書評日記  パペッティア通信

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Nov 30, 2005
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カテゴリ: 政治


(承前)

11月、総長辞任とともに選出された東大新執行部は、すでに強硬姿勢に転じていた。その中で、あらわれはじめた脱落者。法・経・教養学部では、ストライキ解除決議がとおる。医学部も、「あかつき部隊」護衛の中で理学部棟で学生大会をひらき、解除決議をおこなう。 両派の乱戦 が続く中で、単独では日本共産党は安田講堂を解除できない。刻々とせまるタイム・リミット。翌年1月10日、大学当局は「七学部代表団」と「10項目の確認」をとりかわして、警察力導入の準備をととのえる。この茶番劇で議長をつとめ、警察に全共闘を売り渡した人物は、なにあろう、非日共系の 経済学部闘争委員会書記局、町村信孝・前外務大臣 という。変節するゲスは、どこまでいってもゲスなのか。我が身可愛さに、「権力に弱い」東大生はつぎつぎと逃げ散ってゆく。


しかし、決着はつけなければならない。
だれかが安田講堂に赴かねばならない のだ。


義に殉じた東大生、その志願兵の数80名。
そのまぶしさには、おもわず言葉を失う。

志願者をつのる重苦しい選出会議。そんな中、大挙押しよせた、20名の法学部自治会の連中たち。彼らのため、筆者は泣くのだ。 籠城戦とは、あらかじめ義人を人生の栄達から排除するためにあったのかもしれない 、と。「義」は指導的地位にたって発揮させないと意味がないではないか、と。その後の闘争指導のために講堂外に残るもの、講堂に籠城するもの、逃げ出すもの…それはその後の人生を左右する運命の分れ道でもあった、そう筆者は語る。


同じ頃、駒場キャンパスでは、 日共側の全共闘バリケードに対する総攻撃が始まっていた

本郷キャンパスで激突する、学生と機動隊、双方の若者たち。
極寒の1月、水に沈む講堂。
電気も食べ物もない、籠城側。
学生と支援者たち総勢500名の、
孤立無援の2日間におよぶ戦い。

死を覚悟した学生たち。
学生と機動隊、火炎ビンとジェラルミン楯の戦い。降り注ぐ消防車の放水は、まるで戦いの場を清める聖水であるかのようだ。物語は劇的なクライマックスまで濃密にえがきだす。落城後も続く、はてしなき戦い。涙なくして、読むことなどできはしない。ここからは、本書をお読みになって、ぜひ落涙して欲しい。

みなさんは、共産主義臭があまりしないこの紹介文を読んで、不思議に思われたかもしれない。実際、あまり感じない。むしろ、横溢しているのは、社会への熱い義憤である。かれら全共闘は、「ワルシャワ労働歌」「インターナショナル」とともに、 「唐獅子牡丹」を愛唱していたという 。革命の頂点において、自らを「反革命」として燃焼させんとする、『楯の会』三島由紀夫たちへむける、共感をこめた暖かいまなざし。学生と機動隊双方に死者がなかったこと喜ぶ昭和天皇への共感。愛において、「革命」は「反革命」と和解したのだ。 ともに、この大地にすむ『同胞』ではないか

それにしても、なんと 戦慄させられる民主の実践 であることか!!。渾身の力を振り絞って、徹夜でガリ版を削り討議する学生たち。彼らは、議案をつくり、ビラをくばり、最後の最後にいたるまで、投票による決着をつけることをやめようとはしない。 「安田講堂占拠」「安田講堂の攻防」がデモクラシーにもとづいて実践 されていることに、注意を向けてほしい。 今の国会など比較にならないくらいの討議が、毎日のようにくりかえされ、積みあげられてゆく。そこに、最初は雲間から顔をのぞかせた程度だった内ゲバが、やがて猛威をふるうようになるのだ。 民主的実践も頂点に到達すると、それは暴力への道も、同時に開いてしまうものなのか 。全共闘以降、我々日本人は、民主の実践に疲れてしまったのかもしれない。全共闘の突きつけた課題は、あまりにも重い。

なによりも、「徹底した自己否定」が、今となっては新鮮だ。
未来を捨て、自己の特権を否定して、生まで捨てることを覚悟しなければならなかった地平から、この批判は放たれている ことを忘れてはならない。その刃は、なによりも自己に向けられているのだ。あの日、なぜ、我々は日本共産党系と共闘できなかったのだ…なぜ日大全共闘は体育会と提携できなかったのか…それが現実化できれば、今の日本はもっといい国になったはずなのだ… 後悔と激烈な糾弾の嵐。 否定できるにたる何かをもっていない人間は、いったいどうすればいいのか 。いささか疑問であるにしても。

東大出身の権力者の歪んだ姿に、自分たちの行く末をみた東大生たち。

蜂起は潰えた。バリケードの日々はすぎさり、警察国家の網の目が日本を覆いつくす。今や学生運動さえ、忘れ去られようとしている。保守的イデオロギーの洗脳によって、なぜ彼らは蜂起したのかさえ、理解できなくなる時代が訪れようとしているのだ。

  君は、バリケードが三日しか続かないことをもって、国家と人民の共犯
  関係を告発する。しかし、ちがう。そうではない。バリケードが三日し
  かもたないのは、蜂起した群集が我身可愛さで無秩序に逃げ戻るから
  ではない。人間がそこで、弱い眼には耐えられない真実の輝きに眼を
  灼いてしまったからなのだ

  希望はある。身を捨てて、誇りも自尊心も捨てて、真実を、灼熱の太陽
  を、バリケードの日々を昏倒するまで生きることだ。太陽を直視する三
  秒間、バリケードの三日間を最後の一滴の水のようにも深く味わいつく
  すことだ。僕たちは失明し、僕たちは死ぬだろう。しかし、恐れを知ら
  ぬ労働者たちが僕たちの後に続くことだけは信じていい

     (笠井潔『バイバイ・エンジェル』より)


旅に出ないか。
バリケードの向こうにあるという、「真実の輝き」を探す旅へ。

失明と死をまぬがれた筆者による希有の書は、
今、我々の眼前に差しだされているのだから。


評価 ★★★★☆
価格: ¥1,029 (税込)

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Last updated  Jan 1, 2006 11:08:21 PM
コメント(11) | コメントを書く


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Re:★ 『革命男』-昭和元禄期の義侠伝 <2>  島泰三 『安田講堂 1968-1969』 中公新書 (新刊)(11/30)  
はるる!  さん
物理的なバリケードの他に、ファッションや音楽、言語や映像や芝居やアートも、武器であり、バリケードのひとつだったような気がします。

ぼく自身も、あの頃、ホンキで音楽が世の中の仕組みを、世界の在りようを、変えるちからがあると信じていました。 (Nov 30, 2005 02:53:37 PM)

Re:★ 『革命男』-昭和元禄期の義侠伝 <2>  島泰三 『安田講堂 1968-1969』 中公新書 (新刊)(11/30)  
現在との時代の差を改めて感じます。以前、佐藤栄作首相と民社党の党首との論戦を聞いたことがありますが、現在の国会との違いに愕然としたことを思い出します。形はどうであれ、国民全体が思考停止になっているのは、否定しようのないところでありましょう。 (Dec 1, 2005 06:01:39 PM)

TBありがとうございました!!  
受験戦略論筆者 さん
TBありがとうございました。
今後とも宜しくお願いいたします。

安田講堂落城は、一大学の問題ではなく、
まさに日本の青春時代がその瞬間に終わった
といっても過言ではないぐらいの社会的インパクト
があったのだと思います。

また、日本における大学教育の権威が地に堕ち、
日本から本当の意味でのインテリ層が消えること
となった歴史的瞬間でしょう。

この時代に大学生であった方々から見れば、
今の大学生および大学の姿はまるで幼稚園のように
映るのかもしれませんね。 (Dec 2, 2005 12:30:42 AM)

それにしても、なんと戦慄させられる民主の実践であることか!!  
cya さん
あまり熱くならないで下さい。

>かれら全共闘は、「ワルシャワ労働歌」「インターナショナル」とともに、「唐獅子牡丹」を愛唱していたという。

そうでした。。
「全共闘」に限ったことではなく、ノンラジの私ですらそうでした。

安田講堂戦の最期はあまりに悲惨でしたよ。。 (Dec 2, 2005 09:50:24 PM)

Re:★ 『革命男』-昭和元禄期の義侠伝 <2>  島泰三 『安田講堂 1968-1969』 中公新書 (新刊)(11/30)  
MIKAリン  さん
1960年代

物事を安易にしか考えてない学生や、私達世代も含め若いと言うには、あまりに幼稚で陳腐な現代。
1960年代を境にして、何かが壊れたのだろうか?

無知な私には出せ得るはずのない、答えです。

(Dec 2, 2005 11:13:15 PM)

ありがとうございます。  
take-sgi  さん
私のHPへ来ていただきありがとうございます。
これからも初心者ですが、よろしくお願いします。
またこちらへも来させていただきます。 (Dec 2, 2005 11:37:57 PM)

町村前外相って・・。  
町村前外相ってそんなに悪い奴だったのですか?w

昨日のBBSですが、Jan.とすべきところをJun.としてしまいました。ボケが始まったかな?

連帯を求めて孤立を恐れず
力及ばずして倒れることを辞さないが
力尽くさずに挫けることを拒否する。

当時この安田砦内の落書に魂を揺さぶられた人は多かったでしょうが・・・。 (Dec 3, 2005 11:35:00 PM)

空白の30年  
mawa3 さん
あの運動は全国に高校にも広がりましたが、開き直った教師達とそれを支えた権力によって完全鎮圧されました。それ以来、我々は脱力社会に住んでいるような気がします。 (Jan 25, 2006 09:27:35 PM)

お久しぶりです  
ショータ さん
いま『ヘルメットをかぶった君に会いたい』(鴻上尚史著/集英社刊)を読んでいて、ふと学生運動に興味を持ち、いろいろネットを探っているうちに「山本義隆」という人物に興味を持ちました。

いろいろ検索していたら内田樹センセのところに行き着き、TBを眺めていたらなんとまあ旧知のこちらに辿り着いた次第です。

こちらの本、読んでみますね。
(May 26, 2006 06:27:13 PM)

一番大切なものは?  
Joe さん
左翼は幼稚。
それ以外に云うべき言葉はない。 (Aug 5, 2009 07:40:42 PM)

Re:一番大切なものは?(11/30)  
高校生でした さん
Joeさん
>左翼は幼稚。
>それ以外に云うべき言葉はない。
-----
幼稚だから純粋なのです。それは島泰三先生の学術的成果に現れています。汚れた精神の人には理解できません。 (Oct 1, 2014 04:04:57 PM)

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