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市制100年を迎える川崎市には146の国・地域の外国人市民が暮らしている。多様な人々がいて、多様な文化や料理、音楽があるから多文化共生なのではない。
同市は1972年、国民健康保険を外国人市民に適用したことを皮切りに、市営住宅の入居や児童手当で国に先駆け国籍条項を撤廃してきた。 行政の責任で差別をなくすためにふれあい館を開設し、市職員採用試験で外国籍者に門戸を開いた。「共に生きたい」という市民の声に応答して差別政策を撤廃し、共に生きる施策に転換してきた。それが市の多文化共生の歩みであり、素晴らしさだ。
市民の取り組みも誇らしい。朝鮮学校が高校無償化の対象から外されると子どもたちの学ぶ権利を守ろう」というメッセージ展が開かれた。差別があれば「おかしい」「やめなよと声を上げ、行動する人だちと共に生きている。これが私たちのまち、桜本だ。
そこへ襲ってきたのがヘイドデモだった。 「一人残らず出ていくまで真綿で首を絞めてやる」。そう叫ぶデモが立法事実となり、ヘイトスピーチ解消法ができた。 理念法では完全には止められず、ヘイト街宣が続いた。実効性のある策を求め、市を応援する署名活動や学習会を重ねた。市議会の全ての会派と手をつないだ。ヘイトスピーチに刑事罰を科す全国初の条例が全会一致で可決、成立した。市の強い覚悟が示された市差別のない人権尊重のまちづくり条例は、行政と議会、市民の「オール川崎」で実現した宝物で日本一の条例だ。
罰則を設けてレイシストを懲らしめたいのではない。望んでいるのは差別のない社会だ。7月で全面施行から4年となるが、罰則の抑止効果で勧告すら出されていない。ヘイトデモでのひどい発言ができなくなったのは、条例が有効に機能しているからだ。
ただインターネット上のヘイトスピーチは続き、川崎駅前では2ヵ月に1度、条例に抵触しない言い回しやデマで差別を扇動する街宣が続いている。
皆さんが差別をしないだけでは既にある差別はなくならない。皆さんが生きる社会は、街宣が続く川崎駅前を恐怖で通れないマイノリティーの市民がいる社会だ。ネット上のヘイトスピーチのひどさに絶望する若者がいる社会だ。北朝鮮かミサイルを発射すると朝鮮学校の生徒への暴行が起こる社会だ。皆さんは当事者ではないかもしれないが、皆さんが生きる社会には課題がある。その社会の構成員として何ができるか。そこから考え始めてもらえたらうれしい。
◆解説 入管難民法と技能実習適正化法の改正案
外国人労働者の確保を目指して技能実習制度に代わる育成就労制度を創設する。これにより永住者の増加が見込まれるとして、納税などの公的義務を故意に怠った場合は永住許可を取り消し、別の在留資格に切り替えられるようにする。法案は21日、自民、公明、日本維新の会など各党の賛成多数で衆院を通過。立志民主党、共産党、れいわ新選組は反対した。 横浜中革街に拠点を置く横浜華僑総会など17団体は「長年日本に居住する往日中国人の生活と権利が著しく侵害される。永住者に対する深刻な差別だ」として見直しを求める声明を発表。日弁連や東京弁護士会など各地の弁駿士団体も反対声明を出している。
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