仲間のひとりが「世界一おいしいパン屋さんよ。世界のことは知らないけどね」
と教えてくれたパン屋へ寄る。
どうしてこれほどのものがここにあるのだろうどうしてここはこんなにへいわなのかゆたかなのか
と行けば必ず圧倒され打ちのめされいたたまれなくなる(だから滅多に行かない)食品フロアに行くと
群雄割拠なパン的ブースの一角にその世界一があった。
『ル パン ドゥ ジョエル ロブション』
夕刻なのに切れのない品揃群団の宝石箱に入り込んだような眸の定まらない状態で
ふわふわと目にとまった幾つかを選び
行列に並ぶのが大嫌いだが仕方なく並んで購入。
暗算計算ができないのでレジでの支払い金額にたいへん驚きこれでうンまくなかったらどうしてくれようかと思う。
「その赤い袋を提げて渋谷駅の外に出るとああここはパリかなって思っちゃうのよ」
と仲間が言っていたそのパン屋の赤い袋は帰路の電車の中でずっと香っていた。
食べたらおいしいっ!
写真はフォッカチャオリーブ。
そのほかペッコリーノチーズ。スモークチーズセロリ。キャソナードセサム。
どれも脳内が自身へ記憶を探して見つからず霞むほどおいしかった。
★
ヒカリエの周辺で夕刻の写真を撮った。
ヒカリエの中でパンを買った。そのパンは眩暈がするほど美味しかった。
自分は圧倒的なおのぼりさんで、都会の人はこんなおいしいものを
平気な顔して食べているのだから人間だって違うのは当たり前だと思う。
きっと小さいときからこのようなものを食べていたら自分は違う人間になっていたと思う。
きっとあのような場所にもし生まれたら自分は違う人間になっていたと思う。
だから人はみんな違うんだなあ。
と不思議な気持ちになりながら幸福な夢をみた。
★
村上春樹の新刊が今日発売。
朝のニュースで販売の行列特集を観る。
子どもに「買うのか?」 と聞くと「買うわけないじゃん。ファンでもないし」 と言う。
そのあとニュースが「さてどんな内容なのでしょうか」などと
購入して頁を広げている人に尋ねようとしているので
「うあー。やめろー。ネタバレは勘弁してくれ」 と耳を避けて台所に入れば
「なんだよ。買うのか」
と、ばればれの心が読まれてしまった。
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