書評日記  パペッティア通信

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May 16, 2007
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カテゴリ: 音楽・文化
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▼    名人戦移転騒動のあとも、まだまだ余震が収まりそうもない、日本将棋連盟。 米長邦雄会長直々に、女流棋士に経費節減のため独立を薦めておきながら、「独立準備委員会」が資金を募りだすと、手のひらを返して独立派に「切り崩し工作」。 いわゆる、「女流棋士独立騒動」まで勃発させてしまった。  将棋連盟は、5月27日、理事選が行われる。 どうやら、米長再選確実の気配。 参ったね、どうも。 瀬川編入問題といい、米長会長では、こちらの身が持たん。 勘弁してほしい。


▼    たまたま、ブックオフを回る機会を利用して、将棋を題材にとりあげたノンフィクション小説を、何冊がまとめて仕入れた。 皆様にもご紹介しておきたい。


▼    河口俊彦『大山康晴の晩節』(新潮文庫 2006年3月)は、不世出の大棋士、大山康晴の奇跡と軌跡を描いた、すばらしいノンフィクションである。 河口師は、プロ棋士(ただし、プロ予備軍である奨励会最多在籍年数という不名誉の記録をもつ)でありながら、華麗な文章をもち、将棋ペンクラブの会長を務めていた。 漫画『月下の棋士』の解説をはじめとして、どこでも拝むことができるが、この本はとりわけすばらしい。


▼    大山康晴といえば、タイトルがまだ3~5つの時代、全冠制覇を続け、名人戦13連覇、タイトル獲得80回、棋戦優勝44回の記録を持つ大棋士である。 タイトルが7つに増えた時代に、7冠王になった羽生善晴ですら、タイトル獲得数は、まだ60台にすぎない。 ただ大山は、なんといっても、ヒーロー升田幸三の敵役であった。 次世代の星、二上達也、加藤一二三などに、盤外戦を徹底的に仕掛け、潰しに潰したため、全盛期、畏敬されこそすれ、人気がまったくなかった。  


▼    「盤外戦で後輩を潰した大山」という見解は、本書でも踏襲されている。 とはいえ、さすがは、棋士の端くれ。 「盤外戦史観」は、適当な所でやめてしまう。 手どころにおける丁寧な解説を通じて、戦前から戦後すぐにかけて、兄弟子の升田幸三より、大山の方が強くなっていたこと。 宿敵・山田道美は、理論派というよりも終盤の粘りが素晴らしかったこと。  丸田や谷川17世名人が悲運の棋士なのは、素晴らしい一手が、タイトルにまったく結びつかず、知られることなく埋もれてしまうことにある  …… 河口師は、どこまでも盤上の真実を追い求め、筆致はどこまでも暖かい。


▼     大山の真の偉大さは、第三期黄金時代ともいうべき、名人位失陥後 にある、という部分こそ、本書を他と隔絶した本にさせている見解であろう。 53歳で将棋連盟会長の座についた大山。 歴代一〇指にかぞえられる天才、米長や中原たちも、50歳をこえると、「A級棋士」(トップ10)の地位から陥落せざるをえない。 その一方、大山は、関西将棋会館建設の寄付金を集めるため馬車馬の様に働きながら、60歳になっても、落ちる気配を見せなかった。 挙句、60代前半で、名人戦挑戦者。 60代後半における、A級順位戦残留のための死闘。 羽生との戦い。 2度にわたるガンとの闘病。 A級棋士のまま、逝去。 享年69。 


▼    なによりも、 大山将棋の本質は、徹底的な棋士への軽蔑


▼    中原16世名人の「林葉直子突撃事件」を初めとして、浮ついていて、組織の体をなしていないようにみえる、日本将棋界。 失って初めて気づく「大山康晴」の存在の大きさ。 ブログをごらんの皆様にも、ぜひご一読してほしい。 



評価: ★★★★
価格: ¥ 580 (税込)

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▼    次にお勧めしたいのは、いっとき、ずいぶん流行っていた、大崎善生『聖の青春』(講談社文庫、2002年)である。 今回、とうとう、手を出してしまった。 独特の文章から薫りたつ、勝負師の生き様は清冽ですばらしい。


▼    本書の主人公は、村山聖。 順位戦では、A級棋士。 幼稚園のときから、腎臓が機能を果たさず、免疫も弱く、すぐ疲れがたまり、細胞が水ぶくれして膨らむ、ネフローゼという病魔に冒されていた。 病院では本を読む生活。 そこで聖は、将棋と運命的な出会いをする。


▼    長く生きられない体をかばいながら、死をつねに間近に感じて生きてきた村山聖。 勝負の世界に入った村山は、「東の羽生、西の村山」とまで並び称されるほどの実力を蓄えていく。 ついには、「終盤は村山に聞け」といわれるほどの青年棋士へと成長。 師匠である森信雄六段を初めとして、さまざまな人に支えられる様子は、感動的というほかはない。 しばしば、見も知らぬ人に、道端に倒れている所を車で拾われ、対局場に連れて行ってもらったこともあったほどである。 病院に運ばれることは日常茶飯事。 何度となく対局を休まなければならない羽目になりながら、それでも聖は、一歩ずつ頂点へのぼっていく。 棋界最高位である「名人位」を目指して。


▼    しかし、果たせない。 谷川、なによりも、羽生が村山の前に立ちふさがる。 そして発病。 病名は膀胱がん。 A級棋士のまま逝去。 享年29。


▼    なによりも感動させられるシーンは、プロ棋士になることをやめさせるため開かれた親族会議で、まだ中学生の聖が「 谷川を倒すには今行くしか無いんじゃ !」と叫ぶ箇所ではないか。 この叫びで、親族会議の空気は一変。 村山は奨励会に入ることが許される。 しかし棋界は、ヤクザのような世界。 師匠選びで躓いてしまう……犯人は灘蓮照。 どんな悪い奴だったのかは、本書を読んで確認してほしい。 


▼    おもえば、谷川名人の誕生は、今も鮮烈に覚えている。 なによりも、加藤一二三ファンの私は、谷川名人誕生とともに、将棋をやめてしまった。 だって、馬鹿馬鹿しいでしょ。 20歳で頂点を極めることが可能な、そんなバカな世界が、あっていいはずがない。 そう思うと、将棋がとてもツマンナイ世界に思えた。 その一方、「谷川を倒すこと」に命をかけて決意した男たちが、たしかにいたのである。 今の羽生世代。 その息吹だけで、懐かしくてたまらない。  





▼    とはいえ、「泣ける本を読みたい!!!」という方には、一読をお勧めしておきたい本である。 たいていのブックオフには転がっているので、ぜひ一度書架を確認してもらいたい。


評価: ★★★☆
価格: ¥ 680 (税込)

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Last updated  Aug 2, 2007 11:57:17 AM
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