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読レポ第2036
カール・ロジャーズ
~カウセリングの原点~
著:諸富祥彦
発行:㈱KADOKWA
第5章 ロジャーズのカウセリング/心理療法
後期ロジャーズの「直観」を生かしたカウンセリング(3/3)
死の前年 に 公刊された『著名な心理療法家の事例集』所収の論文では、「成長を促進する関係の特質として「受容」「共感」「純粋さ」の3つを取り上げ説明した後で、「もう一地の特質」という説を設け、そこに「私が自らのうちなる直観的自己の最も近くにいる時、私がみづからの未知なるにに触れている時、そして私が、クライアントとの関係において幾分か変性意識状態にある時、その時私がするどんなことでも癒しに満ちているように思えるのです。その時、ただ私がそこにいることが、ひとを解放し援助します」という箇所を再掲している。
素直に読めば ロジャーズが、「受容」「共感」「純粋さ」の3つと並ぶ「もう一つの特質」、つまり「第4の条件」として、「うちなる直観的な自己の近くにいること」や「クライアントとの関係の中で変性意識状態にあること」を加えたと受け取る内容である 。そうなれば、ロジャーズ理論が公式に更新されることになる。「中核条件」は3つではなく、4つになった可能性があったのだ。
ロジャーズの晩年の同僚で、彼のスピリチュアリティへ傾斜に最も影響を与え他と言われているマリア・ボウエンは、この論文を読んで後、これを文字どおり「第4の条件」と受け取っていいものかどうか疑問を感じた。そして私信でダイレクトな質問をしている。数日後、ロジャーズからボウエンのもとに届けられた返事には「直観の意義はまだ十分にリサーチで研究されていない」し、「直観についての満足のいく定義すらまだ知らない」から、「あなたの質問にどう答えるればいいかわからない」と断った上えで、次のように述べている。「私がもし、直観は必要条件の一つだと言い始めたら、セラピストたちはこぞって、自分は直観的でなければならないと考えるようになるおそれがあります。これは不幸な結果を招きます。 私が今はっきり言えるこちはただ一つ、直観というものは、セラピストがベストな瞬間に至った時、しばしば現れる特質だということです 」(Bowen,unpublished)
自分がセラピィについて何か発言をすれば、周りの人間がこぞてそれを真似し始める―こうした現象に、ロジャーズがどれほど嫌気がさしていたかがよくわかる返事である。この返事を受け取り、 ボウエンは次のように結論をくだしている 。 直観は、新たに付け加えるべき「第4の条件」ではない 。 むしろそれは、「高度な共感の一種」である 。 直観はセラピストがクライアントの内的世界に注意を集中し没入していき、それ以外のすべてのことが意識から消え去るセラピィの特別な瞬間に働く 。そしてその時それは、強い癒しの力を発揮するのである、と。実に深い洞察であると思う。筆者も同意したい。
と著者は述べています。
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