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楽天の創業者。
この肩書きを聞くと、「莫大な資金でAIを丸ごと買える人」に見えてきます。でも、三木谷さんのAIの使い方を知ってから、その印象が完全にひっくり返りました。
三木谷浩史さん。一橋大学を卒業して、日本興業銀行へ。ハーバードでMBAを取り、1997年に楽天を創業。今や楽天グループの2025年度売上収益は2兆4,966億円で、29期連続の過去最高。抱える事業は約70。フォーブス日本長者番付では、純資産およそ5,810億円で13位に入る人です。
経歴だけ並べると、完全に「別世界の人」です。
その三木谷さんが、2025年の楽天新春カンファレンスで、こう言い切りました。
「AIを使えない企業は、これから未来が厳しい」。そこまで断言しています。
ここまで聞くと、多くの人はこう思います。「大企業だから、金と人をかければAIくらい入れられるでしょ」と。
打破したかったのは、そこなんです。
三木谷さんのAI活用を実際にたどると、拍子抜けします。核にあるのは、資金でも規模でもありません。 「全社員が、毎日AIに触れる文化を作る」という、地味な話でした。自由で、個人でもそのまま真似できます。
まず、三木谷さんと普通の人の差がどこにあるのか。ここを押さえると、7つの手法が全部つながります。
多くの人は、AIを「賢い検索」として開きます。困ったときに開いて、質問を投げて、答えをもらう。用が済んだら閉じる。便利ではあります。でも、それは他の誰にでもできる使い方です。AIが、たまに頼る自動販売機になっている。
三木谷さんがAIに見ているのは、そこじゃありません。彼が楽天でやったのは、経営会議のど真ん中にAIを置くことでした。毎週の朝会で共有する内容の60〜70%を、AI活用の話にしている。社員がAIを「特別なツール」だと思わなくなるまで、日常に溶かしきったんです。実際、楽天モバイルでは導入から半年で社内のAI利用率が85%に達し、グループ全体で毎日8,000人以上、のべ3万人以上が業務でAIを使っています。
たまに使う人と、生活の一部にした人。ここで天と地ほどの差がつきます。
三木谷さんの使い方を貫くものを、私は2つに絞れると見ています。ひとつは 「習慣化」。AIに触れない日をゼロにする。もうひとつは 「型化」。自分の判断や仕事のやり方を言葉にして、AIに移す。この2軸を頭の隅に置いて、7つを見ていってください。
最初が、一番地味で、一番効きます。手軽ですが、ほとんどの人がやっていません。
あなたは、AIを「特別なことがあったときだけ開くもの」にしていませんか。今日はまだ一度も触っていない、なんて日が、平気であるはずです。あるあるですよね。
三木谷さんは、その逆を組織でやりました。朝会の6〜7割をAIの話にして、AIを「特別なもの」から「毎日触れて当たり前のもの」に変えた。彼はこうも言っています。
「好むと好まざるとにかかわらず、AIは来る。これは未来の電卓であり、Excelであり、PowerPointになる。」
電卓を「たまに使う特別な道具」だと思う人は、もういません。AIも、そこまで日常にする。これが出発点です。
個人でやるなら、話はシンプルです。「毎日、必ずAIに通す業務」を1つだけ決める。メールの下書き、今日のタスク整理、なんでもいい。まず、今日こう聞いてみてください。
毎朝これを回すだけで、AIが「開くのを忘れる道具」から「一日の起点」に変わります。触れない日をゼロにする。それだけで、半年後には別人になります。
このリズムを作れない人は、いつまでもAIを「たまに便利なやつ」で終わらせます。あなたは違うはずです。
三木谷さんの本当のすごさは、この一手を過去にもやっている点にあります。
2010年、彼は社内の公用語を英語に切り替える「英語化(Englishnization)」を断行しました。全社員に、一気に英語を課した。議論を呼びましたが、結果として楽天は世界中で戦える組織になった。そして今、まったく同じことをAIでやっています。名づけて「AI-nization(AI化)」。社員3.2万人に研修を用意し、組織ごとAIに寄せにいっています。
しかも、ふわっと「がんばろう」ではありません。「Triple 20」という具体的な目標を掲げています。業務効率・マーケティング効率・出店者支援を、それぞれ20%改善する。数字で握っているんです。
ここから個人が学べるのは、 「全部変えようとするな。2割から寄せろ」という発想です。あなたの仕事を一度、棚卸ししてみてください。
いきなり全業務をAI化しようとすると、必ず挫折します。三木谷さんですら、20%という現実的な数字から入っている。まず、効く2割を見つける。そこからです。
ここは、三木谷さんの組織の作り方に、はっきりヒントがあります。
彼は、各事業部にChief AI Officer(AI活用の責任者)を置く、と決めました。会社全体に1人ではなく、事業ごとに専属を置く。さらに現場では、ECコンサルタントの90%がAIを使い、そのうち4分の1が、簡単なプログラミングで自分専用のAIツールを自作しているといいます。
「みんなで1つの万能AI」ではなく、 「業務ごとに、専属AI」。この発想です。
個人でも、まったく同じことができます。あなたが毎週くり返している業務に、専用のプロンプトを1つずつ用意しておく。それが、あなたの「専属AI」になります。
一度ルールを渡しておけば、次からは材料を貼るだけで、同じ品質が返ってきます。汎用のAIに毎回ゼロから説明する人と、専属を育てている人。数ヶ月で差がつきます。
💡 実体験:正直に言うと、私もこのやり方に切り替えてから外注費が大幅に削減できました。週報も、投稿も、リサーチも、業務ごとに専属のプロンプトを分けている。毎回ゼロから説明していた頃には、もう戻れません。
いきなり全業務ぶんは要りません。一番くり返している業務、1つから。
道具の話が続いたので、ここで一段、深いところにいきます。三木谷さんの言葉が、そのまま効きます。
「データは金と同じだ。アルゴリズムも大事だが、データがなければ役に立たない。」
楽天が強いのは、年間3兆件にのぼる顧客の行動ログを持っているからです。三木谷さんは、その一人ひとりのデータを束ねて「顧客のDNA」を作り、そこからAIに判断させています。勘や感想ではなく、事実の積み重ねで動く。ここが徹底しています。
これは個人でも真似できます。多くの人は、AIに「どう思う?」と感想を聞いて終わります。でも、AIはあなたの過去を何も知らないので、平均点の一般論しか返せない。
先に 「あなたのデータ」を渡すんです。
感想を聞くと一般論が返る。データを渡すと、あなた専用の分析が返る。三木谷さんが「データは金だ」と言うのは、企業だけの話じゃありません。あなたの手元にある実績ログも、金です。
これは、三木谷さんが実際にやって、話題になった一手です。
2025年5月14日の決算会見。壇上に立って業績を語ったのは、AIで映像と音声を生成した「AI三木谷会長」でした。本物そっくりのアバターが、淡々と決算を説明したんです。もちろん、話す内容は本人が事前に全部チェックしている。丸投げではありません。
ここが大事です。彼は 「AIは、あくまで副操縦士(co-pilot)だ。人の代わりではない」と繰り返しています。分身に定型作業を任せて、判断と最終確認は自分が握る。この線引きが徹底しています。
個人でも、自分の分身は作れます。まず、AIにあなた自身を覚えさせる。
一度これをやると、以降のAIの出力が「自分が書いたっぽい」ものに変わります。定型のメール、いつもの投稿、あいさつ文。この手の作業を、分身に任せられるようになる。
ただし、三木谷さんと同じで、外に出す前に自分の目で必ず確認する。分身に任せるのは作業であって、判断ではありません。ここだけは、絶対に握っておいてください。
ここは、三木谷さんの「提携の仕方」を見ると分かります。
楽天は、AIでOpenAIと組み、同時にGoogleとも組んでいます。その上で、自社独自の生成AIまで開発している。1社に依存していないんです。これは、それぞれの得意分野が違うことを、よく分かっているからです。
多くの人は、いつも同じ1つのAIに、何でも聞きます。でも、AIごとに得意・不得意がある。ざっくり、こう持ち替えるだけで質が変わります。
| 用途 | 適したAIタイプ |
|---|---|
| 最新情報・出典つきの調べもの | 出典リンクが出る検索特化型AI |
| 長い文章の整理・壁打ち | 自然な対話や長文が得意なAI |
| 画像や資料の生成 | マルチメディア生成に強いAI |
全部を1つでやろうとすると、どれも中途半端になる。用途で持ち替える人は、その分だけ精度で先に行きます。
いきなり何社もそろえなくていい。今使っているAIに、まず「調べもの用」をもう1つ足す。そこからで十分です。
最後は、三木谷さんが見ている、AIの一番先の使い方です。
彼は、AIの進化をこう表現しています。
「AIはもう、ただの超高性能な検索エンジンじゃない。ユーザーの意図を理解し、必要を先読みして、自律的に動く『超・個人秘書』に進化している。」
「これはチャットボットを超えている。AIがあなたの旅行を予約し、帰りの電車を手配し、買い物まで手伝う」。三木谷さんは、こう続けています。調べて答えを出す段階から、タスクそのものを任せる段階へ。今、AIはそこに来ています。
多くの人は、まだAIを「質問して、答えをコピペするもの」で止めています。でも、一歩進めるなら、「作業ごと丸ごと」渡してみてください。
「答え」をもらう使い方から、「仕事を終わらせてもらう」使い方へ。この一段を越えると、AIはあなたにとって、検索窓ではなく部下になります。
ここまで読んで、こう感じた人もいるはずです。「楽天だからできる。金も人もあるんだから」。
逆です。
今回の7つに、莫大な資金も、特別な技術もいりません。毎日AIに触れる。全業務の2割から寄せる。業務ごとに専属AIを持つ。感想でなくデータで決める。自分の分身を作る。1つのAIに賭けない。調べるでなくやらせる。全部、あなたが今日から、無料のAIで始められる行動です。
三木谷さん自身、興銀という安定を捨てて、ゼロから楽天を立ち上げた人です。彼のAI活用がすごいのは、資金があるからじゃない。「AIを毎日触れる当たり前にして、自分の判断を型にして移す」という、誰でも真似できる原則を、組織の隅々まで、淡々と徹底しているからです。
必要なのは、技術じゃありません。AIを迷わせない設計だけです。
読んで「へえ」で終われば、明日もいつも通り、全部を手作業で抱えることになります。多くの人は、そうします。
手元で試して、触れない日をゼロにする一歩を踏み出しましょう。

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