読書日記blog

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2007.06.29
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カテゴリ: 教養・実用


新潮新書



日本が帝国として歩み始めた明治時代。日清戦争の勝利によって手に入れた未知の島、台湾を調査した三人の冒険科学者の生涯を描く。

本書で紹介されるのは、台湾で人類学、植物学の研究に従事した、伊能嘉矩、田代安定、森丑之助の三人。蕃人たちの住む未開のジャングルに科学調査が入り文明の光が未開の闇を晴らした、というと現代人には傲慢なことのように思われる。しかし、植民地に組み込んだ新領土を科学的に調査し、それに基づいて近代化に乗り出すのは帝国主義時代のごく当たり前のこと。ましてや植民地を収奪の対象としてではなく、開化し本土に組み込んでいくべきものとして捉えていた明治日本にとって、新領土の調査研究は統治していく上で必要不可欠なものだったのである。
私の印象に残った三人の共通項は、日本本土では主流になれなかった境遇、台湾への熱い情熱である。正規の教育を修めていない者や佐幕派の子弟などの内地の主流から外れてしまった者が成功のチャンスを求めて台湾に赴くという構図は、科学者にも官吏にも共通する。しかし、姉歯松平などの官吏は台湾に居ながら台湾と距離を持ち続けたのに対し、本書の冒険科学者たちは台湾を台湾を愛しその魅力にのめり込んでいった。この違いは、個々人の性格によるところも大きいだろうが、職業柄そうなっていったのではないかと思われる。また、成功を夢見て内地から台湾に赴いて研究を進めていくうち、現場と本国の対立、理想と現実のギャップに直面する。植民地で素晴らしい成果を収めても所詮は末端の嘱託職員に過ぎず、内地からは軽んじ続けられた。ましてや現代においては植民地時代は悪とされ、台湾の植民地統治も忘れ去られようとしている。三人のことは私も本書で初めて知ったのだが、業績の輝かしさに感心しただけでなく、生前は軽んじられ、死後は忘れ去られてしまったという悲劇性も印象に残った。





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Last updated  2012.03.13 23:52:04
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