音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2022年05月29日
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テーマ: 洋楽(3405)
目立たない人物による目立たない好盤


 ボブ・ニューワース(Bob Neuwirth)は、1939年生まれのアメリカ人シンガーソングライター。1960年代のフォーク・シーンのつながりでボブ・ディランと親交を持ち、 『追憶のハイウェイ61』 のジャケ写(ダニエル・クレイマーによる写真)で、ディランの背後に下半身だけ写っているのは、実はニューワースだとのこと。

 そんな彼は、1970年代に入り、セルフ・タイトルのソロ盤となる『ボブ・ニューワース(Bob Neuwirth)』をリリースした。とはいえ、この作品は世間の大きな注目を集めることもなく、彼はこの1枚だけで表舞台からは姿を消してしまった(とはいうものの、本盤発表後には、ディランのローリング・サンダー・レヴューに参加したり、長い間を経て1980年代後半以降に何枚かのアルバムを発表したりはしている)。

 このようなわけで、余程のマニアにしか認知されていないアーティストなわけだけれど、本盤に参加したゲストの面々を見れば、その交流の幅広さがうかがえる。リタ・クーリッジ、ブッカー・T・ジョーンズ、ドニー・フリッツ、ジェフ・バクスター、ジェフ・マルダー、クリス・ヒルマン、ダスティ・スプリングフィールド…と、豪華すぎるメンバーが並ぶ。ゲストが豪華なら素晴らしいというわけではないにせよ、どれだけ顔が広く、有名ミュージシャンのサポートを受けたのだろうという名が連なる。

 そして、何よりも本盤の内容。一言にすると、なぜこれが聴衆に受けなかったのだろうと訝しく思ってしまう。時にいい具合に“ディラン”していて、カントリー・テイストもあれば、ジャグバンド風の雰囲気もある。なおかつ、泥臭さが随所に漂う演奏とヴォーカルで、しかも収録曲の過半が自作曲。カバー曲のセンスもよい。一言でいうと、1970年代前半時点でのアメリカ音楽のエッセンスを南部的な雰囲気の中で見事に写し出した一枚と言ってもいいのではないだろうか。

 筆者の気に入っているナンバーをいくつか挙げておきたい。2.「キッス・マネー」は、適度なトラディショナル・テイストにディラン風の語り口がいい。カナダのシンガーソングライターであるマレイ・マクロクランのペンによる4.「本キー・レッド」は、米国南部風のジャム的雰囲気が気に入っている。7.「ロックン・ロール・ライダー」は、ザ・バンドに通ずるようなナンバーで、筆者的には、リヴォン・ヘルムとのダブル・ヴォーカルでやる姿を見てみたかったなどと考えてしまう。8.「ウィ・ハド・イット・オール」は、ドニー・フリッツのナンバーで、本盤と同じ年にリリースされたソロ作でも取り上げられた曲。そもそも曲がいいと言ってしまえばそれまでだけれど、ニューワースによる染み入る歌唱もなかなかのもので、本盤の聴きどころだと思う。

 すっかり長文になってしまったが、結論として一言。ボブ・ニューワースのこのソロ作が大したセールスも上げず、マイナー盤となったことは、謎でもあり、もったいなくもある。1990年代末以降、CDでリイシューされてせっかく聴けるようになったのだから、もっともっと聴き継がれていってほしい作品だと強く思う。


[収録曲]


2. Kiss Money
3. Just Because I'm Here (Don't Mean I'm Home)
4. Honky Red
5. Hero
6. Legend in My Time
7. Rock & Roll Rider
8. We Had It All
9. Country Livin'
10. Cowboys & Indians
11. Mercedes Benz

1974年リリース。





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Last updated  2022年05月29日 10時24分13秒
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