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2021年12月30日
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テーマ: ニュース(100321)
カテゴリ: ニュース
新年を迎えるに当たって「年頭の一言を」という原稿依頼を受けた神戸女学院大学名誉教授で凱風館館長の内田樹氏は、12日の東京新聞コラムに、次のように書いている;




 そう言われても、「こうすれば万事解決」というような好都合なアイデアが私にあるわけではない。思考停止している方々には、とりあえず「私は思考停止している」という病識を持ってもらうしかないだろうと思う。だが、 思考停止は全社会的規模で起きている現象 なので、自分は病んでいるという意識を持っている人は少ない。

      ◇◆◇

 例えば「新聞や民放テレビはいつまで持つのか」というのはメディア全体にとってきわめて切実な問題であるが、それをメディアがニュースとして取り上げることはない。地方紙は残るとしても、いくつかの全国紙は遠からず姿を消すだろう。不動産を所有している社はテナント料が入るからしばらく新聞を出し続けるだろうが、購読料と広告収入で全国紙を出すというビジネスモデルはもう命脈が尽きようとしている。

 全国紙は世論のありかを明らかにし、国民的合意形成を果たすためのたいせつなコミュニケーション・プラットフォームである。それが機能不全になるというのは重大な社会的事件である。ならば、 どうして「こんなこと」が起きたのか、その歴史的経緯を解き明かし、全国紙や民放テレビに代わってどのようなメディアがこれから国民的対話の場になるべきかを論じるのはメディアの重要な責務だ と私は思う。でも、メディアは「どのようにしてわれわれは歴史的使命を終えるのか」という問いを忌避して、このきびしい現実を分析する努力も、あるべき未来を語る努力も怠っている。メディアが思考停止している以上、それを通じて現実を理解している人たちの思考が活性化するはずもない。

      ◇◆◇

 人口動態についても日本人は集団的な思考停止に陥ったままである。2100年の日本の人口は中位推計で4770万人、つまりあと80年間で7800万人減るのである。「右肩上がり」を前提に設計されている経済システムではこの事態に対応できないことは誰にでもわかる。 人口が増えなくても、経済が成長しなくても全国民が健康で文化的な生活が送れるためにはどういう社会システムにすればよいのか、それについて衆知を集めて熟慮すべき なのだが、政府部内にはそのための部局が存在しない。相変わらず「成長戦略」とか「少子化対策」とかいう呪文のような言葉をつぶやいているだけである。

 日本社会全体が思考停止しているのだから、中高年サラリーマンだけを責めるのは気の毒なのである。だが、社会の激変は必ず起きる。その時必要なのは復元力である。復元は自分の過ちを認めることからしか始まらない。私に言えるのはそれくらいである。


2021年12月12日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-社会の激変に必要なものは」から引用

 人口減やAIの普及で、これからのサラリーマンは停年退職しても満足な年金を受給できなくなるというのは、由々しき問題である。そういう時代が迫ってきているというのに、政府も国民も思考停止の状態にあり、何一つ有効な対策を模索する意思が感じられないのは、問題である。既に人口が減少するということは、統計資料が示しており、現に人口は減少を始めているにも関わらず、政府は相変わらず人口増大を前提にした「成長戦略」を目ざしており、成長がなければ分配もないのは当たり前みたいな議論が横行するのは、実に虚しい限りである。このままでは将来危ないことになると分かりきっているのに、誰もそれに言及しようとしないのは何故なのか。みんな、最初に言い出した者に全部責任を負わせようという魂胆なのを、互いに警戒しあっているのではないのかと思います。





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最終更新日  2021年12月30日 01時00分05秒


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