PR
Calendar
Category
Comments
New!
虎党団塊ジュニアさん
New!
ヒロくん2010さん
New!
チョーサン8278さん
New!
クラッチハニーさんFreepage List

(4)降ってわいたトレードでオリオンズへ移籍
翌1963(昭和38)年、前年の不振に奮起したのか、あるいは新外国人フランク・ヤシックの加入に刺激されたのか、ソロムコは復活する。大振りは影をひそめ、三振の数は69個と前年に比べほぼ半減している。最終的には打撃3部門のすべてで前の年を上回る数字を残し、再びチームの本塁打王(22本=自己最多)に返り咲いた。
にもかかわらず、阪神は小山が14勝、村山が11勝と両エースがシーズンを通してそろって不振、巨人に優勝をさらわれ勝率も5割を切って3位に転落してしまう。そしてこのチームの低迷が、ソロムコにとって甚だ迷惑な事態を巻き起こすことになる。
シーズン終了後、ペナント奪回にはどうしても打線の強化が急務と考えた阪神は、思い切った戦略に出た。12月20日、突如としてエース・小山と大毎オリオンズの主砲・山内一弘とを1対1で交換する、有名な「世紀のトレード」を断行し世間を驚かせたのである。
阪神にとってトレードの名目は打線の強化だが、水面下で憶測されたのは球団とエース小山との確執だった。
小山は1年前の1962(昭和37)年の暮れに、10年選手のボーナス問題をめぐって契約更改交渉がこじれて越年した経緯があった。頑強に抵抗した小山は、自費でキャンプインし、2月7日になってようやく契約更改にこぎつけたが、球団との間に大きな溝ができてしまった。この「前科」がトレードに影響したことは疑いようがなく、阪神という球団の伝統的な体質と言えるかもしれない。
ともかくこれによって次季阪神の外野は、センターが不動の3番・並木輝男、ライトは3割をマークして成長著しい藤井栄治、そしてレフトに新戦力の強打者・山内一弘という布陣になり、ソロムコはにわかに戦力構想からはじき出される。
しかも話はこれだけでは終わらなかった。山内を出してしまったオリオンズは、攻撃力の低下を恐れ、阪神に対して新たなトレードを申し入れてきた。投手・若生智男(下の写真)と阪神の外野手(並木または藤井を指名)とを交換したいというものだった。
一方の阪神側も来シーズン小山を欠くことには不安を感じていたので、「ソロムコなら交換要員として出しても良い」と話に応じ、結局「世紀のトレード」のアオリを食ったような形で「第2のトレード」が成立する。こうしてソロムコは不本意ではあったが仕方なく阪神を去り東京へ引っ越すことになる。外国人選手と日本人選手との交換トレードは、これがNPB史上初だった。
(5)オリオンズの選手として
オリオンズ移籍1年目の1964(昭和39)年、ソロムコはおもに5番打者として119試合に出場し、打率2割5分3厘、本塁打15本、44打点の数字を残している。大きく環境が変わったことを割り引けば、かなり貢献したと言えるのではないか。
その一方で山内の加入した阪神は、バッキーの急成長もあって2度目のリーグ優勝を果たしている。ただし、放出した小山が自己最多の30勝したのに対して、その穴を埋めるはずの若生は5勝しかできず、この二重トレード自体は「阪神の方が損だったのではないか」という声が多数だったようだ。
1965(昭和40)年になると、出場数はわずか50試合に減り、本塁打も6本、持ち味であった勝負強い打撃は鳴りをひそめる。まだ29歳の若さだったが、ソロムコは結局このシーズンを最後に、潔く現役を退いた。
(6)終わりに
ソロムコは、初の外国人助っ人として4年間阪神タイガースの中軸を担い、その真面目さと数字以上の勝負強さで多くの阪神ファンに愛された。
当時のチームメイトにとっても、時折ソロムコが垣間見せる「本場のベースボール」に感心する場面もあったようで、再び本間勝 氏
のコラムのなかのエピソードの一部を引用しよう。
「もうひとつ、味方の我々もあっけにとられる走塁を見せてくれた。四球を選ぶ。バットを置いて一塁へ走る。ここまでは皆さんもよく目にするあたり前の光景だが、ソロムコ氏。この時点ですでに二塁への進塁を狙っていた。ファーストまではゆっくり走っていたかと思うと、ベースを踏んだ瞬間、突如としてギアーをトップに入れ替えて全力疾走する。四球を与えてガッカリしているバッテリーの精神面の隙を突いた走塁にはビックリさせられた。当時はまだ他チームのスコアラーなどいない時代。各チームに対し一度ずつは成功したような気がする。」
(月間タイガース2013年10月号)
ソロムコはオリオンズに移ってから元気がなくなってしまったが、思いがけないトレードによって、愛着のある阪神タイガースを去ることになった時、すでにプレイヤーとしての情熱は失われてしまっていたのかもしれない。
オリオンズでは2年間プレーして引退。その後は帰国せず、関西に戻ってアメリカ製の高級調理器具の訪問販売をするイージーウェアという会社を起業し成功している。
猛虎異人伝1 マイク・ソロムコ[完]
ソロムコの年度別打撃成績
①を見てない方はこちらを参照してね 猛虎異人伝1 マイクソロムコ① | タイガース非公式サイト2代目 - 楽天ブログ

ソロムコさんは背番号56なので「背番号史」より先に登場しちゃったね これからもこういうケースが出てくるとおもうけど悪しからずお許しを!
次回は 猛虎異人伝2 マーク・ブラウンスタイン | タイガース非公式サイト2代目 - 楽天ブログ
です
猛虎異人伝32 セシル・フィルダー 2025年11月07日
猛虎異人伝31 ルパート・ジョーンズ 2025年11月04日
猛虎異人伝30 マット・キーオ② 2025年11月02日