書評日記  パペッティア通信

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Jan 20, 2006
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そんだけ。

「論文」という形態を取らないと、批評家の言説がどれほど緊張感を失い、「自分語り」に堕落してしまうのか。それを見るには、 今月号『諸君』の仲正昌樹「北田暁大に告ぐ 『諸君!』に出て何が悪い」 などと並んで、最適の本といったらお叱りを受けるかもしれない。 ところが、この面白さ、ダテではない。そもそも、 テメエら批評家が議論そっちのけで「自分語り」しかしないから、イザコザのみ読者に面白がられるんだろうが !と言いたくなるんだけど、いやあ、久しぶりに読むと、論壇プロレスはやっぱり面白いわ。政治と社会学、理論と実践、立ち位置についての苦悩。そんなものに興味をお持ちのかたは、ぜひご一読をお薦めしたい。

内容は3章立ての対談集。
第1章は、宮台真司×東浩紀×鈴木謙介

第3章は、大澤真幸×東浩紀×鈴木謙介



第1章。宮台真司との対談は、抱腹絶倒もの。恩師の行動と言説が、敬愛を交えながら、赤裸々までに解体されたばかりか、オマージュにさえなっているのが凄まじい。5年くらい前まで、コギャルになるか、オウムになるかなら、コギャルになるしかないだろうと言っていた御仁が、いつのまにやら「ネオコンに対抗するにはアジア主義と天皇しかありません」。1990年代、「政治的自由を勝ち取るための政治主義」が「政治的自由に耐えられない弱者のための政治主義」に堕していることへの恥ずかしさから、サブカルを語っていたという。「どうせ世界はこんなもの」と言いながら、「なのか」をつけていた。ところが、ある条例制定の反対運動に参与する中で、新左翼反対屋どころか、 推進屋・政治家のブレーンのあまりの民度の低さにショック をうけてしまう。紳士的マッド・サイエンティストは跋扈して、人文科学はまるでチェックできない。これでは、ネオコン的ニヒリストたちに蹴散らされてしまう。 エリートに社会を委ねられるどころか、「底がぬけてしまっている」 のだ。「真理の言葉」が、つねに摩耗させられてしまう中では、真理の機能を重視する「機能の言葉」に頼る他はない。反社会的帰結を生まないようにするには、妄想とは結びつきにくい「全体性」を希求するしかない。

あえて妄想的イメージを使ってでも全体性を喚起させることで、脱社会化・離脱する人々に対して、「実りある社会」という対案を提示しよう とする宮台。もはやリバタリアニズムには、そのレベルでは対抗できないことを唱え、「降りる自由」を強調する東の対立。また、旧来の宮台テーゼ、「意味から強度へ」から転向した理由も明らかにされていて興味深い。「意味」は複雑性縮減の道具にすぎないが、 選択できなかった差異、意味の向こう側=アクシデント・偶然性を提示する ので、「強度」の道具立てとしては非常に有効で、「実りある社会」には欠かせない。ところがそれでは、「飽き」て「生きづらい」のだそうである。参ったね。離婚はそんなに痛手でしたか。


第2章。北田暁大との対談は、東と同年生まれということで、東大同窓会のノリ。『批評空間』『ソシオロゴス』「カル・スタ」「ポス・コロ」の連携がなぜできなかったのか、反省の弁がのべられる一方、人文系理論社会学の衰退が嘆かれている。 個人を権原から考えるリバタリアニズムは、情報技術を介して「未来のリスクを管理する」監視社会と親和性が高い 。リスクがあるからこそ他者の信頼が必要とされた、ギデンズの描く近代像は崩れ、 信頼にかわるものとしての技術 が前面にせり出した現在。東は、グラモフォン・フィルム・タイプライターによるラカンの三界図式(by キットラー)から、「コンピューター(リアルなもの)-声・映像・文字(イメージ)」の二層図式への転換という図式を提示する。ベタな動物と、無限のメタに悩む人間の乖離。 人々が求めているのは、「大きな物語」ではなく、無限のメタをとめる「感動」 ではないのか。前近代的動物性とポストモダン的動物性は、いかなる差異があるのか。オタクとは、1920年代に生まれた「婦人」概念と同じく、「消費主体」であるとともに「社会的に排除された」、消費社会が創造した概念にすぎないのに、なぜオタクはあたかもオタクであることを本質と思いこみ、自分の欲望を「血」「遺伝子」などで実体化させたがるのか。ネットの異質さは、こうした婦人雑誌的コミュニケーションのあり方を引き継いでいるためなのではないか。また、「降りる自由」に関して、非責任と無責任はどう違うのか、 「降りる自由」はリバタリアン的最小国家以上のものを必要とするのではないか 、応答責任とは物理的外部性でしか分けられないのではないのか、などが議論されます。「ベタにあえて」ではなく「あえてベタ」に振る舞わなければならないのではないか、と宮台つるし上げの一幕も。ハイカルチャーは、宣伝・プレゼンのために批評を必要とするんだ、金になるんだ、とチンピラ唐沢俊一をチクチクいたぶっているのが笑えてしまう。


第三章。大澤真幸との対談は、メルロ=ポンティ経由の身体論をめぐって。現代、「脱身体化と身体回帰(リストカット)」が共存していることに注目する大澤。それは、快楽の身体レベルの秩序維持=動物化=生権力=環境管理型権力の洗練が進み、 「享楽の身体」を奪われて自己の身体に直接的暴力が向かっているのではないか ? そこで、国民国家的審級を呼びだすことなく、享楽レベルの秩序=規律訓練型権力を管理するにはどうすればいいのか? 東は、このように問題を整理するとともに、大澤の持論、自由と責任の根幹においた「偶有性」が、身体感とどのようにつながっているのかなどを問う。大澤は答える。 「身体-他者」の次元が感じとれなければ、「デュミナス(可能態)-偶有性」の次元を確保できない (他者がいなければ自由もない)、と。リバタリアニズムは、公的インフラと私的価値観(アプリケーション)をきりわける思想として、今現在、あらゆる所に秘かに浸透しつつあるが、はたしてコミュニティの共存可能性の条件が十分に考えぬかれているであろうか。この2つは乖離して良いのか(ノージック)、縫合すべきなのか(ローティ)?。

鈴木・北田たちリベラリズムは、自由主義のベースとなる共感可能性から排除されてしまうものを問題視する。 東は、リバタリアニズムがそもそも共感可能性を必要としない社会構築を目指しながら、インフラの他者が出現してしまう 運命に合わせた諦め がおき、目的合理的な行動をとるためのインターフェースとして、「再魔術化」がおきる社会。 監視社会批判の準拠点としての「無知のヴェール」の再提起 はかなり新鮮であった。ところがこの章でも、宮台問題が噴出(笑)。今は「終わりなき<非>日常」(テロリズム、リスク)ではないのか。宮台的「ネタとしての天皇」論も、アイロニカルな没入になっているのではないか。みんなが耐えられなくなった?そんなこと言わずに お前が耐えて見せろ! 。脱構築を続けるでもなく、「あえて」近代主義者になるのでもなく、第三の道を模索する大澤の宮台批判は凄まじい。


もはや、こんな書物につまらない「評」などは不要だろう。おまけに宮台・大澤の先達に対して、東や鈴木が研究者人生を相談する箇所など、ホロっとさせられる所も多い。なによりも注の充実と、「考えるための小さなネタ」が惜しみなく盛大に散布されているというのが、門外漢にとってはありがたいではないか。読むだけで「賢くなった気にさせられてしまう」のが、かえって困りもの、むしろ欠点のようにさえ思えてしまう。社会・哲学・政治の交わる境界領域に関心が有る方にも、単なる社会学者の内ゲバに興味がある方にも、すれた論壇ゴロの方々(誰だよ、そんな奴)にも、批評家ノンフィクション(今私が作った言葉)を読みたい方々にも、自信をもってお薦めできる一冊になっているのです。

とはいえ、宮台先生がここまで追いつめられていたとは、寡聞にして知らなかったですね。週刊誌の連載は読んでいなかった。おまけに、『サブカルチャー神話解体』以降の単行本も、未読だったもので。かつて、国家のゲタを履くと宮台に批判された右翼。ならば、 コギャルたちは、流動性サーフィンをしていたのではなく、「若さ」のゲタを履いていただけにすぎない


評価 ★★★★
価格: ¥1,680 (税込)

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Last updated  Feb 20, 2006 10:08:13 PM
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