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「痛てっ!」
医療ドロイドが取りつけ手術を終えた義手を針先でちょんと突くと、マルークは思わず声を上げた。
ここは宇宙国家病院の一室。
ベッド脇のテーブルの上に二人仲良くちょこんと乗って、心配そうに見つめるトットさんとジョンピーは手術がうまくいったことに安どの表情を浮かべていた。
そこへグーとタラが入って来た。
「やあマルーク、調子はどうだい?」
タラがにこやかに笑いかけてきた。
マルークは顔を上げるとニコリと笑った。
「ありがとう。すっかりいいよ。まるで自分の手のようだ。」
そう言って彼は取りつけられた右手首を何度も開いたり閉じたりして見せた。
「これ、例の細胞コピー技術のお陰ですか?」
ジョンピーがタラに聞くと、タラは驚いて答えた。
「君はほんとに鋭いね。そう、その通り、以前トットさんの複製のおもちゃたんぱく質を作ったあの技術を使っているのさ。」
「なに?俺の複製?」
トットさんはやや考えて再び口を開いた。
「ああ、俺の代わりに解剖されちまったあのコピー肉の事か?」
あれから色々なことがあり、もう何年も前のような気がするが、まだほんの2か月前のことだ。
トットさんが東京のど真ん中でデブリンバトと共にいるところを発見され、今まで知られていなかった新種の鳥が発見されたと大騒ぎになり、トットさんを解剖してみようと追われる身となったが、超ミニワームホールを抜けて、なんと地球から30万光年も離れたビリノン星にやって来た。
本来はその星に住むデブリンバトにもみくちゃになっているところに、地球から戻ったばかりのグーとタラに偶然再会することになった。
そして、グーたちのアイデアでトットさんを細胞レベルまでコピーした、人造肉を地球に送り込み、人間たちに解剖させ、単なるデブのハトだと思わせて一件落着となったあの出来事だ。
その細胞コピー技術を使ってマルークの右手は見事に再生されたのだ。
「で、これからどうするんだ?」
グーがマルークに聞くと彼は答えた。
「まずは冷凍保存されたバンを助けに行く。その後は悪漢ベーダ―を倒しに行く。」
だが、マルークは悪漢ベーダ―を倒すと言ったものの、なぜか複雑な表情を見せた。
その表情の訳も知らないグーは、気づくこともなく言った。
「マルーク、ちょっと待って。ベーダ―の奴、実は後ろ盾に黒幕がいて、そいつはこの宇宙国家の中に潜んで、国家を密かに操っているようなんだ。だからベーダーを倒せばそれで済む訳ではなく、事は慎重に進めなくてはいけない。」
俺たちに託された例の地図はアレ=デ・ランのベイロ・オッカナ議員に渡したから、議員の方で密かに活動を始めたところなんだ。
「何?宇宙で戦争が起こるって言うのか?だとすると地球が危ない。どうしたらいいんだ?」
トットさんが叫ぶとタラはにこっと笑って言った。
「地球の発展レベルはたったの2。そんな原始惑星になんか誰も興味を持たないから安心していいよ。」
地球からやって来たトットさんとジョンピーは、嬉しいやら悲しいやら、寂しい苦笑いを浮かべた。
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