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2022.09.11
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カテゴリ: 小説系
まさか、トロッコ問題について考えてて、
小説書けるとは思っていなかった。
ちなみに。。。私は少しですが、
文学賞に応募したこともあるなんちゃって小説家です。
賞にかすりもしてないけどね。

今回、今までにない新しい主人公像が。
青春物なのに、主人公が54歳中年っていう設定で。
ちょっとあらすじだけ、バーーっと書きますよ。

甲子園のダイヤモンドに立って、教え子の子供達が

ベンチでは、一人の中年男性が、腕を組んでピッチャーをじっと
見つめている。
あの頃の、若かりし頃の男性の記憶に重なっていく。
当時あそこに立っていても、ここまでは緊張しなかった。
本気で叶えようと願うと、こんな風になってしまうものなのか。
打ち震えそうになる右腕を、左腕で押さえるように、
男性は身を硬くして投手を見つめている。
一球、一球が息が詰まるよう。。。
あの頃の俺の方が、ずっとリラックスしていた。。。
ーーここまで最初のさわりです。

主人公の男性が高校生の頃にさかのぼる。

幼少のころからグローブ、バット、ボールで遊ぶ事を当然のようにしていた。
もちろん父親が彼を野球選手に育てたくてそうしていたのだが、
彼自身野球が嫌いではなかったし、とりわけ得意でもあった。
小学、中学、高校と、当然のように野球部に入部し、
彼の父親がプロ野球選手という話はクラスが始まる一番最初のネタとして

彼は野球をするものという体で接してきたし、
彼も物心ついた時には、それを当然のように受け入れてきた。
何よりも彼には野球の才能があって、彼が球を投げる姿を見た人が、
必ず彼は将来野球選手になるであろうと、信じ込んでしまうほどのものだった。
彼は当然のように野球を続け、高校に入学するとなった時、
野球の特待生で甲子園上位常連の名門校に入学した。
父親は自分の母校に入学した息子を誇りに思い、この時ばかりは
息子を褒めて喜んだ。普段厳しく指導する父親が笑顔を見せる姿を見て、
彼の心は笑顔の奥で少し曇った。

彼が他に成りたい夢を見つけてしまったのは、中学1年の終わり頃だった。
それまで馬鹿が付くほどに野球に明け暮れていた彼だったが、
たまたま深夜に見たお笑い番組を見て、純粋に憧れを抱いてしまった。
彼は、それを見た時にこんなに生活の中で楽しい気持ちになれるものがあるんだ、
職業があるんだと感銘を受けた。ただひたすらに真面目に、
筋トレ、投球、バッドを振り続ける日々。
自我が芽生えて、周囲の反応を意識する事が多くなっていた、というのもあった。
彼は野球を頑張る傍らで、夜になると録画しておいたお笑い番組を見て
ノートに「何が面白いを誘うか」というような真面目な記録を付けたり、
それは誰にも内緒の事だったので、余計に彼を夢中にさせた。

まわりの人間は、自分を父親の副産物のように言い、
彼自身、野球を好きだし得意であったけれど、
褒められて嬉しかったのは中学の最初のころまでで、
自分が褒められていると純粋に感じられなくなっていた。
高校に上がると、仲間ではあるけれども皆野球に自信を持っており、
それゆえにどうしても特別扱いを受ける彼を快く思っていない者も一人や二人ではなかった。
仲間だけど、ライバルでもある。ピッチャーというトップの役割を担う以上、
弱音は吐けない。仲間の上に立つからにはメンバーの分も背負おう。
野球に対し自信もあったし、負けん気も強かった。
しかしながら、「これは本当に自分の夢なのだろうか」という疑問は、
常に頭の中の一部分を占領していた。
頭のうちで、秘密の夢である「お笑い芸人になる」という事に関する努力をしている時、
それを自分の個人的で、とても大切なもののように感じる事があった。
自分だけの大切な努力のように感じられ、少し睡眠時間が削られても
構わなかった。そして彼にとってそれは丁度良い息抜きにもなり、
心から楽しいと思える日々の笑いに対する気付きを見つける為の努力を苦とも思わなかった。

高校でも日中は野球漬けの日々を送る中で、耐えがたいプレッシャーに
押しつぶされそうになる事も度々あった。
相性の良いメンバーは互いが良くなる為、切磋琢磨、
前向きな意見と行動で良い関係を気付いていたのだが、
全員が全員そうではなく、聞こえるように嫌味を言われる事もあった。
その度に、自分が果たしている大きな責任、それを果たしているのに
いわれのない嫌がらせを受ける事に、
「俺がいなかったら、勝てないかもしれないのに」という
ネガティブな感情に陥る事もあった。
投手というのは、試合を左右する重要なポジションで
プレッシャーは他のポジションの比ではない、
もちろん信頼出来る仲間いての勝利だが、
親の期待と知名度も、彼にとってのプレッシャーでもあり、
その中で結果を出している自分が認められないと、
「俺の気持ちがお前らに分かるわけない」と、憎く思う事もあった。
それでも信頼し支え合えるメンバーもいる中で、
なにくそと彼は努力し、結果を出し続けた。

そして、夏の甲子園がやってきて、選りすぐりの他のメンバーで組まれた
名門校のチームである彼の高校は、見事に準決勝まで勝ち進んだ。
しかしながら彼は、次でいよいよ優勝という時になって、
ついに思い悩んでしまう。
このままで、良いのだろうか。
このまま勝ち進んでしまったら、後へは引き返せないぞ。
優勝して、ヒーローインタビューで脚光を浴びる。
今ですら、「~~の二世」と取り上げられる、優勝したとなったら、
注目をいっそう強く浴びて、もう野球からは一生、離れられなくなる。
ここまで周りの期待や父親の希望に応えてきたけど、
俺は、このまま勝ってしまったら、一生後悔するかもしれない。

彼は必死に悩んだ。勝ち進む度に、強くなっていくチームの結束。
同じ苦楽を共にしてきた、青春の晴れ舞台で、
皆勝利への半端ない熱量が高まってきている。
勝つ度に、肩を叩かれ、むけられる笑顔に素直に喜べない
自分の気持ちに、嘘は、付けないんだ。。。
俺は、俺は。。。俺にとって、本当の勝利っていうのは。

彼は、ついにここへ来て、自分の本当の夢を叶える為に思惑を実行に移す。
ピッチャーズマウントで、いよいよ彼の思い描いた通りのシチュエーションが
整っていく。9回裏、ツーアウト満塁、彼のあと一球で、
優勝が決まる。チームメイトもベンチのメンバーも、もう
飛び上がる準備をして身を乗り出している。
彼は決心が鈍らないよう帽子を深くかぶり直して、
後ろのポケットの中に、比較的ぺちゃんこになるように仕込んでおいた
ストライプの包装紙に包んだおにぎりを手の中に握りこみ、ボールと入れ替えると
グローブにたたきつけながら形を丸く整え直す。
少し、クローズアップしたテレビの実況が、声を躍らせながら、
「おや?何か、違う物を持っているように見えますが。。。」という実況を始めた時、
彼は思い切り腕をしならせて、丸く握り直したおにぎりの玉を、
渾身の力でキャッチャーのグローブめがけて投げた。
バッターは空振りし、チームは立ち上がって両腕をかかげ、
優勝の喜びに、そこにいた誰もが気持ちを高ぶらせようとしていたのだが、
バッターと審判と、キャッチャーとテレビのアナウンスだけは違った。

審判はキャッチャーがグローブを開いた手の中に入っているものを見て、
戸惑ったように、声を張り上げた。
用意していた「ストライク」という言葉と、目に映っている
どう見てもボールではないものとが相まって、頭がこんがらがりそうになりながらも、
審判の判断力を働かせて、高らかに叫んだ。
「す、ストライーープ!バッターー!セーフ。。。」と。
会場が一瞬、時を止めたように静まり返った。

ピッチャーに立って審判の叫び声を聞いた彼だけが、
顔を天に仰いで、目を閉じ、「やった。。。ついにやった」と
言うに言われぬちぐはぐの感情のまま
手を握りしめた。
目頭から、涙がすっと落ちた。
メンバーを、父親を、裏切った心苦しさと、
本当の夢であった、お笑いの舞台を実現した恍惚感の間で、
彼は、彼の望み通りの言葉を叫んだ審判の声に対して、
その時心から「ありがとう」と感謝した。
そのすぐ後で、審判は「の、ノーカウント!!」とさらに大きな声で叫んだ。
会場にどよめきの声が、わっと上がった。
混乱する会場の中で、彼は交代を余儀なくされ、
ピッチャーズマウントから降りると彼は一番奥のベンチに座り込み
周囲の反応を無視した。

交代したピッチャー代理が投げた球を、バッターが3塁側へ見事に打ち返し、
結局彼の高校は優勝を逃した。
彼はメンバーから「何してくれてんだよ!!」という罵声を浴びせられ、
無理やり立たされ、ボコボコにされそうな勢いだった。
彼は泣き続け、「ごめん、本当にごめんな」と言いながら鼻水混じりの涙で顔を濡らした。

テレビは突然起こった予期せぬハプニングを面白がって、
ヒーローインタビューで彼におにぎりの一番好きな具などを訪ねた。
彼は、別の意味で一躍有名になり、
彼が起こした事件について、テレビのニュースまでもが
注目し、さらに話題を煽ったので
彼が高校生の間中、そのネタで持ち切りになった。

彼は結局、お笑い芸人にもプロ野球選手にもならずに、
サラリーマンとして社会人になった。
様々の人の目にさらされて、もう注目を浴びるのは嫌だと
ネガティブな感情に引きずられ、消極的な日々を送った。
おにぎりはそれ以来、一度も食べていない。
二度と食べるわけにはいかないと、彼は心に決めていた。
犯した罪の大きさを、後になって思い知ったからだ。

彼は当時マネージャーであった女性と結婚して
控えめではあるけれども幸せな日々を過ごしていた。
そんな中、地域の野球チームで監督をやっていた初老の男性が、
彼にとある高校の野球チームのコーチをやらないかと勧めてきた。
彼は、何度も「私にはそのような資格はもうありません」と断ったのだが、
その話はマネージャーであった嫁が後ろで動いて、
取り付けた話だと知った。
自分のような社会の鼻つまみ者と結婚してくれた嫁が持ってきた誘いを、
全く無視するわけにはいかないと、後から断るつもりで
彼はしぶしぶ高校を見に行くだけなら、と初老の男性元コーチについて出かけた。
高校は、そこまで野球で有名というわけではなかったが、
コーチ次第で伸びしろのある生徒達ばかりだという。
彼は、あまり乗り気でないし、人の目を避けるようになっていたので、
最初はもう断ろうという気持ちで見ているつもりだった。
しかしながら、野球に夢中になっている生徒達の姿を見ていて、
少し甘い腕の振り方や投げ方の悪い癖などが目に留まると、
助言したくて仕方ないという気持ちが沸き起こって、
気付いた時には「そうじゃない」と、ダイヤモンドの上に踏み込んでいた。
その砂地を二度と踏むまい、その資格は無いと、思っていた彼だったが
居ても立ってもいられず、生徒達の動作に修正を入れた。
生徒達は、目からウロコという感じで喜びの表情を浮かべながら、
「ありがとうございます!」と元気に返してきた。
彼は懐かしい情熱のぬくもりが灯るのを感じながら、帰路についた。

家に帰ると、マネージャーが皿に山盛りのおにぎりを用意して待っていた。
彼は顔をしかめ、「二度と口にしないって、言ったじゃないか」と
暗い顔をしてみせた。彼女は笑顔で、「もういいんじゃない?」と言い、
皿を差し出した。テーブルに付き、山になったおにぎりを見つめる。
練習の休憩時間に、チームの皆で笑顔で囲んで食べた、山盛りのおにぎり。
彼は一つ手にとると、それを一口、口に含んだ。

おにぎりの中身は彼の好きな餃子やエビ天むすではなく野沢菜だったけれど、
彼は「美味しい」と言って、もう一口食べた。
もう一口食べると、涙が頬をつたい、もう一口、もう一口と食べながら、
彼はそれを手に握ったまま、その場で号泣した。
そうだ、俺は、おにぎりが大好きだった。そして、
俺は、そうだった、色々な事を言われた、ときに憎んだ事もある野球を、
野球を、本当は、大好きだったんだ。
何よりも、大好きだった、今頃になって、気付くなんて。
お笑いなんかより、ずっと、大好きだったのに。
色々なネガティブな感情で、まるで当たり前にそれが出来るから、
気付かなかっただけだった。
出来なくなってみて初めて、気付くとは、思わなかった。
間違えた後になって、今になって。

彼は山盛りのおにぎりの前で、号泣した。嫁も号泣した。
嫁は、彼が日々野球に全力を投球してきた事を知っていたので、
彼より彼の才能を諦める事が、出来なかったのである。

彼はその高校の野球のコーチを引き受け、
最初に自分の事を話す。そして最初に、
「もし今、野球を本当は好きでないというものがいたら、今直ぐ辞めなさい」
と言い、「中途半端な気持ちでは、どれだけの能力があっても、無駄になってしまうから」
と加えた。もちろんグラウンドを去る生徒は一人もいなかった。
生徒達は彼の事を事前に知っていたので、なおさら彼の言葉は胸に響いたようだった。

彼の指導で各段に良くなっていく生徒達。
その高校は結局、甲子園に出場するまでに成長する。

彼が甲子園の中に入った時に、報道陣が待ち構えている。
彼は深々とおじぎをして、中に入っていく。
報道陣は「問題の彼のチームがどこまで進むか、見ものですね」と
面白がって煽る。
若いアナウンサーも同調するが、長年甲子園を見てきており
彼が球児であった頃を知っているアナウンサーは、「まぁそれは、
今のチームの子達とは関係ありませんからね」と権勢した。
その一言で、若い方のアナウンサーは煽るのを止める。

そして、順調に勝ち進んでいくチーム。
準々決勝まで来た時、彼は自分が投手であった時には
ここまで緊張しなかったと、ピッチャーズマウントに立つ生徒達を見ながら思う。
本当に、心から勝ちたいって気持ちは、これほどに重いのか。
だけどこれが、本気の証明。。。

彼はダイヤモンドの中心で投げ続ける投手を見て、
ゆっくりと呼吸をしながら、見守る。そして
全く同じシチュエーションに差し掛かった9回裏、
あと一球で、勝負が決まると言う時に、
彼の中で走馬灯のように、当時の気持ちが蘇ってくる。

俺は、あの時、ネガティブな事の方ばかりに、気を取られていたんだ、本当は。
支えてくれる気の合うメンバーよりも、俺と一緒になってくれたマネージャーよりも、
嫌なちょっかいを出してくるメンバーに恨みを募らせて、
俺がいなかったら、俺が勝たなかったらどうするんだと、
意地の悪い本心も、心の中に確かにあったんだ。
結果、俺は自分の本心を通したつもりで、そいつらに一泡吹かせたつもりで、
支えてくれていた方を、裏切ったんだ。


失った後になって、こんなにも、野球をやりたいって気持ちになるって、
あの時気付けてたらな。
まるで当たり前の事だって思っていたのに、見えずにいたんだよな。
彼はピッチャーの彼を見つめて、「勝て!」と心の中で叫んだ。
「勝て、勝ちに行け、迷わず勝ちに行け!!」
「信じてくれる方だけを見て、そのまま行け!!」
「勝て!誰よりも、自分に!」

彼は、自分の昔の姿を見つめるように、投手の生徒を見つめた。
ふっと生徒の方が、監督を見て、少し頷くと、
落ち着いた様子で思い切り腕を振り下げた。

パン!!という、ボールの音が会場に響く。
キャッチャーの手の中に、ボールが残り、
バッターはフルスイングで空振りした。
一斉に歓声が、割れんばかりにワーーっと上がった。

実況のアナウンサーが、声を震わせて勝利を称えた。
それに感化するように、彼の事を知る多くの観客が、
涙を流しながら拍手をし立ち上がった。

彼は、満面笑顔の生徒達に囲まれながら、
「ごめんな、ごめんな!」と繰り返した。
生徒達は、「コーチ、コーチ!!」と言って皆団子になって抱き合った。
テレビは彼を大写しにし、「36年越しの勝利!」として騒ぎ立て、
彼は再び時の人となった。

長くなっちゃった、どうでしょうか、けっこう良いよね。。。





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最終更新日  2022.09.11 06:20:11
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