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「ところで先生よ、ちょっと余分なお話をお伺いしますがね、ある道路際の病院の看板ですがね、あの数多い科目の医療ね、あれ本当に全部資格持って掲げているんですかい?
いやいや、先生の病院の看板のことじゃありませんよ。
念のため、誤解なさらないように」と、元銀行上がりの浅倉さん。
「看板? 看板ね、・・・・・・、これは参ったな」と、「裏半髪先生」が口篭もった。
「いかんこと、聞きましたかな、先生?」。
「うーん、厳しいご質問ですな。
しかし、なんでまたそう言うご意見で?」と、先生は困惑したお顔をした。
「いやね、先だってうちのカミさんがね、腰痛やら肩こりでね満足に夜も眠れないとね言い出して、それである病院に行ったんですよ。
もうかれこれ、10日近く通っているんですがね、ちっとも良くならないとこぼしているんですがね」。
「腰痛ねぇ、立てないくらいかね?」。
「いや、むしろ夜寝ていてね、朝方近くなりますとね、腰の何と言いましょうかな、そうそう、腰の下の辺りから大腿骨にかけて痛み出すなそうですワイナ」。
「片方ですか、それとも両方?」。
「そう、両方なそうでね、やたらと寝返りを打ってますワー」。
「うーん、両方ね、これもしかすると年かもね、多分、年齢から来るもんでしょう?」。
「とし? つまり年寄りって訳ですか?」。
「まぁ、その人によりきりですがね、大抵は60過ぎますとそう言う異常が現れますがね。
そうだね、むしろマッサージの方が良いかもね。

それに、こうした温泉の湯上りにほぐすと楽になりますよ。

放っておきますとね、頭痛が酷くなります上に自律神経失調症を引き起こすこともありますからね、マッサージが一番ですね」。「そうですか、やはりマッサージね。

ところで先生、さっきのお話しですがね、あんなに診療科目が多くてね、個人医のお医者先生があれだけのご専門の医療が出来るもんでしょうか?」。「おうおう、それそれそれよ、あんたいいとこに気が付いたな。

俺もそう思うことがあったな、やたらと外科から内科、形成外科から酷いのじゃ泌尿器科の果てまでさ、ありとあらゆる科目と言いたいくらいさ、羅列された看板があるよな。あれってさ、本当にそれだけ出来る専門の先生がいるんだろうかね、先生?」と、今度は「チョビ髭」さんが食らいついた。

「そうだよなぁ、一人のお医者さんであれだけの診療が出来るとは考えなれねぇなぁ。でぇいち、一つの科目を終了するにゃ先生、何年掛かるんです?」と、今度は土建屋の「ドラ太さん」。

「これは参ったぞーっ、総攻撃ですかい、参るねぇ」と、「裏半髪先生」が頭を掻き始めた。「言いにくいじゃないの、商売柄」と、私が水を注した。

「あ、そうか、それはそうかもな」と、浅倉さん。「先生、かーるくでいいんですよ、かーるくね」と、チョビ髭さん。

「ハハハハ、かーるくか、かーるくねぇ」と、先生は復唱するように言って、「そうだねぇ、これも医者の務めかもね」と言って、渋々言い出した。

「もっともね、最初から藪医者だと言う観念は困りますよ。そこはよく、御聞き届けてくださいよ、誤解があっちゃー困りますもんでね」。

要するに、看板通り全部出来るわけではないなそうである。どんな看板を掲げるかは、医者それぞれの裁量に任されているなそうだ。

医療法と言う法律では、「33の診療科目」が定められているらしいのだが、その中からどれをどれだけ選ぶかは個人医師の自由なそうである。「これだけの科目を診療します」と、厚生労働大臣に申請すれば良いとのこと、詰まりはこれはダメですという根拠はないと言うことのようである。

と言うことは、やったことのない科目を堂々と掲げている場合もあり得ると言うことである。と言うのも、大学でそうした科目のちょっとした講義を受けた程度でもって開業もあり得ると言うことのようで、これは要注意と言う診療も考えられることもあると言う。

である場合もあるから、出来れば「バカの一つ覚え」のような診療科目の少ないお医者さんを選ぶ方が、むしろ自然でありまた不安が無いではないだろうかと、遠まわしのご意見を戴いた次第だった。とは言え、最近に於いてはむしろ全身を診るお医者さんが増えたなそうである。

と言うのも、専門講義で習得するというよりも薄く広く学び、ホームドクター的に対処することが求められているなそうである。「これはどうもあるいは?」と、疑問を呈する病気などがあった場合は直ちに専門医を紹介すると言う、システム化の促進の為でもあるらしい。

と言うことは、あるいは「専門バカ」では他の病気の発見が遅れることも予想されるからであろう。
そう考えれば、なるほどなんであれ 「早期発見」 の為には、多少の専門以外の医術を心得ていてもらった方がいいのかもしれない。

「こりゃこりゃ、おらぁブッターマゲタ」と、浅やんが反対に頭を撫でていた。あり難い、貴重なお話しを賜った次第である。

である以上は、我々患者側もそうした眼を養う必要があるような気がした。
やはり「医は任術」と言うように、むしろそれ一本だけの医術しか出来ない本物の病院を選ぶことも肝要であるが、専門医でなくとも病状によっては 他の医師や病院などへの紹介も多い と言う。

そう言うためにも、出来るだけ病気の早期発見と言うことからしても診療科目を多くしている方が良いとのことだった。今まではやたらと多過ぎる看板は、あるいは医師としてのモラルを疑いたくならざるを得ないのではと思っていたが、どうやら眼のウロコを取ってもらった感じがした。

「看板に 偽りあるか 医療ミス」 では無しに、どうやら 「診てもらえ 出来ぬ医療は 紹介す」 と言うことのようで安心した。












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Last updated  2013.09.17 09:18:45
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