原題はスペイン語(Qué pasa)だが、日本盤では『ガトー・イズ・バック』という邦題(英題?)が付けられている。久々の復帰作だからわかりやすいようにという配慮であろう。元のスペイン語で付けられたタイトルの訳としてはあながち間違ってはいないが、原題はもう少しひねりが効いている。“Qué pasa (¿Qué pasa?)”は、“どないだ?”あるいは“まいど!”(なぜか大阪弁で失礼)といった程度の挨拶の表現である。つまり、10年というブランクがありながらも、普通の顔をして再び姿を現したという感じのニュアンスが原題には含まれている。
しかし筆者は時折この人の演奏に耳を傾ける。確かにジャズとして聴いたら何の面白みもないというのもわかる気がする。しかし、南米系とかラテン・テイストの音楽とは何なのかを考えながら聴くと、この“泣き節”は興味深い。中南米(あるいはラテンアメリカ)と一口に言っても、キューバとアルゼンチン、メキシコとボリビアではまったく違う文化に根ざした場所である。結論から言えば、ガトーのこの“哀愁”は、アルゼンチン的なのではないかと感じる。先住民的な要素があまり多くなく、歴史的には、ある意味において周縁地帯だったアルゼンチン。その孤独さや寂しさのようなものがきっとタンゴのような音楽を生み出してきたのであろうし、ロック/ポップ界でも時として(メロディや音が必ずしも演歌的という意味ではないが)同じような哀愁を感じることがある。例えば、以前に紹介したミゲル・マテオスの「孤独のアメリカ(Solos en América)」も同種の雰囲気を湛えている。
2. Blue Gala 3. Mystica 4. Dancing With Dolphins 5. Circulos 6. Guadelope 7. Cause We've Ended As Lovers 8. Indonesia 9. The Woman I Remember 10. Granada 11. Adentro