読書日記blog

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2007.07.02
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カテゴリ: 教養・実用


ビジネス社



「昭和」の右翼を、「現状破壊派」(井上日召、橘孝三郎、権藤成卿ら)と「新体制構築派」(石原莞爾、北一輝、田中智学ら)に分けて紹介。

昭和をつくったというよりも昭和に混沌をもたらしたというイメージが強い昭和の右翼たち。ただ、昭和は動乱の時代、激動の時代と考えると、確かに「昭和」をつくったのは彼らであろう。

「昭和の右翼」の姿は、現代の右翼のイメージとはだいぶ異なる。本書では、昭和の右翼を「現状破壊派」と「新体制構築派」に分けて紹介されている。目的達成に向けての行程やビジョンなどは異なっていたが、どちらも日本の現状を憂い何とかしようという志を持って行動していたことは共通している。昭和の右翼たちの理想は、いまの感覚では左翼がかって感じられるのが興味深い。この時代の右派の知識人と左派の知識人の違いについてもっと詳しく見ていきたくなった。また、この時代の左翼から右翼に転向した人の思想遍歴も気になってくる。
このころ共産主義も流行したが、主流となっていった講座派の左翼は庶民と乖離しており、庶民の視点に立ち庶民に支持されたのは左翼ではなく右翼だった。彼らは、恐慌で苦しむ農民や労働者の惨状を見て義憤に駆られ、資本主義を破壊して天皇の下で皆が平等な理想の社会をつくろうとした。真逆のはずの右翼と左翼の異同や関係の複雑さを改めて考えさせられる。

それにしても、ここに出てくる人物達の個性、主張、行動は過激で強烈である。個々人の性格や、エリートコースをどこかでそれてしまったことなどの諸事情が、彼らの強烈な活動の原動力と成っていることはは確かだろう。しかし、時代精神に上手くのった、時代の波に翻弄されたという側面も強いだろう。積もり積もった矛盾を秘めた社会の鬱積した感情は、きっかけがあれば大きな運動に発展する。一つの時代を破壊し新たな時代をつくる原動力となった彼らも、彼らの力だけではあれだけのことが出来なかった。
昭和初期の右翼たちは戦後では悪の権化のように見なされているが、その生き様や主張はそんなに単純なものではない。今後ますます研究が進むにつれ、一般向けの本もこれからどんどん出版されるだろうと思う。





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Last updated  2007.07.07 18:22:27
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