかったが!バスタオル1枚だけ身体に巻いての格闘シーンあり、ボディコンのような衣装あり…と、阿婆擦れの母親像を大熱演!パンフレットでは「仕事を受けようか迷った」なんて談話が載っていたが、そんなことを微塵にも感じさせない堂々ッぷりさすが女優さんやね“がや”と呼ばれる大部屋俳優的扱いの役者さん達も、4人だけで入れ替わり立ち代り色々な役を務めていて、その役のどれも活きていて感心させられた期待通り、いや期待以上の作品だったとにかく内容は、最初から最後までてんこ盛り失笑あり、苦笑あり、普通の笑いあり…と、色々な笑いを楽しませてもらったラストも続編を匂わす展開となっており、まだまだたつことかつこの二人の旅は、これからも続くみたいこの姉妹がどういった運命を辿るのか、最後まで見届けたくなった続編はいつ公演されるのかな?姉妹に会える日が楽しみ…真心一座 身も心も『流れ姉妹 たつことかつこ~獣たちの夜』下北沢本多劇場2月18日(水)~22日(日)まで出演/根上たつこ…千葉雅子/根上かつこ…村岡希美/鳥塚幸也…高橋和也/美浜慎也…中村倫也/根上澄江…木野花/谷村寛…坂田聡/末次優二…河原雅彦/日替わりゲスト…マギー ほか
2009年02月21日
旧赤穂藩の藩士たち47人が、主君・浅野内匠頭の仇である吉良上野介を討ち取った事件を題材にした“忠臣蔵”は、映像や舞台などで度々取り上げられている作品それぞれの作品は、大石内蔵助や大石の妻りくといった様々な登場人物の視点を通して物語が展開したり、物語に新たな解釈などを加えるなどして色々な角度からスポットライトを当て、“忠臣蔵”という一つの題材でありながらも、そのどの作品もが違った趣を持っている今日観劇する舞台『冬の絵空』も忠臣蔵を題材にしたもの一体、どんな作品なのだろうか?生きることは絵空事、束の間の妄想にすぎないうつつか夢か、光か影か、桜か雪か…真を求めて偽に出会う舞台は百花繚乱元禄の世あの「忠臣蔵」が、今、虚実の狭間に蘇る(公演チラシより)この作品の特色といえば、松の廊下にて刀傷沙汰を起こして切腹を命じられた浅野内匠頭が、実は切腹をしたのは身代わりで浅野本人は生きていたということそして、浅野が生きていたことによって吉良上野介を殺す道理が無いと、討ち入りを拒む大石内蔵助に業を煮やした商人天野屋が、討ち入りを陰で操るという2つの点かなりの大胆なアレンジではあるが、それでも忠臣蔵の世界観が損なわれることはなく、新たな忠臣蔵を見たような気がした今回が初舞台という主演の藤木直人氏は、とにかく立ち姿が美しくて絵になる男の眼から見ても惚れ惚れするカッコよさちょっと硬さの残る実直な演技に好感が持てた橋本じゅん氏や中越典子氏らは手堅く安定した演技でまとめ、それとは好対照のように、生瀬勝久氏や粟根まこと氏の緩急自在な芸達者ぶりが笑いを誘い、目を惹く「冬の絵空」は独創的な忠臣蔵の世界ではあるが、さすがに吉良上野介が男色家という設定はいくらなんでも?と思ったが、そんな疑問を払拭するほどのパワーを持っていた粟根氏の怪演ぶりは実に見事色々な思惑が生み出した絵空事嘘が真になり、真が嘘になる…何が正しくて、何が間違っているのかその絵空事に翻弄される人々たちやがて辿り着くであろう行き着く先が真っ暗闇に包まれていようとも、今を必死に生きるせつなくて、悲しくて、やるせなくて、観終わったあとは、胸を締めつけるなんともいえない余韻が残るそれもこれも、絵空事がなせる業なのだろうか…サンケイホールブリーゼ 柿落とし公演『冬の絵空』世田谷パブリックシアター1月12日(月)~2月1日(日)まで出演/沢村宗十郎…藤木直人/天野屋利兵衛…生瀬勝久/大石内蔵助…橋本じゅん/おかる…中越典子/吉良上野介…粟根まこと・松尾貴史(Wキャスト)/順…加藤貴子/シロ…片桐仁/浅野内匠頭…中村まこと/大野九郎兵衛・清水一学…伊達暁/堀部安兵衛…内田滋 ほか
2009年01月27日
好きな映画のひとつに、レオナルド・ディカプリオ主演の『タイタニック』がある1912年のタイタニック号沈没を背景にした作品で、豪華客船の沈没というスケールの大きさや、そこで繰り広げられる人間模様もさることながら、画家志望の青年ジャックと上流階級の娘ローズの愛を貫こうとするひたむきな姿は、何度観ても泣けるそんな豪華客船タイタニック号をミュージカル化した作品を観るために、東京国際フォーラムへと出かけた…ミュージカル『タイタニック』豪華客船「タイタニック号」の出港から沈没までの5日間の乗客・乗員の姿を描いた群像劇作品タイトルは映画と同じだが、ストーリは全く関係なく、舞台では、松岡充氏演じるタイタニック号の主任設計士が主人公となっている2年前の2007年に日本で初演されたとき、興味はあったもののタイミングが合わずに観劇することができなかったので、今回の再演は心待ちにしていた豪華客船に乗り込む様々な階級の人々、そして携わる乗組員たちのキャラクターがそれぞれ息づいていて、夢や希望に満ちている姿から、豪華客船の船出の期待、そして楽しさがこちらにまで伝わってくる1幕目はそんな明るく楽しい場面が繰り広げられていくのだが、氷山に衝突して沈没する恐れが出てきた2幕目からは、一変して緊迫した展開に変わるしかし、その緊迫感がいまいちこちらにうまく伝わってこないというのも、ミュージカルだから仕方ないのだろうが、船が沈没するというのに、歌いながら乗客を誘導するシーンなど、そこは歌わなくてもいいのでは?というシーンがあり、白けてしまったのであるそれと、舞台には色々な制約があることは重々承知しているが、やはり最大の見せ場である船が沈没していくシーンの迫力が欠けたのも残念とはいえ、舞台で一体どうやって魅せるのか非常に興味深かったのだが、結果からすれば、なかなかうまく工夫されていた舞台版のタイタニックは、パニック映画のような船が沈没していくシーンがさほど描かれていない分、船に駆けた、船に夢や希望を乗せた人々たちをクローズアップした人間味溢れた群像劇に重点が置かれている人を愛するということ人を想うこと生きるということ死ぬということ死の恐怖を直面にした人間たちの、胸が詰まるようなシーンが次々と畳み掛けるようにして続く乗員乗客に対して救命ボートが圧倒的に数が足りず、やむを得ず上流階級の女性と子供を優先的に救出我先に助かろうと剥き出しになる人々、そして端から切り捨てられてしまう下級の人々たち…同じ人間のはずなのに、皆平等なはずなのに、生と死を分けたものとは一体何だったのだろうか?いつの時代も、世間は弱者に対しては冷たいんだなぁ…と、なんだか現代社会に通ずるものを覚えた映画のような激しいロマンチックなストーリーも無ければ、スリル感もない映画と舞台は別物と頭のなかでは判っていても、どうしても比較してしまうゆえに、ついつい辛口な見方になってしまうのだが、舞台版タイタニックは、全体的にあっさりと味付けされた感じでも、これは映画のタイタニックと比較してしまう自分の意見であって、舞台としてだけみれば、結構楽しむことができた出演者の方々はどなたも輝いていたが、特に、二等通信士を演じた岡田浩暉氏、一等船客に憧れる夫人を明るさで嫌味なく演じた入江加奈子氏、堂々とした風格を漂わせる船長の宝田明氏の演技が印象に残った素敵なミュージカルナンバーもいくつかあり、悲劇の物語ではあるが、生きることに懸命だった人々の生き様が目に焼きついているせいか、暗い気持ちにならずに、前向きに劇場を後にすることができたミュージカル『タイタニック』東京国際フォーラム ホールC1月24日(土)~2月8日(日)まで出演/トーマス・アンドリュース…松岡充/キャプテン・E・J・スミス…宝田明/ハロルド・ブライド…岡田浩暉/J・ブルース・イズメイ…大澄賢也/フレデリック・バレット…宮川浩/イーダ・ストラウス…諏訪マリー/アリス・ビーン…入江加奈子/ウォーレス・ハートリー…浜畑賢吉/ケイト・マクガワン…華城季帆/ウィリアム・マードック…戸井勝海/ヘンリー・エッチズ…藤木孝/ジム・ファレル…Kimeru/イジドー・ストラウス…光枝明彦 ほか
2009年01月24日
2009年最初の観劇は、花組芝居『泉鏡花の夜叉ケ池』“ネオかぶきのあるべき姿を予見し、「鏡花といえば花組」という呼び声のキッカケとなった衝撃の花組版夜叉ケ池”三國ケ獄の麓の里、龍神が住むという夜叉ケ池日に三度鐘をつく掟を破れば、村はたちまち全て水の底に沈むという諸国を旅する学者僧、山沢学円がこの里で出会った鐘守りの男は、行方不明の友人、萩原晃だった…(公演チラシより)今回の公演は、主要の役柄がWキャストとなっており、さらには日替わりゲストが出演するという自分のスケジュールの都合で決めた、今日観劇する夜の公演は、若手コンビの那河岸組の回で、日替わりゲストは、竜小太郎氏青山円形劇場というのは、舞台と客席がとても近く、間近でお芝居を観れるので、今日の観劇を密かに楽しみにしていた初演から十八年…再演を重ねている花組芝居の代表作と言っても過言ではない『夜叉ケ池』自分の想像力が浅はかなのか、想像を絶する奇奇怪怪な空間が目の前に繰り広げられた泉鏡花の原作を知らない自分が言うのはおこがましいが、一応粗筋は頭に叩き込んでおいたのだが、それでもちょっと自分には判りづらかったもう自分にはこの世界観が理解することが難しく思えてきたので、途中からは話の筋を追うことは止め、不思議で、妖しい、魑魅魍魎の世界を純粋に楽しむことにしたそれなので、観終わったあとも「楽しかった」とか、「面白かった」という一言で片付けられる感想ではなく、なんとも言いようがない不思議な余韻だけが、自分の中にまるでわだかまりのように残った青山円形劇場はその名の通り、丸い舞台が中心にあり、その舞台を囲うようにして客席がある演者はすべての観客に対して前を向いて演技をすることはできないので、どうしても見えづらいシーンが生じてしまうのだが、丸い舞台を活かした演出がとられていて、その点はさほど気にならなかったそれよりも、とにかく舞台と客席が近くて、間近で演技を観れるのが嬉しいあまりにも近すぎて、視線が合うものなら、こっちがドキドキしてしまうぐらい花組芝居の座長である加納幸和氏演ずる白雪姫間近で見たけれど、お世辞抜きでキレイだった年季も入っているせいか、舞台上での振舞いは堂々たるもの主演コンビの萩原晃と百合を演じた小林大介氏と二瓶拓也氏骨太で男勝りの小林氏、まだ女形に慣れていないのかぎこちなさが伺えながらも、かえってそれが初々しく映る二瓶氏のコンビは、好対照でなかなか他の役者さんたちも水を得た魚のように、それぞれの役を演じている日替わりゲストである竜小太郎氏は、百姓の与十と、博徒の伝吉の二役を務めた百姓のときは三枚目を演じていて、はじめは誰だか判らなかったほどだったが、後半に伝吉として登場してきたときは、粋に着物を着こなし、客席からは拍手喝采さすがは“流し目のスナイパー”という異名を持っているだけあって、立ち姿ひとつでも決まっている軽快にアドリブを飛ばしたり、自身の公演の宣伝をするために客席を回ってチラシを配ったりと、笑いを誘っていた芝居の途中、客席から数人ピックアップして舞台上にあげて一緒に踊って芝居に絡ませたり、歌詞カードを客席に配って劇中歌を皆に歌わせたりと、お客さんを巻き込んでの展開そのせいか、舞台上ではあまりにも現実離れした話が繰り広げられている筈なのに、不思議と隔たりを感じることはなかったこれが、花組芝居の魅力なのだろうかまた、ちょっとだけ好きになってしまった…花組芝居『泉鏡花の夜叉ケ池』青山円形劇場1月12日(月)~1月22日(木)まで出演…萩原晃…小林大介/百合…二瓶拓也/山沢学円…秋葉陽司/白雪姫…加納幸和 ほ
2009年01月16日
新宿コマ劇場での観劇を終えると、夜から観劇する公演が行われる前進座劇場がある吉祥寺へと移動したわりと時間に余裕を持っていて、観劇するまでちょっと時間があったので、辺りをぶらぶらと散策実は、吉祥寺に足を向けるのは初めてなんだか色々と見所があって、面白い街だね雑貨屋などゆっくり見て廻っていたら、アッという間に時間が過ぎていた急いで劇場に行かねば!さてさて、2008年今年最後になるであろう観劇する作品は、世にもおどろおどろしい舞台ヘロヘロQカムパニー第20回公演の『八つ墓村』言わずと知れた、推理作家・横溝正史氏原作の名探偵金田一耕助が活躍する作品の舞台化である招かれざる故郷で目にしたモノは、父の孤独と母の闇…300年の怨嗟に凍る山村で起こる連続殺人!狂気の所業か、怨霊の祟りか?今、名探偵が駆ける!(公演チラシより)“八つ墓明神の祟りじゃぁぁぁぁ~”という名ゼリフや、頭に懐中電灯を括りつけた男が大量殺戮を繰り広げるなど、インパクトが強いシーンが印象に残る『八つ墓村』は、映画やドラマなど何度も映像化されてきた作品自分は、渥美清氏が金田一耕助を演じた映画版をテレビで観てストーリーは頭の中に入っていて、犯人を知っているので、今回は謎解きを楽しむというよりは、あの壮大な話をどうやって舞台化したのか?という興味を持って観劇したで、感想はというと…想像していたよりは、なかなかの出来栄えだったシーンのカット割が多いので、基本的には映像向きの作品なのだが、そこらへんは舞台版として、うまく処理していたと思う魅せ方も舞台ならではに工夫していて見応えはあったただ、セットやシーン展開など、かなり視覚的に見劣りするので、自分のイマジネーションを膨らませて、絵に色付けしていかないと安っぽく見えてしまい、うかうかしていると横溝正史氏が放つおどろおどろしい世界観にドップリと浸かることができないスケール的に、本来は舞台化するには不向きな作品のような気がしたが、座長の方が『金田一耕助を舞台化したかった』というだけあって、その意気込みは大いに感じられて、あえてチャレンジしたその偉業は意味のあるものだったと思う犯人が罪を犯した動機は、愛する人の為の、独り善がりなものだったんだけれど、大罪のまえで愛を叫ばれても、それは無情の響きにしか聞こえなかった愛ってなんなんだろう愛は喜びを教えてくれるし、残酷なことも突きつけてくる人を愛することって…自分に答えは出せないなそれにしても、村に伝わる落武者伝説に、陰惨な連続殺人事件というヘビーな話なだけあって、観終わったあとドッと疲れてしまった終幕は一応ハッピーエンドにはなっているものの、内容が内容だけに、その爽やかな余韻も見事にかき消されてしまい、なかなか重たいものを背負わされた感じう~ん面白かったんだけれど、やっぱり後味は悪いよね決してキライなわけじゃないんだヨ…ヘロヘロQカムパニー第20回公演『八つ墓村』前進座劇場12月10日(水)~12月14日(日)まで出演/金田一耕助…関智一/寺田辰弥…永松寛隆/森美也子…長沢美樹/田治見久弥・要蔵・庄左衛門(3役)…中博史/田治見春代…三石琴乃/里村慎太郎…小西克幸/里村典子…沢城みゆき/諏訪弁護士…中尾隆聖/磯川警部…辻親八 ほか
2008年12月12日
今年は例年に比べて、バラエティーに富んだ沢山の舞台を観たが、今日は今年最後の芝居見物の日という事で、仕事休みの今日は、なんと昼夜に舞台鑑賞の予定を詰め込んだまず観るのは、新宿コマ劇場で公演中の『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも』今年末で52年の歴史に幕を下ろす新宿コマ劇場の最後の作品である戦争と激動の時代に翻弄されながらも、舞台に夢を賭けたタカラジェンヌたちの哀しくも美しい愛と青春のミュージカルこの『愛と青春の宝塚』は、2002年に藤原紀香氏主演でテレビドラマとして放映されたもので、戦前・戦中・戦後という激動の時代に、舞台に青春を賭けたタカラジェンヌたちの恋愛・友情・生きざまを描いた作品それを今回は、ミュージカルとして舞台化したものテレビドラマも見ていて、舞台の出演者は、元タカラジェンヌということで、ちょっと期待していた作品だった物語の主要人物はWキャストが組まれており、4つの組み合わせで公演スケジュールが組まれている今日自分が観劇する回は、湖月わたる氏、貴城けい氏、大鳥れい氏、映美くらら氏という顔触れすごいね客席は後ろの席までほぼ満席状態宝塚という独自の世界が成せる業なのかそれとも、新宿コマ劇場が最後だからという歴史が成せる業なのかその答えは自分には知る由もないが、異様な熱気に包まれたなか舞台の幕は上がった…女性だけの劇団として名を馳せていた宝塚歌劇団第二次世界大戦で戦況が悪化していくなか、歌劇団も時代の渦中に巻き込まれていく大劇場は閉鎖、夢を売る華やかな世界から一転、戦地への慰問、軍需工場での労働、さらには戦火にも晒され、戦争によって運命を大きく翻弄されていく明日のことさえ分からない絶望的な日々を送りながらも、愛に生き、友情に生き、そして夢を見続ける幾度となく挫けそうになりながらも、タカラジェンヌとしての誇り、夢を諦めずにただひたすら前向きに生きた女性たち…作品は、戦争という重いテーマを背景に据えながらも、生きることに懸命だった女性たちの姿を描いたことによって、暗くなりがちな題材に光明を差し込ませた宝塚歌劇という題材ではあったが、時代設定ゆえに、オープニングのレビューシーン以外は、あまり煌びやかな世界は舞台上では展開されないが、それだけに彼女たちの生き様が輝きを放っていて、眩しく見えたのだった今回はミュージカルということで、宝塚のレビューシーン意外でも、歌の場面があるのだが、これは正直言って、ミュージカル仕立てにしなくても、普通のお芝居でよかったのでは?と思ってしまった死の恐怖に怯える兵士を慰めて歌うシーンなど何場面か素敵なシーンもあったのだが、物語の流れを断ち切って歌い始めるのが唐突すぎるし、無理に歌にしなくてもいいようなシーンもあったからだたとえば、すき焼きを食べるシーン「すき焼きは松坂牛~特上ロースで霜降り~」なんて歌われても、???って感じ折角素敵な話の作品なだけに、落ち着いて観たかった舞台は、終戦を迎え、復興を目指してこれから…という明るい未来を予感させて終幕するそれゆえに、ボロボロの舞台衣装を身にまとって終演の舞台に立つ役者さんたちを見て、これで終わりなんだ…と、華やかさに欠ける終わり方だな…なんて思っていたら、5分間の休憩を挟んで、ちょっとしたショーがついていた宝塚を代表する曲『すみれの花咲く頃』を現代調にスタイリッシュにアレンジしたダンスで、最後には、新宿コマ劇場の名の由来ともなっている、この劇場ならではの独特の盆舞台の機構をフルに活かしての演出で魅せてくれた最後の最後でやってくれたな…って感じそれと同時に、あぁこれで見納めなんだ…と、寂しい想いが去来したスタンディングオベーションでの拍手に包まれるなか、静かに幕は下りた観客が一斉に出口に向かって歩き出していくなか、自分はしばし客席に座ったままでいたもうここを訪れることはないだろうそう思ったら、なかなか席から離れることができなかったのであるはじめて新宿コマ劇場を訪れたのは、高校を卒業して花屋に就職したときである当時、新宿コマ劇場は“演歌の殿堂”と呼ばれ、北島三郎氏、細川たかし氏、小林幸子氏といった演歌歌手の方々が“芝居+歌謡ショー”という2部構成のスタイルをとった座長公演を毎月銘打っていたその公演の舞台初日になると、舞台に出演される色々な役者さんへお祝いとして胡蝶蘭などの鉢をお届けするそのために、車いっぱいに初日祝いの花鉢を積み込んで劇場を訪れていたというわけ別に役者さん当人に会えるわけではないのだが、それでも劇場の裏側や楽屋など普段入る機会など滅多にないことなので、ドキドキしながら配達していたことを昨日の日のことのように覚えている特に新宿コマ劇場は、建物が古いせいか通路も狭く、楽屋が入り組んでいたので、印象に残っているのだそんな自分が始めて新宿コマ劇場で舞台を観たのは、1997年12月藤田まこと氏の座長公演『必殺仕事人』だった観劇できなくなってしまった知り合いの方にチケットを頂き、後ろの方の席で、喰らいつくように舞台を観たもうあれから11年も経ったのか月日の流れは、ほんと早いものである自分なりに思い出が詰まっている劇場なだけに、この劇場が無くなってしまうのはほんと悲しい良くも悪くも、この昭和テイストがプンプン匂う新宿コマ劇場が好きだった気づけば、客席には殆ど人影が残っていなかった出口へと向かう客席の階段を上がっていく最後にもう一度だけ振り返ったさきほどまでの活気は失せ、今はひっそりと静まり返っている照明が降り注ぐ劇場は、ちょっと靄がかかったように白く霞んでいたその悠然たる佇まいに、一つの昭和の歴史の終焉を見たような気がしたさようなら…別れを告げ、劇場を後にした新宿コマ劇場12月特別公演『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも』12月2日(火)~12月22日(月)まで出演/嶺野白雪…紫吹淳・湖月わたる(Wキャスト)/橘伊吹…彩輝なお・貴城けい(Wキャスト)/星風鈴子…星奈優里・大鳥れい(Wキャスト)/紅花ほのか…紫城るい・映美くらら(Wキャスト)/影山航…石井一孝/オサム…佐藤アツヒロ/速水悠介…本間憲一 ほか
2008年12月12日
一昨日からひいている風邪昨日は辛かったんだけれど、風邪薬がだいぶ効いたみたいそれと、今日は仕事が休みだったので、午前中いっぱい睡眠をとったせいか、だいぶ楽になったまだ喉に違和感はあるものの、かなり回復してきたので、午後からは、当初から予定していた観劇のために、厚手の服装にマスクと完全防備をして外出した今日観る舞台は、東京宝塚劇場にて公演中の宝塚歌劇団宙組公演『Paradise Prince/ダンシング・フォー・ユー』知り合いのタカラジェンヌの方が、今回の公演をもって宝塚歌劇団を退団するというので、久しぶりに宝塚を観劇するのだ昨日の時点では、風邪をひいた状態で観劇できるかな?なんて心配だったんだけれど、なんとか体調持ち直してくれてヨカッタ彼女の、最後の勇姿をしっかり目に焼きつけないとね「Paradise Prince」は、モダンアート界で活躍する若き青年が、自分の夢を実現させるために、期待と羨望を一身に集める生活を投げ捨てて、アニメーションの世界へと飛び込むそこには自分が思い描いていた世界とはかけ離れた厳しい現実が待ち受けていたが、数々の困難を乗り越え、愛する女性とともに、夢に向かってひた向きに生きる姿を爽やかに描く「ダンシング・フォー・ユー」は、世界各国のリズムを刻む宝塚ならではのオーソドックスなレビューの中に、都会的でシャープな感覚溢れるダンスシーンが弾ける、夢・愛・若さ・情熱に満ちたエネルギッシュなダンシング・ショー(公演チラシより引用抜粋)宙組の主演を務める大和氏と陽月氏のコンビは、とっても若々しく、夢や希望に満ち溢れた若者像をのびのびと演じていた現代を舞台にした作品の世界観が、今の宙組のフレッシュな顔触れと合っていて、ハッピーエンドの結末といい、観ていてなんとも清々しい気持ちになれるで、このお芝居、夢を追い続ける若者が主人公で、夢を見続けること、追いかけることの大切さを切々と説いているのだが、なんだかね、そのメッセージは自分にも投げつけられているようで、ちょっと胸が痛かったある程度歳を重ねてくると、夢を諦めて、現実を見つめなくてはならなくなる時期が来るんだけれど、それでも、自分は悔いたりはしてはいない思い描いていたレールの上は走ってはいないけれど、今自分が突き進んでいる道のなかで、自分なりの夢や希望を持って日々生きている人って、大なり小なり、夢や希望を持って生きているだからこそ、生き続けることができるんだと思う『Nothing is impossible!』これ、劇中で度々出てきたセリフ“叶わない夢はない”という意味が込められている今の自分には、勢いで乗り越える!なぁんて若さも体力もないけれど、その気力を持ち続けることだけでも大事だよねなんだかパワーをたくさん貰えたような気がしたショーの「ダンシング・フォー・ユー」は、主題歌のメロディーは個人的にツボにハマッたが、全体的には、なんだか色々な国のダンスが散りばめられていて統一感がなかったように思えたとはいうものの、謳い文句通り、若さがみなぎったショーで、あっという間に1時間が過きてしまった気づいたら、もう終わりなの?って感じ久しぶりの宝塚の観劇、以前ほどの熱中からは冷めてしまったが、この世界観は独特だね何度観ても思うのだが、宝塚って煌びやかで、ほんと夢の中の世界だよさてさて、今回は、知り合いのタカラジェンヌの方の最後の宝塚の舞台ということで観劇したのだが、しっかり目で追って、その姿を焼き付けてきた芝居ではスーツ姿でビシッと決めて、悪役を時にはユーモラスに演じ、ショーではこれでもか!ってぐらいに踊っていた客席に振りまく笑顔がなんとも眩しいあぁ、彼女は今充実しているんだなぁ…そんなことを思いながら、舞台上でライトを浴びる彼女を見つめていたそしてショーのフィナーレのとき、下手側から1人で大階段を降りてきた姿を見たら、胸に熱いものがグワァ~ッとこみ上げてくるものがあったこれが彼女を舞台で見る最後なのかぁ…という思いと、宝塚の舞台を踏んでまだ間もない頃に知り合ったので、いつのまにかベテランになったんだねぇ…という親が子の成長を見届けるような、2つの感情が複雑に織り交ざって、感極まって思わず涙腺がゆるんでしまったフィナーレのパレードで、彼女に向かって、これまでの労いと、そしてこれからのエールをこめて大きな拍手を送ったのであった…東京宝塚劇場・宝塚歌劇宙組公演『Paradise Prince/ダンシング・フォー・ユー』11月21日(金)~12月27日(土)まで主演/大和悠河/陽月華/蘭寿とむ/北翔海莉/悠未ひろ/美羽あさひ/一樹千尋(特別出演)/美穂圭子(特別出演) ほか
2008年12月05日
今日は、仕事を終えると、新国立劇場・中劇場で本日初日を迎える『舞台は夢 イリュージョン・コミック』を観劇劇場のマジックを堪能する21世紀によみがえる古典喜劇フランス古典劇の巨星ピエール・コルネイユの「問題喜劇」作者自ら“奇妙な怪物”と呼んだこの戯曲は、劇中劇のスタイルを巧みに利用した、舞台ならではの趣向が随所に散りばめられた傑作いかにも古典喜劇に相応しい、大きな愚者たちの大きな喜怒哀楽を表現するために、声と肉体、音と光と、あらゆる術を駆使して、エンターテイメント性に満ちた“21世紀の古典喜劇”が中劇場所狭しと繰り広げられる劇場という場所の摩訶不思議な可能性、多彩な仕掛けに彩られた舞台の“夢”をどうぞご堪能ください(作品紹介小冊子より)劇場のなかに一歩足を踏み入れると、そこにはちょっと見慣れない光景が広がっていたというのも、前から9列目までの座席が取り払われ、そのスペースに丸い舞台が拵えられていたのである今回の舞台は、劇場の真ん中の丸い舞台を囲んで、お客さんが観劇するというスタイルがとられているのだ自分が観劇するのは、舞台上に仮設された客席なので、いそいそと舞台上へと進むと、ひな壇に設けられた長椅子に腰かけるちょっと座席が硬いから、長時間の観劇には辛そう…それにしても、なんだか変な感じだって、自分の視線の先には客席が見えるんだもんそりゃそうだよね自分は舞台上にいるんだから頭の上から仄明るく当たる青白い照明を浴び、舞台上から客席を眺めていると、なんだか役者さんになった気分普段味わうことのできない空間にいるだけに、それだけでちょっと得した感じ今回は、粗筋などまったく知識が入っていない状態で観劇したのだが、ちょっと退屈で仕方なかった上演時間は休憩なしの2時間ほどなのだが、すごく長く感じる好きじゃないジャンルのお芝居かも…だって、演技はオーバーだし、セリフ廻しも仰々しいんだもん???って思っていたら、この作品は初演から400年近く経た古典喜劇なんだってどおりでなんか古臭いと思ったら、400年前の作品なんださてさて、客席が舞台を囲むようにしてある場合、どうしても役者さんは背を向けるシーンに出くわす舞台正面の座席より、舞台上の座席の方が安いので、ちょっと見え方が損するのかな?と思っていたのだが、今回の舞台にかぎっていえば、その点はうまく考慮されていて、丸い舞台を巧みに利用し、また劇場全体をうまく使っていたので殆ど気にならなかったむしろ動きがあって、すごく面白かった出演されている役者さんたちは、映像や舞台で活躍されている方たちばかりなので、どの方も役にハマッていて見応えがあった衣装も素敵だし、照明も凝っている舞台もシンプルながら、色々な仕掛けがあって、視覚的に美しい劇場内に漂うこの世界観、好きだな物語は、ある一人の初老の男性が、行方知れずの息子の安否を心配するあまり、魔術師のもとを訪れ、魔術師を通して、息子が送った波乱の人生を覗くというもの初老の男性と魔術師が生きる現代と、息子が生きた過去を行き来する舞台なのかと思いきや、ラストで意外などんでん返しが用意されていて、そこでようやくタイトルである『舞台は夢』という意味が分かったこの作品、なんか奥が深い描かれた世界観を理解したようで、理解できていないと思う始めのうちは古典喜劇に苦手意識があったが、終わってみれば良い作品だったう~ん、単純に「面白かった」という言葉では片付けられない面白さがあった新国立劇場・中劇場12月公演『舞台は夢~イリュージョン・コミック』12月3日(水)~12月23日(火)まで出演/クランドール…堤真一/アルカンドル・マタモール(2役)…段田安則/イザベル…秋山菜津子/リーズ…高田聖子/ロジーヌ…田島令子/アドラスト・ボルドーの牢番(2役)…坂田聡/ドラント・ジェロント(2役)…磯部勉/プリダマン…金内喜久夫 ほか
2008年12月03日
ミュージカル『エリザベート』は、オーストリア・ハンガリー帝国皇后エリーザベトの生涯を描いたウィーン発の作品で、日本初演は、1996年に宝塚歌劇団雪組によって公演が行われた2000年には、東宝の制作で『エリザベート』が公演され、主人公のエリザベートを、宝塚初演時に死の帝王であるトートを演じた一路真輝氏が抜擢されたことで、大きな話題となった作品は絶賛を博し、『エリザベート』は、宝塚歌劇、そして東宝ともに度々再演が繰り返される人気演目となっている自分が『エリザベート』を初めて観劇したのは、1998年宝塚歌劇団の宙組公演だった誘われるがままに、宝塚歌劇団の本拠地である兵庫県宝塚市まで足を運び、宝塚大劇場で観劇した宝塚という存在は知っていたものの、客席で観るのは初めて殆どが女性客で埋め尽くされた客席に居心地の悪さを覚えながらも、舞台で繰り広げられる夢のような世界にドップリと浸かり、『エリザベート』という作品は勿論のこと、すっかり宝塚にハマッてしまった東宝版の『エリザベート』は観たいと思いつつも、なかなか機会が合わず叶わなかったのだが、今日ようやく観劇できることとなった困ったのは、いつ観劇するか?ということ主要キャストのいくつかはWキャストになっており、日によって出演される役者さんの組み合わせが変わるのだどうせなら、自分が観てみたいキャスト陣で観劇したい…しかしながら、前もって仕事の休みが分からない自分にとって、観劇の予定が立てられるのは開演時間が夜遅い場合のみ18時30分が開演なら、仕事が終わってから劇場に駆けつければなんとか間に合う公演のキャストスケジュールを目で追っていくと、自分の希望にあったキャスト陣の夜の公演が1回だけあったそれが今日なのである帝国劇場11・12月特別公演『エリザベート』“ずっとあなたを愛していた”蘇る栄光のハプスブルク家、愛と死のロマン(公演チラシより)作品に馴染みがあり、聞き覚えのあるメロディーばかりなので、すぐに作品の世界にのめり込むことができたやっぱり好きだなぁ、この作品何が良いって、音楽がいいんだよね自分は十年前の宝塚歌劇での『エリザベート』しか知らないので、それと比較するのもなんだが、とにかくセットの豪華さと迫力に圧倒された舞台上に漂っている雰囲気が、格調高い帝国劇場に相まっていて、現実を忘れさせる空間がそこにはあった宝塚歌劇ならではの、女性だけが演じる『エリザベート』も、それはそれで魅力的だが、やはり演者に男優陣が混じると、コーラスやダンスに厚みや迫力が増すそれに、なんといっても圧巻なのが、トートダンサー!しなやかで、力強い肢体から繰り広げられるダンスは見事だったさてさて、自分が観たかったキャスト陣での観劇となったわけだが、どうだったかというと…率直な感想を述べれば、う~ん…といった感じこれは、自分が作品に対して思い入れがあるし、期待しすぎたのが一因なんだと思うエリザベート…涼風真世氏トート…………武田真治氏フランツ………鈴木綜馬氏ゾフィー………初風諄氏ルドルフ………浦井健治氏皇后エリザベートを演じた涼風真世氏、ハプスブルグ家に嫁いでの自由を奪われての息苦しい生活の日々のシーンなど、涼風氏自身が持つ芯の強さのようなものが表立っていて、あまり悲壮感が感じられなかったが、晩年の演技は見事で、カーテンコールで登場した白いドレス姿は堂々たるものだった皇太后ゾフィーを演じた初風諄氏は、歌唱力、威厳ある風格の佇まいはさすがだったが、厳しさゆえの悪の迫力が欠けていたのが残念エリザベートにつきまとう死の帝王トートを演じた武田真治氏は、ちょっと甘ったるい歌声だったが、妖しさは十分で、なかなかの堂々っぷり意外な一面を魅せられたオーストリア皇帝の鈴木綜馬氏、皇太子ルドルフの浦井健治氏は手堅く、その他の演者の方たちも、役柄を自分の手中に収めていて、見応えがあったただ、どうしても納得がいかなかったのが、皇后を暗殺したルイジ・ルキーニ人それぞれ感想はあると思うが、ルキーニを演じた高嶋政宏氏の演技が、どうにもこうにも自分は受け入れられなかった東宝では、2000年初演以来『エリザベート』の主要の役は数々の演者の方々が演じられ、またWキャストが組まれているが、ルキーニ役だけは高嶋氏が一貫して演じられているそれだけに期待していたのだが、あまりにも飄々とした演技に目が点になってしまったのだ狂気でもないし、ふざけているわけでもないのだが、その肩の力を抜いた演技が、作品の世界から浮いているような気がしたさらに、ラストシーンでの登場も、自分としては必要ないと思った上演回数700回を数えるうちの、たった1回しか観劇していない自分がいうのもなんだが、自分は自分なりに思い入れがある作品なだけに、自分のなかで勝手に理想の世界を創り上げてしまったのだろうと、色々感じるところはあったが、やはり好きな作品なので、とても楽しく観劇することができたはじめは自分が観たいキャストスケジュールだけ観れば十分…と思っていたが、演者が変われば作品の雰囲気も変わるだろうと、また観てみたくなってしまった帝国劇場11・12月特別公演『エリザベート』11月3日(月)~12月25日(木)まで出演/エリザベート…涼風真世・朝海ひかる(Wキャスト)/トート…山口祐一郎・武田真治(Wキャスト)/ルイジ・ルキーニ…高嶋政宏/フランツ・ヨーゼフ…鈴木綜馬・石川禅(Wキャスト)/マックス…村井国夫/ゾフィー…初風諄・寿ひずる(Wキャスト)/ルドルフ…浦井健治・伊礼彼方(Wキャスト)/ルドヴィカ…春風ひとみ ほか
2008年11月27日
今日観劇する舞台は、WAHAHA本舗プレゼンツ・ドラマティックミステリーコメディ『女探偵伴内多羅子~ずっこけ一座の花道』伴内多羅子は、ちょっと危険で、ちょっと大胆なところがあるが、人間とトコトンまで付き合う人情味が溢れている女探偵探偵といっても多羅子の専門は“自殺の引き止め”多羅子ならではのバイタリティーと愛のムチで、自殺を決意した面々に、生きる希望と勇気を与える今回の依頼主は、ある旅回り一座の座員話によると、座長の様子がどうもおかしいという…はたして、今度の多羅子はどんな手法で自殺を止めるのだろうか?泣かせます!笑わせます!人助けします!自殺を止めます!伴内多羅子、旅回り一座に潜入す!(公演チラシより引用)今回の芝居の舞台が旅回り一座ということで、劇場の入口には、幟が夜風にはためいていた昭和の時代の映画のポスターを思わせる公演のチラシといい、なんだか雰囲気作りからして凝っている入口に入ると、アンケート用紙や大量の舞台のチラシを手渡されたこれは、観劇に行くとよく貰うのだが、そのなかに、なぜか金や青、ピンクといった折り紙が5枚入っていたなぜ折り紙が?その疑問は、後々になって、驚くべき秘密として明かされることになる…今回の芝居は、旅回り一座が舞台ということで、幕が上がると、一座の舞踊ショーとなる中島みゆき氏のヒットメドレーに合わせて、大衆演劇の匂いが漂うシーンがテンポよく構成されていて、初っ端から紙吹雪が大量に降り、魅せてくれる舞踊ショーが終わると、なぜこのような経緯に至ったのかというそもそもの発端の回想シーンとなり、紆余曲折を経て、弱小一座の舞台が上がり…、瞼の母をモチーフにした時代劇、そしてフィナーレの舞踊ショーと場面が続いていく公演時間は3時間弱と、普通の舞台ならば途中で休憩時間を挟みそうなものだが、この作品はノンストップで最初から最後まで続けられていくでも、全然時間の長さが気にならないむしろ、え?もうそんな時間経ってたの?といった感じそれもこれも、脚本の面白さ、演者たちの熱演と、構成が実に巧みだったからだろう実は、WAHAHA本舗の舞台を観るのは、今回が初めてWAHAHA本舗の舞台というと、なんとなく下ネタ連発・下品というイメージが自分のなかであって、ちょっと変な緊張をしながら客席に座っていたのだが、その心配は取り越し苦労だったほんと、大いに笑わせてくれた舞台を観てこんなにも笑ったのは初めてかもしれない舞台上の役者さんたちも楽しそうに演じていて、その雰囲気が客席にまで伝わってくるでも、やっぱりというか、期待通りというか、下ネタのシーンは用意されていたお風呂のシーンなんだけれど、男優陣が全裸だったのだ!自分は1番前の席で観劇していたんだけれど、自分の丁度真ん前に臀部をさらけ出している役者さんがいるもんだから、なんだか気恥ずかしくて直視できなかったでも、チラチラ観ていたんだけれど、見てはならないものを見てしまったんだよねぇえッ!?えぇぇぇぇぇぇッ~!?みたいな目が点状態しばし放心これってアリなの?って、なんだか分からないけれど、顔が火照ってしかたなかったテレビで拝見するままの人柄が滲んでいる柴田理恵氏、飄々とした演技で笑いを誘う坂本あきら氏、要所要所でビシッと締める白川和子氏と、どの方も芸達者揃いなかでも、座長役を務めた山本リンダ氏は、歌に殺陣にと大活躍『狙いうち』や『どうにもとまらない』などの往年のヒット曲や『リンダ、困っちゃう』という名セリフを聞けただけでも儲けモンだった舞台の内容も盛り沢山だったのだが、芝居と芝居の合間で設けられた、柴田氏のお客さん弄りが凄かった柴田氏が自殺を止める女探偵役ということもあって、客席に降り立って、お客さんをとっ捕まえては、『あなたは○○で自殺しようとしたのよねぇ』と、絡んでいく自分は1列目の席に座っていたのだが、1列目のお客さん全員が自殺願望者だったという設定で絡まれて、まんまとそのペースに巻き込まれてしまったが、すっごく楽しかったさてさて、劇場の入口で貰ったチラシのなかに折り紙があったのだが、この時、柴田氏の口から、折り紙の秘密が明かされた芝居の舞台は旅回り一座ということは、“おひねり”が付き物そう、小銭を折り紙に包んで、ここぞ!と思ったときに、舞台に向かって投げてほしい…というのであるなるほどねぇ考えたもんだ!ちょっとしたお小遣い稼ぎになるしね…って、そんな不埒なことは劇団の方は考えてないか財布から100円玉を取り出すと、折り紙に包んだそれから、柴田氏は「私が指を差した人は、大声で“リンダ!”と掛け声してください」とお願いするあと、一番前の客席に座っている人は、幕が上がって山本リンダ氏が登場したら、立ち上がって『ブラボー』と言い、それをキッカケに、お客さん全員が立ち上がり、『ブラボー』と叫ぶことと、なんだか、観客なのに、舞台に参加しているような壮大なる仕込みを仕組まれるそういえば、柴田氏が以前ラジオ番組に今回の舞台の宣伝のために出演されたとき、「お客さんにも参加してもらう舞台になる」と言っていたのだが、こういう事だったんだぁ凄いなこれが、WAHAHA本舗のやり口か?なんて感心してみるさてさて、その仕込みの成果はというと…幕が開いて、山本リンダ氏が登場すると、自分を含めて1番前の列のお客さんが立ち上がって『ブラボー!』の声を挙げると、後ろのお客さんも総立ちになり、『ブラボー!!』の大歓声!山本氏がヒット曲を披露しながらの剣劇のシーンでは、折り紙に包まれたおひねりが舞台上に大量に投げ込まれ、柴田氏が舞台上からお客さんを指差すと「リンダ~!」の掛け声が飛び、柴田氏の仕込みは大成功!!ただ観て楽しむだけではなく、お客さんも参加して、そして舞台を盛り上げていくという、2倍にも3倍にも舞台を楽しむことができたただ面白いだけなのではなく、筋書きもしっかりとしていて、“ドラマティックミステリーコメディ”というだけあって、事件の裏側にちょっとしたからくりがあり、さらにはラストには意外などんでん返しも用意されていて、「そうきたか!」と、思いもよらぬ展開に思わず唸ってしまったいや~、ホント楽しませてもらったなぁ子供の頃食べたお子様ランチのように、色々なものがあってワクワクする、ボリューム満点の舞台だったWAHAHA本舗プレゼンツドラマティックミステリーコメディ『女探偵伴内多羅子~ずっこけ一座の花道』新宿シアターサンモール11月19日(水)~24日(月)その後地方巡演あり出演/伴内多羅子…柴田理恵/本山リンダ…山本リンダ/おばちゃん…白川和子/富美沢梅男…坂本あきら/山本…内浦純一 ほか
2008年11月20日
今週は、芝居見物が2つに津軽三味線の演奏会と、舞台づいているなので、ちょっとだけワクワクウィークなのであります今日観劇するのは、今年末で閉館されてしまう新宿コマ劇場で公演中の『SAMURAI7』“SAMURAI7”は、黒沢明監督作品で有名な「七人の侍」を原作にした作品で、2004年に、映画公開50周年を記念して、アニメ化された作品なんだとか幸か不幸か、自分は両作品とも拝見したことはないので、何の知識も無い代わりに、先入観を持たずに鑑賞するはるか未来…地球と呼ばれていたかもしれないある惑星全身を機械化したサムライ達の大戦は終わり、人々は再び田を耕し、生きていくには困らない程度の米を生産していたそんな時代、カンナ村の住人たちは、“野伏せり”という輩たちの襲撃に頭を悩ませていた女たちは次々と囚われの身となり、収穫した米はまき上げられ、その日食べるものにも困る日々困窮を極める状態に、カンナ村の長は、“野伏せり”に対抗できる唯一の存在であるサムライを雇い入れることを決断するかくして村の巫女のキララたちは、村の代表としてサムライ探しを始める紆余曲折を経て集まった個性豊な男たち、カンベエ、カツシロウ、キクチヨ、ゴロベエ、ヘイハチ、キュウゾウ、シチロージ、七人のサムライが、知行や恩賞には全く縁のない戦いを、哀れな農民達のため命を懸けて剣を振るう!(公演あらすじより)時代劇ということだったが、古臭さを全く感じさせない作品に仕上がっていた新宿コマ劇場特有の廻る盆舞台の機構をうまく利用し、スピーディーな展開、激しい立ち回り、レーザー光線を使用したりと、見るものを全く飽きさせないそれにしてもスゴイわ1幕目から胸のなかに熱いものが走るし、涙腺もウルウル…作品のこと知らなくても、7人の侍を演じる若手イケメン俳優のことを知らなくても、舞台の世界観にドップリと浸かる物語は、農村を守るために悪に立ち向かう7人の侍の話なのだが、そのなかで、侍に憧れる青年が“侍とは何か…”を仲間たちを通して学んでいき、そして成長していく姿が描かれているんだけれど、これがいいんだよねぇ一つ一つのセリフが胸に突き刺さる侍としての心得は今の時代にも通じるものがあって、人生について、なんだか自分も一緒になって考え、そして学んだ己のため、愛する人のため、仲間のため…懸命に時代を生き抜く男たちいいなァカッコイイわこんなハートフルな連中は、現実社会のなかにおいては、そうそう居ないよとにかく7人の侍たち、それぞれが輝いていて、自分は羨望の眼差しを舞台に向けていた7人の侍たちを演じる役者さんは、それぞれのキャラクターが役にピッタリはまっている激しい立ち回りも華麗にこなし、それぞれに見せ場が設けられている中でも意外というか、秀逸だったのは、キクチヨ役を演じた住谷正樹氏お笑いコンビ“レイザーラモン”のハードゲイ芸人として一躍有名となった人だが、お笑いとして活躍されている時の姿とはまるで別人のようで、舞台での堂々とした立ち振る舞い、そして熱演に驚いてしまったあと印象に残ったのは、悪役のウキョウを演じた山崎銀之丞氏顔を白塗りにしていたせいかもしれないが、不気味な存在を抑えた演技で表現しつつ、客席から笑いも取ってしまう芸達者ぶりは、思わず唸ってしまったスピーディーな展開、めまぐるしい立ち回りと、物語は畳み掛けるようにして進んでいき、7人の侍たちの壮絶な生き様に、自分の涙腺は緩みっぱなし後半なんか、ウルウルどころか、頬に涙が伝った涙腺が弱くなったのは歳のせいかな?いや、純粋に感動してるからだな自分でいうのもなんだが、感動で流した美しい涙ですうん、熱くて、泣けて、楽しくて、勉強になる舞台だった…ただ、ただね、一つ言わしてもらうとするならば、公演パンフレットの2500円は高すぎでしょそうは思いながらも、買っちゃったけど人の足許見やがって!この商売上手めッ!舞台『SAMURAI7』新宿コマ劇場11月14日(水)~11月24日(月)まで出演/カンベエ…加藤雅也/シチロージ…載寧龍二/キュウゾウ…中河内雅貴/ヘイハチ…きだつよし/ゴロベエ…高橋広樹/カツシロウ…篠谷聖/キクチヨ…住谷正樹(レイザーラモン)/キララ…水野絵梨奈/ウキョウ…山崎銀之丞 ほか
2008年11月18日
今日は母とお芝居見物自分は仕事が終わってから劇場に駆けつけるので、果たして母とうまく落ち合えるか、ちょっと心配だって母はあまり外に出歩かない人だし、携帯電話も持っていない電車の乗り換えを間違えないだろうか?迷わず劇場まで来れるだろうか?などと、車のハンドルを握りながら、あれやこれやと心配する親が子を心配するのは分かるけれど、子が親を心配するだなんて、ちょっとおかしいかでも心配なんだよね母もだいぶ歳とったし…小雨振るなか、新宿駅の地下駐車場に車を停めると、繁華街の歌舞伎町へ開演の30分前に、待ち合わせ場所の新宿コマ劇場に到着高速道路が空いていたから、ちょっと早く着いたみたいと、カフェにでも入って時間を潰そうと思ったら、不意に後ろから自分の名前を呼ぶ声が…母だったうまく会えて、ヨカッタ、ヨカッタって、随分と大荷物だなぁ…手提げ袋のなか何入ってんの?って聞いたら、お弁当だって!なんや用意周到やなぁ今日観る舞台は、新宿コマ劇場の地下にあるシアターアプルにて公演中の『新宿・歌声喫茶の青春』昭和30年代、荒廃した戦後日本の社会に明るい夢を与えた、新宿歌舞伎町に生まれた「歌声喫茶」青春という言葉がまだ素晴らしい輝きを放っていた時代、若者達の喜びと悩みを、歌声と共に色鮮やかに描いた音楽劇“今日よりも、もっといい明日へ”誰もがそんな希望を抱けたあの頃…あの日みんなが夢見た“明日”はいったいどこへ…(公演あらすじより)劇場に入ってビックリ!自分は色々な舞台を観るけれど、今までで一番観客の年齢層が高いかもしれない昭和30年代の歌声喫茶を舞台にしているというから、昔を懐かしんで観劇される方が多いのかもしれないほんと、自分を含めて若い人が少ないそんな現代の高齢化社会を目の当たりにしつつ、舞台の幕は上がった…ロシア民謡が流れる食堂が舞台そこに歌が好きな若者たちが集い、歌って盛り上がったことがキッカケとなり、“歌声喫茶”が誕生する時代の脚光を浴びる“歌声喫茶”夢が現実となり、日々充実した生活を送るが、時代の流れとともに、夢や希望に燃えていた人々の心も変わり…歌声喫茶が舞台ということで、数々の名曲を楽しむことができる「トロイカ」、「雪山賛歌」、「かあさんの歌」、「おお牧場はみどり」、「花」、「ともしび」、「山のロザリア」、「赤とんぼ」と、数え上げたらキリがないのだが、ロシア民謡、愛唱歌など数々のメロディーが歌い上げられる自分には馴染みのない曲ばかりなので、なかなか新鮮な感じで聞いていたところで、歌声喫茶のシーンでは、舞台上に歌詞の字幕が浮き上がり、『さぁ一緒に歌いましょう!』と、舞台上の出演者の方々から促されるえっ?と思ったんだけれど、すぐに納得することができたパンフレットに、“お客様参加型の音楽劇”と書いてあって、どういう意味かな?って思っていたんだけれど、こういう意味だったんだね客席の観客の人たちが歌声喫茶に来たように、舞台と客席とが一体となって一緒に歌おうってことなんだでも、やっぱり恥ずかしいのか、客席からはあまり歌声は聞かれないこのまま静まり返った状態なのかな?って思ったら、舞台が終幕にいくにつれて、お客さんのボルテージも上がってきたみたいで、後半の「カチューシャ」や「千の風になって」のときは、結構盛り上がっていた自分の両脇のお客さんも口ずさんでいたしね出演者の方々も盛り上げ方が上手だから、観客もうまく乗せられて、舞台と客席が一体になった感じがあって、すごくよかった自分?自分は、心のなかで大熱唱してただって、声に出すのは恥ずかしいモン主演は由紀さおり氏舞台に登場してきた時の女子大生役には、ちょっと、いやかなり無理があるんじゃない?なんて思ったが、歌のシーンになると、さすが!ほんと歌声が澄んでいて、思わず聞き惚れてしまったほど舞台では何曲も披露してくださるので、さながら“由紀さおり・ワンマンショー”といった感じ麻丘めぐみ氏は、出番も多くないし、嫌味な女性の役なので損な役回りだが、その美しさは今も昔も変わらずで、舞台に登場すると、パッと華やぐあまり美声が聞けないのが残念だったが、老婆に扮しての「千の風になって」は、心温まるシーンとして印象が残った物語のラストシーン急に今までのトーンとは打って変わり、思いもよらないメルヘンチックな展開に少々面食らってしまったが、すごく心憎い演出になっていて、自然と大粒の涙がポロポロと頬を伝った完全にヤラレタ身体がカッカと熱く燃え、鼓動は激しくなり、涙が止まらないその涙は、舞台の幕が下りるまで止まらなかったすごくイイ!なかなかこんな感動は味わうことができないこれだから、芝居見物はやめられない数々のメロディーに彩られた歌声喫茶を舞台に、夢や希望、成功に挫折、愛と死と、色々な人間模様が描かれていて、当時を知らない世代の自分でも楽しむことができた母も、懐かしのメロディーを耳にし、だいぶ楽しんだみたいほんと、ヨカッタ曲のタイトルが分からないんだけれど、気に入ったメロディーを口ずさみながら帰りますシアターアプル・10月公演『新宿・歌声喫茶の青春』10月3日(金)~10月14日(火)まで出演/三枝澪…由紀さおり/瀬川ひかる…麻丘めぐみ/木崎英雄…佐藤輝/鶴吉・錦城昭彦(2役)…山田純大/ソーニャ…安田ひろみ ほか
2008年10月10日
今日は午前中だけ仕事で、午後からは半休といっても、朝だけで6時間ミッチリ仕事したから、なかなかのヘトヘトぶり一旦帰宅してから池袋へ“あうるすぽっと”という豊島区立舞台芸術交流センターで公演中の花組芝居『怪談 牡丹燈籠』を観劇幼い頃に父は殺され、母も自分を置いて家を出ていった“父を殺めた相手に仇を討とう”そう心に誓い武家奉公を始めた孝助主の飯島平左衛門は、その親思いの心根を褒め、熱心に剣術を教えたしかし孝助の父を殺したのは、他でもない平左衛門本人であったその事を孝助はまだ知らない“いつか自ら討たれよう”そんな思いを胸に、日々信頼を高めていく互いの思いは気づかないまま時を違わず飯島家の別邸平左衛門の娘お露は、新三郎との身分違いの恋に泣き暮らし、ついには命を落としてしまうが、幽霊となって、自由を手に入れたお露そこから身を焦がすような激しい恋は動き出す…平左衛門の後妻お国と、お国と不義密通をはたらく源次郎のよからぬ企み金に目が眩んで悪知恵を働かし、仕えていた新三郎を裏切る伴蔵次第に明らかになる孝助の過去いくつもの欲と悪が絡みに絡まっていく…(公演チラシより引用抜粋)花組芝居というのは、男性だけの劇団“ネオかぶき”と称し、高尚になり、堅苦しく難解なイメージになってしまった歌舞伎を、気軽に楽しめる娯楽にすることを目指している花組芝居の舞台を初めて観たのは、2001年の『泉鏡花の婦系図』なかなか面白かったのだが、物語の題材が自分にはちょっと難解すぎて、それから観劇は遠ざかってしまっていた今回は実に7年ぶりの観劇となるのだが、今日観る芝居『怪談 牡丹灯籠』は、三遊亭円朝氏の名作である落語が題材になっている物語の内容を知らない自分としては、単純な怪談話なのかと思っていたが大間違いいくつもの話が平行、錯綜していき、色々な欲と悪とが絡み合っていく幽霊よりも、生身の人間たちが引き起こす業のほうが、よっぽどオドロオドロしくて血生臭さを感じた人間って怖い生き物だね舞台は、やり直しのきかない一発勝負なのだが、今日の公演では、重要な小道具が無くて演者の方があたふたしたり、立ち回りの最中に鬘が飛んでしまったりと、いくつかのハプニングがあったそういえば今日は、舞台を撮影すると客席の入口に書いてあったから、それを踏まえての演出なのかな?なんて勘繰ってみたのだけれど…本当のハプニングなのかもしれないし、計算されたハプニングのようにも思える観ている側からしてみれば、面白かったからどちらでもいいか歴史に関しては疎い自分としては、昔の言葉遣いなどが難解だったり、女中がなぜかメイドの衣装を着ていたりと、その独自の世界観に首を傾げるところが幾つかあったが、作品を壊すか壊さないかのギリギリのところで展開されるいい意味でのナンセンスな笑いが随所に盛り込まれていて、意外と楽しく観劇することができたユーモア溢れるセンスと独特の世界観を持つ花組芝居、好き嫌いがハッキリわかれそうだけれど、自分は嫌いじゃないな花組芝居『怪談 牡丹燈籠』あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)9月3日(水)~9月15日(月)まで出演/三遊亭円朝…桂憲一/飯島平左衛門…水下きよし/孝助…丸川敬之/お国…八代進一/伴蔵…小林大介/萩原新三郎…美斉津恵友/お露…大井靖彦/源次郎…各務立基/白翁堂勇斎…山下禎啓/お峰…加納幸和 ほか
2008年09月10日
仕事を終えると、芝居見物のために、若者の街・下北沢へ駅から程近いところにある小劇場、ザ・スズナリにて公演中の『鬼灯町鬼灯通り三丁目』を観劇芝居見物はよくするものの、小劇場と呼ばれる小さな劇場での観劇は殆ど経験がない自分今日足を向けたザ・スズナリも歴史ある小劇場のひとつ狭くて急な階段を上がり、劇場に入ると、客席につくひな壇にパイプ椅子が並べられているだけなのだが、これが狭いのなんのって普通に腰掛けているだけなのに、前の列のパイプ椅子の背に脛が当たってしまうそれに隣の席ともくっついているので、ゆとりがないこれが小劇場なんだね…なんて窮屈さを感じながらも、客席と舞台に隔たりがない小劇場ならではの空間に、ちょっとした興奮を覚えているのも事実だった芝居見物する作品は、第一に出演している役者さん目当て、第二に物語の内容で決めるのだが、この作品に限っていえば、どちらも当てはまらないというのも、親切な方にチケットを用意していただいたからだなので、声を掛けていただいたとき、何も知らずに頷いてしまったそれから、どんな舞台なんだろう?とインターネットで調べてみたのだが、出演者の顔触れは分かったものの『鬼灯町鬼灯通り三丁目』という作品についてはあまり知ることはできなかった作品タイトルになっているように、綺麗なオレンジ色をしたほおずきが舞台一面に飾られていた古びた一軒家や井戸といったセットといい、舞台には昭和の空気が漂っている舞台は終戦後ということで、戦争をモチーフにした作品のようである間近で演技を見ることができる期待と、面白い作品なのだろうか?という不安な気持ちで、当初の開演時間より少し遅れて幕は開いた、終戦直後の引揚げ港・博多のとある町女三人がひもじい思いをしながら肩身を寄せて住んでいる家に、復員姿の男が押し入ってきた強盗と思った鶴恵と小梅は男を追い返したものの、再び男が戻ってきて、こう一言言い放った「この家、やっぱり俺の家ですけど…」!?その男・松尾大吉は、もう一人の同居人である弥生の亭主だったのであるトイレに閉じこもっていて強盗騒ぎを知らなかった弥生は、大吉を見てビックリ!大吉は戦死したとの報告を貰っていて、すでに葬式まであげていたからであるこうして、女三人と男一人の奇妙な共同生活が始まった…終戦後の混乱の時期でも、決して諦めることなく前向きに生き、そして奇跡を起こそうとする女たちそれを見守るようにして咲いていた鬼灯に秘められた衝撃的な真実とは!?もうね、凄いの一言に尽きる!!何が凄いって、物語の面白さもさることながら、4人の役者さんたちの熱演がとにかく凄い!大声を出すわ、啖呵は切るわ、泣くわ、喚くわ、叫ぶわ、笑うわ、歌うわ、身体を張っての大乱闘はあるわの、これでもかというぐらいの大熱演!そんなシーンが、目の前で繰り広げられるわけだから、ただただ圧巻役者さんて凄いなぁ…って、見惚れてしまった見惚れたといえば、今回の舞台は終戦後という設定なだけに、女優の方々はスッピンで舞台に立たれているんだとかう~ん、さすがは女優さん…スッピンでも綺麗やなぁあ!でもいくらなんでも眉毛とか、少しはメイクしているんやろなと、変なところで感心してしまった終戦後の話ということだったが、奇想な話の筋だったものの、要所要所に笑いが盛り込まれていて、ちょっとしたどんでん返しあり、終幕には胸が詰まるようなシーンも用意されていて、笑いあり、涙ありの作品だった終戦後という混乱時、傷つきながらも、必死に前向きに生きた4人の姿を見て、なんだか生きるということに関して、ものすごくパワーを貰えた生きていると色々なことがあるけれど、自分の人生はものすごぉく可能性を秘めているんだね『鬼灯町鬼灯通り三丁目』ほんと、この作品に巡り合うことができてヨカッタ心の底からそう思える舞台だったトム・プロジェクト プロデュース『鬼灯町鬼灯通り三丁目』8月22日(金)~8月31日(日)まで※ザ・スズナリにて公演後、9月いっぱい地方巡演あり出演/番場鶴恵…秋野暢子/鍋島小梅…川島なお美/松尾弥生…富樫真/松尾大吉…六角精児
2008年08月26日
昨日というか日付が変わっていたから今日だが、仕事を終えて帰宅したのが25時過ぎ暑くて、長い長~い一日だったから、疲れた~!!で、倒れこむようにして床につき、ちょっと瞼を閉じたかと思ったら、気づけば起床時間の午前3時半う~ん、もっと寝たいよォォォと、思いながらも、仕事なので、眠い目をこすりながらご出勤今日の仕事のスケジュールも夜遅くまで入っていて、帰宅予定はまたしても24時過ぎ我ながら、身体酷使してるなぁでも、そんななか今日は舞台を観る予定???朝夕と夜遅い時間に仕事が入っているので、その隙間の夜の時間に舞台を観るのだといっても、仕事の進み具合によっては観劇できないかもしれないので、あまり期待はしていないが…連日連夜続いたハードスケジュールも、今日を乗り越えれば一段落つくので、最後の一踏ん張りといきますか!今日観たい舞台というのは、横浜赤レンガ倉庫で公演が行われている、五大路子ひとり芝居『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』白いドレスに白塗りの化粧、髪も真っ白で両手に大きな紙袋をさげた老女“ハマのメリーさん”進駐軍相手の娼婦だったと言われている彼女は、50年以上も横浜の街角に立ち続けたが、私生活など彼女の素性は謎に包まれていた…そんな都市伝説として有名な“ハマのメリーさん”をモデルにした舞台が『横浜ローザ』で、女優・五大路子氏にとって代表作と云える作品毎年終戦記念日の日を前後して公演が行われている本作品は、横浜の夏の風物詩として根付いているこの舞台、以前から観たかった作品なのだが、公演が行われる夏は自分も仕事が忙しいのと、公演期間が短いので都合が折り合わず、叶うことがなかったが、ようやく去年初めて観劇できたのであるその時の、心を深くえぐられるような衝撃と感動は今でも忘れられない公演終演後のサイン会で、五大氏に、「来年も演りますので、ぜひ」と、声を掛けていただいたので、今年も是非、五大氏に、いや横浜ローザに会いたい!と思っていたのであるちょっとしたトラブルなど色々なハプニングがあり、バタバタしてしまったが、なんとか仕事を片付け終えることができ、首都高速を飛ばして、横浜に着いたのは開演7分前のこと間に合った!が、落とし穴が待っていた今世間は夏休みということで、遊びに訪れている人たちでどこの駐車場も満車状態なのだまさか、路上駐車するわけにもいかないので、赤レンガ倉庫ちかくにある駐車場の列に並ぶ刻々と過ぎていく時間…待っている間に、時計の針は無情にも開演時間である18時になってしまったでも、自分はイライラしていなかっただって、今日は仕事がトラブル続きで、観劇できるとは思っていなかったんだから少しぐらいなら待てるよそれに、イライラしたまま観劇してもメンタルの面でよくないからねその後運よく出庫する車が続き、自分の車を駐車場に滑らせると、猛ダッシュで公演が行われている横浜赤レンガ倉庫1号館へ赤レンガ倉庫の建物に入ると、左手に大きな『横浜ローザ』のポスターが貼られていたすると、そこには我が目を疑う文字が…!“チケット全席完売”う、嘘だろォォォ?ここまで来て観ることができないのォ?最後の最後で、大きな落とし穴が待っていようとは!仕事の都合で、観劇できるかどうか判らない状態で前売りチケットを購入することはできないので、当日券を当てにしていたのだが、ダメだったか…肩を落とすものの、チケット完売の貼り紙の下に、“当日券若干あり”の文字がダメ元で、公演が行われている3階へと続く階段を上がっていく既に舞台は開演しているので、お祝いの花々に囲まれたロビーは閑散としていた受付にいた女性の方に、「当日券はありますか?」と声を掛けると、「少々お待ちください」との返答後、なにやら連絡を取り始めたやっぱりダメか…と諦めたら、「階段の通路に座布団を敷いての観劇になりますが…」とのこと舞台が観られるのなら、なんでも構わないと、二つ返事をした左手から、舞台の主題歌に混じって聞こえる五大氏のセリフを耳にしながら、係員の方に誘導されて、レンガに囲まれた細く長く続く廊下を靴音を立てないようにして歩く暗闇の中入ると、会場は満員の客席で埋め尽くされていたって、チケットが完売しているんだから当たり前か「こちらになります」と、案内されたのは階段階段通路席なんだから、これも当たり前だよね薄っぺらい座布団を敷き、腰を落とす1段の幅が広いゆるやかで変則的な階段なので、思ったより窮屈じゃない足も伸ばせるし、胡坐もかけるし、結構自由がきくそれに、前には誰にも居ないので視界を妨げるものがなく、舞台がハッキリと見える階段通路席っていいじゃん!でも、なんだか変な感じだって、観客の皆さんは座席に座っているのに、自分はというと階段に腰かけているんだから五大氏自らが5年間自分の足で取材し、戦中派である杉山義法氏に執筆を依頼思いと情熱が詰まった『横浜ローザ』という作品は1995年に産声を上げた「演じ続けて13年目、メリーさんが亡くなって3年目の今年、新たな祈りをこめて、彼女の心・命のメッセージを皆さんにお伝えしたいと思います」そう語る五大氏の、『横浜ローザ』に賭ける情熱は迸っていて、戦争によって運命を大きく翻弄される一人の女性を、体当たりで熱演その姿は、作品をライフワークのひとつにしているだけあって、すごく自然体に役が身体に浸透していて、もはや“五大路子=横浜ローズ”なのでは?と見紛うほど当然のことながら、自分は戦争を知らない世代なので、終戦を迎えた日本の惨状、戦争によって人々の心にどれほどの深い爪痕を残したのかは計り知ることができないそれなので、戦争によって運命を狂わされた人生を歩むこととなる横浜ローズという女性からのメッセージを100%理解することはできないそれでも、自分なりにこの作品を通してのメッセージを解釈し、そして重く受け止めた胸のなかに渦巻く、苦しく、切なく、哀しく、ほろ苦い感情…生きるということ、生かされているということは、美しくもあり、眩くもあり、またなんと残酷なものなのであろうか今年もまた深く深く、自分の胸はえぐられるのであったまた来年の夏も、『横浜ローザ』に再会できることを夢見て、赤レンガ倉庫をあとにした余韻にいつまでも浸っていたいところだったが、気分を入れ替えて、さぁ夜からの仕事頑張るゾ!五大路子ひとり芝居『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』横浜赤レンガ倉庫1号館8月15日(金)~8月17日(日)
2008年08月16日
急遽、舞台のチケットが手に入ったので、仕事が忙しい時期ではあったが、無理やり時間を割いて観劇した今日観るのは、シアタークリエで公演中の『宝塚BOYS』女性だけのレビュー劇団として、その存在を知られている“宝塚歌劇団”90年に及ぶ長い歴史のなかで、かつて「男子部」があった事実は、ほとんど語られていない1945年、明日の宝塚スターを夢見て集まって来た男たちしかし、彼らは宝塚大劇場に一度も立つことなく、9年後には解散することとなる…生きることに、夢のために、懸命に頑張った男たちの青春グラフティ(公演チラシより引用抜粋)『宝塚BOYS』は、実話を基にした作品で、去年の6月に初演、東京をはじめとし全国各地を巡演した自分は一時期、宝塚に携わっていたことがあるので、この作品に興味があったのだが、その当時は都合がつかず観劇することができなかったので、今日は1年越しに願いが叶ったというわけ女性だけが舞台を務める宝塚歌劇その長い歴史のなかで、男性の存在があったということは、この作品を通して初めて知った“いずれ女性だけでは通用しなくなる”“男女が共演しているレビューが見たい”そんな理由がきっかけとなり、宝塚に男性部が誕生するわけだが、男性が宝塚の舞台に立つことに難色を示す者たちによってさまざまな弊害が生じ、夢への道のりは困難を極める何度も何度も挫折を繰り返しながらも、夢に向かって仲間とともに過ごす苦楽の日々は、青春そのものとにかくアツい!男性部を演じる7人の役者さん達は、それぞれの役に個性があっていて、生き生きと演じている姿は見ていて気持ちがいいその7人を陰で見守る役柄の山路和弘氏と初風諄氏の演技は、男性部に対する思い、情愛が内面から滲み出ていて、その優しさが痛いほど客席まで伝わってくる一人ひとりの役者さんが実に活き活きとしていて、輝いてみえたラストで告げられる宝塚歌劇男性部解散のシーン戦争が残した深い爪痕を心に深く刻み込んだままの9年という長い年月の間、夢を信じ、夢を追い続けて、夢を叶えるために走り続けてきただけに、突きつけられた厳しい現実はあまりにもやるせない夢は見るものではないのだろうか?努力は報われないのだろうか?救いようのない結末は残酷極まりないが、それでも男性たちはクヨクヨすることなく、それぞれ前向きに旅立っていく人生に無駄なことなんて無い自分に恥じることがなければ、堂々と胸を張って生きることができるせつなく、悲しいけれど、わずかながら光明が差す幕切れは、自分のなかでいつまでもほろ苦い余韻を残すのであった夢に向かって生きる男たちの友情と、熱い生きざま「すみれの花咲く頃」「おゝ宝塚」といった宝塚を代表する曲を歌い踊る華やかなレビューシーンありと、見所が多い本作品ほんとイイ作品だったので、観劇後勢いに任せて、劇場ロビーで販売されていた昨年初演時の舞台を映像化したDVDを購入してしまったいまは忙しくて観ている暇はないけれど、時間ができたらゆっくり観ようっとシアタークリエ8月公演『宝塚BOYS』8月1日(金)~31日(日)出演/竹内重雄…葛山信吾/星野丈治…吉野圭吾/上原金蔵…柳家花緑/池田和也…山路和弘/君原佳枝…初風諄/太田川剛…山内圭哉/山田浩二…猪野学/長谷川好弥…瀬川亮/竹田幹夫…森本亮治
2008年08月07日
仕事を終えると、銀座へル テアトル銀座にて公演されている『ラヴ・レターズ』を観劇幼馴染みのアンディーとメリッサ自由奔放で感覚人間のメリッサと真面目なアンディーの二人は、思春期を迎えると一番近い異性として互いを意識し始めるものの、友達以上にはなれない自分たちを発見する大学を出た二人はそれぞれ結婚し、まったく別の道を歩み始めるものの、久しぶりに再会した二人は別々に過ごした日々を取り戻すかのように、互いを激しく求め合うしかし結ばれるには、時は余りにも遅すぎた…(公演チラシより抜粋)『ラヴ・レターズ』は、男優と女優のふたりが、手にした台本を読み上げるだけの舞台日本では1990年に初演されて以来、数々の俳優さんたちによって繰り返し公演が重ねられてきた日替わりで演者は変わり、今日自分が観劇する回は、加藤雅也氏と檀れい氏宝塚歌劇団に在団当時からファンだった檀氏の舞台ということと、19時開演という仕事が終わってからでも間に合う開演時間だったので、観劇の予定を入れたのだ広い舞台の上には、二脚の椅子と、水が置かれたテーブルだけ加藤氏と檀氏が舞台袖から登場すると、両氏は頭を下げてから椅子に腰掛けて、静かに『ラヴ・レターズ』は始まる…アンディーとメリッサの手紙のやりとりを、セリフのキャッチボールで展開していくという独特のスタイル華やかなスポットライトに照らされた舞台上にいる二人だけの役者さんは、手に持っている台本に視線を落としたまま、淡々と、ときに感情を込めて読み上げていく舞台には飾り気もなく、色を添える音楽もないごくごくシンプルな舞台だけに、役者さんのセリフが自分の許にダイレクトに飛び込んでくる取れたチケットがかなり前の席だったので、憧れの女優さんがすぐ目の前にいることだけで嬉しいので、集中して観ているつもりだったが、所々記憶がない…???どうやら、あまりにも静かな舞台なので、日頃の睡眠不足が祟ってか、睡魔に襲われてしまったようだそれが、1回ならまだしも、何回も…決して退屈な作品ではないのだが、動きがない舞台なだけ、ついつい…睡眠不足のときに『ラヴ・レターズ』を観るのはダメやね15分の休憩を挟んでの後半は、加藤氏と檀氏の両氏は衣裳チェンジ前半はお二方とも若々しい装いだったが、だいぶシックな装いで登場自分が思うままに生きるメリッサ、その我が侭を受け止めようとするアンディーその姿は、檀氏を大きな包容力で受け止める加藤氏の演技と重なって見え、二人がアンディーとメリッサそのものに思えた物語も意外な展開を見せ、2時間という時間が瞬く間に過ぎてしまったなんかね、この作品は独特の世界観を醸し出している自分の率直な意見を言わせてもらえば、お世辞にも素敵な作品とは言い難い1回観れば充分でも、あの役者さんだったら、どう演じるだろう?という興味は抱かせるそういったところが、この作品が、今日まで上演が繰り返されている魅力なんだと思うちなみに、自分はラブレターを書いたことは無いが、貰ったことはあるそれが、自分も好意を寄せていた女性だったので、嬉しかったなぁでも、結局その恋は実ることはなかったけれど…そんな甘酸っぱい思い出を、この舞台を観たら思い出してしまったル テアトル銀座『ラヴ・レターズ』7月20日(日)~7月30日(水)出演/アンディー…加藤雅也/メリッサ…檀れい※7月30日の回(演者は日替わり)
2008年07月30日
本日観劇2作品目となる、16時から観る舞台は、明治座7月公演『梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清特別公演』で、母と一緒に観劇毎年恒例となっている明治座での梅沢武生劇団公演の舞台を母と観るのは、これが3度目というのも、母が前川清氏のファンなのであるそれを知った自分は、3年前に明治座で舞台があるというので、母の分のチケットを用意して観たそれが、母と息子が一緒に行ったはじめての芝居見物舞台のチケットは高いそれも2枚分となると結構な金額なので、その時は一番安い3階席からの観劇3階席から舞台を見ると、演者の方々は小さくしか見えない視力が悪い母は、オペラグラスを一生懸命覗き込んでいたで、最後の舞踊ショーで、前川氏が宙吊りで3階席まで上がってきたとき、母は興奮のあまり席から立ち上がって手を振り、劇場の係員の方から「危ないですからお座りください」なんて、咎められていたっけ?あんな興奮する母親って、初めて見たかもしれないそれから一昨年は奮発して、1階席の花道近くの席で観賞この時は、自分がチケットを持っていたのだが、仕事が手間取ってしまい、開演に間に合わず、10分ほど遅れての鑑賞が、舞台を間近で観ることができた母は、このときもだいぶ喜んでいた去年の公演は休みの都合が合わずに観劇は叶うことはなく、今年も自分が休みがとれそうにもなかったので、観劇は諦めていた母は母で何も言わなかったのだが、母の知り合いの方が梅沢劇団の芝居を観にいったらしく、その話を聞かされた母は、何気なく自分にその話題を振ってきたのだひょっとして催促してる?そんなとき、数日前、やっと金曜日に休めることになったので、慌てて明治座に行き、公演のチケットを用意したのである良席は期待していなかったのだが、幸いにも前から7列目という座席を確保することができ、一安心夜は母と一緒に観劇をし、じゃあ午前は自分が観たい芝居を観ようと、新橋演舞場で公演中の『おしん』を観ることに劇場を移動する時間は十分あるだろうと考えていた自分だったが、明治座の公演時間が16時開演だと知ってビックリ!だって、新橋演舞場の公演は15時25分に終了予定なんだもんということは、35分間で、東銀座にある新橋演舞場から、日本橋浜町にある明治座へと移動しなければならないギリギリか!?電車の時刻表を調べたら、15時39分発の列車に乗れば開演に間に合うその電車なら乗れるだろう…と高をくくっていたら大間違いいざ終演後に劇場を出ようもんなら、同じく舞台を観終わった多くの御婦人たちが皆ゾロゾロと歩いていて、思うように前に歩き進むことができないやっとの思いで地下鉄の東銀座駅に着くと、今度は切符売り場に列ができている自分が購入すべき切符の値段がわからないのか、券売機の前で料金表を見上げて睨めっこしているしまった~先に切符買っておくんだった!!で、ようやく切符を買って、改札口を通ると、自分が乗るべき筈だった列車が走り去ったばかりであったあゝ…行ってしもた…なす術なく、次の44分発の電車に揺られると、最寄り駅である人形町に着いたのは15時55分開演5分前!普通に歩いていたら到底間に合わないという事で、蒸し蒸しする空気を切り裂くように、全力ならぬ半力疾走このまま行けば間にあうぅぅぅと思ったら、最後の最後で劇場前の大きな交差点で赤信号に捕まってしまった開演2分前!アカン!もうダメや…赤信号を突っ切るのもいかがなものかと、開演前に劇場に入ることを半ば諦めたものの、それでも青信号になるとダッシュして、客席へと滑り込んだ間に合ったぁぁぁぁ!!イヤ、ほんと間一髪だったそれはヨカッタが、炎天下のなか走ってきたせいか、汗がおもしろいほどに噴き出していた汗を拭う間もなく、舞台の幕は開いた…梅沢劇団創立70年『梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清特別公演』抱腹絶倒間違いなしの昼夜別狂言に、数々の名曲をたっぷりとご堪能いただける歌のビッグショー大好評の舞踊絵巻はより妖艶に、ラストでは歴代の怪獣が一挙大集合!劇団創立70周年の節目にふさわしい絢爛豪華な舞台!!舞台は五部構成となっていて、一部はお芝居で、昼夜別演目昼公演は『おかしなおかしな男の花道』で、自分が観た夜の部は『大笑い!清・富美男の浪花の恋の物語』物語を端的に説明すると、愛する妻に裏切られた男の復讐譚目が不自由な夫(富美男氏)に愛想を尽かした妻が、不倫相手と共謀して、邪魔になった夫を殺そうとするそのことに気づいた夫が、突然目の前に姿を現したねずみ小僧(前川氏)の手を借りて、妻と不倫相手の男に復讐するというものもう、これが驚くほど薄っぺらい内容でビックリ!よくもこんなお芝居を観させたな!って感じそれでもお客さんが満足しているのは、梅沢富美男氏と前川清氏の凸凹コンビがかもし出す絶妙の演技のおかげ計算しているのかしていないのか、わからないほどのとぼけた演技は客席に笑いの渦を起こしていた2人の演技があって、なんとか芝居をもたせたと言っても過言ではないと思うあまりにも中途半端であっけない幕切れのなか、前川氏が花道を去っていく際、『ちゃんとした芝居を観たかったら、よその劇場へ』と言って、客席から笑いをとっていたホント、その通り!って、もしかして、劇団もお客さんも百も承知なことなの!?休憩を挟んで、二部は『前川清・梅沢富美男 歌のビッグショー』そして、三部は『座長 梅沢武生口上』前川氏のファンである母は、生で前川氏の歌を聴けて楽しんでいる様子「長崎は今日も雨だった」などの往年のヒット曲から、新曲などを披露梅沢氏も、ご自身の持ち歌でありヒット曲の「夢芝居」を熱唱いつもより、歌謡ショーの時間が短いな?と思っていたら、続いての座長の口上が長かったのであるそこでは、色々な話が展開されたまず、お芝居のときに座長が足を引きながら登場したことが気になっていたのだが、実は、去年の名古屋御園座での公演の最中に、セリに足を挟んでしまい、足の指を3本骨折してしまったとのことそれが元で、足を引いているのだというさらには、自身が癌であることを告白本当ならば今すぐにでも入院しなければいけない身なのだそうだが、なんといっても今年は梅沢劇団にとって、劇団創立70周年という節目の年それゆえに、無理を通して舞台に立ち続けているそうなのだが、新たな癌の腫瘍も見つかってしまい、8月末に行われる足立区北千住駅前にあるシアター1010での記念興行を最後に、しばらく舞台は控えるとのこと「もうこの明治座の舞台に立つことはないかもしれない…」座長の口から、そんなことを言われてしまうと、なんだかしみじみとしてしまった自分の身体を犠牲にしてまでも舞台に立ち続ける座長の姿に役者魂を見たような気がした二度目の休憩を挟んでの第三幕は、四部『舞踊絵巻 夏まつり!』と、五部『特別番組 ~大怪獣勢揃い~艶姿夢御殿』の舞踊ショーお芝居では、情けないメイクをしていた富美男氏だったが、美しく艶やかな女形姿で登場すると、客席からは溜息交じりの歓声が上がったあの中年の男性が、こうも美しく変身するか?って目を疑いたくなるような変貌ぶりお芝居で演じた三枚目の男とのギャップの差が激しいだけに、同一人物だとはとても思えない化粧は“化ける”という漢字を使うが、ホントやね座長とのコンビは、さすがは長く組んでいるだけあって息もピッタリ、立っているだけで画になる美しさお芝居と歌謡ショーで活躍された前川氏も、白塗りをして芸者姿を披露し、舞台に華を添えていたそれにしても毎回思うのだが、他の座員さんたちが出演される舞踊ショーのシーンは、なんだかいまひとつ踊りの構成が下品だし、選曲といい、衣装のセンスといい、どうも好きになれない演じている座員の皆さんは一生懸命なのかもしれないが、観ていて辛いというか、痛々しいというか、お茶を濁すようなオフザケじゃなくて、きちんとしたものを観たいそれとも、お客さんたちは、こういったものをこの梅沢劇団に求めているのかな?そもそも、自分が好き好んで観にきているわけではなく、母が楽しんでくれればそれでいいので、自分的には辛口な意見になってしまった劇団創立70周年と銘打っているわりには、今まで観たなかで一番つまらなかったかも…これは、決して悪意のものではなく、率直な感想そんなことを思いながらフィナーレを迎えていた舞台上では、出演者たちの方々が手拭いをお客様に向かって投げていて、それを取ろうと、お客さんたちも必死そんな光景を呆気に取られながら見ていると、自分めがけて何かが飛んでくるではないか!無意識に左手を伸ばすと、自分の手中に納まったのは、なんと手拭い!劇団創立70周年を記念してあつらえたもので、非売品なんだとか球技が全くダメな自分にとって、これは奇跡に近いふと横を見ると、手拭い欲しさに、身を乗り出している母「とれたよ」と、手拭いを差し出すと、母は喜ぶのであったこうして、また思い出がひとつできた自分としては、何度観ても、この世界観は???であったが、母が喜んでくれたならそれで満足来年の6月には、、また明治座で「梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清」公演が行われることが決定しているそうなので、都合が合えば、また連れていくからね!明治座7月公演劇団創立70周年『梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清 特別公演』6月28日(土)~7月27日(日)まで出演/梅沢武生/梅沢富美男/前川清/梅沢武生劇団 ほか
2008年07月25日
今日はものすごぉぉぉく久しぶりの休み前はいつ休んだのか覚えてないぐらいで、数えてみたら27日ぶりだった2、3週間休み無しというのはざらだが、こんなに休みが取れなかったのは初めてかも!?タイトなスケジュールに加え、連日の猛暑も手伝ってか、だいぶお疲れの様子それだけの間、突っ走ってきたなら、今日一日は家でゆっくり過ごしたい気もしたが、どうしても観たい舞台があったので、昼と夜とで2回の芝居見物の予定を入れてしまったまずは、茹だるような暑さのなか新橋演舞場へ新橋演舞場の夜の部の舞台は、16時・16時30分開演が基本なので仕事帰りに…というわけにはいかず、休みを取らないと観劇することができないなので、以前から観たいと思いつつも休みが取れなかったので、今日ようやく観劇を実現することができた観たかった舞台というのは、7月公演『おしん』昭和58年から翌年にかけてNHK朝の連続テレビ小説として放送され、平均視聴率52.6%という驚異的な数字を叩き出し、空前のブームを巻き起こした作品の舞台化であるどんな逆境の中にあっても、しっかりと大地に足をつけて一歩づつ成長していくおしんけなげに、そして、ひたむきに…奉公に出されたおしんが、貧しさと闘い、幾多の試練にも負けずに、様々な出会いや別れを通して成長し、結婚するまでの壮絶な半生!豊かな時代に生きる私たちに、本当に大切なものは何かをおしんは優しく語りかけます(公演チラシより)番組が放送されていた昭和58年は、自分はまだ子供だったので、タイムリーには見ていない日本のみならず、香港・シンガポール・エジプトなど世界63カ国で放送されたという『おしん』それほどまでに人々を魅了するものは何なのか、自分も味わってみたかったお馴染みの番組のテーマ曲から始まり、幕開けの場面は、雪深い最上川上流の河原テレビの懐かしの名場面として幾度か放送されたことがある、奉公に出されるおしんが筏に乗せられての別れのシーン舞台でどうやってこのシーンを再現するのだろうか?と思っていたが、花道をうまく利用していて、演者の皆さんの好演もあってか絵になるシーンとなり、一気に物語の世界へと引き込まれたドラマではおしんの一生が描かれているが、舞台化にあたっては「青春篇」として、幼少期から結婚するまでが描かれている幼少期から青春期だけでも25時間分もの長い物語を、舞台用に3時間強に凝縮しているので、名場面集を見ているといった感じそのブツ切れのシーンを繋ぎ合わせるかのようにして、奈良岡朋子氏のナレーションが埋めていくという構成主役のおしんの子供時代を演じるのは、佐々木麻緒氏と諸星すみれ氏のダブルキャスト自分が観た回は、諸星氏だったが、オーディションでおしん役を射止めただけあって、とにかく巧い感情の表現が豊かで、錚々たる出演者の中でも引けをとらずに堂々と演じ、どんなに辛い目に遭わされてもけなげに、そしてひたむきに耐える姿は、胸が締めつけられる想いで、幾度もお客さんの涙を誘っていたおしんの母・ふじを演じたのは、長山藍子氏テレビでは泉ピン子氏が演じていて、『おしん』が幾度か舞台化された時も泉氏が同役を演じていた一役者さんが同じ役を演じ続けられると、その方のイメージが強くなってしまうのが、長山氏は全くそんな事を感じさせず、長山氏なりの優しさの中にも芯を秘めている、情愛に満ちたふじ像を演じていたおしんの父・作造を演じた前田吟氏は、無骨でしょうもない父親でありながらも、どこか憎めない父親像を演じ、祖母・なか役の赤木春恵氏は、出番は少ないながらも手堅い演技で、舞台に厚みを増していたおしんの二度目の奉公先になる加賀屋の大女将・くにを演じた山本陽子氏は、さすが大女優だけあって貫禄十分舞台に立つだけで華がある大女将役というだけあって、抑えた演技ではあるが、要所要所でまとめていて、その存在感を大いにアピールしていた印象に残ったといえば、おしんが初めて奉公した材木問屋で働いているつねを演じた東てる美氏これが、憎ったらしいの、なんのって顔のメイクを見るからに意地悪そうに崩して、尽くおしんをイビリ倒すのだおしんの作者でもある橋田壽賀子氏のドラマで、現在放映中の『渡る世間は鬼ばかり』でも嫌な女性を演じているので、この女優さんはこれが素なの?と思ってしまったほどそれほど、ごくごく自然と嫌味な役どころを立ち回っているなかでも、財布の中からお金が無くなり、おしんを泥棒呼ばわりするシーンは、観ていて辛かった東氏って嫌な女優さんダ…って、これは褒め言葉!?ねだって、そう思わせるほど巧いってことなんだから、役者冥利に尽きると思うちなみに、東氏は第二幕では、おしんと結婚する田倉竜三の母親・お清役を務めているが、こちらも、身分違いの結婚に反対して、おしんを罵倒する嫌味な女性だったほんと、東氏ったら、この手の役柄はお上手です公演のポスターの真ん中には、おしん役を務める小林綾子氏が写っているが、当の小林氏はというと、二幕の中盤あたりからようやく登場放映当時は、おしんの幼少時代を演じていた小林氏の登場だけに、花道から登場した時は拍手喝采!しかし、ちょっと出番が遅かったような?それまでの、子供時代を演じてきた諸星氏の涙を誘う熱演が続いてきただけあって、小林氏のおしんは何か物足りないというか、ちょっとインパクトに欠けたような気がしてしまった1幕が1時間30分、35分間の休憩を挟んで、2幕が1時間50分と、舞台の上演時間が正味3時間20分という長い舞台だったが、うまくまとめられていて、長さを感じることなく、駆け足のようにおしんの青春時代を追っていったさて、公演のチラシの裏に、“豊かな時代に生きる私たちに、本当に大切なものは何かをおしんは優しく語りかけます”と書いてあったが、舞台を観終えた今、自分は何を感じただろうか?厳しく辛い現実を突きつけられても、けなげに生き抜いたおしんの姿に、何があっても生きていかなくてはいけなんだ…そう思うのであった内容が重いだけに、暗くジメッとした舞台かと思いきや、随所に笑いもちりばめられており、明るい未来を想像させるような幕切れといい、最後は気持ちよく客席をあとにすることができたさて、今の時刻は15時30分次観る舞台は、なんと16時開演!あと30分しかない!急いで移動せねば!!新橋演舞場7月公演『おしん』7月4日(金)~7月27日(日)まで出演/おしん…小林綾子/加賀屋くに…山本陽子/ふじ…長山藍子/作造…前田吟/なか…赤木春恵/俊作…勝野洋/つね…東てる美/清太郎…堤大二郎/おしん(子供時代)…佐々木麻緒・諸星すみれ(ダブルキャスト) ほか
2008年07月25日
新宿コマ劇場で今日初日を迎えた、劇団☆新感線の舞台『五右衛門ロック』を観劇釜茹上等!盗んでゴー!浜の真砂の尽きるまで!神秘のお宝“月生石”が山ほど眠るというタタラ島月生石を戴くために、タタラ島に上陸した天下の大悪党・石川五右衛門だったが、そこで見たものは、トロピカルな島の裏で繰り広げられている愛と憎悪の愚かな戦だっためぐりめぐった因果の糸、たぐりたぐって男と女欲に目が眩む大人どもはたして“月生石”の秘密とは?謎の男、タタラの英雄・クガイ大王の正体とは?絶体絶命!危機一髪!石川五右衛門の大活躍!(公演チラシより抜粋)題名が「五右衛門ロック」というだけあって、バンドによる生演奏が入り、これはミュージカル?と思ってしまうほど、出演者の方たちは謳いあげるそのどの役者さんも歌がウマイんだなぁ耳をつんざくような大音量でのロック音楽が続くのかと思いきや、色々なナンバーがあり、心に残るメロディーもいくつもあった物語は、石川五右衛門が異国の地で巻き込まれる騒動という、奇想天外なストーリー話に若干荒削りな部分はあるものの、そんなことも気にならないほど、役者さんたちのパワーが凄い主演の石川五右衛門を演じる古田新太氏の軽妙洒脱さ、美しさのなかに強さを秘めている松雪泰子氏、五右衛門を追う役人を演じる江口洋介氏の実直さ、若さ漲る森山未來氏の眩しいまでの躍動感、スペインの武器商人を怪しく面白おかしく演じた川平慈英氏、緩急自在に巧みに演じる高田聖子氏と、各々のキャラクターが実に際立っていて、それぞれに見せ場があり、皆が主人公といった感じなかでも、クガイ大王を演じた北大路欣也氏の存在感はすごい時代劇で活躍されてきただけに、殺陣は実に見事重厚な演技で、舞台を引き締めていた今日は、舞台初日ということもあってか?ちょっとしたハプニングがあったそれは第一幕の、五右衛門と左門字がタタラ島に漂着しての、タタラ兵との殺陣のシーン左門字を演じる江口氏の様子がおかしいな?と思ってみてみると、頭を手で押さえているなんと、鬘が取れそうになっているのだ殺陣をしながらも、鬘をなんとかしようとしているが、どうにもならないそうこうしているうちに、動きが激しいせいか、鬘は今にも取れそうもう気になって、江口氏の頭にしか目がいかないお客さんたちも気になっている様子で、ザワザワしているさて、江口氏どうする?と思ったら、ついに観念したのか、おもむろに鬘を外すと、カッコつけながら舞台袖に放り投げこんだのだったそれを見て、客席から拍手!!相方の五右衛門演じる古田氏も、羽二重姿で露になっている江口氏を見て、「頭どうしたの?」というアドリブで、客席は爆笑!舞台は生モノで、何が起こるかわからないからねこれが舞台の醍醐味のひとつかもしれない劇団☆新感線の舞台は、今回初めて見るのだが、ただただ圧倒されてしまった照明といい、セットの転換といい、見せ方・魅せ方がとても上手い役者さんが客席を通っての演技も度々あり、観る側にとってはてんこ盛りのサービス!間近で濱田マリ氏を見て「キ、キレイ…」って思ってしまったほんと、最初から最後まで、心を鷲掴みにされたまま舞台を観て、他の観客が笑っても、自分は笑わないことが多いのだが、今回の舞台は随所に笑いが盛り込まれて、笑わずにはいられなかったほどかと思えば、ラストはジーンとくるものがあり、目頭、そして胸が熱くなる喜怒哀楽の感情が吹きだしてしまう舞台20分の休憩時間を含めて、3時間30分の公演だが、あっと言う間に時が過ぎてしまったほど都合がつけば、もう一度観劇したいなぁ…新宿コマ劇場7月公演劇団☆新感線2008夏興行SHINKANSEN☆RK『五右衛門ロック』7月8日(火)~7月28日(月)まで出演/石川五右衛門…古田新太/クガイ…北大路欣也/真砂のお竜…松雪泰子/岩倉左門字…江口洋介/カルマ王子…森山未來/ペドロ・モッカ…川平慈英/シュザク夫人…濱田マリ/ボノー将軍…橋本じゅん/インガ…高田聖子/ガモー将軍…粟根まこと ほか
2008年07月08日
仕事が終わると、帝国劇場にて公演中の舞台『細雪』を観劇昭和十年代、大阪船場徳川の時代から続く木綿問屋・蒔岡商店時代は戦争に向けて大きく動き出しているなかでも、優雅さを忘れない蒔岡家の美しき四姉妹それぞれの想い、それぞれの人生を歩んでいるそしてついに日華事変勃発本家の蒔岡商店は倒産し、姉妹たちは自分たちの世界が古き良き時代、すでに過去になりつつあることを感じていたそれでも彼女たちは美しくあることをやめない散るからこそ美しい、満開の紅枝垂れの桜のように…(公演あらすじより)昭和41年初演以来、上演回数1200回を超えている舞台版「細雪」今までも数々の錚々たる女優さんたちが四姉妹を演じてきたが、今回は顔ぶれを一新し、だいぶ若返ったキャスティングとなった自分は、今から8年前に、同じ帝国劇場で「細雪」を観劇したその時は、長女・佐久間良子氏、次女・古手川祐子氏、三女・沢口靖子氏、四女・純名里沙氏という配役正直いって、この時の舞台の内容はあまり記憶に残っていないただ、終幕の枝垂れ桜の下に立つ四姉妹の美しさだけは鮮烈に記憶に残っている今日は、幸運にも、一番前の座席での観劇舞台と客席があまりにも近くて、ワクワクというか、かなりドキドキ状態クラシック調の音楽が鳴り始めると、静かに幕は開いた…亡き父から引き継いだ家業の暖簾を守る長女・鶴子役は高橋惠子氏伝統と格式を重んじるあまりに、人生を雁字搦めにされてしまった女性その振る舞いを、かなり嫌味な役ではあるが、高橋氏は堂々たる風格で見事に演じていた終幕ちかくで見せた妹思いの姉の表情が、印象的何事にも気丈に振舞う次女・幸子役は賀来千香子氏スラッとした長身に、着物姿が実に映えていた姉想い、妹想いと、幸子がこの物語の主人公では?と思うほど、四姉妹のなかではキーパンソン的存在賀来氏が持つ明るく陽気で華やかな雰囲気は勿論のこと、辛さ哀しさなど、実に色々な表情を見せてくれた2幕ラストで、頬に残っていた、1筋の涙の跡がとても印象に残っているマイペースな三女・雪子役の檀れい氏宝塚歌劇団に在団中から、美貌の持ち主と謳われていたが、実に美しい女優さんだった肝心なときになると「ふ~ん」としか言わない、やさしくおっとりとしたなかにも芯を持っている女性像は、檀氏によく似合っていた積極的で活発的な四女・妙子役の中越典子氏上の姉たちとは対照的に、恋に仕事に実にヴァイタリティーな女性を、ハツラツと演じていたそれぞれの女優さんたちは役柄に合っていて、舞台のうえでは見事に大輪の4つの華が咲き競っていた出てくるたびに替わる艶やかな衣装も見所のひとつもう近くで見ているんだけれど、あまりの美しさに見惚れてしまって、マジマジと見てしまったそして圧巻なのは、ラストシーン舞台いっぱいに咲き誇る満開の枝垂れ桜の下に立ち並ぶ四姉妹それは、それは、言葉にならないほどの美しさまるで夢を見ているみたいできることなら、このまま夢が醒めないでほしい…と、思ったのもつかの間、静かに幕は降りるのであった栄華を極めた一家が没落し、数奇な運命を辿る四姉妹それでもなお、輝きを失わずに生きていこうとするその生きることへの力強さ は見習うものがあった辛いこと、哀しいこと、悔しいこと、沢山あるけれど、生きていれば、いつか、いいことがきっとあるはず…そう思うから、いや、そう言い聞かせているからこそ、己に与えられた試練を乗り越えていくことができるのではないだろうか今日観た舞台に咲いた数々の花々は、深く深く自分の胸に刻まれるたのであった…帝国劇場6月特別公演『細雪』6月5日(木)~6月30日(月)まで出演/鶴子…高橋惠子/幸子…賀来千香子/雪子…檀れい/妙子…中越典子/辰雄…磯部勉/貞之助…篠田三郎/奥畑啓三郎…太川陽介/板倉…新藤栄作/御牧…橋爪淳 ほか
2008年06月26日
今日は休みだったのだが、急遽仕事が入った午前中で仕事を済ませると、観劇の為に品川天王洲アイルにある天王洲銀河劇場へ今日観劇する作品は『ハロルドとモード』19歳のやんちゃな少年・ハロルドと、79歳のチャーミングなお婆ちゃん・モード二人はふとしたきっかけで知り合い、次第に惹かれ、ついには恋に落ちてしまった!?人の心の純粋さを素敵に表現した、心温まるコメディチックなラブストーリー(公演あらすじより)19歳と79歳の恋愛だなんて、ちょっと現実味に欠けるだけに、どうやって恋に堕ちるの?と興味津々ハロルドはいたずら好きでちょっと性格が変わっていて、モードといえば屁理屈ばかり言って周囲を困らせている老婆二人とも一筋縄ではいかない人物そんな二人が初めて出会うシーンには、恋の予感すら見えないこれでどういう展開を迎えるのか?と思いきや、何回か会ううちに、いつのまにかハロルドがモードに恋していた一体、どういった心境の変化があったんだ?確かにモードは、自分の思うがままに人生を謳歌していて、人として魅力は感じるけれど、それがイコール愛には自分のなかでは結びつかなかっただけに、そこらへんの心情の変化が自分にはちょっと分からなかったとはいえ、79歳のモードを演じる浅丘ルリ子氏はとってもキュートで、ハロルドを演じる西島隆弘氏は笑顔が眩しい好青年という美男美女のカップルなので、年の差60歳の恋愛という違和感もどこかに吹き飛ばして、物語の世界に入ることができた物語に描かれているのは、ハロルドとモードの愛だけではないハロルドと、その母であるミセス・チェイスンとの親子像も見所のひとつ母親を演じた杜けあき氏は、ハマリ役?と思わせるほどの好演かなりのコメディエンヌ振りを披露していた過保護に育てる母と、それを疎ましく思う息子距離を縮めようとすればするほど、母と子の距離は離れていく母と息子の距離感って難しいんだよね2人のやり取りを、自分の反抗期と照らし合わせて観た色々な障害や問題を乗り越えつつ、ハロルドとモードは結ばれてハッピーエンド…と思いきや、ラストは意外な結末を迎えるその急転直下の展開に、余韻に浸かる間もなく幕は降りてしまう決してハッピーエンドではないが、その後の展開を色々と含ませた終わり方だけに、時間が経てば経つほど、じんわりとしたものが心に滲みだしてくる生きていくということは?愛することとは?家族とは?笑いあり、涙あり、色々なエッセンスが散りばめられた舞台だった今日の舞台は終演後に、主要キャスト5人によるトークショーがあった舞台終演後ということもあって、キャストの方たちは舞台衣装のまま登場されたが、浅丘ルリ子氏は目にも鮮やかなエメラルドグリーンのドレスに衣装替え女性司会者による進行のもと、舞台にかける意気込みや裏話などが披露され、役者さんたちの素の表情を垣間見ることができて、とても興味深かったなかでも印象に残っているのは、杜氏舌好調なのか、ひとりペラペラと話し続けて、他の出演者の方に仕切られてしまったのには吹いてしまったあと、浅丘氏の声が思ったより低かったのには驚いた舞台が終わったばかりで、お疲れだったのかも!?『ハロルドとモード』天王洲銀河劇場6月19日(木)~6月29日(日)まで出演/モード…浅丘ルリ子/ハロルド…西島隆弘/ミセス・チェイスン…杜けあき/ドクター・マシューズ…村上幸平/フィネガン神父…川久保拓司 ほか
2008年06月20日
今日は久しぶりに宝塚の舞台を鑑賞月組公演『ME AND MY GIRL』“ひとりのラッキーより、ふたりのハッピー”下町に住む若者が、紆余曲折の末に大富豪の伯爵家に跡継ぎとして迎えられるという、1930年代のロンドンを舞台にした明るくロマンチックな物語(公演チラシより)『ME AND MY GIRL』は、1937年にロンドンで初演され、1646回のロングランを記録した大ヒットミュージカル宝塚歌劇では、1987年5月に上演し、それから幾度か再演されている人気の演目主演を務める瀬奈じゅん氏と彩乃かなみ氏の両名は、ほんと素敵なコンビ身分の違う恋に悩み苦しむ姿を、二人はストレートに表現していて、とても好感が持てた瀬奈氏は、舞台人としてのエンターティナーぶりに磨きがかかっていたし、彩乃氏は、美しく澄んだ歌声で客席を魅了今回の公演で彩乃氏が宝塚を退団してしまうということで、このコンビの舞台を観るのも最後かと思うと残念でならない退団といえば、月組組長を務めている出雲綾氏も、今回の舞台をもって退団される美声の持ち主として有名だが、本公演でもその歌声を十二分に轟かせていて、芝居での活躍もさることながら、フィナーレではエトワールまで務める活躍ぶりタカラジェンヌとしての集大成を見たような気がした専科から特別出演している未沙のえる氏は、まるで舞台を楽しんでおられるかのように弁護士役を軽妙に演じ、ベテラン勢の2人が舞台をギュッと引き締めていた1幕終わりと、フィナーレでかかる『ランベス・ウォーク』は心躍るナンバーで、舞台も客席も大盛り上がりメロディーが親しみやすくて耳に残るので、ついつい一緒に口ずさみたくなってしまった『ME AND MY GIRL』は、明るく楽しく、そしてなにより幸せが満ち溢れている作品きらびやかで夢のような世界にしばし酔いしれながら、帰路につくのであった東京宝塚劇場・月組公演『ME AND MY GIRL』5月23日(金)初日~7月6日(日)まで主演/ウイリアム・スナイブスン…瀬奈じゅん/サリー・スミス…彩乃かなみ/ジョン・トレメイン卿…霧矢大夢/ディーン・マリア公爵夫人…出雲綾/セドリック・パーチェスター…未沙のえる(専科) ほか
2008年06月12日
先日、映画『山のあなた~徳市の恋』を鑑賞して、現在、世田谷パブリックシアターで公演中の、草なぎ剛氏が主演している舞台『瞼の母』が観たくなったので、観劇することにシス・カンパニー公演『瞼の母』江州番場の生まれで天涯孤独の渡世人・忠太郎は、五歳で生き別れた母親恋しさの一念から、その面影を探し求め、彷徨う流転の月日を送っていたその母親が生きている…そんな風の便りに、会いたさ一念で、江戸へと流れ着いた忠太郎を待ち受けていたものとは…(あらすじより)ここの劇場で観劇するのは7年ぶり?2階席の最前列に腰かける古代のギリシャを思わせるような劇場内は、久しぶりに訪れても、その空間は独特の雰囲気を醸し出していた階下の客席を見渡すと、補助席も出ているし、客席の両サイドには立ち見のお客様まで出ている芝居で立ち見なんて、初めて見たそれほど、人気がある舞台なんだ程なくして、いざ開演!劇場内に音楽が響いくその音楽は、自分が好きなアーティストである“姫神”の曲だったおおッ!その曲を耳にした瞬間、一挙に期待は高まっていくのだった…舞台は、母親を探す番場の忠太郎が、行き先々で出会う女たちに、生みの親である母親の姿を重ね合わせながら旅を続けるというものこの舞台の上演時間は、休憩なしの1時間30分2時間半や3時間といった上演時間の舞台を見慣れている自分としては、時間だけ聞くと、短いと思ってしまったしかしながら、舞台を拝見すると、そんなことは微塵にも感じさせなかったたしかに時間が限られているので、演技巧者の役者さんを揃えているものの、それぞれの出番は少なく、勿体無い使われ方をしている方もいたが、むしろ、それだけにエッセンスが凝縮されていて、ものすごく密度の濃いものを観たような気がしたそんななか、印象に残ったのは、冒頭のシーン文字の読み書きができない忠太郎に頼まれて、おむらが文字を一緒になって書いてやるシーンおむらは、忠太郎の手をとり、声を出しながら、ゆっくりと一緒に文字をなぞっていくその姿に、母の姿を重ね合わせ、言葉にならないほどの複雑な感情を抱く忠太郎その微妙な心情の変化を、忠太郎演じる草なぎ剛氏は見事に演じていた男気溢れる忠太郎が見せた、なんとも愛しい姿であったおむらを演ずる三田和代氏も、深い深い愛情が滲み出ていて、2人が作り出す世界観は、なんとも胸が詰まるシーンとなったそして、なんといっても圧巻だったのは、舞台の大詰めである、忠次郎と、その母親である水熊のおはまとの、生き別れになっていた親子の対峙シーン忠次郎は、喜びを隠しつつも接するが、おはまは頑なにそれを拒絶する草なぎ氏と、おはま演ずる大竹しのぶ氏の気迫のこもった演技のぶつかり合いに、ただただ息を呑むばかりこんなに緊迫した舞台って、初めてかもしれないとにかく、演じているという枠を超えたものを感じた二人の一挙手一投足に目が離せない舞台に釘付けそんな、息をもつかせぬ攻防が、舞台の上で繰り広げられているおはまを母親だと確信した忠次郎は、なぜ自分を拒む態度をとるのか理解できず諦め切れないが、おはまの心無い言葉の数々に心を傷つけられ、涙がこみ上げてきてしまう再会できたときに渡そうと思っていた100両をも拒絶された忠次郎は、咽び泣きながら、袋の中に小判を戻すその時の忠次郎の苦しくて切ない心情を、草なぎ氏は身体を張って大熱演ついつい感情移入してしまって、こっちまでもらい泣き涙は出るわ、鼻水は出るわで、カバンからハンカチを出そうにも見つからず、もういいやって、そのままいやぁ、迫真こもった演技で、こっちまで胸が熱くなってしまった頑なまでに忠次郎のことを息子と認めなかったおはまだったが、実の娘の一言で心情が揺らぎ、本音の思いの丈を吐露する忠次郎に母と名乗りでなかったことを悔やむおはまが、時すでに遅しで、忠次郎は去ってしまったあと忠次郎、おはま、それぞれの気持ちがわかるだけに、とても切なくて心が痛む場面それにしても、大竹氏の演技は見事としかいいようがない男勝りのセリフ口調に、はじめは少々面食らったが、それも女手ひとつで生きていくためには致し方なかったことひとりの女から母親へと揺らぐ心情の変化を切々と巧みに演じていた「忠次郎は私のことを探し出してくれたのだから、今度は私が忠次郎を探す番」というセリフをおはまの口から聞けた時は、今までが重苦しい場面だっただけに、胸がスーッとして、救われたのだった自分の気持ちと思いに素直になることができなかったがゆえに、すれ違ってしまった忠次郎とおはま親子なんとも切ない幕切れではあったが、観終わったあと、不思議と充実した気分になるのであったほんと、いい舞台観たなぁ…って感じ幕切れの忠次郎のセリフ「こう上下の瞼を合わせ、じいッと考えてりゃあ、逢わねえ昔のおッかさんの俤が出てくるんだ。逢いたくなったら俺あ、眼をつぶろうよ」自分の場合は、誰の姿が焼きついているかなぁそっと、瞼を閉じてみるのだった…シス・カンパニー公演『瞼の母』世田谷パブリックシアター5月10日(土)~6月8日(日)まで出演/番場の忠太郎…草なぎ剛/水熊のおはま…大竹しのぶ/おむら…三田和代/金五郎…高橋長英/鳥羽田要助…篠井英介/善三郎…高橋克実/お登世…市川ぼたん/半次郎…高橋一生/おふみ…梅沢昌代/おとら…神野三鈴 ほか
2008年06月05日
今日の夜は、青山で舞台鑑賞開演時間は18時30分仕事終わりで駆けつけるにはギリギリの時間車より、確実な電車を利用しようと、まえもって時刻表を調べておいた17時20分…本来なら、駅に向かって歩いていなくてはならないのに、まだ仕事中あろうことか取引業者が約束の時間より30分遅れてきたので、仕事が延びてしまっているのであるまさか「これから舞台観にいきますので…」といって切り上げるわけにもいかず、仕事しながらも悶々とする仕方ないか!と、今日の観劇は諦めかけていたところ、事の運びが急転して、17時40分過ぎには終了したいっそのこと遅くまでかかれば潔く諦めがついたものの、かえって始末が悪い時間電車の乗り継ぎを調べてみると、今から急いで出れば、開演後30分ほどで劇場に到着する開演してから30分後か…それなら、車で行こう!開演に間に合わないものの、道が空いていれば、電車よりは早く着くしかし、金曜の夜といえば都内の道路はどこも混雑するのは目に見えているまず間違いなく渋滞に巻き込まれることだろう車と電車、どちらを利用するにせよ、どうせ開演までには間に合わないのだから、それなら早く着く可能性がある車で行こうと、一縷の望みをかけてハンドルを握ったたまたまなのか、それとも思いが通じたのか、いつもは混雑している幹線道路も順調に進み、思いのほか早く青山に到着劇場ちかくの駐車場に車を停める時計を見ると、開演5分前早足で劇場に向かうと、なんと開演ギリギリに間に合ったのであるあぁ奇跡としかいいようがないそうなんでも簡単に諦めるもんじゃないね身をもって体験したそれにしても、これでだいぶ運使っちゃったかな!?今日観劇するのは、青山円形劇場にて公演している『好色一代男』七歳で恋を知り、女を愛し続けること五十余年浮世に生まれ、浮世に生きた、恋愛遍歴に命をかけた男の一代記主役を演ずるのは、関西で人気沸騰中の「剣戟はる駒座」の座長を務めている津川竜氏今回の舞台が、劇団外部公演に初出演にして初主演とのこと津川氏は、さすがは大衆演劇で経験を積まれてきた方だけあって、口跡は良し、所作のひとつをとってもごくごく自然で、“見せる・魅せる”ことを知っている役者さんだなぁ…と見惚れてしまったもうね、視線がこちらに飛んでこようもんなら、その色っぽい魅力に惑わされて、男の自分でも惚れそうになったぐらい大衆演劇の役者さんに熱を上げるご婦人方がいらっしゃるけれど、ちょっとその気持ちがわかった舞いあり、殺陣あり、そして上方役者だけに笑いの役も担って、八面六臂の大活躍十分に津川竜氏という役者の魅力を満喫した今回の舞台に特別出演されている水前寺清子氏舞台に登場して、アレッ?って思っただって男性の衣装着てるんだもんそう、津川氏演じる世之介の恋敵役として出演しているのだなぜに男役?その配役に少々面食らってしまったが、これがなかなか水前寺氏の気質にあっているのか、飄々と演じていて、これはこれで面白かったただ、美しい着物姿も見てみたかったなぁ…と思っていたところ、フィナーレで、黒地の着物で艶っぽく登場したとき、その思いは遂げられた男役から一転しての色っぽい姿に、客席からもどよめきと拍手が沸いていた舞台は、主人公である世之介が、今までの女性遍歴を回想していくかたちで展開していく笑いあり、涙ありと、喜怒哀楽がテンコ盛りこれが大衆演劇ってもんなのかなぁ?とにかく理屈抜きで楽しませてもらった今日訪れた青山円形劇場は、かなり変わった劇場空間客席について、その独特の造りに目を奪われた劇場の名の通り、中心にある円形のステージを囲うようにして、360度客席があるのだそれに、舞台と客席にはなんの隔たりもなく、1番前の席に座るお客さんは、足を一歩踏み出してしまえばもう舞台というほどに近いなので、役者さんの息遣いが聞こえてきそうなぐらいの至近距離で舞台は繰り広げられる客席は円形なので、当然のことながら、舞台を観ていると、対面のお客さんが見えるわけで、なんだか、いや、かなり変な感じ円形の舞台、しかも360度からお客さんは見るわけで、一体どういう風に演出するのだろう?と思っていたところ、今回の舞台に限って言えば、役者の方がグルッと周りを回ったりと、特異な舞台に配慮した演出がとられていたとはいえ、グルグル舞台を回ってばかりいられるわけでもなく、基本的には舞台正面を見ての展開幸いにも、自分は正面側の席に座っていたのだが、そうなると、後方側の人たちは、背ばかり見ての観劇となるこういった変わった形の機構だと、少なからず不公平感は出てしまうようだでも、ここの劇場の空間は、すごく密な気がして気に入ったただひとつ、気になったことといえば、椅子の座り心地が悪かった座面が硬いのかな?一応座布団は敷いてあったが、お尻が痛かったぁぁぁ!舞台『好色一代男』青山円形劇場5月28日(水)~6月1日(日)まで出演/世之介…津川竜/尾張の伝七…水前寺清子(特別出演)/夕霧太夫…遠藤真理子/夢介…大門伍朗/高尾太夫…香坂千晶 ほか
2008年05月30日
仕事を終えると、急いで電車に飛び乗って、観劇のために北千住へと向かった今日観劇するのは、シアター1010という劇場で公演されている舞台『そのまま! 競馬予想屋人情喜劇』地方競馬場の偏屈な予想屋が、倒産寸前の小さな出版会社を立て直そうと夢見る社長に頼られてしまうことから巻き起こる騒動予想屋の娘、弟子、馴染みの居酒屋の飲み友達や社長を支える部下と、どこか不器用にしか生きられない人々が織り成す、可笑しくて心温まる、そして勇気をもらえる作品(公演あらすじより)出演者の方々は皆芸達者な方ばかりこんな事をいっては失礼かもしれないが、華やかさはないものの、いぶし銀といったらいいだろうか長年培ってきたものが滲み出してきている、なにやら味わい深いようなものを演技を通して見たような気がした物語は競馬の予想屋が主人公というだけあって、話の題材は競馬が中心観劇していて思ったことは、この作品、なんだかテレビドラマを観ているような感覚になるうまく言葉では説明できないんだけれど、舞台上で繰り広げられているのが日常的な風景で、舞台空間には生活臭が漂っていて、舞台と客席との間に隔たりがない作品といい、セットといい、醸し出す雰囲気がホームドラマっぽいんだよねぇ今までにいくつもの舞台を観てきているが、こんな感覚初めてラストは明るい希望の光が未来を照らしているかのような形で締めくくられていて、晴れ晴れとした気分になった平凡に暮らしている人々でも、胸の奥底にはそれぞれ抱えているものがあって、それに足掻きながら生きているそれでも日々生きていれば、いつかきっと良いことはある作品を見て、生きるパワーをちょっとだけ貰ったような気がしたこの話は、はじめて馬券を購入した男が万馬券を的中させたことから話が展開していく何を隠そう自分も初めて馬券を購入したとき、万馬券を的中させた5百円が5万円に化けたのであるそれからいい気になって、一時期は毎週日曜日になると競馬新聞と睨めっこしていたが、それも昔の話今ではギャンブルは一切やらないこの作品を見て、久しぶりに競馬を!?なんて思ってもみたが、やっぱり堅実に生きようっと…シアター1010自主公演『そのまま!』5月22日(木)~28日(水)まで出演/石橋照男…ベンガル/石橋理恵…藤谷美紀/立花敏之…上杉祥三/牧チエミ…山田まりや/成田修二…大沢健/大村泰造…でんでん/原田陽子…星奈優里/酒井亮…小宮孝泰 ほか
2008年05月26日
今日はお休みまだ足の痛みは残っていたので、大事をとってゆっくり安静していればいいものを、どうしても観たい舞台があったので、出かけることに観たい舞台というのは、池袋にある東京芸術劇場で公演中の、浜木綿子氏主演『玉つき屋の千代さん』浜氏の舞台を見ると明るく元気になって、観ているこちらがパワーを貰えるので、都合があえば観るようにしている去年は、1月に名古屋で座長公演を行ったものの、東京で公演されることがなかったので、浜氏の舞台を観るのは実に1年半ぶり待ちに待った舞台である今回の公演は、開演時間が11時と16時というスケジュールなので、仕事帰りに観劇することができず、いつ休みを取れるかもわからないので、前もってチケットを購入することもできないいきなり劇場に行って、当日券があるかどうかも分からなかったが、開演30分前にチケットカウンターに行くと、幸いにも前から2列目という席を確保することができた運がヨカッタ~これなら、齧り付きで舞台を観ることができる東京芸術劇場5月公演 『玉つき屋の千代さん-女ハスラー繁盛記』戦前戦後の動乱を胸を張って生き抜いた、涙と笑いの凄腕人生生涯現役、ゴッドマザー千代さんの感動物語!(公演チラシより)一人の女性の波乱万丈の一生を2時間30分ほどの作品にまとめているせいか、話はだいぶ凝縮・集約されているどんなに苦境に立たされても明るく前向きに生きる主人公の生き様もあってか、あまりドラマチックに感じることができず、予定調和に話が展開していくので、物語としては少々物足りなさを感じてしまった事情があって離れ離れに暮らすことになった母と娘の再会のシーンなど、見せ場を作ろうと思えばいくらでもあったと思うだけに、ちょっと残念作品は内容的には今ひとつだったが、芸達者な出演陣の演技もあってか、舞台は楽しむことができた主演の浜氏は、立っているだけで絵になる華のある女優さん笑いから泣きまで、実に見事な緩急自在の演技で観客を魅了していた船場の商家の若旦那を演じた赤井英和氏は、気取らずに自然体で演技している姿に好感が持て、加藤茶氏は、軽妙な演技で客席から笑いを誘い、西川峰子氏は、姉思いの妹を手堅く演じていた浜氏の娘役を演じたのは、元宝塚男役トップスターの貴城けい氏宝塚時代に何度か舞台を拝見したことがあるが、こんなに綺麗な人だったっけ?と思ってしまったほど、女優さんが板についていた出演者の数は決して多くはないが、少数精鋭でそれぞれの役者さんが舞台の上で輝き、活きていたそれにしても思うのだが、自分が舞台を観始めた頃は、山田五十鈴氏、池内淳子氏、佐久間良子氏、山本陽子氏、十朱幸代氏、八千草薫氏、山本富士子氏といった、女優さんたちが座長を務める舞台が多く、毎月どこかの劇場で華が競われたものだが、世代交代の流れなのか、最近では、その姿を拝見することもめっきり少なくなってしまったそんななかで、今も大きな舞台に立ち続ける浜木綿子氏には、まだまだ頑張ってもらいたい昨今、観たい舞台が減っていくなかで、久しぶりにちょっと昔の商業演劇らしい舞台を観て満足する自分であった東京芸術劇場・中ホール5月公演『玉つき屋の千代さん-女ハスラー繁盛記』5月9日(金)~5月25日(日)まで出演/南川千代…浜木綿子/南川栄一…赤井英和/北野…加藤茶/美津子…貴城けい/美寿々…西川峰子/里中…渋谷哲平 ほか
2008年05月14日
仕事を終えて一旦帰宅すると、舞台を観に行くために新宿へ公演が行われるのは、新宿文化センターこのホールが、ちょっと分かりづらいところにある自分はなんとなく土地勘があるので、スイスイと新宿通りを歩いていたのだが、その道すがら、公演のチラシに書かれている地図を見ながら歩いている人に何回も出くわした辺りをキョロキョロ見ながら歩いている人、地図と町の風景を見比べて見当外れの方向を向いている人などを見ると、「一緒に行きましょうか?」と、思わず声が出かかったが、大きなお世話かもしれないと思い、その言葉は呑み込んだあの人たち、開演前に間に合えばいいけど…今日観るのは、わらび座のミュージカル『火の鳥~鳳凰編』新宿文化センターリニューアル記念、新宿未来特使アトム5周年記念、そして、手塚治虫生誕80周年記念として公演される舞台である奈良時代と呼ばれた8世紀の日本を舞台に繰り広げられる、生と死と輝きの物語(公演チラシより)手塚治虫氏と聞いて、『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』などの作者と思い浮かびはするものの、漫画に興味ない自分としては、あまり詳しいことは分からないそんな自分なので、今回の舞台『火の鳥』に関しても何の知識も持っておらず、メルヘンとかロマン溢れる話なのかな?と思いきや、大間違いだった人間の業とでもいうのだろうか、醜さ、愚かさ、浅はかさといったものが描かれていて、胸をえぐられるようなかなりヘビーな内容うまく言葉では言い表すことができないが、観終わったあと、何かを突きつけられたような気がして、自分のなかでズシンと重みを感じる舞台だったわらび座は、ミュージカルの公演を中心に活動しているだけあって、主要キャストを務める方やアンサンブルの人たちにいたるまで歌唱力は抜群公演で使用されている旋律も胸に響くものがあり、すっかり聞き惚れてしまったただ、主役の我王を務めたパク・トンハ氏が、荒ぶれた人物像を出そうとするがゆえの台詞回しが篭っていて、自分としては聞き取り辛かったのが惜しまれたわらび座・ミュージカル『火の鳥~鳳凰編』新宿文化センター4月25日(金)~5月4日(日)まで出演/我王…パク・トンハ/茜丸…戎本みろ/速魚…碓井涼子/ブチ…今泉由香 ほか
2008年04月25日
仕事が休みなので、またまた芝居見物今日観るのは、音楽劇『カラミティ・ジェーン』“心優しい女ガンファイターの生涯”主演は、元宝塚星組の男役トップスター・湖月わたる氏宝塚で男役トップスターを務めた方が、退団後に女優に転身した場合、男役をまったく感じさせない方もいれば、どことなく宝塚の現役当時を彷彿とさせる方もいらっしゃる今回の舞台の主演を務める湖月氏は後者になるのでは…と、自分のなかで勝手に想像していて、女優として活躍していくうえでは、役の範疇が限られているのでは?なんて他人事ながら勝手に心配していたのだが、ガンファイターとはうまく思いついたもんだ…なんて感心させられた公演が行われているのは、ル テアトル銀座銀座といっても銀座の端っこで、すぐそばは京橋なので、街を行き交う人影はかなり疎ら開園時間ギリギリに劇場に入って、席についたル テアトル銀座で観劇するのは初めてなのだが、紫の座席といい、劇場の雰囲気といい、クラシカルな感じですごく素敵な空間ただ、座席が独特な作りをしていて、なんだか長時間座っているのが辛そうな感じ客席を見渡すと、前の方はやや埋まってはいるものの、広い劇場の客席は、やっと半分埋まっている程度で、かなり空席が目立つそんな寂しいなか、舞台は静かに開演を迎えたまだ男が男として眩しかったアメリカ西部開拓時代ガンマン、ワイルド・ビル・ヒコックとの恋、そして愛娘のため、女ガンファイターとして炎のように駆け抜けたカラミティ・ジェーン自立した女性の先駆けとなる波瀾の生涯を痛快アクションと笑いと涙で綴る物語(公演案内より)西部劇に興味があるわけでなし、正直言ってあまり内容には期待していなかったのだが、これが期待を良い意味で見事に裏切ってくれて、とても面白かった主役のカラミティ・ジェーンを演じる湖月氏は、まさにハマリ役!といった感じ銃さばきや、スラッとした長身での立ち回りは、男の自分が見ても惚れ惚れするほど自分に正直なあまりに、生きることが不器用それゆえに自分の思惑とは違う方向へと運命を歩んでいくこととなるが、それでも強い信念を持って生き抜いていく女性像を、時に激しく、時にコミカルに演じ、まさに体当たりで演じていた音楽劇といいながら、そんなにミュージカルっぽくなかったので構えて見ることがなかったし、芝居を通して適度に笑いが盛り込まれているので、見ていて飽きることがなかった舞台を観て笑うことは滅多にないのだが、思わず笑ってしまったほどまた劇中では、ウエスタンショーのような派手なシーンも組み込まれていて、終始飽きることなく、エンターテイメントに富んだ作品に仕上がっているカラミティ・ジェーンが辿った運命が、決して幸せとは呼べるものではなかっただけに、その人生と、華やかなシーンの陰と陽との部分がそれぞれ影を際立たせていて、物語に深みを与えていた物語の終幕…切ないなかにも、生きる希望を見出せるようなラストに、思わず目頭が熱くなってしまい、一筋の涙が頬を伝ったもう、歳とるとほんと涙もろくなるから嫌になっちゃうね自分は、カラミティ・ジェーンほど破天荒な生活を送ってはいないが、自分が歳老いたとき、同じような幻を見るんだろうなぁ…と、胸が締めつけられる思いでいっぱいになった劇中の冒頭で、「男に出来て女に出来ないことはない」と、カラミティ・ジェーンがセリフを言う場面がある昨今では女性の社会進出も顕著に見られるようになり、時代は大きく変わった男は男らしく、女は女らしく…と言われるが、それに囚われることなく自分らしく生きてゆくことが望ましいことなんだと思うまぁそれが難しいんだけれどね一人の女性の生涯を通して、いろいろと考えさせられるのであったル テアトル銀座4月公演『カラミティ・ジェーン』4月4日(金)~13日(日)まで出演/カラミティ・ジェーン…湖月わたる/ワイルド・ビル・ヒッコック…美木良介/バッファロー・ビル…今井清隆(特別出演)/ナンシー・オニール…小林綾子/ジム・オニール…小林十市/バーク…大浦龍宇一/ライアン・マッコール…黒田アーサー ほか
2008年04月05日
久しぶりの芝居見物今日観るのは、昨秋日比谷に新しくできた劇場「シアタークリエ」のオープニングシリーズ第2弾として公演されている、森光子氏主演の『放浪記』1961年の芸術座初演以来、47年間、物語の主人公である林芙美子を演じてきた森氏の、同一作品単独主演回数は世界記録にもなっているという、演劇界に燦然と輝く名舞台であるこの舞台、以前から観てみたかったのだが、前売りはいつも即日完売してしまうので、今の今まで観ることができなかったそれが、今日ようやく観劇が実現できることとなり、胸躍らせながら、新しい劇場へと入るシアタークリエが建てられる以前は、東宝の本社ビルがあり、その建物の中には芸術座という劇場があった芸術座は、自分が始めて舞台を見た劇場であり、ちょっとした思い入れがあったので、新たな装いとなったビルに足を踏み入れるのが楽しみだった良い意味で昭和の古臭さを漂わせていた芸術座の雰囲気が好きだったのだが、新劇場には、当然といえば当然だが、芸術座の面影は一切見ることはなく、ちょっと洒落た空間に、どことなく居心地の悪さを感じながらも、席についた幾度となく再演を重ねる『放浪記』は、本公演中の2月23日の回で、公演回数1900回を数えた言葉に表すのは実に簡単だが、その数字は47年という歳月のなかで築き上げてきたものだと思うと、その偉業に対しては言葉も出ないパンフレットの中で、森氏はこう述べている“一期一会、「放浪記」の開幕から閉幕まで、ご観劇の皆様の心の内に、林芙美子として存在したいと願うだけです”さて、1930回目となる今日は、どんな林芙美子像を見せてくれるのだろうか幕は静かに上がった…“花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき”貧困の中で、恋をして、男運に見放されながらも、詩と小説を書き続け、やがては人気作家へと上り詰めた林芙美子その、花のいのちにも似た激動の半生舞台に森氏が登場すると、満席の客席からは万雷の拍手すごいねぇもう長年同じ役を演じているせいか、一挙手一投足に無駄がない森氏が述べていたように、舞台の上での森氏は、間違いなく林芙美子として存在していたそれは演技力も確かなことながら、やはり四十数年間の歴史の重みというものもあるような気がした林芙美子を演じている森氏ではなくて、ごくごく自然と息づいている森氏が林芙美子に見えてきたのである今回の観劇で、もうひとつ楽しみにしていたのは、それは出演者のなかの一人である黒柳徹子氏黒柳氏といえば、テレビ「徹子の部屋」でのトーク番組での進行役のイメージが色濃く、自分のなかでは女優さんというイメージを持ち合わせていなかったなので、いったいどんな演技を見せてくれるのか楽しみにしていたのである黒柳氏が演じるのは、林芙美子のライバルでもあり、良き理解者でもある日夏京子役浜木綿子氏、奈良岡朋子氏、池内淳子氏といった名立たる女優さんが歴代演じてきた役であるで、舞台に登場した黒柳氏を見て度肝を抜かされた放浪記の公演ポスターを見る限りでは、日夏京子を演じる女優さんはおかっぱ頭の和装が定番だったのだが、黒柳氏は、ハイカラな洋装スタイルだったのであるで、台詞の口跡もテレビでお見受けする、あの声のまんま昭和の空気が漂う放浪記の世界の中に、黒柳氏がひとり飛び込んだ感じでも、その違和感も、観ているうちに溶け込んでいくから不思議である舞台に登場する時は、ずーっと洋装で通してきた黒柳氏も、ラストの場面、和装に身を包んだ姿で登場した時は、今までのギャップもあり、その立ち姿は一際強い印象を残したその他の共演者の方々も、演者として再演を重ねられているだけあって、それぞれの役を自分の手の内に収めていて、実に安心して観ることができた主要キャストから、脇の隅々の人々ひとりひとりが作品の中で息づいている5幕9場という作品の構成のせいか、場面転換の為の暗転の長さが気になったが、それもこの作品の醍醐味かこんなに隙のない舞台を見たのは久しぶりかもしれない幾度となく再演が繰り返され、時代が変わった今なおも愛され続ける『放浪記』その理由を言葉にするのは難しいが、観終わったあと、なんとなく自分の感覚のなかでは、その理由の答えを見出したような気がする理屈では言い表すことができない何かが、この作品には潜んでいるのであるカーテンコールで、舞台にひとり残った森氏は、舞台の端から端まで、まるでお客様の顔を自分の眼に焼き付けるかのごとくゆっくりと見渡すと、万雷の拍手が鳴るなか、深々と頭を下げたまさに、一期一会をひしひしと感じた瞬間だったこうして、1930回目の放浪記の幕は閉じた…明日での東京公演が終わると、富山・福岡・大阪・名古屋と全国巡演公演の回数はまだまだ記録を伸ばし、11月の名古屋・中日劇場では、2000回間近というところで千秋楽を迎える上演回数2000回、前人未到の記録が達成されるのもそう遠くはなさそうであるシアタークリエ・オープニングシリーズ第2弾『放浪記』1月7日(月)~3月30日(日)まで出演/林芙美子…森光子/日夏京子…高畑淳子(1/7~2/6)・黒柳徹子(2/7~3/30)/白坂五郎…米倉斎加年/悠起…有森也実/安岡信雄…山本學/福地貢…大出俊/菊田一夫…斎藤晴彦/芙美子の母・きし…大塚道子/香取恭助…中島久之 ほか
2008年03月29日
仕事を終えると、横浜・桜木町へランドマークホールで公演されている横浜夢座の舞台を観劇するためである鮮やかなネオンでライトアップされた大観覧車を横目にしながら、帰宅する人々の流れを逆らうようにして、寒さ厳しいなかを風を切るようにして歩いていくランドマークホールは初めて訪れたのだが、ずいぶんと綺麗な建物で驚いてしまった広い空間には、様々なテナントが軒を連ねている買い物好きな自分としては、いろいろと見て回りたいところだったのだが、まもなく開演時間というギリギリの時間に到着したので、目もくれずに5階にあるホールへと向かった「横浜から演劇を発信しよう」と、女優・五大路子氏を中心に、様々な方たちの協力によって支えられている演劇集団・横浜夢座毎回横浜を題材にした作品を取り上げているが、第7回公演となる今回の演目は『山本周五郎の妻』“樅の木は残った”“青べか物語”“赤ひげ診療譚”など、数々の名作を生み出した昭和の文豪・山本周五郎は、豪放にして繊細、偏屈にして孤独…そんな周五郎を支える妻・きんの姿に見る「人が愛する」ということは…(公演チラシより)物語は、自分の思うがままに生きる周五郎と、その夫を陰ながら支える妻・きんを中心として描かれている作家・山本周五郎を知る方であれば、数々の作品が紡ぎだされていったその背景にあったものを垣間見ることができ、大変興味深いものかもしれないが、如何せん自分はその作家の名前こそ耳にしたことはあれど、よく存じ上げないので、芝居を見ていても、初めはただの我侭な亭主を健気に支える妻の話にしか見えなかった今回の作品の脚本を担当された小松興志子氏が、公演パンフレットにこんな言葉を寄せている“欠点のない人を主人公にしてもドラマは始まらない…”舞台を見ていて、妻であるきんさんは、本当に非の打ち所がないしかしながら、良妻賢母を絵に描いたような彼女も、やがて夫婦のあり方に疑問を持ち始め、心の中に葛藤が生じ始めるそんな彼女を、主演であり、横浜夢座の座長を務める五大氏が丁寧に演じていく夫婦とは何か?自分の存在とは何か?それらの答えを出すのには、長い長い年月を要するのであったこの舞台では、周五郎夫婦のほかに、何組かの夫婦を登場させることによって、それぞれの愛のあり方を描いている長年かかって築き上げていく夫婦、人が羨むほど仲睦まじい夫婦、すれ違っていく夫婦…はじめは互いに愛し合い夫婦として結ばれた筈なのに、辿り着く先はさまざま一体、夫婦とは何なのだろうかさて、そこで、今回の作品の主題でもある「人が愛する」ということだ今回の舞台を観終えて自分なりに感じた、人が愛するということは…“相手のことを思いやる”という事なんじゃないかな?なんて、若輩者なりに思うのであったそうそう、今日の舞台を五大氏の御主人でもあり、俳優でもある大和田伸也氏が観劇されていた奥様の舞台を観劇されるだなんて、仲睦まじいご夫婦なんだなぁ温もりを感じる舞台、横浜夢座という劇団を支えていくボランティアの方たちの心意気、それらを見守る暖かい観客の皆さん…そしてそれらの気持ちを受け止めて、舞台終演後のカーテンコールで横浜夢座に賭ける想いを熱弁された五大氏と、とにかくホールにはあたたかい思いや気持ちで溢れていたそんな空間に身を置いた自分もすっかり暖かい気持ちとなり、ホールを後にするのであった横浜夢座第7回公演『山本周五郎の妻』横浜公演・ランドマークホール 2月14日(木)~2月18日(月)東京公演・丸ビルホール 2月21日(木)・22日(金)出演/清水きん…五大路子/北村智典…増沢望/山本周五郎…剣持直明/大河原英興…松井工/棚橋進…加瀬慎一/村田八重子…長浜奈津子/村田郁雄…加山到 ほか
2008年02月15日
明治座2月公演『エドの舞踏会』を観劇16時30分開演なのだが、ギリギリまで仕事をしていたので、劇場に到着したのが開演4分前こんな時ぐらい時間に余裕を持ちたいものだが、わがまま言って早退したのだから、まぁ仕方ないか座席につくと、息つくまもなく舞台の幕は上がった江戸が東京と名を変え、万事に西欧化が叫ばれた明治時代北海道から上京した登喜は騙されて遊郭に身を沈めるところを、時の海軍中尉・山本権兵衛に助けられ、伊藤博文の離れに身を寄せる伊藤家では、夫人の梅子や井上馨夫人の武子、森有礼夫人の常子たちが、夫を支えるべく鹿鳴館での舞踏会を盛り上げようと心を砕いていた登喜はそんな夫人たちを影ながら支えていくひっそりと夫に寄り添い、家尾を守ることが美徳と考えられていた当時の貴婦人たちそんななか、しなやかに、したたかに生きた明治の女たちが紡ぎだす華麗なる絵巻!(公演チラシより)この舞台、去年の12月に名古屋・御園座で公演され、豪華な配役に惹かれて楽しみにしていた舞台御園座での公演が始まる直前、主演を務める三田氏のご子息が覚せい剤取締法違反で再度逮捕されるという事態があった前回の2000年の時は、騒動を受けて三田氏は主演舞台を降板されたので、今回も?と思ったが、降板はせずに御園座での舞台を勤めあげ、今月の明治座での公演となった鹿鳴館が舞台というだけあって、さぞかし華やかな舞台かと思っていたら大間違い激動する時代の流れに呑み込まれながらも、決して自分を見失うことなく、しなやかに、そしてしたたかに生き抜いた女性たちの姿が全篇を通して描かれているそれだけに、ラストシーンの鹿鳴館の場面は、華やかさのなかに秘められた、女性たちの悲哀が滲み出ていて、なんともいえない余韻を残した主演の三田氏は、一連の騒動をまったく感じさせず、舞台の上で大輪の花を咲かせていたその気丈に振舞う姿はやはり女優なのだと思った年齢設定が若いゆえに、妙に若々しく見せようとする喋り方がどうにもこうにも違和感を覚え、三田氏の魅力を損なっているように見えたのだが、ラストシーンの鹿鳴館での洋装に身をまとった三田氏の堂々たる姿を見たとき、ようやくスッキリした1幕のある場面で、三田氏は咳き込んでいらっしゃったはじめは演技かと思っていたのだが、他の役者の方たちが台詞を交わしている最中も、咳が止まらないどうやら体調があまり優れないようす舞台に背を向けて咳き込んだりしている姿を見て、ちょっと心配になったが、それも程なくして治まったようでなにより豪華な顔触れというだけあって、女優陣にはそれぞれ見せ場があるなかでも貫禄ある演技を披露したのが伊藤博文夫人の梅子を演じた淡島千景氏さすがは大女優なだけあって、随所随所で舞台を締めていたいるだけで華やかな雰囲気を醸し出す賀来千香子氏、手堅い演技の中田喜子氏と、女優陣の華やかさのなかでは、男優陣の存在感はすっかり霞んで見えてしまったまさに女性の視点から捉えられた舞台であったこの『エドの舞踏会』は、シーン毎のセットの一つ一つがしっかりしていて、セットを組むのに時間がかかるのか、1つの場面が終わると、場面転換の為にしばしの空白の時間が生まれるその間、お客さんは退屈なのか、しばしざわつく最近自分が観た舞台は、舞台転換がスピーディーで、飽きさせない工夫が凝らされているので、この空白の時間を味わうのは久しぶりそういえば昔の舞台は、場面転換の度に長い暗転があったよなぁ…なんて思った良い意味で、昔ながらの手堅い芝居を観たような気がした明治座2月特別公演『エドの舞踏会』2月3日(日)~29日(金)まで出演/登喜…三田佳子/山本権兵衛…錦織一清/伊藤梅子…淡島千景/井上武子…賀来千香子/伊藤博文…田中健/森常子…中田喜子/井上馨…松村雄基/お香…小林綾子/伊藤生子…渋谷飛鳥/末松謙澄…森宮隆 ほか
2008年02月07日
観劇のために下北沢にある本多劇場へと出向いた今月だけで観劇は4本目自分としては、かなりのハイペース他にも今月は観たい公演がいくつかあるのだが、如何せん舞台のチケットはそう安いものではないので、あれもこれもといくわけにはいかない自分の唐突に決まる休日のスケジュール範囲内のなかで、財布と相談しながらの観劇である今日観劇するのは、劇団たいしゅう小説家・第14回公演『SOHJI-そうぢ!』新選組を題材にした幕末のカリスマ剣士誕生ストーリー創られた伝説に翻弄され七転八倒する、切なくおかしい男たち入り口でチケットを渡すと、公演の宣伝のチラシを渡されたその量ときたら半端じゃないそのチラシの束をイソイソと鞄にしまうと、しばらくはロビーに置かれた公演のチラシなどに目を向けていたなんてったって、本多劇場には初めてきたので、興味本位というか、どこか落ち着きがないというか、とにかくウロチョロするそれにしても、昨日が初日ということもあってか、劇場ロビーには所狭しとお祝いの花が届いており、なんとも華やいだ雰囲気ちょっと乱れた花を見かけると、あぁ…ちょっと手直ししたいとか、この花の活け方マネしたい…だなんて、ついつい職業病が疼くのを抑えて、客席へと着いた今日は補助席も繰り出されていて、満員御礼のようださてさて開演…主役の沖田総司を務めるのは、お笑いコンビ・アリtoキリギリスでお馴染みの石井正則氏ブラウン管を通して見る石井氏は、かなりの小柄な方かと思っていたが、舞台上に立っている石井氏はやはり小柄だったしかしながら、その小柄な体格から捻出される喜怒哀楽の表現は見事で、折り目正しい演技で観客を魅了していたまた、今回初舞台ということで初々しい演技を披露された大林素子氏ブラウン管を通して見る大林氏は、かなりの大柄な方かと思っていたが、舞台上に立っている大林氏は想像以上に背が高かった以上、見たまんまの率直な感想でした物語は、池田屋事件後に有名になった新選組を題材にしたもの歴史に疎い自分は、新選組ですら詳しい話は知らないので、話の流れについていけるかどうか心配ではあったが、個々の人物のキャラクターはかなり脚色されており、セリフも現代調にアレンジされているので、難なく楽しむことができた元々の新選組の話を知らないだけに、かえってなんの先入観も持たずに純粋に作品を観れたかもしれない端々に笑いも盛り込まれており、演者たちの魂が宿った息づいている演技も手伝ってか、肩の凝らない娯楽作品に仕上がっているただ、まぁこれは人の好みにもよるが、作品全体が明るい感じに仕上がっていながら、ラストがほろ苦いものになっているので、どうせならそのままハッピーエンドを突き通してほしかったなぁ…と個人的には思ったさてさて、自分の場合、舞台を観に行くのは、好きな役者さんが出演されているから…というのが最大の理由演目は二の次であるところが、今回の芝居は特に好きな俳優の方は出演されていないかといって題材となっている新選組に興味があるわけでもないではなぜ、高価なチケットを払ってまで今回の舞台を観に来たのか?それは、母のある一言がきっかけだったテレビドラマに出演していたある俳優さんを指しながら「自分と雰囲気が似ている」と言ったのだ顔が似ている云々の話なら判るが、雰囲気って似るもの!?そんな時、その俳優さんが舞台に出演するという情報を得たならば、自分が醸し出す雰囲気とはいかなるものなのか、人の姿を通してこの目で確かめてみようと思ったというわけえぇ、それが今回の観劇の動機ですで、その俳優さんを目の当たりにしてきたわけですが、ムチャクチャ、イケメンでしたよォ!って話がずれました肝心の雰囲気が似ている…って話だが、そもそも自分自身がどんな雰囲気を漂わせているかわからないから、その俳優さんを通して見たところで、何も見えてこなかった強いていうならば、体格と髪型が似ているから、全体的に受ける印象が母は似ていると思っているのかもしれない劇団たいしゅう小説家 第14回公演『SOHJI-そうぢ!』下北沢・本多劇場1月19日(土)~1月27日(日)まで出演/沖田総司…石井正則/沖田承之進…高杉瑞穂/近藤勇…柳浩太郎/お光津…大林素子/土方歳三…水谷百輔/桂川小十郎…山崎直樹/八木源之丞…小野剛民 ほか
2008年01月20日
朝、目が覚めると、外は小雨が降るあいにくの空模様だった折角の休日とはいえ、天候が悪いと出かける気になれないそれよりなにより、睡眠不足で、仕事が休みの日ぐらいもうすこし寝ていたい気持ちが強かったので再び瞼を閉じたようやく昼前になって起床本心からしていえば、まだまだ、いや今日一日ず~っと寝ていたいような気さえしたが、いくらなんでもそんな時間の過ごし方は勿体無い湯船に浸かり、身支度を整えると、雨が降るなか新宿の街へと向かった今日は新宿コマ劇場で舞台を観劇なんと、一昨日昨日に続いて、立て続けに今日と3日連続での観劇三昧今日観る舞台は、松平健氏と鳳蘭氏が20年ぶりに競演を果たすことで話題となっている新宿コマ劇場1月公演『美ら島伝説~暴れん坊将軍スペシャル2』である享保年間の江戸琉球王朝使節団が将軍・吉宗の謁見を得るために遠い地から江戸にやって来ていたその夜更け、琉球を発つ際に、ある人物から将軍宛の書状を託された使節団の娘・加那が目安箱を目指し夜道を急ぐ途中で、追ってきた影の一団に襲われ、書状を盗まれ、命まで奪われそうになるその危機を救ったのが、旗本三男坊と称する徳田新之助だった加那から琉球の現状を聞き、薩摩藩と琉球王朝の関係に不審感を抱いていた新之助は、自ら琉球に渡る決心をする遠い琉球の地で待ち受けていた現実とは…!?(公演チラシより)公演のチラシには、“ミュージカル+本格時代劇”と書かれていた松平氏の代表作のひとつとして挙げられる、長年テレビで放送されてきた時代劇『暴れん坊将軍』がミュージカル!?なんだかミスマッチなような組み合わせなような気もするのだが、果たしていかがなのだろうか?開演間近に客席につくと、今回の公演仕様として沖縄の海と空、そしてハイビスカスが描かれた幕が降りていたはやくも沖縄ムードに駆り立てられる幕が開くと同時に賑々しい歌と踊りが展開される1月の公演ということで、お正月らしいナンバーで、早くも自分の心は掴まされた物語は、勧善懲悪ものの肩の凝らない娯楽作品に仕上がっていて、思いのほか楽しめた要所要所に盛り込まれた歌と踊りは舞台に華を添えて、ミュージカルと時代劇のコラボレーションは、これはこれで1つのジャンルとして大いに成り立っていたミュージカル+本格時代劇=…その答えは、“有り”である鳳氏の極彩色の琉球衣装にも負けない華やかさに目を奪われ、松平氏の美声に聞き惚れ、コマ劇場という名の通り、場面転換の度にクルクル回る盆を食い入るように見たり、物語ラストの殺陣のシーンで、テレビでお馴染みの暴れん坊将軍のテーマ曲が流れると、思わず一人にやけてしまったりと、すっかり目の前で繰り広げられる世界に引き込まれてしまっていた芝居が終わると、ショーが併演される松平氏と鳳氏が20年前に競演したミュージカル『王様と私』より、シャル・ウィ・ダンス!?を披露した洒脱に歌い踊る姿はさすがだったが、衣装が和装だったのがちょっと残念ここは洋装で見たかったかな?その後、汐風氏と松平氏のソロパートが終わると、劇場内にはミラーボールが煌きはじめたすると、聞き覚えのあるイントロが…マツケンサンバやぁ!!舞台にはキンキラに輝く着物に身を包んだ腰元ダンサーズが登場、見覚えのある振りで踊りまくる程なくして、セリ上がりで松平氏登場!金色の総スパンコールの着物である照明に反射して、スパンコールが煌びやかに光るま、眩しすぎる…そのゴージャスぶりに思わず笑ってしまったマツケンさん、派手すぎですッ!ショーになって、その魅力を一挙に開花させたのが、“マジー”の愛称で親しまれている真島茂樹氏である云わずと知れたマツケンサンバ2の振付をされた真島氏は、さすがは日劇ダンシングチームのトップダンサーだっただけあって、とにかく踊りのキレが素晴らしいお芝居ではさほど見せ場がなかった分、ショーでは十分に力を発揮されておりました踊りもさることながら、素敵なのが笑顔!輝いておりますお客様に楽しんでいただこうというショーマンシップの精神なのか、それとも踊っていることが楽しいのか、とにかく笑顔が眩しい!マツケンサンバ2から、マツケンサンバ3へと繋がれ、ショーは終了出演者一同総出のフィナーレへここでは、ショーに出演していなかった主要キャストの方も、キラキラの派手な着物に身をまとい登場そのなかで印象的だったのが、芝居では悪役を演じておられた勝野氏派手な着物に抵抗があるのか?客席の前に登場される際、だいぶ恥ずかしい表情をしておられた素の表情を垣間見れたような気がして、これまた一人ニンマリとしてしまった最後に松平氏からお客様に挨拶があって公演は終了色々と盛り込まれていて、まさしくエンターテイメントといった感じ肩が凝らずに楽しむことができた舞台だった新宿コマ劇場1月特別公演「美ら島伝説~暴れん坊将軍スペシャル2」1月2日(水)~1月31日(木)まで出演/徳川吉宗(徳田新之助)…松平健/鳳彩王女…鳳蘭/伊集院修理…勝野洋/加那…汐風幸/金城貢…松山政路/陣十郎…園田裕久/島津久貴…新田純一/野分…真島茂樹/楓…若葉ひろみ/谷茶…江幡高志/加納五郎衛門・儀間恒心(二役)…内山惠司 ほか
2008年01月12日
昨日に続いて、今日も神奈川県立青少年センターにて、五大路子詠み芝居を観劇今日の演目は『走る女~国木田独歩の妻 佐々城信子』時代を疾走した女・佐々城信子スキャンダルの嵐を駆け抜けた令嬢は有島武郎“或る女”のモデルとなり、明治の文士たちの心を激しく揺さぶった封建制のなごりの残る明治時代、信子の情熱的な行動の軌跡は“新しい女”のさきがけだった(公演チラシより)今日も一番前の列で、しかも、座席は昨日座った同じ席!さも自分の指定席かのように腰掛けるさてさて、睡眠不足のせいか今日一日ずっ~と眠たくて仕方なかったが、観劇のほうは大丈夫だろうか?実をいうと、昨日の公演を見た限りでは、詠み芝居という独特のスタイルのせいか、何人かの方はスヤスヤと眠っていた姿を見かけていたのである自分も寝てしまうかも?って、一番の前の席に陣取っておいて、そんな振る舞いをしたら、役者さんに失礼だよねしかも1列目の席だというのに、横の席は何席もがら空き悪態ついたら、周りが空席なだけにかなり目立ってしまうあぁ…なんだか変なプレッシャーを感じるきっと面白い舞台なら、眠ることもないだろうと、寝るも寝ないも舞台の出来次第のせいにしてみる昨日観劇した『エゲリア』の岡本かの子もそうだったが、佐々城信子もまた、生きることに関しては迸るほどの情熱を滾らせる女性その華やかで賢く自由奔放な信子の生き様を、時代の流れに縛られながら生きていく従兄弟である良と対峙させて物語は進行していくアメリカに渡りジャーナリストになることを夢見ていた信子だったが、国木田独歩との出会いが運命を大きく変え、周囲の反対を押し切って結婚するも、その新婚生活は長くは続かなかったそして妻ある身の男性と恋に落ち、旅館の女将におちつくまさしくタイトル通り佐々城信子は、決して自分が進み望む道ではなかったにせよ、自分の気持ちに嘘つくことなく、懸命に時代を駆けて生き抜いたしかしながら、舞台を観終わってみると、なにひとつとして胸に引っかかるものがないなぜだろう?それは、彼女の生き様に感銘を受けたり、共鳴することができなかったからだろう舞台の内容はともかくとして、役者さんの演技は素晴らしかったなかでも物語の主軸となる、佐々城信子を演じた五大路子氏をはじめ、国木田独歩役の平田氏の喜怒哀楽を剥き出しにした演技、良役の富沢氏の抑えた演技と、御三方の“静”と“動”、“陰”と“陽”のアンサンブルが実に見事だったのが印象に残った舞台のセットも、シンプルながら色々な場面で様々な風景を作り出し、舞台に表情をくわえて一役買っていた二夜連続で、息遣いが聞こえるほどの間近で五大氏の演技を拝見し、幸せな気分ちなみに、睡魔のほうだが…作品の上演時間が1時間30分ほどという1幕ものだったのと、いざ開演してしまうと物語の世界にのめり込んでしまっていたので、一切睡魔に襲われることなく観劇することができたゆえに、観劇の緊張と快楽から解放された帰りの車内で爆睡してしまったのは、いうまでもない芸能人というと、ブラウン管で姿を拝見しなくなると、“あの人はどうしているのだろう?”と思われてしまう節がある五大氏も近年では久しくその姿をブラウン管で拝見することがなく、寂しいかぎりではあったが、現在ではご自身が旗揚げした横浜夢座の座長として精力的に活動されている横浜夢座とは、女優・五大路子氏を中心に、横浜から全国(世界)へ舞台芸術を発信し、「自分達の観たいものを自分達の手でつくろう」と地域からの文化活動として推進したいと闘う有志が集まり、横浜の市民による横浜夢座実行委員会が上演する演劇で、横浜を舞台にした作品を公演している今回の詠み芝居、『エゲリア』と『走る女』の2作品も過去に上演されて評判が良かったものの再演で、作品のモデルとなった岡本かの子も佐々城信子も、神奈川ゆかりの人物として取り上げられたもの生まれ育った街・横浜をこよなく愛する五大氏の舞台にかける情熱と意欲はこれからも潰えることはないだろういや、むしろ益々輝いているようにさえ見えるその漲るパワーに、時代を駆け抜けていった岡本かの子や佐々城信子に似たものを感じたもしかしたら、何時ぞやは『ヨコハマの女優~五大路子』なる芝居ができるかもしれない終演後のロビーにて、お客様に囲まれて華やかな笑顔を振りまいている五大氏の姿を遠目から拝見して、ふと、そんなふうに思ったかながわ詠み芝居シリーズ連続公演五大路子詠み芝居「走る女~国木田独歩の妻 佐々城信子」1月11日(金)19時開演/1月12日(土)13時開演出演/佐々城信子…五大路子/国木田独歩…平田広明/星良…富沢亜古/佐々城豊寿…村田美佐子/武田耕太郎…関輝雄/鈴木完介…加山到
2008年01月11日
今から遡ること一ヶ月前、2007年12月初旬の頃の話秋の景色を楽しもうと、横浜・本牧にある三渓園を訪れた見事な景観に見惚れてご満悦ちょっと休憩しようと、展示室をかねた休憩所のような建物に入ったそこで、あるチラシが目に止まった“Arts Fusion 2007 in KANAGAWA”と冠付けられたもので、 「五大路子詠み芝居」と題して、『エゲリア』と『走る女』という2作品を公演するという今夏、横浜赤レンガ倉庫で見た、五大氏の一人芝居「横浜ローザ」を観劇してから、すっかり女優・五大路子の虜になってしまった自分としては、ぜひ観劇したいと思った公演は、来年2008年の1月10日から13日までのわずか3日間仕事の関係上、そんな先の予定を組むことはできないので、チケットを購入するかどうか迷ったのだが、幸いにも開演時間が19時からなので、それなら仕事でも終わってすぐ向かえば間に合うと思い、観劇することにした観劇することに決めたものの、2作品公演されるうち、どちらの作品を観ようか?本来なら、2作品とも観劇したいのだが、五大路子氏以外の出演者の顔触れは全く存じ上げない役者さん達ばかりだし、“詠み芝居”という公演のスタイルがよく判らなかったので、はたして舞台を楽しめるかどうかという思いがあったからだ2作品の物語の粗筋を読んで、どちらにしようか迷っていたチケットの料金はというと、3000円と格安だったん?よくよくチラシを見てみると、 『エゲリア』と『走る女』の2作品のチケットを合わせて購入すると、セット割引として4500円になることが書かれていた2つの公演チケット代が6000円のところ、1500円値引きされるのだそれなら、2つの公演を見たほうがお得でしょ!ということで、両作品とも観劇することにところが、このチケットのセット割引の前売券取扱窓口は限定されていて、神奈川県民ホールチケットセンターか、県立音楽堂チケットセンターの2箇所のみ東京都民の自分としては、その2箇所のチケットセンターがどこにあるのか判らないそこで取り出したるは携帯電話チケットセンターの名称を打ち込んで検索すると、アッと言う間に住所が判明でも住所だけでは土地勘がないので、地図で場所をも検索ほんと、携帯電話って便利やね三渓園を後にすると、チケットを購入する為に、山下公園の目の前にある神奈川県民ホールチケットセンターへチケットが前売りされてからだいぶ日にちが経っていたので、良い席が取れるかどうかわからなかったが、幸いにも2公演とも一番前の席を確保することができた最前列の席で、がっつり観劇します!そして今日、1月10日2008年初観劇となる、五大路子詠み芝居『エゲリア』を観劇するために、仕事を終えると、横浜・桜木町にある神奈川県立青少年センターへと出向いただいぶ傾斜のきつい紅葉坂の途中にある公演会場には、開演の15分前に到着した会場内に入ってみると、想像以上に広くて綺麗なホールで驚かされた静々とゆるやかな階段を下りていき、一番前の席に腰掛けると、入場の際に戴いたパンフレットに目を通した五大路子詠み芝居『エゲリア~生々流転 岡本かの子』灰色の戦時体制下で絢爛豪華な“生命の小説”を紡ぎつづけた岡本かの子夫は国民的漫画家・一平、息子は天才前衛画家・太郎途絶えることない男性遍歴や幾多の伝説に覆われた女流作家かの子その凄絶な生涯が幕を開ける!(公演チラシより)詠み芝居とは、いったいどんなものなのか朗読劇とは違うのだろうか?開演のベルが鳴ると、役者の方々が、舞台上に置かれている椅子に腰掛けた手にはファイルのようなものを持っているそのファイルに目を向けて、さも自分の言葉かのように、歌うようにして感情を込めてセリフを吐いていく程なくして、着物姿の五大路子氏が舞台に登場したこう言っては失礼だが、五大氏は脇を支える役者というイメージがあるのだが、こうして舞台の中央に立っている姿を見ていると、華があって、周囲を圧倒する存在感があるさすがは女優さんやねぇ朗読劇と違って、役者さんは舞台を行ったり来たりと動き回るが、目は台本から離れないなので、感情的な台詞を交わすシーンでも、身体は向かい合っているのに、顔は台本に向けて台詞のやり取りをしているので、観ているとなんとも奇妙な感じこれが、文字通り詠んで芝居する詠み芝居?なんだか目を瞑った方が物語としては臨場感があるかも…と、はじめはなんだか見慣れない公演スタイルに戸惑いつつも、見慣れてくれば、公演の稽古風景を見ているような感覚で、これはこれで観ることができたそうそう、今回の公演に出演されているある役者さんのブログを拝見したとき、こんな舞台の裏話を暴露していた“五大さんの台本だけ、字が大きいんですよ”自分は一番前の座席で観劇しているので、役者さんが立たれる位置によっては、手元の台本が見えるで、事の真相を確かめてみた役者さんの台本は皆同じ文字のサイズだった五大さんの台本はというと…!!!確かに、文字は大きかった!何も台本を見なくても、他に確認する方法はあったそれは、台本のページを捲るタイミングである役者の皆さんは台本を読みながら舞台を進行している皆さんは文字の大きさが同じなので、ページを捲るタイミングがほぼ同じだが、五大さんだけタイミングが違うのであるそれは、本に書かれている文字が大きいからだ…って、舞台に集中しないで、どこに着眼しているんだかいやいや、舞台も楽しみつつ、色々なところにも眼を向けて楽しんでいるのであります肝心の物語はというと、事実を基にしたフィクションで、女流作家・岡本かの子が激しいまでに時代を駆け抜けた人生が描かれた作品情熱的な役を五大氏が緩急自在の演技で熱演するそれにしても、夫がいながら愛人と同居したりと、その人生はなんとも凡人の自分としては理解しがたいところしかも、かの子は情熱的ではあるが我侭で自分勝手こんな自由奔放な女性に、どうして次々と男性は惹かれていったのだろうか?いまいちそこら辺が自分には解せないところではあったが、生きるということに関してのパワーは凄まじいもので、守りに徹して生きている自分としては、憧れにも似た感情を抱き、いい意味で刺激となった自由奔放な人生を送ってきただけに、彼女の人生の終幕は呆気ないもので、公演が終わってみると、ただ自分の思うがままに好き勝手に生きた女性の話にしか印象が残っていないのだが、人の一生なんてそんなものなのかもしれないかならずしも、起承転結にはならないのである憧れの五大氏の演技を間近で齧りつき、大満足でホールを後にするのであったかながわ詠み芝居シリーズ連続公演五大路子詠み芝居『エゲリア~生々流転 岡本かの子』1月10日(木)19時開演/1月12日(土)18時開演出演/岡本かの子…五大路子/岡本一平…関輝雄/岡本太郎…岸槌隆至/恒松安夫…平田広明/新田亀三…若松泰弘/きん・光子(2役)…由愛典子/堀切茂雄…高橋圭/住職…加山到※「エゲリア」とは、イタリアの古伝説に登場するヌマ王の妻の名処女性と母性をあわせ持つ、男性にとって永遠の女性の意
2008年01月10日
朝一に通院している病院にて診察を終えると、その足で日比谷へと向かった帝国劇場にて公演されている、ミュージカル『モーツァルト!』の観劇である宝塚は機会があれば観劇するのだが、ミュージカルを観るのは、かなり久しぶりいつ以来だろう?そう、5年前に知人に誘われて観にいって以来であるその時観たのは、日生劇場で公演された『モーツァルト!』そう、今日観るミュージカルの日本初演であったミュージカルは自分の性に合わなかったのか、それからミュージカルらしいミュージカルは観ることはなかったのだが、初演の時に拝見した『モーツァルト!』は、ミュージカルナンバーも良かったし、公演の内容自体も惹きこまれるものがあったので、久しぶりに観て見ようと思ったのである幼い頃「神童」と呼ばれ、その才能を知られていたモーツァルトは、成長するにつれて、周囲の目が自分の意思とは別方向に向いていることに気づき、様々な束縛を断ち切って故郷ザルツブルグを飛び出してしまうしかし、世間知らずのモーツァルトはあちこちで手痛い目に遭ってしまう時には孤独と絶望を味わい、その中でも音楽を求め続けたモーツァルト自分でも計り知れない自身の才能、自分の人生は、その「才能」に仕える運命であることにやがてモーツァルトは気づき始める…自由を求め、愛を求めた、モーツァルト35年の人生の旅!!(公演チラシより)物語の主人公であるヴォルフガング・モーツァルトを演じるのは、井上芳雄氏と中川晃教氏の両氏によるWキャスト自分が初演を見たときモーツァルトを演じていたのは中川氏だったので、今回は井上氏演じるモーツァルトをぜひ拝見したかったのだが、今回も中川氏の回の観劇となったチケットを手配するとき、キャストスケジュールを確認しなかった自分のミスですでも、いいんですだって、中川氏は凄いんです!もうこのモーツァルトの役は彼の為にあるのでは?と思ってしまうほどのハマリ役で、歌唱力は勿論のこと、小さな身体から迸るパワー、躍動感は圧巻の一言に尽きる全身全霊で役を演じきる彼の姿に観客席からは惜しみない拍手が送られるのでありました脇を支えるのは、ミュージカル界の大御所ともいうべき市村正親氏や山口祐一郎氏といった、主要なキャストの顔触れも初演時からさほど変わっていないので、あれから5年も経ったんだぁ…なんて、舞台を観ながら感慨深いものを感じていたこのミュージカルのナンバーは、ほとんどの楽曲は好きなのだが、なかでも一番好きなナンバーは、ヴァルトシュテッテン男爵夫人が歌い上げる『星から降る金』前半は聞かせるような優しいメロディーで、後半は荘厳さを感じさせる壮大なものになっていて、ほんと素敵な歌で、何度聴いても名曲ですこの作品は、モーツァルト35年の生涯を辿ったミュージカルクラシック音楽の作曲家だけにお堅いミュージカルかと思いきや、映像を背景に巧みに利用した簡素的なセットといい、現代的にアレンジされていているのでまったく古臭さを感じさせないモーツァルトが見にまとう衣裳は破れたジーンズにシャツなど実にラフなスタイルで、良くも悪くもモーツァルト像らしからぬその世界観からずれてしまうと、彼が歩んできた人生の物語ということを忘れてしまい、ただの愚かな男の話に見えてきてしまうところがあるのが、自分的には唯一の難点とはいえ、主要キャストから脇役にいたるまで芸達者な出演者たちが紡ぎだす数々のミュージカルナンバーは心に響く初演から5年経った今も、あの頃と変わらない感動をくれました何度も繰り返し再演される作品なわけです今日の客席はほぼ満員でしたモーツァルトは才能があるがゆえに、その才能に苦しめられ、人生を弄ばれてしまうそんな彼の生き様を作品を通して見ていると、傍から見るとなんだか不幸だったような気がしてならないのだが、彼自身は苦しみもがきながらも、音楽の世界に生きることができ、本望だったのではないだろうか自分とモーツァルトを比べるとはなんともおこがましい話ではあるが、自分はなにひとつ秀でているものがなく、凡人でよかった…なんて思ってしまった(まぁ凡人は凡人なりに悩みはあるんだけれども)長い時を経た今でも、愛され続けているモーツァルトその波乱に富んだ人生から生み出された数々の名曲は、これからも永遠に語り継がれ、人々を魅了し続けることだろうそしてまた、このミュージカル『モーツァルト!』もこれからも再演を重ね、多くの人々に感動を与えるに違いない帝国劇場特別公演『モーツァルト!』11月19日(月)~12月25日(火)まで出演/ヴォルフガング・モーツァルト(Wキャスト)…井上芳雄・中川晃教/レオポルト…市村正親/コロレド大司教…山口祐一郎/ナンネール…高橋由美子/コンスタンツェ…hiro/ヴァルトシュテッテン男爵夫人(Wキャスト)…香寿たつき(11月19日~12月5日)・涼風真世(12月6日~12月25日)/セシリア・ウェーバー…阿知波悟美/エマヌエル・シカネーダー…吉野圭吾 ほか
2007年12月10日
「座頭市」といえば、故・勝新太郎氏の代表作であり、近年では北野武監督が作品を手がけた時代劇の名作その「座頭市」が舞台化された主演は、舞台初出演にして座長を務める哀川翔氏座頭市という作品を観たことはなかったが、なんとなく興味惹かれるものがあり、観劇することとなった特別公演『座頭市』盲目の市を軸に、運命に翻弄される人間たちが繰り広げる、義理と人情と悲しい恋の物語ネオン煌く歌舞伎町をイソイソと歩き、公演が行われる新宿コマ劇場へ開演時間が19時からということもあってか、仕事終わりでも余裕をもって劇場に到着することができた劇場入口に掲げられた上演時間を見ると、終演予定時間は22時10分!?ずいぶんと遅いような…まぁ始まる時間が遅いということは、必然的に終わる時間も遅くなるってもんか劇場に入ると、今日が初日ということもあってか、いつもとは違った、どこか浮き足立った雰囲気が辺りを包んでいたロビーでは、今回の舞台を演出された三池崇史氏が、ファンの方?に囲まれて、写真撮影やサイン責めを応じられている姿を発見よく存じ上げないのだが、カリスマ性のあるお方のようだ…と尻目にしつつ、劇場内を探索さすがは豪華な出演者の顔触れなだけあって、ロビーには、初日を祝う花が所狭しと沢山飾られていて、辺りはむせ返るような花の香りが漂っていた公演パンフレットが2000円なんて高いよォ…と、心の中でボヤキつつ購入して、いざ客席へ色々な劇場で舞台を観るが、一番新宿コマ劇場が見やすいかも客席がすり鉢状になっているので、前に座っている人の頭がきにならずに済むから、視界が遮られることがなく、ダイレクトに舞台を楽しむことができるのだそれにしても、客層の若いことこういった大きな劇場の客層は、どちらかというと、中高年の方々ばかりなのだが、こんなに若者で埋まっている客席ははじめてかもそれだけ、注目が高い舞台ってことですか?もうね、すべてが濃いですセットといい、衣装といい、舞台に漂っている荒廃さといい、そこで繰り広げられる一癖も二癖もある輩たちの生き様といい、個性的すぎるキャラクターをそれぞれがハマリ役といっても過言ではないほど見事に演じる演者の皆さんのパワーといい、何もかもが濃い斬る、斬る、斬る裏切る、裏切る、裏切るもがき、あがき、苦しむ友情、愛、そして死舞台で繰り広げられているこの世界観かなり好きです主演の座頭市を務める哀川氏初舞台とは思えないほど、堂々とした立ち振る舞い過去の作品を見たことがないので、変な先入観や比較することがないので、すんなり哀川像の座頭市を受け入ることができた盲目の按摩という役柄なだけに、ひたすら静の演技に徹するが、それだけに、ラストの殺陣のシーンでは、それまでの鬱積を晴らすかのような見事な捌きで、見ていて爽快だったそれにしても、哀川さんカッコよすぎです惚れちゃいました神撥の八役の阿部サダヲ氏は、テレビでしか演技を拝見したことがなかったのだが、数少ない笑いのシーンを自分で盛り立てて、客席を大いに沸かし、締めるところはキッチリと閉め、緩急自在の演技で芸達者ぶりを披露していたヒロインの朱太夫演じる麻路さき氏は、さすがは元宝塚の男役トップスターだけあってか、男臭い芝居のなかでも、決して引けをとることなく、堂々と演じていた若い演者たちに負けることなく存在をアピールしていたのは、墓掘りの吾六を演じた長門裕之氏醸し出す雰囲気からして、さすがの一言ベテラン俳優だけあって、重厚な演技は舞台をギュッと引き締めていたその他の方々も、ほんと適材適所の配役で、各々のキャラクターをまるで持ち役のように演じていて、見ていてとても楽しかった後半は怒涛の展開ということもあってか、あっという間の3時間だった今日は初日ということもあってか、カーテンコールがあったすると、誰からともなく立ち上がっていき、気づけば客席総立ちのスタンディングオベーション!惜しみない拍手が出演者の方たちに送られると、初日を終えての緊張感から解放されたのか、主役の哀川氏をはじめとする演者の方々から笑みが零れていたあぁ、なんだか素敵な時間を過ごすことができましたその気持ちを伝えたくて、自分は惜しみない拍手を送るのでした新宿コマ劇場特別公演『座頭市』12月3日(月)~12月16日(日)まで出演/座頭市…哀川翔/神撥の八…阿部サダヲ/朱太夫…麻路さき/竜之介…遠藤憲一/吾六…長門裕之/権蔵…田中隆三/熊吉の親分…永澤俊矢/蘭丸…RIKIYA/お紺…松浦佐知子/浅川の親分…中田博久/赤蝮の錠・お京…野村祐人/黒蝮の涼・お蝶…青山草太/お奏…いとうあいこ ほか
2007年12月03日
先月に引き続き、今月も明治座でお芝居見物演目は、大地真央氏主演『女ねずみ小僧~目明かしの女房』かつて江戸の街を賑わせた義賊・女ねずみ小僧こと紅緒は、今ではすっかり足を洗い、うだつの上がらない岡っ引き・亀蔵の女房として貧乏長屋で暮らしているそこにある日、妹分の浅黄と葵が窮地に陥ったという知らせが届くそしてそれは次期将軍の地位を狙う一味のおそろしい企みであり、江戸中を巻き込む大事件のはじまりだった…“まことの世直し”のため、紅緒は再び、封印したはずの女ねずみの衣裳をまとい、江戸の闇夜を駆ける!(公演あらすじより)大地氏の舞台というと、代表作「風と共に去りぬ」や「マイ・フェア・レディ」、「サウンド・オブ・ミュージック」などが挙げられるように、洋もののミュージカルというイメージが強いので、時代劇と聞いてもあまりピンとこなかったのだが、和服姿は艶やかで、ねずみ小僧の黒装束姿は凛々しく、なかなか似合っていたおおよそその容姿からは想像も出来ない、おきゃんな姿や、べらんめぇ口調でセリフを捲し立てたり、大の男を相手に華麗な殺陣を披露したりと大活躍この舞台を見て、大地氏のイメージがかなり変わりましたそれにしても大地氏は美しい方やねぇ3階席からの観劇なのでかなり遠目なのだが、惚れ惚れしてしまったうだつのあがらない岡っ引きを演じた渡辺徹氏は、どこか憎めない男を好演、大地氏と夫婦役だなんて、まさに美女と野獣のような組み合わせではあるが、妻の正体を知りつつも素知らぬ顔をして、屋根の上で二人が心を通わすシーンは、人の良さが滲み出ていて思わず目頭が熱くなってしまった悪巧みを計る南町奉行役の松山政路氏と、その手下である隠れ同心を演じた川崎麻世氏は憎憎しいまでに悪役を演じ、サスペンスドラマでお馴染みの山村紅葉氏や双子の三倉茉奈・佳奈氏演じる長屋の住人たちとの心温まるエピソードと対比させて、勧善懲悪のコントラストを色濃く浮き彫りにしていた紅緒の妹分を演じたのは、紫吹淳氏と彩輝なお氏大地氏も含め、この御三方は元タカラジェンヌで、しかも奇しくも3人とも月組の男役トップスターを務めたという縁それがあってかどうかはわからないが、実に3人の呼吸は合っていた姉は妹たちを想い、また妹たちも姉を慕う宝塚という同じ学び舎を出たものだからこそ醸し出せるような、そんな目には見えない固い絆のようなものを感じたこのお芝居、とにかく勧善懲悪がハッキリしているその悪に果敢に立ち向かう大地氏の華麗な殺陣裁きと、気風の良い演技で、とにかく見ていて気分がスカッ!と爽快になる舞台物語の展開はスピーディーだし、時代劇らしい古臭さも感じられないただ、殺陣のシーンが度々出てくるのがちょっとクドく感じたのと、ねずみ小僧というだけあって、盗みに入る緊迫した感じを期待していたのだが、そこら辺はアッサリと流されてしまったのが残念とはいえ、見所は要所要所にあり、笑いあり、涙ありの人情味溢れる娯楽作に仕上がっていて、想像以上に楽しめた舞台はハッピーエンドで幕を閉じて、これで終わりかな?と思ったら、劇場天井に吊るされているミラーボールの照明が回りだし、再び幕が上がった???舞台には、宝塚を思わせるような大階段とまでは言わないにしても、階段が登場主要キャスト3人が元宝塚男役トップスターというだけあって、踊りあり、歌ありの和物のショーがつくというサービスぶり舞台は生ものなので、大地氏が舞いの最中に手から扇を落としてしまうハプニングがあったが、これもご愛嬌か大いに芝居を満喫して、清々しい気持ちで劇場を後にするのであった明治座11月特別公演『女ねずみ小僧~目明かしの女房』11月2日(金)~27日(火)まで主演/紅緒…大地真央/浅黄…紫吹淳/葵…彩輝なお/亀蔵…渡辺徹/上総之助…川崎麻世/近山越前守…松山政路/お種…山村紅葉/お千代…三倉茉奈/お小夜…三倉佳奈 ほか
2007年11月03日
明治座に舞台を観に行こうと、日本橋浜町へ11時開演を観るつもりで劇場に足を運んだのだが、安い席(B席・5000円)は今しがた完売してしまったのこと一足遅かったかぁ…休みが決まっているのなら、前もってチケットを購入することができるが、いつも不意に前日に休みが決まるので、チケットは当日券を求めるしかないすると、度々こうしたお目当てのチケットが手に入らないという目に遭うA席(12000円)は残席があるとのことだったが、そんな高額は出せない自分は、16時開演ならB席はあるとのことなので、予定をスライドさせた思わぬ番狂わせに一旦自宅に舞い戻り、掃除やら雑用を済ませると、再び劇場に足を運んだ観劇したのは、明治座10月公演『大奥』である“大奥、そこは女の牢獄…”将軍家の血筋を絶やさぬよう、さまざまな陰謀、愛憎、嫉妬、裏切りが渦巻く大奥時はペリー来航により開国を迫られる江戸末期激動の時代の流れは、大奥の女たちの運命をも大きく変えようとしていた…2003年の放映開始時から圧倒的人気を誇ったフジテレビ系ドラマ「大奥」テレビシリーズ、映画に続いての舞台化は、出演陣に浅野ゆう子氏、安達祐実氏、大奥スリーアミーゴスといったテレビと同じキャスティングが実現テレビドラマのイメージそのままに、目前で豪華絢爛な歴史絵巻が展開される!(公演チラシより)時代劇離れが続いていた昨今、なぜ「大奥」はこうも人々の心を捉えたのだろうか?かくいう自分も、テレビ放送を欠かさず見ていたひとり歴史には興味が無いのだが、浮世離れした豪華絢爛な世界と、そこで繰り広げられるドロドロとした展開に惹かれたそれだけに、今回の舞台化は非常に楽しみにしていた舞台正面向かいの3階席に座るすると、何やらいくつもの黒いケーブルが這っているではないかなんでも、今公演の舞台を撮影するんだとかということはだ、ナマの舞台を映像に残すわけだから、役者の皆さんは大ノリで演じるかな?なんて期待をしつつ、いざ開演幕前で、大奥スリーアミーゴス(鷲尾氏、山口氏、久保田氏)が、狂言回しとして登場ドラマ同様に笑い役?を担って、客席を盛り上がらせると、いよいよ豪華絢爛な大奥の世界へと誘う幕が開いた…舞台にライトが照らされると、そこはまさしく豪華絢爛な大奥だった金張りのセットに負けることなく、舞台では艶やかな着物を身にまとった女たちが華やかに競い合い、眼に映る世界は眩いばかりテレビの放映時より衣裳があまり豪華に感じられなかったのは、衣裳が舞台映えするために色鮮やかで大振りな柄なせいだろうか?特に、和宮が身にまとっている着物がそうで、周りより色調が浮いているせいで、かえって安っぽく自分の眼には映った衣裳代に費用がかかったせいかどうかはわからないが、セットに重厚感が無いように見受けられたのがちょっと残念だったが、その分、場面転換を早めるために舞台の盆を廻した演出はなかなか効果的だった大奥総取締・瀧山を演じた浅野ゆう子氏花道から登場したとき、その堂々とした立ち振る舞いに、思わず身の毛が弥立つ思いがした役柄のせいもあるのだろうが、貫禄と凄みは十分すぎるほどまさにハマリ役といえよう周囲が色鮮やかな衣裳を身にまとうなか、瀧山は、終始黒い打ち掛けで通している一見黒色というと地味なような気もするが、金糸銀糸が大胆な構図であつらわれていることもあってか、衣裳は舞台の中では一番華やかであった浅野氏といえば、一昔前は、浅野温子氏とともに“W浅野”と持て囃され、トレンディードラマ(死語?)で大活躍していたが、まさか大きな劇場の中央に立つ姿が似合うような女優さんになろうとは思いもしなかった和宮を演じた安達祐実氏おっとりとした京言葉が見事で、その確かな演技力に唸った安達氏といえば、ドラマで「同情するなら金をくれ!」なんて名ゼリフを残した可愛らしい子役時代がついこの間のような気がするが、今では一児の母であるというのだから、時代の流れは早いものである将軍の生母である実成院役の江波杏子氏は、母であるがゆえの苦悩を見事に演じて舞台を引き締め、総取締代理・初島を演じた中山忍氏は、人の心を持つがゆえに大奥での自分の務めに苦悩する姿を懸命に演じ好感が持てた壮大な話を3時間弱という時間内に凝縮したせいか、全体的に端折り感は否めない大奥でのドロドロとした内幕を期待していたので、その点では若干の物足りなさを感じたものの、“大奥は女の牢獄”というだけあって、運命を翻弄される女たちの姿は描かれていた男たちが命を懸けて戦っている陰で、女たちもまた、闘っていたのである…明治座10月特別公演『大奥』明治座…9月29日(土)~10月27日(土)まで出演/瀧山…浅野ゆう子/和宮…安達祐実/実成院…江波杏子/初島…中山忍/徳川家定・柳丈(2役)…羽場裕一/徳川家茂…金子昇/おその…松尾れい子/葛岡…鷲尾真知子/吉野…山口香緒里/浦尾…久保田磨希 ほか
2007年10月10日
宝塚歌劇宙組公演『バレンシアの熱い花/宙 FANTASISTA!!』を観劇今回の公演は、宙組主演男役・大和悠河氏、主演娘役・陽月華氏の新コンビによる東京宝塚劇場お披露目公演ずっと観たかったのだが、なかなか都合が折り合わず、千秋楽間際になってようやく観劇することができた「バレンシアの熱い花」19世紀初頭のスペイン、バレンシア地方を舞台に、復讐と恋を多彩に描いた作品「宙 FANTASISTA!!」宙組誕生から10周年を迎える記念すべき公演、そして新生宙組スタートに相応しい、新鮮で、エネルギッシュな“宙”をテーマにしたショー作品(公演パンフレット・チラシより)宙組の主演男役を務める大和悠河氏は、自分が宝塚の存在を知った時は、新進気鋭の男役として注目を浴びていたそれが今や、舞台の中央に立ち、組を背負って立つ立場になっている誰がこのような日が来る事を夢見ていただろうか思えば、自分が宝塚に嵌ったのが、宝塚に宙組という新しい組が誕生した年今回の公演は、その宙組が誕生して10周年ということだから、もう10年も月日が流れたということかん!?なんだか、あんまり歳にまつわるような話はしたくないな舞台の中央に立つ大和氏は、立派な姿だった昔からそうだったが、歌唱が弱点のようで、時折???と首を傾げたくなるようなシーンがあったが、何より彼女は、その弱点をカバーできるほどの力を持っていたそれは、ビジュアルである黙って立っているだけで絵になる、その姿まるでお人形のようだ“天は二物を与えない”という言葉があるが、多少歌唱力が弱くても、カッコよければいいかな!?ミュージカル・ロマン「バレンシアの熱い花」は、1976年に初演され大好評を得た作品で、実に30年ぶりの再演30年前の作品?と思ったが、古臭さは感じず、単純明快な物語の展開は飽きずに見ることができたショーの「宙 FANTASISTA!!」は、宇宙に王子が誕生し、月、火星、水星、木星…と、宇宙一周の旅に出かけるストーリー仕立て?のショーショーの開演前、舞台には星に見立てた?青白い光が無数に輝き、劇場内はさながら巨大なプラネタリウムこのショーは、とにかく視覚が美しいショー自体は、特に強く惹かれるものは無かったのだが、セットや照明、衣装など、目で楽しませてもらった宇宙を舞台にしたショーだけに、“ジュピター”や“宇宙へのファンタジー”など聴きなれたメロディーが流れると、客席に座っていながら、ちと心が躍る自分であったショーのラスト、宝塚ならではの大階段を、大きな羽根を背負って降りてくる大和氏の姿を見た時は感慨深いものがあったその姿は、まぎれもなく立派な宝塚の男役スターだった主演男役という重圧に潰されることなく、肩肘も張ることなく、楽しんでいるように見えた大和氏の相手役が陽月氏とはじめ聞いたとき、合わないんじゃないの?なんて思ったが、今回の公演を見て、自分の考えは間違っていたことに気づかされた美男美女なだけに、絵になるコンビであるその他の出演者たちもそれぞれ皆が活躍、弾けていて、組子全員で盛り上げていっているという情熱と気迫が十分に伝わってきた今回の公演これからの宙組が楽しみである東京宝塚劇場・宙組公演『バレンシアの熱い花/宙 FANTASISTA!!』8月17日(金)~9月30日(日)まで主演/大和悠河/陽月華/蘭寿とむ/北翔海莉 ほか
2007年09月27日
新橋演舞場で行なわれる夜の公演は、通常16時からなので、仕事帰りに観劇することなど、到底叶わないのだが、今回の9月公演は数回、18時からの公演がある18時開演なら、急げば間に合う公演の日程を調べてみると、今日と明日は18時開演の日今月は半ば頃から仕事が詰まっているので、機会を逃さないうちに早く観劇してしまおうと、幸いにも17時に仕事を片付けることができたので、急いで劇場へ今日が公演の初日で、当日のしかも開演時間ギリギリで果たしてチケットが手に入るかどうかわからなかったが、今日がダメなら明日でもと、切符売場の窓口に行くと、幸いにも狙いをつけていた一番安い3階B席のチケットを購入することができたという事で、本日観劇したのは新橋演舞場9月特別公演『憑神』浅田次郎氏原作で、最近では妻夫木聡氏主演で映画化もされた話題作の舞台化である幕末の江戸―下級武士の別所彦四郎は、婿養子先から離縁され、妻子と離れ離れに…実家に戻った彦四郎であったが、別所家のお役目は兄がつとめ、兄嫁にも邪魔者扱いされ、母と肩身の狭い思いをしていたそんなある日、ひょんなことから朽ちかけた祠に出会い、困ったときの神頼み!と、手を合わせたものの、なんと現れたのは、神は神でも人に災いをもたらす憑神さまだった!幕末の江戸を舞台に、涙と笑いと人情たっぷり、真っ直ぐな人間と、神様たちのものがたり(公演チラシより抜粋)劇場内は、今日が初日というだけあってか、スーツに身を包んだお偉方のような方々が沢山いて、いつもとは違った感じそうそう、初日って、空気が張り詰めているというか、なんか違うんだよね昔、舞台の大道具をつとめていたことがあるので、その独特の空気は少しばかりわかる舞台は生だから、セットの位置や転換など間違いや失敗をするわけにはいかないので、自分は出演する訳じゃないのに、初日を迎えるたびに緊張していたっけなぁ…と、なんだか話がずれました出演者の顔触れもあってか、思ったより客席は若い人たちで埋まっていたさてさて、新橋演舞場の3階B席は、構造上舞台の一部が見えにくいゆえに、観劇料金も格安なわけ一番初めこの席に座ったとき、死角でお芝居をされると見えなくて少々戸惑ったものだが、今日の観客もそのようだ自分は2列目に座っていたのだが、1列目の2人連れ(結構なお歳)が、見えないからといって身を乗り出したり、立ち上がったりするまぁ気持ちが判らなくもないが、ちょっと周囲にも気を遣えないのかなぁ?と思っていたら、周りの人も同じ事を思っていたらしく、隣の女性が「立たないでください」って注意した時は、心の中で、ちょっと拍手を送った舞台の主演を務める中村橋之助氏は、さすが歌舞伎役者だけあって、セリフは3階席でもきちんと通り、立ち振る舞い、ひとつひとつの所作の姿がキマっていてて、観ていて実に気持ちがいい今回の公演は、わりと若い座組なのだが、その中で、野川由美子氏はベテラン女優らしい重厚な演技で魅せ、舞台を引き締めていた特に、ラストでの息子の名前を叫ぶシーンの演技は秀逸で、思わず胸が熱くなった災いをもたらす神を演じた升毅氏、コング桑田氏は軽妙に演じ客席から笑いを引き出し、風体からはおおよそ憑神には見えないのだが、不思議と納得させる説得力があったこれが演技力というものだろうかその他にも、希望に燃える男を熱く演じた葛山信吾氏、諸先輩方に囲まれても引けをとらない演技を見せた鈴木杏氏、嫌味な兄嫁を嫌味無く演じた秋本奈緒美氏、出番は少ないながらも凛とした女性を演じた藤谷美紀氏、だらしない兄のデビット伊東氏と、主要な役柄から端役にいたるまで、実に皆が適材適所に使われていて、舞台の上には、幕末の空気を感じることができた歴史に疎い自分としては、話の筋である幕末の時代背景が判らず、いまいち話の流れが理解できなかったが、それでも、人間と憑神との交流の話として存分に楽しめたスピーディーな舞台転換、時代劇には似つかないながら不思議とマッチしていた軽快な音楽といい、物語は流れるように展開していき、3時間(休憩含む)はアッという間に過ぎる気づけば、ラストシーンで、一筋の涙が右頬を伝わっていたそれは、ごくごく自然と流れたものだった人が人を思いやるそんな簡単なことができない世知辛い世の中だからこそ、人情が溢れた舞台を観て心が温まり、凍りついたような自分の心を融解してくれたのだろう爽やかな感動と優しさをくれる、そんな舞台だった今日は初日ということもあってか、フィナーレが終わり、緞帳が下り始めると、橋之助氏が手でそれを阻止し、客席に向かって誰かを手招きはじめた誰を呼んでいるんだろう?と思っていると、花道から一人の男性が走って登場!それは、今回の公演の脚本・演出を手がけたG2氏だった万雷の拍手に劇場は包まれ、初日の幕は下りたのだった新橋演舞場9月特別公演大阪松竹座新築開場十周年記念10月公演『憑神』新橋演舞場…2007年9月4日(火)~26日(水)まで大阪松竹座…2007年10月1日(月)~25日(木)まで出演/別所彦四郎…中村橋之助/つや…鈴木杏/榎本釜次郎…葛山信吾/彦四郎の母…野川由美子/庄兵衛の妻…秋本奈緒美/井上八重…藤谷美紀/伊勢屋…升毅/別所庄兵衛…デビット伊東/九頭竜…コング桑田 ほか
2007年09月04日
ある女優さんのブログを拝見していたら、とある舞台の感想を載せていらしたその舞台は、ずぅぅ~っと昔から気になっていて、いつか観たいなと思っていた作品今公演しているんだ!と、早速公演の詳細をネットで検索してみると、なんと明日の昼の公演が千秋楽観れないじゃん!と、悔しい思いでいると、なんと今日の夜19時に公演があるでも今日は夜まで仕事やっぱり観れないじゃん!わかりました諦めます諦めました諦めればいいんでしょ?(往生際が悪い)今回は縁が無かったと言う事にしまひょところが、奇跡は起きた急遽、夜の仕事がキャンセルになったのである只今の時刻、18時10分その時、脳裏を過ぎるものが!“あの舞台を観に行こう!”開演まで50分しかないチケットが手に入るかどうかもわからないが、何もしないで思いをズルズル引き摺るよりは、行ってダメなら諦めがつくだろうと、急いで車のハンドルを握り、公演が行なわれる横浜へと向かう高速道路が空いていたこともあり、30分足らずで到着赤レンガ倉庫の駐車場に車を滑り込ませると、急いで赤レンガ倉庫1号館へと向かった観たかった舞台それは、五大路子ひとり芝居 『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』十数年前まで伊勢佐木町や福富町など横浜の盛り場で見かけることができた、白いドレスに白塗りの化粧、髪も真っ白で、両手に大きな紙袋をさげた老女人は、その老女を『ハマのメリーさん』と呼んだメリーさんは進駐軍相手の娼婦だったと言われ、50年以上も横浜の街角に立ち続けたが、経歴も私生活も謎に包まれているそんな都市伝説として有名なハマのメリーさんをモデルにした作品が、『横浜ローザ』である横浜のとある雑居ビルのエレベーターホールに住み着いた老女、“横浜ローザ”の名で知られた外国人専門の娼婦である80歳を越えた今でも本人は現役のつもりだが、老娼婦の客になる物好きな男などおらず、酔客の僅かなチップで飢えをしのぐ毎日忍び寄る老いの孤独と死の恐怖、眠れぬ一夜彼女が問わず語りに激白する涙と屈辱の人生は、そのまま日本の戦後史であった…横浜の街に、戦後60年を一人、凛として強く生きぬいたある女性のひたむきな姿を描く(公演あらすじより抜粋)当日券を購入客席は自由席だったので、空いていた通路側の席に腰掛ける辺りをキョロキョロ見回す鉄骨はむき出し、赤レンガ倉庫だけに、外壁は赤レンガなんだか、すごく味のある空間客層は老若男女問わず(若干高めかな)アナウンスで、『本日満員御礼』なんてアナウンスしていたほぼ客席が埋まったところで、いざ開演“心”と大きく書かれた幕があがると、舞台には1つのソファーそこから、もぞもぞと一人の女性が起き上がってきた大きなナイトキャップを被っているので、顔の表情はよく見えないが、ひとり芝居なのだから、五大路子氏に間違いないだろうしかしながら、今自分が目の前にしている演者は、テレビのブラウン管を通して知っている五大氏の顔の面影は無く、見せる表情といい、腰の曲がり具合、立ち居振る舞いが、明らかに老女そのものであったこれが役者魂というものだろうか冒頭は舞台にしゃがみ込んで芝居するのだが、自分の視線と舞台の高さが丁度同じで、前に座っている方々の頭に隠れて、まったく見えないのが残念だった物語は、娼婦になるきっかけになった忌まわしい出来事から、戦争によって運命を狂わされた人生を追っていく展開その壮絶な人生は、1時間30分という限られた時間内では到底語り尽くせないだろうが、それだけにテンポ良く進められていくひとり芝居というだけあって、五大氏は大熱演泣き、喚き、歌い、踊る舞台所狭しと動き回り、ひとりで見事なまでに舞台という空間を埋めていくただただ凄いの一言に尽きる時代という流れに運命を呑み込まれても、人を愛し続け、世間から冷たい目を向けられても、懸命に生きてきた娼婦・横浜ローザ激動の人生を送ってきただけに、晩年の寂しさときたら、あまりにも哀しくて切ないその孤独感たるや、胸が張り裂けそうなほど自分も晩年はそうなるのだろうか…と姿を重ね合わせると、居た堪れない気持ちで溢れかえっていた物語のラスト横浜ローザの出で立ちは、髪は真っ白、顔を真っ白に塗りたくり、真っ白なドレスに身を包む深く折り曲がった腰、大きな紙袋を片手に提げ、もう一方の手には1輪の赤いバラ客席を降り、一歩一歩、真正面を据えて歩いていくその姿には、もはや五大氏を感じさせるものはなく、舞台のモデルとなっている、ハマのメリーさんの姿そのものであった自分は通路側の席に座っていたので、真横を通っていくのだが、何かを悟ったようなその曇り一つ無い表情と、鬼気迫る演技に圧倒されて、目を向けることができなかった好奇な目で見てはいけないという気持ちと、真っ当な人生を送っていない自分には見送ることができないという気持ちがそうさせたラストシーン、まるで夕陽のようなオレンジ色の光のなかへと消えていく後姿は美しくもあり、切ない胸に何かがグサリと深く突き刺さったその突き刺さったものは容易には抜き取れないほど苦しい、切ない、哀しい…観終わって、なんともいえない息苦しさを感じていた感想、受け止め方は人それぞれだと思うが、この『横浜ローザ』を観ての自分が感じたことは、“生きなさい”どんな人生であろうとも、それを受け止めて生きるということそれが幸福の人生か不幸な人生かは別として、この世に産み落とされた以上は、生きなくてはいけないのだと長年の願いがようやく実現した今回の観劇期待を裏切らない、いやそれ以上の胸に深く沁み込む名舞台だった五大路子ひとり芝居『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』横浜赤レンガ倉庫1号館8月15日(水)~8月18日(土)まで
2007年08月17日
仕事帰りに、宝塚歌劇星組の公演を観劇星組に好きな生徒さんがいるわけではなかったのだが、日本物のショーが綺麗だという評判を聞いていたので、今日の観劇となった星組新主演コンビ、安蘭けい氏・遠野あすか氏の東京宝塚劇場お披露目公演となる今回の公演の演目は、『さくら~妖しいまでに美しいおまえ/シークレット・ハンター~この世で、俺に盗めぬものはない』の、和もののショーとミュージカルの2本立て『宝塚舞踊詩 さくら』は、宝塚の重鎮である、専科の松本悠里氏を特別出演として迎え、見事に咲き見事に散る、その潔さが日本人の心を捉えてやまない桜花その妖しいまでに美しい世界の中で、愛を、生命を謳歌する人々の姿を描いた舞踊詩『ミュージカル シークレット・ハンター』は、カリブ海に浮かぶ島々を舞台に、泥棒で詐欺師の男が、“或る女を盗み出すこと”という奇妙な依頼を受けたことから始まる、詐欺師とプリンセスとの恋物語(公演チラシより)客席はほぼ満席状態星組新主演男役の安蘭氏の開演アナウンスが流れると、いよいよ開演舞台は、チョンパ(ショーの幕開きの演出方法で、 暗転の中、音楽が流れ、パッと照明が点くことから“チョンパと呼ばれている”) で幕開け舞台には、華やかな着物を身にまとったタカラジェンヌたちが勢揃い舞台のセットにも桜が施されて、まさに春爛漫いつ観ても、宝塚の舞台は華やかやねぇ舞台のラスト、主演者たちは“一竹辻が花”と呼ばれる着物を着て登場辻が花とは、室町時代に栄えた縫締紋(ぬいしめしぼり)の紋様染で、江戸時代の初期に衰退したが、辻が花の研究に生涯を捧げた久保田一竹氏により、「一竹辻が花」として現代に蘇えった貴重なものその華やかかつ斬新なデザインの着物は、遠くの客席から見ている自分にも印象深く残るものだった踊りながら、手のひらからハラハラと桜の花びらが落ち、舞台にも桜の花びらが舞い落ちるもう、桜の花びらのオンパレードこれでもかというぐらいに花びらが舞うあいにく雨が降っている東京は、今日から梅雨入りしたそうだが、この舞台は、まさに今が春真っ盛りのように感じた全体を通していえば、オープニングとラストのシーンが華やかだっただけに、その間の節句人形や、狂言『花折』をオペレッタ調に仕立てたシーンが霞んでしまったコミカルなシーンで、シーン毎は面白いものではあったが、そのコミカルさが主題のテーマに合っていなかった様な気がしてならなかった日本物の白塗りの舞台化粧から、黒塗りの化粧に時間がかかるのか、若干長めの35分の休憩を挟んで、ミュージカルの開演“さくら”の時は、演者は皆白塗りをしているせいか、殆ど顔の判別がつかなかったので、お芝居になって、ようやく誰が誰だか判るようになったカリブ海が舞台というだけあってか、陽気で楽しいリズムに乗って、物語はスピーディーにテンポよく展開していくストーリーは、肩が凝らずに見られる内容で、ラストに若干のどんでん返しも用意されてあり、自分が今まで観た宝塚の舞台の芝居のなかでは、久しぶりに楽しめる内容であった自分が宝塚を観始めた頃、まだまだ若手として活躍していた男役の人が、今では舞台の中央に立っているので、どうしても違和感を感じてしまうのだが、主演の安蘭けい氏は、堂々とした立ち振る舞いのせいか、舞台中央に立っていても、何の違和感もなく受け入れられることができた相手役の遠野あすか氏の舞台は初めて観るが、安蘭氏との息もなかなかピッタリのようで、お似合いのコンビである星組の二番手男役は、役のポジションやフィナーレのパレードで背負っている羽から考えると、柚希礼音氏のようまだ若手と呼ばれてもおかしくはないが、物怖じしない舞台姿と、その醸し出す華やかさは天性のものなのだろうか?安蘭氏とも互角に演技を渡り歩いていて、これなら心配ないと思ってしまった後輩に、主演男役後継者として抜かれる形となってしまった立樹遥氏、涼紫央氏の両氏宝塚は主演路線から外れてしまうと、見切りをつけて退団というパターンがあったが、この両氏には、脇を支える名役者としてこれからもぜひ活躍していただきたい華やかで、エネルギッシュで、お披露目公演だけに、パワーみなぎる舞台だった安蘭けい氏率いる新生星組、これからますます楽しみである東京宝塚劇場・星組公演『さくら~妖しいまでに美しいおまえ/シークレット・ハンター~この世で、俺に盗めぬものはない』5月18日(金)~7月1日(日)まで出演/安蘭けい/遠野あすか/立樹遥/涼紫央/柚希礼音/松本悠里(“さくら”のみ出演) ほか
2007年06月14日
今日はお休み午前中はのんびり過ごすと、午後からは舞台を観る為東銀座へ新橋演舞場6月公演『おんな太閤記~あさひの巻』である豊臣秀吉の妹に生まれたが故に、徳川家康との政略結婚を強いられ、愛する副田甚兵衛との別れを余儀なくされた、数奇な運命を背負った女・あさひ男の世の中でも輝きを失わず生き抜き、時代に翻弄されながらも、懸命に生きた女たちの豪華歴史絵巻!(公演チラシより抜粋)当日券売場で切符を購入3階B席で、2,520円(税込)大きな劇場で、いまどきこんな安い価格で舞台が観られるなんて、ここ新橋演舞場だけではないだろうか?でも、その価格の安さも、座席に着くとわかるような気がした座席に座ると、角度的な問題で、舞台の5分の1がまったく観られないのであるまあそれでも、芝居の雰囲気は味わえるからいいか秀吉の妻・ねねを主人公に描かれた、昭和56年に放送されたNHKの大河ドラマ『おんな太閤記』を基に、舞台では、そのドラマの中の登場人物の一人であったあさひを中心に構成されている壮大な物語を、舞台という限られた時間の制約の中に収めたせいか、かなり話を端折っている感が否めなかったあさひを中心に描いているとはいえ、意に反して嫁いだという徳川家康とのエピソードも、だいぶ省略されているので、今いち、あさひの悲劇性が伝わってこないのだまた、1場面1場面終わるごとに割りと長めの暗転となってしまうので、話がぶつ切りになってしまうのも勿体無かったなにか、暗転中の工夫があっても良かったと思う主演の泉ピン子氏は、テレビでの活躍は周知の通りだが、舞台を観るのは初めて代表作でもある、ドラマ“渡る世間は鬼ばかり”の小島五月役や、バラエティー番組などで見せる歯に衣着せぬ物言いのキャラクターがどうしても先行してしまい、翻弄される悲劇の女性を演じているのだが、よくもわるくも、それは泉ピン子でしか自分の目には映らなかったいや、演技が巧いのは言うまでもないんだけれど…テレビでは飄々とした印象を受ける渡辺徹氏は、さすがは文学座ご出身だけあって、堅実な芝居副田甚兵衛を演じた村田雄浩氏も、イメージ同様、朴訥とした男を飾り気無く演じていた女たちの歴史絵巻ということで、女優陣が大活躍なかでも、淡島千景氏は出番も多く、重厚かつ軽妙な演技で舞台を引き締めていた中田喜子氏は手堅くまとめ、出演陣の中では若手の京野ことみ氏は、忠誠心の塊のような女性を熱演し、ベテラン勢のなかでも負けない演技をしていたタイトルには“あさひの巻”とはなっているが、それは一エピソードにしか過ぎず、この舞台は、チラシが謳っていた通り、男の世の中でも輝きを失わずに生きた女たちの物語である暗転のせいか話が分断されて、一つ一つのエピソードを切り取って見せられているようで、なかなか物語に入ることができず、尚且つ話の盛り上がりにも欠けていたのだが、ラストになってようやく盛り上がってきたが、終幕は予想もしなかったものだった結末がどんなかたちであれ、もう少し救いがあってもよかったような気がした今まで観て来た舞台のなかで、一番重い幕切れであった…新橋演舞場6月公演『おんな太閤記~あさひの巻』6月4日(月)~6月26日(火)まで出演/あさひ…泉ピン子/ねね…中田喜子/豊臣秀吉…渡辺徹/副田甚兵衛…村田雄浩/なか…淡島千景/阿茶…波乃久里子/徳川家康…橋爪淳/こほ…京野ことみ/彦兵衛…斉藤暁 ほか
2007年06月06日
前日の夜になって、急遽今日休みになった久々の休日も、外は雨がぱらついているあいにくの空模様しかし、天気予報だと午後から晴れるということだったので、傘もささずに一路新宿へ目的は、新宿コマ劇場へ、ミュージカル『エリザベート』を観劇する為であるチケットが手に入るかどうかわからなかったが、当日券売場に並ぶと、舞台正面に面した客席でなければ前の席を用意できるとの事だったので、6列目の席をゲットS席が13000円という金額ではあったが、臨時収入があったこともあり、躊躇わずにチケットを購入した『ウィーン版 エリザベート ~ウィーン・コンサート・ヴァージョン』は、ウィーン版のフルキャストとオーケストラ総勢70名を迎え、圧倒的な歌唱力をより劇的に体感できるバージョンとして、新たに誕生美しいドロップ(幕)と証明を駆使し、ウィーンオリジナルの衣装・ウィッグを身に纏ったキャストが、東京公演用に創られた演出で全幕上演する、作品の魅力をストレートに感じることができる豪華な公演(公演チラシより)宝塚は観るが、ミュージカルはあまり好きではないので、劇場で観るのは今回が初めてというのも、初めて宝塚を観た作品が、1998年に宝塚大劇場で公演された宙組公演の『エリザベート』宝塚らしい華やかな舞台に惹かれたのもあるが、素晴らしい楽曲が散りばめられた作品が脳裏に焼きつき、ぜひ本場の『エリザベート』を観てみたい!と、今日の観劇となった新宿コマ劇場の舞台は面白い造りをしていて、客席に対して、舞台面はフラットではなく、弧を描いている自分の座席は下手側(客席から見ると舞台左側)なので、上手側(客席から見ると舞台右側)は見づらいのだが、舞台中央の席を取る為に、後ろの席よりは、少しでも前で観たかったので、若干の観切れは覚悟した本場ウィーンの来日公演というなかなかお目にかかれない公演だけに、さぞかし客席は埋まっているのかと思いきや、舞台中央に面した座席は埋まっていたが、両端の座席は殆ど空席がだったのには驚いたやはり、13000円という高価な観劇料のせいだろうかいよいよ、『ウィーン版 エリザベート』の幕が開いた舞台中央にはオーケストラ、舞台両端にはスロープという飾り気のない舞台で、舞台前面のスペースで、役者陣の演技が繰り広げられる舞台と客席とのその距離感は、あまりにも近い聞き覚えのある楽曲が流れると、早くも作品の中に惹き込まれていくのが、自分でもわかった今回の公演はドイツ語で上演されているので、舞台の両端には字幕のスーパーが出されている英語ですら理解できない自分にとっては、ドイツ語なんてもってのほかしかし、その字幕を目で追っていると、舞台に集中することができない宝塚版のエリザベートで話の内容は大体は頭に入っているので、この際、字幕は一切無視して、舞台に集中した意味は判らなくとも、喜怒哀楽の表情を見ていれば、なんとなしに意味がわかるから不思議なものであるなので、1幕13場のウィーンの中央広場のシーン辺りから1幕の最後まで、機材の不具合で字幕が一切表示されなくなってしまうハプニングがあったが、気にならなかった比べるのもなんだが、宝塚版では無いシーンがあり新鮮だったのと、やはり宝塚はシーン毎に華やかに脚色されているんだなぁ…と、違いを見つけながら楽しんだエリザベートを演じた、マヤ・ハクフォート氏1幕第8場のシーンの『私だけに』の歌唱は絶品だった聴いていて、興奮のあまりに胸をギューッと締め付けられる息苦しさを覚えたほど凄い!の一言に尽きるシーンが終わると、客席からも万来の拍手が沸き起こっていたまた、さすがカンパニーだけあって、どの役者さんも適材適所で素晴らしかったやはり外国の作品のミュージカルは、外国の方が演じるにかぎる時間を感じさせないほど、物語はスピーディーに展開し、なんだかあっという間に終わってしまった感じなんだろう、この感情は…ラストに出演者全員が登場した際、ものすごく自分の身体の内側が熱いのがわかった涙腺も潤んでいるこれが、ほんまもんの感動なのだろうか?こんな感覚、今までになかった他のお客様がいるのに男泣きなんて恥ずかしい…と、必死に涙を堪えながら拍手した最後には、お客さん総立ちでスタンディング・オベーション!今まで数々の舞台を観てきたが、こんな光景に遭遇するのは初めてだったので、自分のなかのヴォルテージはほぼMAX状態いや、ほんとうに凄いね大げさだけど、舞台と客席がひとつになった瞬間だったような気がしたその感動と、興奮は、うまく言葉では言い表せないが、とにかくこのまま時間が止っていてほしい…と願うほどだったカーテンコール後、舞台の幕の向こう側でハッピーバースディーの歌が歌われていた出演者の中で誰か誕生日を迎えたのかな?その歌が歌い終わると、客席から祝福の拍手が起こったあぁ、なんだかすごくいい光景コンサート・ヴァージョンと聞いて、どんなものなのか想像できなかったのだが、舞台にセットがないというだけで、普通の公演と何ら変わりないようだったかえって、舞台上はいたってシンプルなので、セットなど他に目移りすることがないので、役者の方々の演技・表情に集中することができて、かえって集中できて良かったと思う(セットなど全てが揃っていれば、言う事はないんだろうけれど…)ほんと、素敵な時間をありがとう!と言いたいできることなら、もう一度観たいところだが、なんせチケット代は高いし、それ以前に休みが取れないだろうから、今回が最初で最後の観劇感動と興奮の余韻に浸りながら、さきほどまでとは打って変わって晴れ渡った空の下、劇場を後にした…後日知ったのだが、主要キャストである死の帝王・トートと、暗殺者のルイジ・ルキーニ演じる2人の方が前日に負傷した為、自分が観た公演は、セカンド(代役のようなもの?)の方が演じられていたんだとかキャスト変更の知らせは劇場に掲示されていたそうだが、全然気づかなかったが、かえって、えぇ!?代役!?と、色眼鏡で見なかったのが良かったのかも舞台の役者さんと、パンフレットを見比べても、顔の違い気づかなかったし…(メイクしてしまうと、同じ顔に見えるから?)それほど、セカンドの方の両者の演技は代役とは思えないほど素晴らしかった本役の方の演技を拝見していないので、なんとも言えないが、今日の顔触れは自分的にはベストだったセカンドとしてトートを演じられた、マルティン・パッシンク氏は、とにかく歌声が甘くて、かなり個人的にはツボだったもう、あの歌声を聴くことができないかと思うと、とても残念でならない新宿コマ劇場5月公演『ウィーン版 エリザベート』~ウィーン・コンサート・ヴァージョン~5月7日(月)~5月20日(日)まで出演/エリザベート…マヤ・ハクフォート/ルイジ・ルキーニ…ブルーノ・グラッシーニ(ゲオルグ・レスコヴィッチ)/トート…マテ・カマラス(マルティン・パッシンク)/皇帝フランツ・ヨーゼフ…マルクス・ポール ほか※()内は観劇時のセカンドの方
2007年05月17日
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