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中国のモバイルバッテリー大手、Anker(アンカー)の日本法人であるアンカー・ジャパンは、安全性を追求した独自のバッテリーセル「Neo Lithium-ion Battery」を発表した。燃えにくい素材を採用するメーカーが増えている中、アンカーは従来の「三元系リチウムイオン電池」の安全性を高めるという選択をした。なぜだろうか。
モバイルバッテリーの発火事故が相次ぎ、社会問題となっている。そのため、モバイルバッテリーの所持や利用に条件を設けるケースが増えている。例えば国土交通省は、2026年4月24日から飛行機内に持ち込めるモバイルバッテリーの数を2個までとし、機内での充電および他機器への給電を禁止した。
モバイルバッテリーを提供するメーカーも、安全性の確保に向け様々な対策を講じている。その1つが、モバイルバッテリーに用いる電池の素材を変えることだ。
これまでモバイルバッテリーの多くは、三元系リチウムイオン電池を用いてきた。この素材は、エネルギー密度が高く小型・軽量化しやすい一方、熱や経年劣化に弱く、発火しやすいとされてきた。
そこで最近では、燃えにくい新しい素材をモバイルバッテリーに採用するメーカーが増えている。具体的には、リチウムイオン電池の液体電解質をゲル状などの半固体に置き換えた「半固体リチウムイオン電池」や、リチウムの代わりにナトリウムを素材に用いた「ナトリウムイオン電池」などだ。
一方で、アンカーは別の動きを見せている。
2024年から2025年にかけ、アンカーのバッテリーを搭載したBluetoothスピーカーやモバイルバッテリーが相次いでリコールされた。そのうちいくつかの製品で重大事故が発生していたことが明らかにされ、経済産業省が2025年10月、アンカー・ジャパンに行政指導をしたことは記憶に新しい。
それだけにアンカーも、モバイルバッテリーの安全性を強化する姿勢を見せている。アンカー・ジャパンは2026年5月27日、新製品発表イベント「Anker Power Conference 2026」を実施。モバイルバッテリーの安全性確保に向けた新たな取り組みとして、独自のバッテリーセルであるNeo Lithium-ion Batteryを発表した。
同社によると、Neo Lithium-ion Batteryは新しい素材を用いていない。従来の三元系リチウムイオン電池をベースに、様々な角度から高い安全性を実現したとしている。
従来型電池と異なる点の1つ目が、製造工程において不純物を徹底的に取り除いたことだ。バッテリーセル内部の電極や電解質に不純物が混入していると発火しやすくなるためである。
2つ目は、経年劣化の進行を抑制する処理や素材を採用したことである。三元系リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すと「デンドライト」と呼ばれる針状の析出物が生じやすくなる。これが大きくなると電池内部を破壊し、発火するケースがある。このデンドライトを抑える独自の処理や素材を採用し、安全性を高めたとしている。
3つ目が、これまで以上に過酷な物理テストを実施することだ。例えば、満充電の状態でバッテリーセルに釘を刺し、内部ショートを起こす試験を実施している。他にもセ氏135度での熱暴走試験や、強圧力試験など複数の厳しい試験を実施して、製品が耐えられるかどうか調べているという。
さらに、モバイルバッテリーの本体には、火をつけても燃えにくい難燃性素材を採用した。ソフトウエアについても、従来のバッテリーマネジメントシステムを強化した。バッテリーセルの1つひとつを秒単位で監視し、微細な異常を素早く検知して製品をロックして強制的に使えなくする機能も実装したという。
そのNeo Lithium-ion Batteryを採用した製品の第1弾が、「Anker Nano Power Bank (MagGo, Plus)」というモバイルバッテリーで、2026年夏ごろに発売すると発表した。
当面は従来のバッテリーセルを用いた製品も販売するが、日本では段階的に置き換えを進め、2027年ごろには全てがNeo Lithium-ion Batteryを採用した製品になるとしている。
国内では、モバイルバッテリーの安全性を示す方法として、電池の素材を変更するメーカーが多い印象を受ける。アンカーが従来の三元系リチウムイオン電池を採用し続ける理由は何だろうか。
同社によると、大きく3つある。1つ目は、新しい素材は三元系リチウムイオン電池と比べて実証実験のデータが蓄積されていないこと。2つ目は、使用環境や廃棄のルールが整備されていないことだという。
例えば、新素材を用いたナトリウムイオン電池については、飛行機内への持ち込みや預け入れのルールが明確ではなかったが、最終的に持ち込み・預け入れとも不可と整理された。ナトリウムイオン電池を製品に採用したメーカーがおわびを公表するなど、混乱が生じた。
3つ目の理由は、サイズと重量だ。新しい素材を採用した電池は、三元系リチウムイオン電池と比べ大きく重くなりがちで利便性に影響が出るので、採用しなかったとしている。
モバイルバッテリーの発火事故が増加した背景には、低コスト化による品質の低下が指摘されている。モバイルバッテリーを巡る競争は、国内でも激しさを増している。
三元系リチウムイオン電池を採用しても、大きな事故が発生している製品は一部に過ぎない。安全性さえ確保できるなら、新しい素材にこだわる必要はない。
どういった素材を用いるにしても、モバイルバッテリーメーカーには、競争力と安全性の両立する体制の確立が求められる。

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